EMTG：ついに１ｓｔアルバム『剛力彩芽』が完成しましたね。完成してみていかがですか？

剛力彩芽：素直に嬉しいです！　アルバムだからこそ、今までは見せていないような一面の曲をみんなに聞いてもらいたいと思っていたので、元気な曲だけでなく、聴かせるミディアムチューンにも挑戦しました。あらためて聴きなおすと、本当にバラエティ豊かな1枚になったなと感動しちゃうくらい！

EMTG：アルバムを聴き進めるたびにワクワクするような選曲で、聴いていて楽しかったです。

剛力：ありがとうございます。選曲や曲順にはかなりこだわりました。シングル曲がすべてポジティブな曲だったので、聴いてくれている人たちのイメージがかなり固まっていたと思うんですよね。でも、ポジティブだけで生きている人はいないと思うし、それだけの曲が並んでも疲れてしまうと思うので、いろんな感情に沿った曲を歌おうと決めていたんです。

EMTG：たしかに、今作を言葉にするならば、“人間らしい1枚”ですよね。

剛力：そうですね。悲しみや寂しさがあるから、楽しいことや嬉しいことがより深く実感できると思うんです。その陰と陽の良いバランスが歌えたんじゃないかな。

EMTG：作詞作曲は様々な方がされているのに、すべての曲が剛力さんの素顔を歌っているように感じるものばかりで驚きました。

剛力：実は私も曲を頂いたときに、あまりに自分のことが見透かされているようで驚いたんです。なかでも「ナナイロ７ｄａｙｓ」で歌っている“こんなにも毎日Ｈａｐｐｙ／ささいな事にも幸せ感じて”というフレーズは、私がつねに思っていること。とくに作詞家さんに“こういうことを考えています”と伝えているわけじゃないのに、自分の考え方とリンクしていたので驚きました。

EMTG：きっと、考えていることがすぐに顔にでちゃう剛力さんだから、わかりやすいのかもしれないですよ。

剛力：あはは。そうかもしれないですね（笑）。

EMTG：さらにこのアルバムには、大事な人３部作の完結編となる「ワガママは大事な人」が収録されます。

剛力：はい。“大事な人シリーズ”には、その名の通り、大事にしている人について歌いたいという想いが込められているんです。その第一弾が友達で、第二弾は異性。そして第三弾となったときに、私は家族の歌を歌いたいと伝えたんです。

EMTG：剛力さんの元気の源は家族ですもんね。

剛力：はい！　そこで、最初は両親のことについて歌おうと考えました。でも、曲にした時に、主人公を父か母、一人に絞ったほうがしっかりとメッセージが心に届くと思い、母親に焦点を当てたんです。

EMTG：お母さんには聴かせましたか？

剛力：はい。レコーディグがちゃんと終わるまでおあずけしていて、しっかり完成した後に聴かせたら、号泣していました（笑）。

EMTG：やっぱり（笑）。

剛力：そして、その横でお父さんがかなりいじけていたんです。

EMTG：あはは。こればっかりは仕方ないですね。

剛力：そうなんです。ちゃんと事情は説明したんですよ。そしたら最初は“そうか”って納得していたのに、いざ曲を聴いたら、“誰よりも大事な人ってなんだよ”ってブツブツ言っていて（笑）。そこで、私は“お父さんは世界で一番大事な人だよ”って言い方を変えたらすぐに納得してくれました（笑）。

EMTG：かわいらしいお父さんですね。さて、この曲の歌詞はいしわたり淳治さんと、剛力さんとの共作になっていますが、どのようにして作っていったんですか？

剛力：いしわたりさんからの質問にたくさん答えながら、何度も打ち合わせを重ねて作りました。だからこそ、歌詞の中の言葉遣いは普段の私そのままだし、“美味しい店見つけたら／今度連れて来たくて”というフレーズは、リアルな生活がそのまま反映されているんです。私たち母娘の空気感がすごく伝わる歌詞になったと思います。

EMTG：そして一転、「アサガオ」では、今までにないゆっくりした曲を聴かせてくれます。

剛力：はい。もともとカラオケなどで歌う曲はミディアムテンポが多いんですよ。なので、いつかはそういった曲を歌ってみたいと思っていたんですが、テンポがゆっくりになればなるほど、より歌唱力や表現力が必要になってくるんです。おかげでレコーディングはちょっぴりドキドキしちゃいました（笑）。

EMTG：これまでのイメージとは違う新しい剛力さんを感じました。

剛力：ありがとうございます。基本的に演じるお仕事をしているせいか、なりきるのが好きなんです。この曲の主人公は大人っぽい感じなので、大人の女性を想像して、演じながら歌いました。声色の変化を気にしながら聴いてもらえたら嬉しいです。

EMTG：歌詞の“何をしても上手くいかない／誰といてもつまらない／「私なんて消えちゃえばいい」／本気でそう思ってた”というフレーズは、剛力さんのパブリック・イメージからは出てこない言葉ですよね。

剛力：実は私、小学生の頃にこういう風に思っていた時期があるんです。放課後に通っていたダンスが私にとって唯一ちゃんと気持ちを開放できる場所だったんですよ。

EMTG：そうだったんですね。

剛力：それに、そんな風に思っていた自分をすごく悲しく感じていたんです。でも、高校生の頃に、ある友達に「友達と一緒にいるけど、いつも一人のような気がする」と相談されたことがあって。そのときに、こうやって空虚感を感じることは、変なこと、悲しいことじゃないんだということに気づいたんです。

EMTG：誰もが一度は考えることですよね。

剛力：そうなんですよね。だからこそ、同じようなことで悩む人たちに伝えたかったメッセージが詰まっているんです。実体験があるからこそ、すごく思い入れのある曲になりました。実はこの曲は、どの曲よりも最初に歌った曲なんですよ。

EMTG：そうなんですか？

剛力：はい。デビューする前に、歌ってみようということで頂いた曲がこの曲だったんです。でもその時はすごく難しくて歌えなかったんですよね。その後、３枚のシングルをリリースさせていただいて、しっかりと歌うことと対峙した今、やっと歌えるようになったんです。この曲がちゃんと歌えるようになるまでに２年がかかりましたが、結果的に人って成長できるんだなとあらためて思いました。

EMTG：この次の曲の「Rainbow」で、“ちっぽけな悩みだって／ほっとけないのはきっと／君がただ／本気なだけなんだろう”というフレーズで始まるから、まるでこの２曲がセットのように感じて面白かったです。

剛力：そう考えると、つながりますね！　この曲は歌っていてもすごくカッコよさを感じる曲で、ギターを持って歌ったら最高にカッコイイんだろうなと思ってレコーディングしました。

EMTG：声の雰囲気も違いますよね。

剛力：曲の持つ想いをしっかりと伝えたいと思ったんですが、声を大きく強く出せばいいわけではないのですごく難しかったんです。その分、出来上がった後の充実感は今まで以上でしたね。

EMTG：ギターの練習はしているんですか？

剛力：いやいや、まったく！　でも、いつか弾けるようになりたいので練習したいんです。

EMTG：ダンスバージョンもカッコ良さそう！

剛力：そうですよね。以前は自分の歌を歌うことで精一杯だったんですが、今はやっとこうしたい、ああしたいということが考えられるようになったんです。少し余裕が出てきたのかな？

EMTG：自信がついてきたのかもしれないですね。

剛力：少しだけ（笑）。アルバムのレコーディングは曲数が多いので時間もかかったし、苦戦したこともあったんですが、とにかく楽しさを感じていたから、あらためて歌うことが好きだと実感できたんです。

EMTG：デビュー後はリリースイベントなどでライブをする回数もすごく多かったですよね。

剛力：はい。たくさんの場所を回ることで実力がついてきて、お客さんの顔を見るたびに反省もあるけど、もっと盛り上げるにはどうしたらいいかと考えるようになったんです。お芝居と違って反応がすぐに返ってくる分、すごく嬉しいんですよ。今の願いはワンマンライブ！　でも、この前のリリースイベントで初めて５曲続けて歌ったら、すごく辛くて…。体力を付けなくちゃいけないなと思いました。

EMTG：あらためてアーティスト活動が楽しくなってきたんですね。

剛力：はい。今はどうしても“歌も歌っています”と受け止められてしまうけど、ちゃんと“歌を歌っています”と言えるようになるように、いろんな曲を歌っていきたいと思うようになりました。

EMTG：まさに、自己紹介的なアルバムになりましたね。

剛力：そうですね。これを聴けば剛力彩芽がわかるし、カラフルな曲たちも楽しめると思うんです。これがリリースされる季節は環境が変わる時期だと思うので、聴いて元気になってもらえたら嬉しいです。

EMTG：たしかに、すごく元気がもらえそうですね！

剛力：はい！　剛力の“ごう”は、私にとって“ＧＯ”！　このアルバムを聴いた人が彩りのあるスタートをきれるような元気をこめたので、たくさん聴いてもらいたいです！

【取材・文：吉田可奈】