フォーリミ、オーラル、ブルエンによる「ONAKAMA 2021」、福岡にて大団円!
ONAKAMA | 2021.02.15
「ONAKAMA」が帰ってきた。「同じ釜の飯を食う」の意を汲んだタイトルのもと、それぞれのメジャーデビュー前から鎬を削ってきた3組のバンドが、2016年の夏に東京で繰り広げたライブイベント「ONAKAMA 2016」。あれから約5年、この2021年には、各バンドの地元エリア3ヵ所でアリーナツアーを行う「ONAKAMA 2021」として開催。1月24日の名古屋ガイシホール、1月31日の大阪城ホールを経て迎えた、2月11日マリンメッセ福岡の模様を振り返ってみたい。
コロナ禍の最中ということで、もちろん開催する側も参加者も、慎重にならざるを得ない難しい時期ではあった。確かな熱狂を生み出す3バンドだからこそ、感染防止のために必要な会場の準備やガイドラインを練り上げ、参加者ひとりひとりが注意を払わなければならなかった。しかし、この日そこに居合わせた人々が感じたのは「無事開催/参加することができた」という安堵だけではない。それぞれの立場で考えながらも、困難な時期を潜り抜けた先の未来を見据えて思いを重ねる、そんな大切な瞬間が幾度となく訪れたのだ。
約5000人(「ONAKAMA 2021」累計では約15000人)のオーディエンスが、ガイドラインに基づいて慎重に入場し迎えた開演予定時刻。各バンドの登場時には、メンバーが5年ぶりの「ONAKAMA」への意気込みを語り、また他のバンドメンバー数人も援護射撃のコメントを寄せるビデオがスクリーンに映し出される。この日のトップバッターはTHE ORAL CIGARETTESだ。山中拓也(Vo/Gt)、鈴木重伸(Gt)、あきらかにあきら(Ba/Cho)、中西雅哉(Dr)が揃い、拓也は「久しぶりやなあ、楽しみにしとった?」と場内のオーディエンスを見渡しながら、「一本打って!!」の名調子で音頭を取り、クラップを誘いながら名乗りを上げる。オーディエンスに大きな発声の自粛が求められるライブ環境であっても、この「オーラルが始まる」手応えは磐石だ。
「Dream In Drive」で始まって「狂乱 Hey Kids!!」へと連なる序盤から、全力でオーディエンスを楽しませようとする意気込みがビシビシ感じられるサウンド。妖艶でアクロバティックなバンドアンサンブルはもちろん彼らの持ち味だが、年輪を重ねた骨太で大人びた音が、ソリッドなロックの輪郭を一層際立たせている。シゲとあきらが両翼で華麗なタッピング奏法のリレーを繰り広げ、まさやんはバンドの特異な曲調のグルーヴをがっちりと支えていた。バンド一体型の重いリフで会場一面にヘッドバンギングを巻き起こす「カンタンナコト」の後には、アンビエントなシーケンスの中でシゲが美しいギターソロを奏でる。星の声が語りかけてくるようなその神秘的なパフォーマンスは、爆音の熱狂だけにはとどまらない、ライブの抑揚と奥行きをもたらしていた。
そして「トナリアウ」を歌いながら、「俺らONAKAMA3バンド、ずっと隣り合ってやってきました。だから今日は敵味方なく、みんなONAKAMAで、よろしくね」と呼びかける拓也。宿泊したホテルでのエピソードトークを絡めながら、難しい選択を迫られる日々が「本当の自分らしさ」を導き出してくれることを語り、「俺らはキラーチューン祭りを選択します!」と宣言してラストスパートに持ち込む。狂気を掠めて爆走する「5150」や「BLACK MEMORY」は、オーディエンスのぶんまで歌ってやると言わんばかりの熱いコーラスに満ち、「絶対帰ってくるから、マジでありがとう!!」とライブの手応えを噛み締めながらフィニッシュするのだった。
2番手は、地元名古屋の公演でトリを飾った04 Limited Sazabys。GEN(Ba/Vo)、HIROKAZ(Gt)、RYU-TA(Gt/Cho)、KOUHEI(Dr/Cho)が位置に着くのだけれど、切り出されるオープニングナンバーはなんとBLUE ENCOUNTのお株を奪う「もっと光を」である。聴こえるはずのないオーディエンスのどよめきが、湧き上がる手拍子に込められている気がした。エモーショナルな曲調を、フォーリミらしく解釈した熱演になっている。そして「climb」以降は、KOUHEIが背後からメンバーを突き飛ばすようにファストなビートを繰り出し、パンキッシュなスピード感溢れるフォーリミ本来のパフォーマンスを展開。「Kitchen」では会場一杯に掌が高くかざされるダンスの光景が広がり、スピード感の中にも豊かなストーリーテリングが映えるステージを繰り広げていった。
GENは「もっと光を」が一番緊張したと笑いめかしながら、自分にとってのライブのような大切な瞬間を、それぞれにキャッチして持ち帰って欲しい、とオーディエンスを促す。哀愁を引き摺るほどに力強さを増す「Milestone」、RYU-TAの刺激的なギターイントロが空気を一変させる「fiction」、幻惑的なライティング演出と共にブルージーな余韻を残してゆく「mahoroba」と、曲また曲の矢継ぎ早な展開でありながら、1曲1曲に込められた感情表現の質量が高い。「誰かにとっての不要不急も、誰かにとっては生活のすべてだったり、生きる意味だったりするんで、難しいなと思います」「考え過ぎて考え過ぎて、自分自身が何なのか分からなくなってる、そんなあなたに捧げます! 自分自身に生まれ変われ!!」というメッセージと共に降り注いだ「Squall」には、困難な時期にこそ大きな意味を発揮する音楽の力が確かに宿っていた。疾風怒濤の全12曲。限られた持ち時間の中で、価値ある瞬間をひとつでも増やしてやろうとしたフォーリミである。RYU-TAによるNiziUのダンスの物真似まで盛り込まれていて最高だ。
さあ、「ONAKAMA 2021」福岡公演を締め括るのは、BLUE ENCOUNTである。江口雄也(Gt)、辻村勇太(Ba)、高村佳秀(Dr)、そして真ん中に立つ田邊駿一(Vo/Gt)は伸び伸びと、手応えを確かめるように声出しを行い、オーディエンスを前にライブすることが嬉しくて仕方がない、という面持ちで「ポラリス」を歌い出す。歌声がドンと太い芯になり、ダイナミックに躍動するバンドサウンドの重心を担う。そんな「ブルエンのライブ」の手応えを開始数秒で実感させてしまうオープニングが見事だ。
江口の閃光のようなタッピングが駆け抜け、辻村もプレイの合間に雄々しい声でオーディエンスを煽り立てる「Survivor」をフィニッシュ。「ライブをやりたくてもできないアーティストやライブハウス、今日来たくても来られなかった人、そういう人たちからバトンを受け取って、いつもどおり歌いたいだけだからね。安心してついてきて」と思いを伝える。本家「もっと光を」では、「自己紹介が遅れました。あなたと一緒に大トリやりに来ました、九州代表BLUE ENCOUNTです! よろしくどうぞーっっ!!」と割れんばかりの拍手を誘うのだった。
「バッドパラドックス」→「ロストジンクス」→「VS」という、狂喜乱舞のスリリングなナンバーを固め撃ちする展開は実にヤバかった。そんな中でただ楽曲のボトムを担うというよりも、率先してサウンドを牽引し、或いは音の合間を縫うように変幻自在に鳴る高村のビートが、バンド演奏のスリルを助長している。一方田邊は「俺らがどれだけ格好つけてもお前らに敵わないから、とっておきの武器を見せてやるよ」と言い放ち、ギラつく爆音と前のめり感で「DAY×DAY」を導く。出し惜しみなしである。
「ONAKAMA 2021」の開催に当たっては、さまざまな意見が寄せられたことを語る田邊。バンドメンバーやスタッフも、大いに悩み、思いを巡らせた。「分かってるんだよ。でもねえ、それだけじゃ片付かないんだ。俺たち3バンドにとっては1分1秒を争うくらい、あなたとやるライブは必要不可欠なものなんです」。悩んだ末に下した開催の決断と、そのための入念な準備は、少しずつでも理解を得る未来に繋がってゆくのではないだろうか。「ライブをする」こと自体が、多くの人々に考える機会をもたらすメッセージになる。アーティストや現場サイドのエゴだけでは、結局のところライブは成立しないのだ。そして彼は大きな提案をした。「いつかこの(座席の)穴が埋まって、全部元通りになったときに、その空席に来るはずだったあなたの大切な人を連れて、もう1回この3バンドでツアーをしませんか? 今まで“仲間”の意味なんて分からなかったけど、また会いたくなる人が“仲間”だと思うんだよ」。
未来をオーディエンスの手に託すように奏でられた「HANDS」には、「ONAKAMA、これからもよろしく!!」と言葉を添える。万感の最終ナンバー「灯せ」には、オーラル山中やフォーリミGENも参加し、めくるめくスイッチングボーカルで、そしてユニゾンのコーラスで、思いを重ねながら厚みのあるメッセージを届けた。これが、2021年の「ONAKAMA」の響きだ。3バンド揃い踏みとなった記念撮影で締め括られた一夜。未来に繋がる、とても多くのものを持ち帰ることができたステージであった。
【取材・文:小池宏和】
【撮影:ハタサトシ(THE ORAL CIGARETTES)、
ヤマダマサヒロ(04 Limited Sazabys)、
浜野カズシ(BLUE ENCOUNT)】
J-POP ライブ 男性ボーカル THE ORAL CIGARETTES 04 Limited Sazabys BLUE ENCOUNT ONAKAMA 2021
セットリスト
ONAKAMA 2021
2021.02.11@マリンメッセ福岡
-
[THE ORAL CIGARETTES]
- 01.Dream In Drive
- 02.狂乱 Hey Kids!!
- 03.容姿端麗な嘘
- 04.カンタンナコト
- 05.トナリアウ
- 06.起死回生STORY
- 07.5150
- 08.BLACK MEMORY
-
[04 Limited Sazabys]
- 01.もっと光を(BLUE ENCOUNTカバー)
- 02.climb
- 03.Kitchen
- 04.nem...
- 05.swim
- 06.Jumper
- 07.Milestone
- 08.fiction
- 09.mahoroba
- 10.Squall
- 11.monolith
- 12.Remember
-
[BLUE ENCOUNT]
- 01.ポラリス
- 02.Survivor
- 03.もっと光を
- 04.バッドパラドックス
- 05.ロストジンクス
- 06.VS
- 07.DAY×DAY
- 08.HANDS
- 09.灯せ