2枚目にして前例なきポップス・アルバムを作り上げたLAMA。そのプロダクツに迫る!!

LAMA | 2012.12.11

 ナカコー、フルカワミキ、田渕ひさ子、牛尾憲輔の4人から成るLAMA。この4人で音楽制作をスタートさせ、ファーストアルバム『New!』をリリースしたのが、2011年11月末。約1年前のことだが、この時点では、正直、バンドというよりも4人のプロジェクトという印象が強かったように思う。それは、ライヴなど、リリース後のバンド然とした活動が、具体的にあまり決まって無かったのも理由だと思うが、それよりも、アルバムの作品性そのものが、その印象を強くしていたのではあるまいか。
ハイクオリティーで斬新。加えてバンド感もあったが“これライヴでどう再現します?”と、本人達に聞いてみたくなる作品だった。
しかしこの1年で、LAMAは何度もライヴをした。4人が時間を共有する中で、新たなイメージが固まり、それがLAMAの新しいサウンドとなった。
LAMAのセカンドアルバム『Modanica』が到着。
ループというドットを丁寧にレイヤーし、メロディーで色を付け、きっちりデザイン構築されたグル―ヴ・サウンドは、無国籍で時代感もあまり見えないが、自然に耳に馴染む不思議な空間を作りあげている。
ポップスという定義を改めて考えてみよっかなぁ(決して改めて考えたくなる、ではないのです)なんて思わせる前例なきポップス・アルバムの登場だ。
メンバーのフルカワミキと牛尾憲輔に話を聞いた。

EMTG:セカンドアルバム『Modanica』が完成しましたが、2012年は、LAMAにとってどんな1年でしたか?
牛尾:ライヴやって、ずっと制作をしてたんですよ。セカンドアルバムのためにってわけでは無かったんですけど、CM曲だったり、アニメのタイアップ曲になったシングルだったり。LAMAとして長く一緒に過ごせたのが、良かったなと思いますね。
フルカワ:ライヴや制作を重ねていくことで、共通言語もさらに増え、やりとりも円滑になったというか。話していても、それぞれがパッと理解できることが増えて、ひとつの事に対してのリターンまでのタイムラグが無い状態での制作だったんですね。それでたぶん、音楽の幅も増えていったり。だから『Modanica』のそういう中で、気持ちも楽になっていったりっていうか。そういう感じにはなってきていると思います。
EMTG:昨年末の時点で、これだけ濃厚な1年になると想像できました?
牛尾:いや、まったく。セカンドアルバムが出来るとも思ってなかったので。
EMTG:アルバム『Modanica』の制作が具体的にスタートしたのは? きっかけなどはあったんですか?
牛尾:6月に “TAICOCLUB”ってフェスに出たんですけど、その時、裏でナカコーさんが「ループが重なって昇っていく感じとかどう?」みたいな事を言っていて。これは多分、4人の共通意識として無意識的に持っていた感覚が、ポロっと固形になったものだと想ったんですよ。これがあって「あ、次のアルバム、出来るかも」って思ったんですよね。実際に7月くらいから制作に入って。途中、まぁ、どうなるんだろうみたいな、不安もありましたけど(笑)、でもやってみたら、トントンって感じで出来たんで。だから……曲がどうのこうのってよりも、なんかやっぱり“TAICOCLUB”の時の……。
EMTG:ナカコーさんのヒトコトからイメージしたサウンド感と、その場の空気感とか?
牛尾:んー……空気感というってよりは、どちらかと言えば、僕は職人的な視点……手法って意味で、ループは大事だなと思ったんですよ。この言葉で、やるべき道筋が見えてきたって感じでしたね。
EMTG:前作とは違った手法というのが、牛尾さんの中ではスタートラインになった、と。
牛尾:そうですね。
EMTG:あぁ、だから『Modanica』は、まず音楽ありきの作品になっているかも。いい意味でテーマが無いから、サウンドだけに集中して楽しむ事ができる。フルカワさんは、このきっかけについて、どう感じてました?
フルカワ:話を聞いて、ループって字面で見るよりもノリもわかったし。1枚目を作った後、1枚目と同じ作り方をするのは違うなと思っていたんで、曲づくりをしながら、次のお題みたいなものをちょっと探っていたんですよね。そういう中で、ナカコーからそういうアイデアが出てきたんで“あぁ、そうだね”って感じでした。1枚目は、曲になる種みたいなものは、メンバーそれぞれの中から出てきたものだったんですね。でも今回のアルバムは、種自体も、一緒に音を鳴らしながら作っていったというか。だからその場で判断できたし、共有して作っていけたんですね。だから作り始めたら、思ったよりもスピーディーで、想像以上に早く形になったんですよね。
EMTG:なるほど。ちょっとマニアックな話になってしまうかもしれないんですが……。今回の作品を聴いていて、サウンドの重なり、奥行きもすごく魅力的だと想ったんですね。たぶん制作方法、まさに手法に秘密があるのかなと思ったんですが、その秘密を教えていただけます?
牛尾:ベーシックを作っていく時に、テクスチャっていうのがキーワードになっていて。たぶん、それが大きいと思いますね。
EMTG:? テクスチャって? どういう例えですか?
牛尾:例えば、今、僕の後ろにある壁紙が見えますよね。その壁紙の厚さとか、壁紙のデコボコがすごく大事だなっていうのを、打ち込みでベーシックを作る時に意識したんですよね。つまり、後ろで鳴っている音、うごめいているノイズみたいなのも入れていこう、と。そうするとすごく立体感が出て来て、空間的な要素として伝わるようになると思うです。ループからスタートしているので、例えば4小節とか8小節単位の同じフレーズを、制作中に2?3時間、ずっと聴くことになるんですけど、そうすると、さっき壁紙のデコボコに例えたような、小さなパーツがすごく目立つようになってくる。パチッって小さなノイズが一発鳴るだけで、大きな展開に聴こえるような心理状況になってくるんですね。だからもう、ほんと、詰将棋みたいな世界で(笑)。最初の一手がこうだから、何百手先にこういう手で終わるみたいな。そうなるようにしかならないって感じでしたね。
EMTG:すごくストイックな作業だと思うのですが、煮詰まったりは?
牛尾:そこはもう、和気あいあいと(笑)。ループ流しながら、お茶会する、みたいな感じでしたね。でも、つまり、その長いお茶会に耐えうるループを作らないといけないという(笑)。
フルカワ:ふふ(笑)。いいこと言うね。今、うまいこと言った(一同笑)。
EMTG:フルカワさんとナカコーさんのボーカルが、重なっている曲があったのも新鮮でした。
フルカワ:同じこと、いろんな人に言われて“あぁそうか”って気がついたんですけど。確かに、作業の中でふたりで歌う割合が増えていて。ループを聴いてメロも一緒に考えていて、ナカコーと一緒にブースに入って、お互いにメロを出しあいながら仮歌を入れてたりとかしてたんですね。今までは、メロが浮かんだ方が歌ってとか、メロディーを入れた後からどっちかが歌ってハマる方に割り振ったりしてたんですけど、今回は、一緒に歌ってみて“あ、いいね、このままでいいか”みたいな感じになって。自然な形でこうなっていったのかなっていう。うん、今、思い返すとそんな感じです(笑)。
EMTG:これまで、ナカコーさんと一緒にブースに入って、ボーカル録りしたことはあったんですか?
フルカワ:同じブースで一緒録りっていうのは、無かったですね。一緒に歌ったテイク……歌いっぱを(笑)、結構そのまま使ってるんですけど、それもあまり無かった。まぁ、一緒に録ったものだから、途中で切ったりもできないんですけどね(笑)。
EMTG:既に次のライヴも決まっていますが、今作でのライヴのビジョンは見えてます?
牛尾:いえ(きっぱり)。
フルカワ:いいえ(笑)。
牛尾:ファーストに比べると、圧倒的に音が良いので。ファーストの音も、このレベルまで引き上げないといけない。そう考えると、大変。でも、乞うご期待でお願いします。
EMTG:了解しました。ではLAMAの2013年。どんな年になったらいいなと思いますか?
牛尾:ライヴをもっとやりたいな、と。次の展望につながると思うので。
フルカワ:ライヴやりながら意志の疎通がはかれて、今回の作品ができたっていうのもあるので、牛尾くんが言ったように、ライヴをやったらまたさらに違うものが出てくるかもしれないし。あとは、LAMAって生き物として、どう走っていくのか。その可能性の枝はたくさん出て来てると思うので、もっと面白い感じになったらな、と。もっとLAMAが変な生き物になってくれたらいいなとは思いますね。

【取材・文:伊藤亜希】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル 女性ボーカル LAMA

ビデオコメント

リリース情報

Modanica(初回盤)

Modanica(初回盤)

2012年12月12日

キューンミュージック

ディスク:1
1. For You,For Me
2. White out
3. Parallel Sign
4. D.B.A.
5. Domino
6. Know Your Rights
7. Strawberry Burn
8. Dear
9. In The Darkness
10. So
11. Life
12. Namida no Umi
13. And All
ディスク:2
1. Warning
2. Spell
3. Blind Mind
4. Fantasy
5. Dreamin’

このアルバムを購入

お知らせ

■マイ検索ワード

●フルカワミキ
岩盤浴

すごく、冷え性なので(笑)。体を率先して温めなくてはいけないってくらい、冷え性で。体質もあって、普段、あまり汗かけないし。だから最近、岩盤浴を探していたようです(笑)。

●牛尾憲輔
台湾 TSMC(セミコンダクター・マニュファクチュアリング・カンパニー)

台湾の半導体を作る会社です(笑)。僕、前回の取材の時、「物理が好き」って言ったんですけど、他にも何個かオタクなものがあって。そのひとつが半導体。で、半導体を作る会社が、最近、自分の中でキーになってる。ある会社が買収されたとか、この会社にはこの人がいるから次はこうなるみたいなのを考えるのが好きなんですよね。


■ライブ情報

Modanica Tour
2013/01/27(日)心斎橋Music Club JANUS
2013/02/02(土)渋谷WWW

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る