2013年を締めくくる傑作『×と○と罪と』で魅せたRADWIMPSの新境地
RADWIMPS | 2013.12.10
- EMTG:『絶体絶命』のリリース直後に震災があって、そこからの2年9ヶ月で洋次郎くんが日本という国に対して決定的に絶望していることは間違いないと思う。でも、『×と○と罪と』を聴いて思うのは、それでも日本人やこの世界をあきらめていないということで。音楽のなかでひとつの世界を終わらせて、新しい世界を創造して、次の世代に何かを残していこうという視点にシフトしていると思った。それがこのアルバムの大きなテーマだなって。
- 野田洋次郎:ホントにそれは俺もアルバムができあがってみて思いました。まさにいま三宅さんが言ってくれたこと――こんなに開かれた歌詞って、いままであんまり書いてなかったから。こういう歌詞を書こうなんて思ってもないんですよ、ホントに。
- EMTG:それはどの段階で思ってないの?
- 野田:俺はいつも思ってることを歌詞に書いてるのではなく、歌詞を書いて自分の思っていることがわかるんです。それはまったく詩的な意味とか比喩ではなくて。最初は音に引っ張られて歌詞を書いてるから。今回もメロディ、ギター、ドラム、ベースに引っ張られて歌詞を書いて、“ああ、俺はこんなことを言えたんだ”って後追いでわかったんですよね。だから、自分が未来に対して、次の世代に対して、その鎖のつながりに対して、ここまでいろんな欲望を持ってるんだってわかったことがすごく新鮮だった。いまは2011年3月9日に『絶体絶命』というアルバムを出して、その次のアルバムはこうなるべきだったんだって思います。
- EMTG:3人は洋次郎くんから上がってくるデモにどう反応していったんですか?
- 武田祐介:曲によって違うんですけど、まず歌があって、サウンドの軸になるようなギターやピアノやリズムが入ってるデモをもらうときもあったし、スタジオに入って弾き語りで聴かせてくれるものもあって。でも、一貫して言えるのは、歌詞が頭から最後まであるものが多かったんですよね。
- EMTG:歌が真ん中にあった。
- 武田:そう、歌が真ん中にあって、それに引っ張られて各曲のアレンジができていきました。
- 山口智史:デモを渡された段階でどういう歌かがよくわかったのは大きかったですね。だからこそバックに流れる音の行くべき方向もわかるというか。いままでのドラム、ベース、ギターというバンドサウンドだけじゃなくて、オーケストラ的な音だったり、もしくは打ち込みらしい打ち込みだったりを入れてほしがっている曲の空気もあったので。それを感じながら僕らもプロトゥールス上でアレンジに参加して。
- EMTG:4人が一丸となって1曲1曲のサウンドを構築していったと。
- 野田:そうですね。でも、そのマインドに入るまでに時間はかかったよね。智史がしょうもない鈴の音を入れたり(笑)。
- 一同:(笑)。
- 野田:“この曲が必要としているひとつだけの音が必ずあるから、それを探そうよ”ってことを繰り返して。ドラム、ベース、ギターっていう役割じゃないところを3人に求めていることは、雰囲気としても伝えていたし。それぞれ試行錯誤を経て、面白いと思う音が加わっていっていきましたね。
- 桑原彰:最初は焦っていたんですけど、やっていくうちにどんどん楽しくなってきて。いままでは自分もギターのことしか考えてなかったんですけど、今回からライブではそのまま再現できない音探しやアプローチにも踏み込んでいきました。
- 野田:で、いざバンドだけのサウンドに戻ろうってなったときも刺激的な音になったし。いままでにないバンドのフィジカルを感じることができた。「DARMA GRAND PRIX」もそうだし、「五月の蝿」もそうだし、「会心の一撃」もそう。
- EMTG:完全に新たな肉体性が鳴ってるよね。
- 野田:うん。しかもプロトゥールス作業も、リスナーがイメージすると画面のなかで無機質的な作業をやっていると思うかもしれないけど、俺のなかではすごいライブだったんですよ。
- EMTG:プロトゥールス上のセッションみたいな。
- 野田:そうそう。まさにライブセッションだった。ひとつ生まれた音に対して、みんなが反応して、新たに音を入れて、さらにその場で歌を入れたり。そういう繰り返しだったよね。
- 武田:うん、そうだった。
- 野田:それで気づいたら曲ができていて。だから、プロトゥールスが機械のなかっていう冷たい温度ではなく、ライブ感をもってすごく有機的に作用してくれた。“さあ、この場で何が生まれるんだろう?”だったり、“これいいね!”っていう空気感だったり。逆に言うと、マンネリしたスタジオの生の空間よりも、ときとしてリアルな制作環境だったから。それはすごく面白かったし、刺激的でした。
- EMTG:『×と○と罪と』というタイトルについて詳しく聞かせてください。M7「最後の晩餐」にも〈60億個の正しさの中で 365個の戦いの中で 僕は守ってる 大事に育ててる 僕だけが知る正解に丸をつけてる〉というフレーズがあるけど。
- 野田:そうそう。いつもアルバムタイトルを決めるのは大変なんですけど、さっき言ってた、大事なものがより大事になって、大事じゃないものが全然大事じゃなくなった世界でいま俺は生きていて。世界は一向に明るくならなくて、どんどん混沌としていて、どんどん負の方向に向かってる気がしてるんだけど。その罪だったり、罪に対して罰を受ける人だったり、責任の所在だったり、あらゆることがホントに屈折してるなと思うし、堂々巡りだなとも思う。じゃあ俺は誰が何を言おうが、自分がいいと思うこと、悪いと思うこと、自分が抱えてる罪と、誰かが抱えてる罪、その所在を一つひとつ明らかにしたいと思って。そうやって自分で×と○をつけていこうって。今回はそういうことを歌ったアルバムになったと思うし。それでこのタイトルにしました。実はこのタイトルのあとにもう1つ別のタイトル案が出てきたんですけど、みんなに反対されて。それは『生まれてこなければ死ななくて済んだのに』というタイトルで。
- EMTG:ああ、う?ん。
- 野田:あれ? 意外に気に入った?
- EMTG:いや、『×と○と罪と』でよかったと思う。
- 一同:(笑)。
- 野田:だよね。誰もいいって言ってくれなかったから。
- 山口:みんないまの三宅さんみたいな反応で。“ああ、ん? なくはない気もするけど……”みたいな(笑)。
2013年末に届いた、2013年を代表する大傑作である。RADWIMPSの7thアルバム『×と○と罪と』を前にしてあらためて痛感するのは、やはりこのバンドはとてつもなく音楽の力を信じているし、絶え間なく音楽のために生きて、音楽に生かされているということだ。2011年3月9日にリリースされた『絶体絶命』はロックバンドとしてひとつの極限を突き詰めたアルバムだった。『絶体絶命』のリリース直後に発生した東日本大震災、筆舌に尽くしがたい葛藤を決意に変え、全身全霊で臨んだツアー『絶体延命』を経て、4人のメンバーは結束力を強固なものにした。野田洋次郎が一新した歌のあり方を希求したデモをもとにメンバーそれぞれがプロトゥールス上で音と戯れ、またタフな肉体性に満ちたアンサンブルを体現し、各曲に瑞々しい命を吹き込んだ。存分に体感してほしい。新たな地平に立ったRADWIMPSを。
【取材・文:三宅正一】
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