HOW MERRY MARRYは、困難を飛び越えて、“幸せになる方法”を歌っていく
HOW MERRY MARRY | 2011.03.08
メロディアスなロックの旗手として期待が集まっているHOW MERRY MARRYが、ついにメジャー・デビューを果たす。メンバーは工藤圭一(vo,g)、伊藤建太郎(g)、秋山オサム(b)、河添将志(ds)の4人。陽気さを意味する“MERRY”と、強い結びつきを意味する“MARRY”を組み合わせた名前を持つこのバンド、前向きな歌詞をグッド・メロディで歌い上げるのだが、最近の“歌もの”バンドには珍しいどっしりしたビートを持っている。工藤のソングライト能力の高さは定評があるが、このバンド、それだけではないと見た。ロマンティックなストーリー性のある歌が好きなリスナーには、オススメのニューカマーだ。
自分の住む街の意味を、自分自身で与える決心を伝えるタイトル曲「バイ マイ タウン」を含むデビュー・ミニアルバムについて聞いてみた。
- EMTG:どんな風に集まったバンドなんですか?
- 工藤:僕と伊藤が高校の同級生で、軽音部がない学校だったので、自分たちでバンドを組んで。
- EMTG:バンドを組んだ目的は?
- 工藤:もちろん、モテたかったから(笑)。
- EMTG:で、成果は?
- 伊藤:モテなかったですね。
- 工藤:オレは文化祭が終わって、すぐ彼女できた。
- 伊藤:あれー?!(笑)。
- 工藤:高3でオリジナルを作り始めて、3曲入りCDを手売りしたら、300枚を完売したんです。それで音楽制作の楽しさを知って、上京して秋山に出会いました。
- EMTG:とんとん拍子のストーリーだけど、最初の頃はどんな風に曲を作ってたの?
- 工藤:ギターとピアノが弾けたんで、主に社会の授業時間に作ってました。
- EMTG:社会の時間が嫌いだったんだ。
- 工藤:いえいえ、好きだったんですけど、自分で先に本を読んで勉強してたので、授業で学ぶことがなかった。それで、歌詞とメロディを書いてました。
- EMTG:すげえ(笑)。
- 伊藤:それを理科室で弾いてみるっていう。
- EMTG:学校を好き放題に使って、我が物顔だな(笑)。それで上京したんだ。
- 工藤:音楽大学の声楽科に進学したんです。学内を歩いてるとトランペットやピアノの音が聴こえて、いい学生生活だった。
- 伊藤:工藤の学内コンサートを見に行ったら、バンドと全然違うことやってたんで、笑わせてもらいました(笑)。
- EMTG:アルバム5曲目の「みのり」のギターのアルペジオは、普通のギターバンドとは違う美しさがあるけど、ま、まさか??
- 工藤:はい、その“まさか”です。僕がピアノで作ったものを、伊藤がギターで弾いてます。
- EMTG:個性的な響きがあるよね。大学では真面目に授業を聞いてたんだ。
- 工藤: (笑)。
- EMTG:その後、バンドはどんな風に進化していったの?
- 工藤:最初から「歌を中心に行こう」ってやってたんですけど、一時期“ギターロック”に走った。そのとき、自分が歌いたいのはJ-POPのメロディだなと気がついたんです。だったら思い切ってJ-POPをやろうって決めて。
- 伊藤:演奏ではギターは目立つポジションですけど、歌を伝えることを意識的にやってますね。
- 河添:僕は最後に入ったメンバーで、インストのロックも好きだけど、言葉が伝わらないほどうるさく叩きたいわけじゃない(笑)。ボーカルの息継ぎの間に気をつけてやってます。
- 工藤:歌うのが好きなドラマーですから、話し合いをしなくてもまかせられるんです。
- 河添:実際、前のバンドでは歌ってました。
- 秋山:僕はL'Arc-en-Cielが好きだったのでメロディアスなベースが好きなんですけど、ベースはバンドの中で唯一、単音で弾くメロディ楽器だから、ボーカルが何の音を歌っているかをちゃんと聴きながら弾いてます。
- EMTG:メンバーみんな、ちゃんとボーカルを立ててるなあ(笑)。アルバムを聴かせてもらって、僕は「少年」っていう曲が好きだった。♪どうせ僕はロクでもない 死してもカラスが喜ぶだけ♪って歌詞がいいと思った。
- 工藤:これを作ったとき、僕はもう“青年”だったけど、“少年”っていう言葉にロックな響きを感じたんです。自分が世の中で認められないことがあっても、どんなときも一生懸命やる。実際、僕らも音楽活動していて、応援してくれるスタッフが増えたときに、逆に「自分に足りない部分が多いな」と思った。認められなくても歌い続ける強い気持ち、それがこの曲の元になったんだと思う。
- EMTG:すごくストイックなモチベーションだと思うけど、この曲を聴いてるとポップな部分も感じる。
- 工藤:バンドを始めたときは、エアロスミスが好きで、ボーカルのスティーブン・タイラーみたいなロックスターに憧れてた。僕は今年、27歳で、ジミ・ヘンドリックスもカート・コバーンも、有名なロックスターは27歳で死んでる。もう自分はロックスターになれないって思ったから、自分は自分の歌を歌うしかないって覚悟しました。
- EMTG:タイトル曲の「バイ マイ タウン」は?
- 河添:HOW MERRY MARRY は、10代から20代にかけての葛藤や悩みを歌っていくバンドだと思う。そんなバンドの代表曲だと思います。
- EMTG:メンバーみんな、自分たちの歌に対しての意識が高いね。
- 秋山:4人で電車に乗ってたり、遊んでるときだったりに、そういうことをよく話し合うんですよ。
- 河添:「あの曲、こういうアレンジにしたいんだけど」とか。
- 工藤:4人の共通認識としては、「日本の誰もが知ってるバンドになりたい」。ちょっと話は大きいですけど、100万人に好かれて、100万人に嫌われる、みたな(笑)。
- EMTG:それ、いいね(笑)。
- 秋山:このアルバムに入ってる5曲が、今現在のHOW MERRY MARRYです。そこを飛び越えて、“幸せになる方法”を歌っていきたい。ただポジティブなんじゃなくて、そこに行き着くまでの悩みや怒りを含めて、いろんな人の生活に寄り添えるような音楽を作っていきたいと思ってます。
【 取材・文 : 平山雄一 】