己を刻みつけた「解体新書」──KUDANZ「僕とターヘルアナトミア」で初登場!
KUDANZ | 2012.04.11
08年、ササキゲン(Vo)が自身の音楽活動名義としてスタートさせたKUDANZ。当初は彼ひとりで活動していたが、後に、マツオタカノリ、タカハシユウスケが加入。現在の形となり、昨年仙台から上京してきた。4月11日にリリースとなる“KUDANZ歌集『僕とターヘルアナトミア』”は、美しい旋律、繊細なバンドアンサンブルに、ササキが音楽を始めてから今までの間に起きた出来事を綴った、言わば彼の自叙伝のような作品である。「ターヘルアナトミア=解体新書」と名付けられている通り、その内容はかなり赤裸々で、胸が苦しくなるようなものばかり。しかし、そんなナイーブな作風とは裏腹に、取材は終始和やかで、笑いの絶えないものとなった。そんなギャップにも少し驚いた、彼らとのファーストコンタクト。
- EMTG:『僕とターヘルアナトミア』ですが、頭に“KUDANZ歌集”とつけられていますね。
- ササキゲン:今作は、一曲一曲が独立していて、聴く人が自分の心情に合うものをチョイスして聴いてもらえたらと思ってて。
- EMTG:アルバムとして、すごく大きな流れも感じました。
- ササキゲン:“歌集”とはいえ、そこは意識はしていて。アルバムには、僕がまだ10代の頃に作った曲も入ってるんですよ。「信じない」っていう曲がそうなんですけど、その頃の感覚と今の感覚って、そんなに変わらなかったりするんです。歌い方とか、表現の仕方が変わってるだけで、根本的に欲しがってるものはあんまり変わらなくて。その中でも、自分の心情がどういう風に変化していったのか?っていう。例えば、悩みとか迷いで苦しんで、そこから何か答えを見つけるみたいな、そういう流れに持って行こうという意識はしてました。
- EMTG:かなり昔に作った曲も収録されているとのことでしたが、リード曲の「ぶち壊したいだけ」は、最近出来た曲ですか?
- ササキゲン:そうですね。この曲はのんちゃん(マツオ)が作ってたイントロのフレーズを聴いて、すげぇいいなと思って。そこから作り始めて、5分ぐらいで出来た曲です(笑)。
- タカハシユウスケ:あの曲はパパっと書いてたね。
- マツオタカノリ:最初に1番だけ作って持ってきてくれたんですけど、すごく良かったので、そこからアレンジを詰めていって。
- ササキゲン:出来るときはそんな感じで出来るけど、出来ないときはクソみたいに出来ないですけどね(笑)。「アダム」は8年越しぐらいで出来上がったし。Cメロの<多摩川河川敷>のセクションが出来たことで、やっと俺の中で完成したんですよ。僕ら、上京した頃にポスティングのバイトしてて、毎日いろんなところに行ってたんですけど、多摩川の河川敷でちょっと休憩してたときに、この部分が浮かんで。
- EMTG:歌詞に出てくる通り、実際に片目のネコが来たり?
- ササキゲン:そこは内緒です(笑)。全部言っちゃったら、みんなが可哀想なんで。そうにしか聴こえなくなっちゃうから。
- EMTG:今もおっしゃいましたけど、KUDANZの歌詞は、リスナーがいろんな捉え方を出来るものが多いですね。
- ササキゲン:そういう隙間はとっておきたいんです。その幅が、聴いた人が揺れ動いたり、楽しんだり、泳いだり出来る部分だと思っているので。だから、もっとお客さんに勘違いされてもいいって思ってるんですけど、自分ではまだ我が強いと思ってて(笑)。
- EMTG:ただ、言葉としては、胸を締めつけられるというか、握りつぶされて苦しくなるようなものが多いです。
- ササキゲン:なんか、“これを伝えたいから歌ってる”っていうのは、特にないんですよ。歌を歌うのは、あくまでも歌いたいから歌っていて、それと伝えたいことっていうのは、また別のベクトルというか。だから、“僕はこれを伝えたくて歌ってる”っていう人もいますけど、僕にはその意味が分からなくて。伝えたいことを伝えるのは、そんなに難しいことだと思ってないんですよ。でも、引き出してあげることがすごく難しいと思ってて。その人の感情を引き出してあげたり、良い方向に向けてあげたり……そういうことを今はしたいというか。例えば、“頑張って!”って歌われたときに、“あなたが伝えたいことは理解しました……それで?”ってなっちゃうんですよ。
- EMTG:ちょっと説教臭い感じというか、言ってるだけで満足しちゃってる感じみたいな。
- ササキゲン:なんか、そんなのばっかりじゃないですか、世の中って。そんなのじゃ動かないと思うし。自分の性根が腐ってるのかなって思ったりするんですけど。
- EMTG:いや、そうは思わないですよ。相手をしっかり思いやってるからこその考え方だと思いますけど。
- ササキゲン:でもまぁ自分のことなんで、何とも言えないですけどね(苦笑)。自分では弱さとか、だらしなさはすごく感じてるんで。
- EMTG:歌詞はそういう弱さだったり、悲しいときの自分が出ることが多いですか?
- ササキゲン:そうですね。そうやって生きてきたんだなっていうことは、このアルバムを作ってすごく感じたところというか。あと、僕ら全員東北の出身なので、震災のこともありましたし、その最中に作っていたので、歌いたいとかではなく、それを歌わないと次に進めなかったのもあって。ただ、すごい思ったのは、震災前も震災後も、歌っていることはそんなに変わらないなって。いつも生と死について歌ってたし、震災後に歌えないみたいなことも、そんなになくて。だから、僕は日々ポジティブに生活してるし、歌ってること自体はすごく楽しいんです。でも、歌ってる内容は自分がすごく苦しんでいるときのことを歌っているので、なんか、しっちゃかめっちゃかになってるというか(笑)。でも、それが僕なんだろうなって。
- EMTG:あと、最後の「カンフル」はすごくキレイな曲なんですが、歌詞が──
- ササキゲン:う●こですか?
- EMTG:そうです!表記としては<雲子>と書かれてますけど。
- ササキゲン:あれは何の変哲もない、種も仕掛けもないう●こです(笑)。僕の性格なのかもしれないですけど、例えば媒体に出ますとか、CDを出しますっていうときに、“悪いことしてないのに、すごく汚したくなる衝動”みたいなものがあるんですよ。
- マツオタカノリ:こんなにキレイなギターフレーズないだろうって思ってたら、こんな歌詞が乗ってるわけだし(笑)。
- ササキゲン:俺はそこがもうたまらないんだよ。これで小綺麗な歌詞だったら普通にあるじゃん?なんか、僕らが作るものはう●こでも、キレイなボールでも何でも良いと思っていて。ただ、投げなきゃダメだっていう。ただ手に持ってるだけじゃダメだって。
- EMTG:思ってるだけじゃなくて、ちゃんと相手に届けないといけない。
- ササキゲン:そうです。それはミュージシャンだけじゃなくて、普通の人でもそうだし。だから、それが例えクソだろうと(笑)、僕は投げたい放題、投げたいものを投げたいっていうちょっとした皮肉も込めてて。
- EMTG:まぁ、自分の中に取り入れて、消化されて出てきたものが、う●こなわけですからね。
- ササキゲン:まぁそうですよね……エエこと言いますね。
- EMTG:ありがとうございます。まさかう●こについて熱弁するとは思わなかったですけど(笑)。
- マツオタカノリ:なんか、今の話を聞いてて、エガちゃん(江頭2:50)の、“1クールのレギュラーより、1回の伝説”って言葉が、ずっと頭の中を回ってた。
- ササキゲン:そこまでは全然行けてないよ。足下にも及ばない。
- EMTG:タカハシさんは最初どう思いました?
- タカハシユウスケ:最初聴いたときは驚きましたけど、きっとこのまま行くんだろうなぁって。
- ササキゲン:はっはっはっはっ!(笑)
- EMTG:(笑)。では最後に、今後はどう活動したいですか?
- タカハシユウスケ:アルバムを作って、まだ出し切ってないって言ったら変なんですけど、表現してないものがいっぱいあると思っていて。そういうものを見つけて、もっと追求して行ければなと。
- マツオタカノリ:僕自身が思ってることとか、やりたいこともあるんで、そういうのをもう少し広めて行きたいのもあるんですけど、メンバー2人が出せていない部分を広げられたらいいかなと。
- EMTG:ササキさんは、いろんなものを引き出して、汚していこうと?
- ササキゲン:いや(笑)、汚したいのは出来れば抑えたいなとは思ってますね。壊したいっていう衝動は誰しもあるけど、それを包み込む優しさが欲しいなって。そういったものをちゃんと全部抱いて、吐き出す感じになれたらいいなと思います。でも、多分無理でしょうけど(笑)。人間そんなにすぐ変われないんで。
【取材・文:山口哲生】
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いわゆるオタクなんですよ。マンガとかアニメとかゲームとか、そういうのが好きなんでよく見てます。
■ライブ情報
『KUDANZ 2nd ALBUM release tour
「子供達は踊らない」』
2012/06/08(金)高松DIME
2012/06/09(土)心斎橋Pangea
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※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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