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PEDRO「いろんな愛を知ってここに立てたことがすごく嬉しい」――感謝が詰まった温かな武道館ワンマン

PEDRO | 2021.02.17

BiSHのアユニ・Dのソロバンドプロジェクトとして2018年に始動したPEDRO。アユニ・Dがボーカルとベースを担当し、田渕ひさ子(Gt)、毛利匠太(Dr)をサポートメンバーに迎えつつ精力的にライブを重ねてきたが、ついに日本武道館でワンマンライブを行う日が来た。アユニ・Dが日本武道館のステージに立つのはBiSHの活動も含めて今回が初めてとなる。

会場に入ると、アリーナのど真ん中にステージが組まれているのが目に飛び込んできた。その周囲360°に客席が広がり、1階席と2階席も東西南北の全てがソーシャルディスタンスを確保した形で満杯となっている。この場所でどのようなライブが繰り広げられるのか? ワクワクしている内に迎えた開演。ステージの全面を覆っている円筒形の紗幕が青色に染まった後、突然真っ赤に切り替わった。「武道館!」という声が発せられたのを合図に切って落とされた紗幕。ライトで照らされたステージから「自律神経出張中」の爆音が響き渡った。観客は一斉に立ち上がって大興奮。続いて「猫背矯正中」と「来ないでワールドエンド」も演奏して、ますます熱を帯びたバンドアンサンブル。ベースを弾きながら歌うアユニ・Dを中心として、早くもドラマチックな空間が生み出されていた。

「PEDROです。よろしくどうぞ!」という挨拶を挟んで、さらに続いた演奏。LEDが仕込まれたステージ全体が白い光を放ち、「WORLD IS PAIN」がスタート。サウンドの切れ味が一層増していった。ステージ上には大道具、小道具類は置かれておらず、メンバー3人と機材のみ。武道館の全方位に向かって勝負を挑むかのような演奏が続いた。観客の手拍子も加わった「愛してるベイベー」の後、「後ろ指差すやつに中指立てる」「GALILEO」「pistol in my hand」「ボケナス青春」「うた」も届けられて、ビリビリと激しく震え続けた武道館。PEDROの強度を再確認させられる爆音の連続であった。

「今日は武道館に360°お客さんを入れてライブをしております。感慨深いです。私は初めて武道館に立ったんですけど、ひさ子さんと毛利さんも初めてですか?」とアユニ・Dに訊かれて、「初めてです」と答えた田渕と毛利。「私、幸せであります。今日という日がやって来るんだろうか?という感じだったんですけど、無事に迎えられて本当に嬉しいです。みなさんに感謝しかございません。ありがとうございます」(田渕)。「高校生の時に初めてアーティストのライブを観たのが武道館。ステージに立てると思ってなかったので感無量です」(毛利)――ふたりの言葉には、アユニ・Dと共に活動を重ねてきて、ついにこの大舞台に辿り着いたことへの喜びが溢れていた。

ここに至るまで3人は南側を向いて演奏を続けていたのだが、「回転スターティン!」という声を合図にステージ全体が180°回転。北側を向いたところで演奏が再開された。「今日があなたにとって幸せな思い出になりますように。どうぞ最後までよろしくお願いします」とアユニ・Dが言い、「浪漫」がスタート。LEDの電飾が星空のような空間をステージ上に作り上げたこの曲は、穏やかに躍動するサウンドが観客をうっとりとさせていた。そして、力強く駆け抜けた「へなちょこ」を経て突入した「無問題」は、ケンタウロスの扮装をしたパフォーマーがステージに飛び込んできて大暴れ。「Dickins」では、アユニ・D、田渕、毛利が随所で演奏のキメを交わしつつアンサンブルの熱量を高めていく様がかっこよかった。PEDROのロックバンドとしての魅力をストレートに体感できたのが、この中盤戦だったと言えよう。

「上京して最初に住んだのが6畳1間の部屋で、なかなか生活をすることに追いつかなかったり、あまり上手に眠れない日が多くなったり、部屋に生ごみの袋が溜まってしまったり、丁寧な暮らしと真反対の暮らしをしていました。でも、そんな地球の片隅の小さな部屋で、私はずっと大きな声で叫びたがっていました。そんな曲です」とアユニ・Dが語ってから届けられた「丁寧な暮らし」。不安を抱えながら過ごしていた少女が道を切り拓いて今日に辿り着いたという事実に、改めて胸打たれずにはいられなかった。そして「ゴミ屑ロンリネス」「SKYFISH GIRL」「EDGE OF NINETEEN」「生活革命」「空っぽ人間」「感傷謳歌」……次々と響き渡った曲たちは、彼女が噛み締めてきた無数の想いを生々しく伝えてくれた。

「私が上京してアユニ・Dになったということ、アユニ・Dとして今まで生きてこられたこと、私と私の音楽をあなた方が生かしてくれたということ、そしてこれからもこの街で生きていきたいということ……今の想いが全て詰まっている曲を聴いて帰ってください」と語ってから演奏を始めた「東京」。この曲が始まると、会場全体が一際穏やかなムードで包まれたことが思い出される。会場の隅々にまで瑞々しく広がったこの曲によって、本編は美しく締め括られていた。

アンコールを求める手拍子に応えてステージに戻ってきた3人。田渕がカメラでアユニ・Dを撮影していた姿は、とても心温まるものがあった。そして、「本日はご来場いただきまして誠にありがとうございます。僭越ながら乾杯の音頭をとらせていただきます。みなさまの人生を祝しまして乾杯!」という声と共に「乾杯」の演奏がスタート。回転し続けるステージ上から放たれた音が、武道館の全エリアを力強く祝福していた。<乾杯>という歌声に合わせてペットボトルを掲げたり、拳を突き上げたりしていた人々の表情が明るい。初の武道館公演を全員で喜び合った平和なひと時であった。

「少しお話をさせてください」と言ってマイクに向かったアユニ・D。ずっと抱いていた不安、ステージから観客を観た瞬間に恐怖が楽しさに変化したこと……などを語った後の「今日まで生きてくれてほんとにほんとにありがとうございます」という言葉が、観客の心を動かしているのを感じた。「いろんな愛を知ってここに立てたのが私はすごく嬉しいです。徹夜でステージを作り上げてくださったスタッフの方々、私の人生に革命を起こしてくれたひさ子さんと毛利さん、私をいつも支えてくれて、人間にしてくれたPEDROチーム、BiSHチームのみなさん。私に愛をたくさん教えてくれたあなたたち。そして、いろんな喜怒哀楽を一緒に味わって、どんな困難な日々も一緒にぶつかって、一緒に乗り越えてくれたBiSHのメンバー。全てが私の宝物で誇りです。いつもありがとうございます」という言葉が響き渡ると、大きな拍手がステージに向かって届けられた。

「生活をしていくということ、日常を送っていくということ、記憶を紡いだり忘れたりすることも怖がらないで、大切にぎゅっと抱き締めて生きていきたいです。あなたもどうかこの人生、たくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん美味しいものを食べて、たくさん寝て、眠れない夜が来ませんように。元気に生きていってください」という言葉を添えて披露された「日常」は、客席にいた我々を温かく包み込むかのようだった。そして、「NIGHT NIGHT」も届けられて迎えたエンディング。記念撮影の後、「2021年の夏に全国9ヵ所をツアーで回らせていただきます!」とアユニ・Dが発表した瞬間、会場全体から大きな拍手が湧き起こった。

『SENTIMENTAL POOLSIDE TOUR』というタイトルの次回のツアーは8月11日・東京・USEN STUDIO COASTを皮切りにスタートして、9月10日・沖縄・桜坂セントラル公演まで続く。武道館公演を経て、さらに進化した姿が各地で示されるだろう。2021年のPEDROの活動も要注目だ。

【取材・文:田中大】
【Photo by kenta sotobayashi】

tag一覧 J-POP ライブ 女性ボーカル PEDRO

リリース情報

東京

東京

2021年02月10日

ユニバーサルミュージック

01.東京
02.日常

リリース情報

LIFE IS HARD TOUR FINAL

LIFE IS HARD TOUR FINAL

2021年02月10日

ユニバーサルミュージック

2020.09.24 LINE CUBE SHIBUYA
LIFE IS HARD TOUR FINAL
01.WORLD IS PAIN
02.猫背矯正中
03.愛してるベイベー
04.来ないでワールドエンド
05.後ろ指差すやつに中指立てる
06.GALILEO
07.pistol in my hand
08.ボケナス青春
09.さよならだけが人生だ
10.無問題
11.感傷謳歌
12.へなちょこ
13.ironic baby
14.Dickins
15.おちこぼれブルース
16.生活革命
17.SKYFISH GIRL
18.乾杯
19.自律神経出張中
20.空っぽ人間
-ENCORE-
21.浪漫
22.NIGHT NIGHT

セットリスト

PEDRO
生活と記憶
2021.02.13@日本武道館

  1. 01.自律神経出張中
  2. 02.猫背矯正中
  3. 03.来ないでワールドエンド
  4. 04.WORLD IS PAIN
  5. 05.愛してるベイベー
  6. 06.後ろ指差すやつに中指立てる
  7. 07.GALILEO
  8. 08.pistol in my hand
  9. 09.ボケナス青春
  10. 10.うた
  11. 11.浪漫
  12. 12.へなちょこ
  13. 13.無問題
  14. 14.Dickins
  15. 15.丁寧な暮らし
  16. 16.ゴミ屑ロンリネス
  17. 17.SKYFISH GIRL
  18. 18.EDGE OF NINETEEN
  19. 19.生活革命
  20. 20.空っぽ人間
  21. 21.感傷謳歌
  22. 22.東京
  23. 【ENCORE】
  24. EN01.乾杯
  25. EN02.日常
  26. EN03.NIGHT NIGHT

お知らせ

■ライブ情報

SENTIMENTAL POOLSIDE TOUR

08/11(水)東京 STUDIO COAST
08/17(火)北海道 PENNY LANE24
08/24(火)福岡 DRUM LOGOS
08/26(木)宮城 仙台Rensa
09/01(水)大阪 なんばHatch
09/02(木)愛知 名古屋 ダイアモンドホール
09/05(日)新潟 NIIGATA LOTS
09/07(火)東京 Zepp DiverCity
09/10(金)沖縄 桜坂セントラル

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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