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モノンクル、多面的な魅力と音楽性を見せつけたビルボードライブ東京ワンマン

モノンクル | 2021.03.23

 春の日の午後、ビルボードライブ東京でモノンクルを観る。ジャズとポップスの接点で、最高にお洒落でクールな音楽を作り続けている彼らは、今年でちょうど結成10年。出たばかりの新曲、モーニング娘。の超絶かっこいいジャズ/ファンク・カバー「抱いてHOLD ON ME!」も絶好調、およそ1年振りのライブにメンバーの気合は満点だ。

「こんな状況の中、本当に来てくれてありがとうございます。あっという間の70分だと思うので、最後まで楽しんでいってください」

 ボーカル・吉田沙良の元気のいい挨拶から始まった、1曲目の「RELOADING CITY」。2人のギタリスト、キーボードとマニピュレートのサポートを加え、ベース・角田隆太は5弦ベースと共に秘密兵器のインストゥルメント「Push」を操る。空気がびりびり震えるほどの重低音だが、耳に届く音は不思議に心地よい。ポルノグラフィティのカバー「アポロ」は、ウッドベースに持ち替えて心地よく、グルーヴィーな音色を響かせつつ、中盤でカオスめいた楽器アンサンブルを聴かせたり、刺激と愛撫の塩梅が絶妙。シルバーグレーのビッグサイズスーツにスニーカー、吉田はファッションも表情も歌声も、すべてクールでかっこいい。

 「3時から飲んでます? まじかー、最高ですね。やりたい曲がたくさんあるので、セットリストはかなり詰め込んでます。このあと、じゃんじゃんやっていきます」

 平日午後3時スタートのファーストステージ、お酒と食事と音楽を楽しむファンとメンバーの、同好の士の集まりのような雰囲気がうれしい。メロディアスなR&Bチューン「夕立」はアコースティックギターとウッドベース、変拍子めいた不思議なグルーヴの「空想飛行」は、角田がPushでピアノの音を奏で、トラックを流し、ウッドベースに持ち替えるという驚異の技を見せる。さらにこの日が初披露の新曲「似てない同士」は、淡々とビートを重ねるオルタナティブR&Bテイストのトラックに、エモーショナルなボーカルが熱量を吹き込み、じわじわと熱が上がってゆく過程が聴きもの。バンドと歌のアンサンブルの最良のサンプル、と言うべき素晴らしい演奏だ。

 「まさかこの曲をモノンクルでやるとは、小学校3年生の私は思っていなかったです。1年前でも思っていなかったですね。この1年でいろんなことが変わっていった、その先にこの曲があってこの場があります」

 まさかこの曲、というのは、言うまでもなくモーニング娘。「抱いてHOLD ON ME!」のこと。図太いビートにルーズなファンク感、ハードロックなギターソロ、ラップのパートなど、見かけ以上に過激なボーダーレス性を持つモノンクルの音楽性を、雄弁に物語る名カバーだ。

 短いMCをはさんで、ここから2曲はメンバー二人だけのデュオコーナー。「懐かしい曲をやりたいと思います」と言って歌った「最終列車 君を乗せて」は、角田のアコースティックギターと吉田の歌だけで、しっとりとたおやかに。対照的に「SUNNYSIDE」は、アイコンタクトを交わしながら軽快に。歌に耳を傾けるのはもちろん、楽器の才人・角田の達者な手元を見ているだけでもワクワクする。モノンクルには、音楽ファンを喜ばせる入口がいくつも用意されている。

 ギター・西田修大、ギター・小川翔、キーボード&マニピュレート&コーラス・沖メイ。メンバーを呼び込み、再び5人編成となった最初の曲「音の鳴るあいだ」は、昨年のコロナ禍の中で制作された新しい曲。全てが良くなりますように、祈ってた、無力なりに本気で。――メランコリックなスロービートに乗せた、率直で、優しくて、むき出しの言葉が胸に沁みる。

「早いよー。ライブってこんな感じだっけ?」

 明るく軽やかでファンキーな、「Every One Minute」のイントロが鳴りだした瞬間、吉田が思わず放った言葉に笑いながら、それはここにいる誰もが同じ気持ちだと思う。ラストチューン「ここにしかないって言って」は、曲中に「HOT CV」のヴァースをマッシュアップして、クラップと共に力強いグルーヴで突き進むホットなダンスチューン。エンディングでは「アポロ」「SUNNYSIDE」など、この日披露した楽曲のワンフレーズずつを歌い込む、人力サンプリングのようなユニークなアイデアが愉しい。これは昨年夏の配信ライブでも披露した技だが、どんな状況でも新しいアイデアを探してライブをアップデートしてゆく、モノンクルらしい前向きな姿に微笑みが止まらない。

 アンコールでは嬉しいお知らせ、4月9日の「DOVETAIL S/N 003」出演、そして6月27日にビルボードライブ横浜、7月16日にビルボードライブ大阪でのワンマン公演が発表された。「まだまだ難しい状況が続きますが、こうやって共有できる場がもっとあればいいと思います」と、吉田は言った。アンコール・チューン「魔法がとけたなら」は、アコースティックギターとウッドベースで奏でる、懐かしい映画のメロディのような、美しく優しい歌。グルーヴィーなジャズ/ファンクチューンも得意だが、チルでフォーキーな曲の表現力も素晴らしい、モノンクルの魅力は多面体だ。ほんの少し物足りない70分、足りない時間はまた会いに来ることで埋めよう。大丈夫、モノンクルはずっとそこにいて、歌い続けてくれる。

【取材・文:宮本英夫】
【撮影:Yuma Totsuka】

tag一覧 J-POP ライブ 女性ボーカル モノンクル

リリース情報

抱いてHOLD ON ME!

抱いてHOLD ON ME!

2021年03月03日

Sony Music Labels Inc.

01.抱いてHOLD ON ME!

セットリスト

MONONKVL in Billboard Live TOKYO
2021.03.12@ビルボードライブ東京

  1. 01.RELOADING CITY
  2. 02.アポロ
  3. 03.夕立
  4. 04.空想飛行
  5. 05.似てない同士
  6. 06.抱いてHOLD ON ME!
  7. 07.最終列車 君を乗せて
  8. 08.SUNNYSIDE
  9. 09.音の鳴るあいだ
  10. 10.Every One Minute
  11. 11.ここにしかないって言って / HOT CV
【ENCORE】
  1. EN1.魔法がとけたなら

お知らせ

■配信リンク

「抱いてHOLD ON ME!」
https://mononkvl.lnk.to/i2A1asAW



■ライブ情報

MONONKVL in Billboard Live YOKOHAMA
06/27(日)ビルボードライブ横浜
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=12664&shop=4
07/16(金)ビルボードライブ大阪
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=calendar&date=202107&shop=2


DOVETAIL S/N 003
04/09(金)USEN STUDIO COAST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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