幾何学ロックと歌ものの奇跡の融合!tricotいよいよ1stフルアルバムをリリース!
tricot | 2013.09.27
- EMTG:今夏も多数のフェスに出演してきましたが、それらを一通り終えた今の感想を。
- 中嶋イッキュウ(Vo・G):去年は連れてこられた小動物みたいにプルプル震えてたけど、今年は子犬ぐらいには成長したかなと(笑)。自分たちを知ってくれてる人も確実に増えてたし。自分たち的にも、よりどっしりとしたところを見せれた感触はあります。
- キダ モティフォ(G・Cho):うん、去年よりも余裕のあるステージを魅せれたかなって。
- ヒロミ・ヒロヒロ(B・Cho):去年の勢い任せに対し、今年は気持ちにも多少余裕があったし。流れやライヴの構築も、よりその場に合わせられる術を身につけられた気はします。
- komaki♂(Dr): いつまでも新人みたいな顔してる場合じゃねぇなって(笑)。諸先輩方のステージを見て、「俺らもいつかあの人たちと同じ大きなステージに立ってやる!!」なんて気持ちも固められたし。去年より身が引き締まる思いでした。
- EMTG:逆に課題も生まれたのでは?
- 中嶋:ステージが大きくなったら、そのぶん自分たちの力でそこにお客さんを呼び込まなくちゃいけないところや、それ相当に自分たちの力も必要なことに改めて気づきました。来年はより大きなステージで、「tricotじゃ、このステージでも収まりきらない」って言わせたい。
- ヒロミ:目の前の自分たち目当てのお客さんだけでなく、音に興味を持って集まった後ろの人にまで自分たちの音楽を届けたい、そんな願望も芽生えましたね。
- komaki♂:「tricotを見たい」という人をもっと増やしたいなって。それは日々のライヴもだけど、普段自分たちがどんな活動をして、どんな音楽性なのかも踏まえて、多くの人が興味を持つキッカケづくりも大事だと改めて思いました。
- EMTG:私もこの夏、幾つかのフェスで見させてもらいましたが、確実にスケールアップしてましたよ。
- 中嶋:去年に比べて少しは歌にも余裕が出てきましたからね。必死に歌うよりは、歌いながら色々と伝えてみたり、多くの人に聴いてもらいたい意識も出てきだしたり。(最新シングルの)「おやすみ」にしても、今まで以上にストレートな言葉も沢山使ってるし。tricotらしく、やりたいようにやりつつ、人に伝わる音楽が出来ればいいかなって今は思ってます。
- EMTG:まさに今回の『T H E』は、そんな感じの内容ですね。tricotの真骨頂的な変拍子や幾何学的なサウンドに、分かりやすい歌内容やメロディが自然に融合した楽曲が詰まっていて。
- 中嶋:これまでのストック曲を中心に、今のtricotや最新のtricotを入れ込めたかなと。「おちゃんせんすうす」とか、最近作った曲がスパイスになってるし。やっぱり十数曲入りとなると、途中遊びも入れたいですからね。
- EMTG:では今作は、一度収録候補を並べてみて、足りないエッセンスを加えていったと。
- 中嶋:そんな感じです。でもその辺りも明確に作っていったわけではなく、その時の気分や勢いで。そこで出来た曲を入れたら偶然にも凄く良くなった、そんな感じです。そんな奇跡と偶然、行き当たりばったりな1枚(笑)。
- komaki♂:狙って出来るほど器用じゃないんで(笑)。凄く難しい曲が出来たら、そのカウンター的に凄く簡単な曲を作りたくなったり。喜怒哀楽が激しい曲があったら、次は気楽にふざけながら曲を作ったり。何かに飽きたら、次って感じで、常に違うことをやりたい。その集大成って感じかな。
- ヒロミ:今回は古い曲も多く入ってますけど、今聴いてもカッコイイ曲ばかりですから。「最近は複雑な曲が増えた」と思う人にも、「案外そうでもないよ」と。やっぱりtricotはtricotやと、改めて確認できた作品になりました。
- キダ:新曲も3曲共全くカラーが違うし。自分たちの遍歴が分かる1枚になったかなと。
- EMTG:正直もっと幾何学的だったり、勢いのある曲が中心の作風を予想してましたが、けっこう歌ものが中心になりましたね。
- 中嶋:今回入っている昔の曲って、良い曲なんだけどシングルやミニアルバムに入れるとまとまりが悪くなりそうで泣く泣く収録を諦めた曲ばかりなんです。なのでこの際、「実は私たち、こんなに良い曲があったんです」と改めて。ライヴで全く演ったことのない曲もあるんで、これらがあるとライヴもまた変わっていくのかなって。
- EMTG:このアルバムを聴いて女子のファンが増えると思いますよ。なんか女心の描写も絶妙じゃないですか。
- 中嶋:女子力の高い作品でもあります(笑)。
- EMTG:今回はハーモニーやコーラスも充実してますし。
- ヒロミ:ウィスパーで重ねたり、コーラスも今作ならではの試みを色々としています。その辺りも女子力の高い作品かなと(笑)。エアリーなコーラスを加えたことで、ダークさやウェットさがマイルドになった曲もあるし。おかげさまで全体的に聴いて重たくない作品になりました。
- キダ:シンプルな展開の楽曲は、あえて歌やコーラスで広がりや面白みをつけてますからね。足りないところをコーラスやハーモニーで補ったり、広げてみたり。それが演奏ではなく、歌やコーラスなのも今回の特徴かなと。
- komaki♂:ドラムにしてもゴリゴリな変拍子を全面に出すところと、変拍子なんだけどそれを感じさせないところや楽曲を難しく感じさせずに叩くところと適材適所に叩き分けてます。
- EMTG:今回は曲順と曲間にもかなりこだわってそうな。
- komaki♂:曲間はそれこそ0.何秒単位までこだわりました。
- 中嶋:曲順も最後の最後まで悩みました。今回は是非CDで聴いて欲しいですね。その曲間のこだわりや曲の流れを大切にしているところも是非盤で感じて欲しい。
- komaki♂:録りもトラックダウンも、マスタリングもインディーズとは思えないほど時間と労力、それからお金もかけてますから。その高いクオリティを是非感じてもらいたいですね。あと、ヘッドフォンでも是非聴いて欲しい。今回の初回限定盤は豪華仕様だし。
- 中嶋 : なんかいいお土産みたいな。
- komaki♂:ポスターも入ってます。
- EMTG:ポスター!? 欲しい!! ちなみにみなさんが家に貼ってあるポスターって?
- 中嶋:私、ドラえもんが好きで。そのドラえもんが作られる場面のポスターです。だからドラえもんも黄色くて耳がある。ドラえもんミュージアムで買いました。
- キダ:私は昔、川本真琴さんのポスターを貼ってました。小学2年ぐらいの時に川本さんがテレビで「愛の才能」を歌っているのを観て大好きになったんです。で、それを知った父が馴染みのCDショップでもらってきてくれたんです。
- ヒロミ:私は今でも10-FEETとSound Scheduleのポスターを貼ってます。どっちも高校の軽音部に入って最初にコピーしたり、好きになったバンドで。私の青春時代。10-FEETのポスターには後に直筆でサインも入れてもらいました。
- komaki♂:僕はhideさんと浜崎あゆみさんです。中学の頃、女の子の友達が誕生日の時に、僕の好きなhideとその子が好きだったあゆのポスターをくれたんです。しかもあゆは水着姿。最初は2枚共貼ってたんですけど、さすがに中2で水着のポスターはまずいだろうと。あゆの方はすぐに剥がしちゃいました(笑)。
- EMTG:最後にこのアルバムを引っ提げてのリリースツアーへの意気込みを聞かせて下さい。
- 中嶋:今回のツアーではこれまで行ったことのない場所にも行けるんで非常に楽しみです。特に沖縄で自分たちがライヴを演るなんて信じられない。アルバムのリアクションも楽しみだし。各所、半分旅行みたいな感じで臨ませてもらいます。
今夏、幾つかのフェスでtricotを見た。昨年よりも確実にステージをスケールアップさせながらも、それに見合ったパフォーマンスを各地で敢行してくれた彼ら。遠巻きで観ていた人々までも惹き込んでいくそのステージングには、頼もしさすら感じた。加えて感心したのは、そのポピュラリティの更なる獲得具合。変拍子や幾何学的なリズムとフレーズから成り立っている音楽性ながら、その上に乗る歌メロの印象深さや歌への高い比重が置かれた楽曲には、これまでのファンのみならず幅広いオーディエンスが魅了されていたのも印象深かった。
そんなtricot初のフルアルバム『T H E』は、まさにそんな歌に比重が置かれた作品。彼らの真骨頂とも言える難易度の高い音楽性はそのままに、それを感じさせないポップさを有した実にtricotらしい全13曲がずらりと並んでいる。
【取材・文:池田スカオ和宏】
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