山崎あおいの新たな色を引き出す“ファースト”アルバム『アオイロ』
山崎あおい | 2014.01.16
- EMTG:ファーストアルバムが完成しましたね。今の気持ちはいかがですか?
- 山崎あおい:デビューしたくらいの頃から、ずっとこのファーストアルバム「アオイロ」を頭に置きながら曲を書いたり生活をしたりしてたので、すごい達成感がありますね。デビューアルバムも大切なものではありましたけど、当時の自分にとっての第1の到達点というか、曲作りをする上での目標となっていたのはこのアルバムだったので。
- EMTG:あおいさんは去年の8月に”デビュー”アルバム「ツナガル」をリリースされましたが、今回は”ファースト”アルバムなんですよね。
- 山崎:デビューアルバムに入っているのは私が中学校~高校の頃に書いた曲で、地元の北海道でCMに使っていただいたりしたものを集めたものなんですね。その時はたまたまアルバムに出来るくらいの曲数になりましたみたいな感じで、あまりアルバムを作っているという感覚がなかったんです。その後、今回のアルバムに向けていろんな曲を作っていたんですが、全体のバランスとか、こういう面も見てもらいたいとか考えながら作業をしていく中で、初めて「アルバムを作ってるんだ」って感じることが出来たんです。これをセカンドっていって出すのはなんか違うというか、自分も1枚目の感覚で作っているし、たぶん聴いてる人もそういう風に聴くんじゃないかなと感じたので、今回はファーストアルバムと言うことにしたんです。
- EMTG:今回はバンドでライブをやってるイメージが浮かぶような、躍動感を感じさせるアレンジの曲も増えている気がします。みんなのクラップとか声援とかが入って完成するような曲も増えたかなって印象でした。
- 山崎:デビューしてからフルバンドでライブをやることも増えましたし、お客さんとの絡みもだんだん出来るようになって来たので、そういうものも想定しながら曲を書けるようになったかなとは思います。
- EMTG:歌詞の部分でも、伝えたいことや歌いたいことがより明確になって来たような印象を受けましたが、きっと気持ちの上での変化も大きく影響してるんでしょうね。
- 山崎:それは大きいと思います。デビューした頃は、これから自分がどういう音楽をやっていきたいのかとかしっかり考えたことがなかったんです。何となく私はこういう音楽をやっているし、やっていくんだろうなあって漠然と思っていて。だから「あなたの個性は?」とか「あなたの音楽のいいところは?」って聞かれても答えられなかったと思うんです。でもこうやって取材で自分の曲について話したり、ライブに来てくれた方に「この曲のこの歌詞にすごく共感した」と言っていただく中で、私はこういう歌を歌えばいいのかなとか、私は本当はこういう曲がやりたいんじゃないかなとか、だんだん輪郭が見えて来たんです。見えてくると自分がやってることにも自信が出て来るので、いろいろ吹っ切れたというか、ひと皮むけた感じはありましたよね。
- EMTG:それ、すごく大きいですね。やみくもに強気になればいいってことでもないですし。
- 山崎:そうなんですよね。私、基本的には全然自分に自信ないんですけど、この1年で自分の書いてる曲とかやってることに対しては、すごく自信が持てたんじゃないかなと思います。
- EMTG:自信持てるものが出来たからこそ、タイトルも「アオイロ」に?
- 山崎:自分の名前をガッツリ入れて(笑)。
- EMTG:すごくいいタイトル、見つけましたね。
- 山崎:決めたのは曲が全部揃ってからなんですけど、私のいろんな面が見られるアルバムになったんじゃないかなと思うので、私の色っていう意味での「アオイロ」であり、爽やかな青春っぽい水色のような曲とか、落ち込んだ時のブルーな気持ちの深い青とか、本当にいろんな幅広い青が色としても曲に表れてるんじゃないかなと感じたので、「アオイロ」というタイトルにしたんです。あと、デビューアルバムもカタカナ4文字だったので、シリーズ化するわけじゃないけど、同じ流れで出来たらいいなというのもあって。
- EMTG:ちなみに、甘酸っぱい恋の始まりの瞬間を捉えた「各駅停車」はどんな青ですか?
- 山崎:ちょっと黄色と緑が入ってるような感じですかね?線路のある風景っていうのをあまり見ずに育ったので、東京に出て来て、電車っていいなって思うようになったんです。それで路線名を入れた曲を書きたいなと思って作りました。いつもは急行に乗るんだけどたまたま各駅にしたらカッコいい人が乗ってきて(笑)、もし電車の中から恋が始まることがあったら…みたいな感じで、楽しく書き始めた曲です。妄想で(笑)。
- EMTG:そういう作り方は日常的にあるんですか?
- 山崎:そうですね。全部が全部妄想で作ることはあまりないけど(笑)、きっかけがあった時に、その先を想像して、”こんなだったらいいのにな”みたいに書くこともあります。
- EMTG:では逆に、今回収録されてる曲の中で、今までにない書き方をした曲はありますか?
- 山崎:「カランコロン」ですね。これまではどんなに切ないとか悲しい曲であっても、最後にはちょっと希望を持たせるようなひと言を添えて背中を押すっていう書き方をしてきたものが多いんですが、こうやって暗いまま終わる曲は初めてでした。
- EMTG:今日も頑張んなきゃとか、疲れたよとか、使われている言葉はかなり”ブルー”ですね。
- 山崎:私、東京に出てきてすぐは、誰も頼る人がいなかったんです。疲れて、イヤになって家に帰っても誰にもすがりつけないみたいな時に、あぁ、別に頑張れって言ってほしいわけでもないし、こんな時は、大丈夫だよって希望を与えるようなことだけが背中を押すことになるわけじゃないんだなってすごい感じたんですよね。ただただ、本当にツラツラと「もうイヤだ」みたいな気持ちを書いたらすごくスッキリした。こういうのもありかなというか、最後に希望を持たせなくても、そこに共感とかちょっとスッキリするようなものがあれば、(結果的に)人の背中を押せるんじゃないかなって思えた曲でしたね。
- EMTG:なるほど。
- 山崎:ちなみにその「カランコロン」から、「花火のあと」、「東京」、「嘘だった」あたりの曲は、私の中での東京のイメージであり、19から20歳になる時の自分をそのまま残しておけるような曲でもあるかなと思います。たぶんそのうち気持ちも整理がついて曲との距離感も出来てくると思うんですけど、すごく生々しい自分がいるなって思うゾーンになってます。
- EMTG:気持ちの流れを曲順で表現出来るのも、アルバムというサイズならではですよね。ラストの「強くなる人」は?
- 山崎:中学3年の時に書いた曲です。部活のソフトテニスでペアを組んでいた女の子がいたんですが、別々の道を進むことになった彼女を応援し、自分の中の気持ちを整理するという意味も込めて書きました。私が東京に出て来る時も、地元の最後のライブで自分の背中を押す気持ちで歌った曲。最近も必ず、ライブの最後で歌っています。次の自分に向けて、自分の背中を押す曲なので、アルバムでも最後に持ってきました。
- EMTG:3月のワンマンツアーも楽しみです。
- 山崎:初めてのワンマンツアーなので、とても大事だなと感じてます。最近はハンドマイクで歌ってみたり、ピアノの弾き語りをしてみたりしたんですが、こういう節目となるような大切なライブでは、普段やらないような挑戦もしたいですね。そして、みなさんにしっかり曲を伝えたいと思ってます。
昨年夏にデビューアルバム「ツナガル」でメジャーシーンに登場した現役大学生シンガーソングライター、山崎あおい。今年は「強くなる人」、「夏海」、「恋の予感」という3枚のシングルをリリースし、各地のイベントやインストアライブなどを精力的に行いながら、そのピュアな歌声と等身大の言葉を全国に届けてきた。切ない恋、あったかい気持ち、背中を押してくれるメッセージ、青春のきらめきなど、飾らない言葉で綴られた曲たちには同世代が共感せずにはいられない魅力が満載だ。しかし今回、彼女は「アオイロ」と名付けられたアルバムでその先へと踏み込んだ。涙も流すし、孤独も叫ぶし、葛藤も口にする(もちろん、恋の妄想も絶好調!)。デビュー後に重ねてきたたくさんの経験や、10代最後の日々を過ごす中で揺れ動いた感情が、これまで描かれなかった山崎あおいの色を引き出している。通算2枚目だけど、これが彼女にとってのファーストアルバム。大切な、そして大きな第一歩だ。
【取材・文:山田邦子】
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■ライブ情報
山崎あおい ファーストワンマンライブツアー2014〜アオイハル〜
2014/03/18(火)サッポロファクトリーホール
2014/03/20(木)名古屋CLUB QUATTRO
2014/03/24(月)心斎橋Music Club JANUS
2014/03/26(水)渋谷CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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