遠距離恋愛での、ままならない男の気持ちを綴った「遠恋歌」が、2010年、年間歌詞アクセスランキングの男性アーティスト部門で1位を獲得し、注目を集めたSunya。
生まれたのは奄美大島。「いつでも、元ちとせさんの曲が、普通に流れているような、生活に音楽が溢れる場所だった。だから自分も音楽があるのが自然だったし、音楽が好きになったんです」 幼少時、大阪・堺市に引っ越すが、奄美大島とは違い、街中に音楽が溢れる環境ではなかった。「そしたら母親が、趣味を持ってほしいって言って。それで一緒に、近くの教会に行って。そこで毎週日曜日、ゴスペルを歌ったりしていたんです」

赤裸々な歌詞の内容で話題となった既発のシングル「少年トラウマ」にもあるように、内気で、集団生活に溶け留めず、いじめられた事もある少年時代。当時言いだせなかった不安や想いを、教会で大声で歌にのせることを知った少年は、同時に、ずっと憧れていたピアノを独学で弾き始めた。
　Sunyaが、ラブソングを集めたコンセプトミニアルバム『LOVE GIFT ~キミに会いに行くよ~』の話とともに、Sunyaという人間を形成する“音楽という存在”について語る。

EMTG:ピアノを弾き始めたきっかけは？

Sunya：小さい頃･･･それこそ、物心ついた頃から、ピアノってカッコイイなって思ってたんですよ。

EMTG:つまり、特別なきっかけはなく、気が付いたら、ピアノに興味を持っていたって状態だったと？

Sunya：そうです、本当そうなんですよね。それで、自分から父親に“ピアノ習わせてくれ”って言ったんですけど“男がピアノなんてカッコ悪いだろ”と却下されて（笑）。もう本当に、昭和のいい頑固おやじの見本、みたいな父親なんですけどね（笑）。それで僕は、スポーツを習わされたんですけど、それでもやっぱり、ピアノへの憧れが強くて。姉がピアノを習ってたから、その練習用のピアノをこっそり弾いてたんですよ。そこから独学でピアノをやるようになって、すごく楽しくて。独学だと、自分の好きなように弾いちゃうから、元々あった曲を弾くのでも、自分のコードとか、自分が好きなようにアレンジしちゃうんですね。
その中で、曲を作るって形が出てきて。僕自身、小さい頃から人見知りというか･･･友達がたくさんいるような子供じゃなくって、そうやってピアノを弾いているうちに、音楽がいちばんの友達、みたいになってったんです。毎日弾いている中で、自分が思ってる事とか、なかなか言葉にできない不安とかを、最初は全然ぐちゃぐちゃの歌詞を紙に書いて、ワーッって曲を書くようになった。それが14歳~15歳の頃ですけど。今、その当時に作った歌を、今ここで歌えって言われたら、めっちゃくちゃ恥ずかしくて歌えないです（笑）。それぐらい恥ずかしい、今思えば。

EMTG：小学生の頃持っていた、ピアノに対するイメージは？

Sunya：なんか･･･すごく大きな事を言うと、夢が詰まってるなぁって。宝石が詰まってるなぁって思ってましたね。なんか･･･音楽の授業とか、先生とか弾いてるの見てるだけで幸せだったっていうか。僕、ピアノの指の動きってすごく好きで。それを見てピアノにますます惚れちゃって、自分も弾けたらいいな、とか。ピアノが弾けたらどんな世界が広がっていくんだろうっていうのがあったんです。音楽の授業はもちろん、他の授業中も、自分で紙に鍵盤の絵を書いて、ずっと弾いたりしてましたね。

EMTG:なるほど。そういうピアノに対する思いは、今、デビューしてからも変わってないですか？

Sunya：全然変わらないですね。むしろ、もっともっと好きになってますね。例えば、昔もそうだったし、今でもそうなんですけど、辛い事とかあったりすると、ピアノを弾く。そうすると“あぁ、なんで俺はあそこで、できへんかったのやろう。今日あかんかったなぁ･･･”とかって、大好きなコード弾きながら涙が出てくるんですよね。そんでそっから“明日こそいい日にしよう”って気持ちが出てきて、曲が出来たり。
なんか･･･落ち込んでいる時の方が、ピアノを弾いていてその音が自分の中により響くし、改めて考えてみると、後々作品になっている事が多いんですよ。僕、自分が思っていた事を素直に言えなかったり、子供の頃から自分の中でにため込む癖があって。どっかに自分の吐き出すすべが欲しいって思いがひとつあって、歌につながった、曲を作る事につながったんですね。

EMTG:なるほど。では、曲を作り始めた当初から、いわゆる“歌いたい事”は比較的はっきりしていたという自覚があります？

Sunya：そうですね。はっきりしていたと思います。言えない事を吐き出すっていう意味では。どんどん曲を書いていくと、気持ちをストレートに歌詞に書くって事も出てきましたね。物事を隠さず、その時の言葉で書くとか。今でもそこはそうなんですけど、そこははっきりしてましたね。曲を通して、まず自分を知ってもらう、そのためには、自分を隠さず出そうっていうのはありましたね。

EMTG:ミニアルバム『LOVE GIFT ~キミに会いに行くよ~ 』は、全曲ラブソングの作品になりましたね。

Sunya：これまで、4枚のシングルを出していて。毎回、カップリングがラブソングなんですよ。で、ファンの方が、カップリングがいいって言ってくださって。歌詞ランキングのアクセスも、そういうファンの方の気持ちの表れだと思うし、すごく嬉しかったんですね。だから今回は、そういうリクエストに応えよう、と。僕自身、自分の曲もそうだし、他の人に提供した楽曲も含めて、リリースを重ねる事ですごく強くなったから、次はじゃあ、その広がりや成長を、もっとたくさんの人に届く方法でやってみたいなと思ったし、もっと自分の世界を広げたいなって思ったんですよね。
そこが決まって考えたのは、じゃあ、ラヴブソングでのSunyaの前向きって何だろうなってことで。それでフォーカスしたのが、背中を押してあげられるラブソングだった。切ない、逢いたい、ではなくて、ラブソングだけど、聴いたらなんか元気出たっていうようなものを作りたいなと思ったんです。
じゃあ、何がある？　どんな応援できる？ってなった時、告白を応援したい、遠恋を応援したい･･･って、具体的なものが出てきたんですね。僕の作品･･･これまでの曲、特にシングルのタイトル曲は、自分の過去をさらけ出す曲が多かったんですね。4枚目の「少年トラウマ」なんて、スタッフの人に「歌詞が強烈すぎるんじゃない？」って言われたくらいでしたし（笑）。

EMTG:アルバムの内容から、すごくストレートな質問になりますが、Sunyaさん自身、切ない恋愛が多い？

Sunya：あはははは（笑）。はい。例えば「遠恋歌」って･･･本当に自分の遠距離恋愛の歌で。僕、ずっと大阪にいて、大阪と東京と行ったり来たりして、音楽活動をしていたんですよね。で、当時つきあってた彼女が大阪の子で。僕が本格的に東京を拠点に活動をする事になって、東京に住み始めて、遠距離恋愛がスタートしたんですよね。自分は、すごく好きになっちゃうと、もう好きで好きで仕方がなくて、他の事が見えなくなっちゃうタイプで。そうすると、不安になる事がすごく多い。ふとした瞬間に、いろいろ心配したりするんですよね。
そういう余計な心配とか、不安とかが募っていくごとに、余計な事を言ってしまったり、束縛してしまったり。そういう気持ちを、男目線で書いたっていう。男だって、強がってんねんけど、こういう気持ちになんねんで、逢いたいって気持ちを、無器用だからうまく伝えられんねんで･･････ってのを、歌詞にしたんですよね。もう･･･プライベートでも、好きすぎたら、うわーってなっちゃって、結局自分でダメにしちゃうタイプ（一同大爆笑）。

EMTG:恋してると、たくさん曲ができるタイプですか？

Sunya：それはもう･･･途切れなく。ほんっと･･･失礼かもしれないんですけど、こうやって、しゃべっている間も、頭のこっち側から、メロディー、きてますね（一同「おおぉー！」）。

EMTG:なんて、いい話なんだー。

Sunya：そう言っていただけると･･･ありがたいです、本当（笑）。今、ほんっと、申し訳ないですけど、早くピアノの前に座りたいって思ってますもん、正直（一同笑）。

EMTG:では最後に。Sunyaさんにとって音楽とはどういうもの？

Sunya：自分を成長させてくれるものっていうか･･･僕には、やっぱり音楽しかないんですよね。他の事をやるってなっても、ここまで突き詰めては出来ないだろうし、ずっと好きでもいられないと思う。小さい頃から、ずっと夢だったっていうのもあるんですけど、自分の思いを伝えていく事の大きさっていうのを、シングルをリリースしていく中で、すごく学んだんですよね。音楽から発せられるものの大きさを知ったっていうか･･･。
例えば、音楽を聴いて、泣いていた人が笑顔になる。笑顔のある場所には、必ず別の笑顔もある。笑顔って、どんどん伝染していくものだから、そっからどんどん大きくなって、笑顔が増えて行く世界になったらいいなと思うし、その力を持っている音楽って、本当にすげぇなと思うんですよ。だから音楽の力を信じてるし、これからも信じていくだろうし。音楽に感謝の気持ちを込めて、ずっと歌っていきたいなと思ってますね。

【取材・文：伊藤亜希】