a flood of circle、武道館を見据え、新たなスタートを切った新作

a flood of circle | 2015.06.16

 a flood of circleが6月17日にニューアルバム『ベストライド』をリリースする。昨年(2014年)9 月に加入したDuran(G)とのツアーを成功させたのも束の間、わずか半年でDuranの脱退が発表されたフラッド。4人で活動した期間は短かったが、佐々木亮介(Vo・G)はそこに本気でバンドの行く末を賭けていた。だからいま、佐々木が一体どんな気持ちで、このアルバムに向かったのか。実は、少し心配もあった。だが話を聞くと、佐々木は驚くほど平常心でバンドの“その先”を見据えて、今作を作り上げていた。そこに収められているのは佐々木の研ぎ澄まされた感性が生み出した、必要最小限の6曲だ。

EMTG: Duran脱退の発表はびっくりしました。
佐々木:やっぱり短い期間でつきあって結婚するのは危ないなと思いました。親戚一同の不安が的中みたいな(笑)。
EMTG:あはは。気持ちはもう落ち着いてますか?
佐々木:やっぱりDuranを入れたのは、それだけ大きな夢を見たいと思ってたから、辞めるのが決まったときは悔しさも、悲しさもありました。でも、それはDuranのせいだけじゃなくて。彼がもう1個バンドをやっていて、そっちのスケジュールの兼ね合いがつかなくなったのが理由なんです。要するに、彼がメンバーに入ったときはなかったものが盛り上がってきちゃった。で、俺にはこれ(フラッド)しかないから、全部を注いでやってるけど。それを横で見て、彼はそっちのバンドではフロントマンなので。「自分もひとつのバンドに賭けなきゃいけないんじゃないかって思った」って言われて。それは納得できる理由だったんです。でもメンバーだったら、そっちの活動のときはフラッドは待てばいいんですよ。でも、俺は待てなかった。だから、これは俺の決断でもあるんです。
EMTG:今回は3人に戻った……いや、でもDuranを経由して、新生と言ったほうがいいかな。新しい3人のa flood of circleの作品になったわけですね。
佐々木:それは意識して作りました。俺らも来年(2016年)10周年だから。その先の未来に向けて、これを1本目にしようっていう感じで。今回の作品のモチベーションとしては、その10周年が本当に大きかった。いまの3人のベストなものを作りたかったんです。
EMTG:そのせいか、未来だったり、夢だったりをすごく肯定する作品になってますね。
佐々木:本当にそう思います。いま、前より本気で日本武道館をやりたいと思ってるんです。これまでは2,000人の前でしかワンマンライブをやったことがないから、10,000人の前でロックンロールをやりたいと本気で思ってる。そうやって考えたときに、ここまでの歴史が正しかったって思える作品を作りたかったんですね。だから全肯定ソングですよね、とくに「ベストライド」に関しては。
EMTG:曲もどんどんできていったんですか?
佐々木:いや、今回は大変でした。もともと6月にリリースを決めてたんです。前回の『GOLDEN TIME』では途中からDuranが参加したんですけど、その手応えもすごくあったから。それで3月までにDuranと一緒に作ってた曲もあったんですけど、全部捨てて……。レコード会社の人は無理しなくていいって言ってくれたんですけど。3人の新曲を早く聴かせたかった。だから、4月からですよ。2ヵ月で6曲作って、レコーディングするっていう。えげつなかったですね(笑)。
EMTG:でも実際に作り上げることができた。その原動力は何でしたか?
佐々木:姐さん(HISAYO(B))とナベちゃん(渡邊一丘(Dr))のおかげだと思います。僕が、その脱退とか……ネガティブなニュースに関して曲を書いていたら、ふたりともしっくりきてなかったと思うんです。でも、10周年をこう過ごしたいっていうのをちゃんとふたりに話したら、「そこまで先が見えてるなら、ついていけばいいんだね、わかった」って言ってくれたので。逆に言うと、どんだけ張り切ってもやっぱり不安はある。その……脱退っていうのは。それをふたりとも乗り越えようとしてたし、ふたりのエネルギーに背中を押される感じがあったので。いい循環ではありましたね。時間はなかったけど、いま必要な答えを曲に出すっていう気合いがあったので。だから、今回は本当に6曲だけしか作ってないんです。
EMTG:いまの話で、今回、全肯定になった意味がよくわかった気がします。タイトル曲でもある「ベストライド」は、疾走感があって、前向きなメッセージが伝わってくるし。
佐々木:この曲はまず先にサビの《土砂降りの中を走ってゆけ/記録を塗り替えるんだ 今日こそ》っていうサビができたんです。それで、マイナーキーを選んで、ゴリゴリのリフにするのがたぶん今までのa flood of circleの定石なんですけど。でも、そうじゃねえなと思って。明るいキーで、コードのひとつひとつ、音色とかも全部明るいものを選ぼうと思ったんです。それでいかにかっこいいものができるかっていうチャレンジでしたね。
EMTG:明るい曲にしようとすると、かっこいいと言うより能天気になるっていうか……。
佐々木:そうなんですよ。そこは悩んだところなんです。明るい曲はいいけど、いまさら爽やかぶれないなと思って(笑)。明るい曲でa flood of circleにぴったりハマるのは何かなと思ったときに、思い出したのが、小さいころイギリスに住んでたときに見たスタジアムのデカさなんですよ。日本のサッカースタジアムの規模じゃないんです。そこで、みんなが同じように手拍子をしてる。すごくポジティブな空気だけど、でもフーリガンみたいなヤツもいて、ただの良い子ちゃんの集まりじゃない。それもフラッドと合ってるなって。
EMTG:ああ、わかる気がします。
佐々木:その原体験が、俺がバンドで見たい景色と繋がってると思ったんです。
EMTG:「ベストライド」という言葉はどこから?
佐々木:これは和製英語ですね。競馬で騎手の人たちのいちばんよかったレースを「ベストライド」っていうんです。「武豊のベストライドはあのレースだ」みたい使い方をする。それが良い言葉だなと思って。しかも調べたら、これを“bestride(ビーストライド)”っていう一単語にすると、「虹がかかる」っていう意味にもなるんです。「虹がかかる」っていうのは絶対に歌詞には入れたくなかったんですけど、でも《土砂降りの中を走ってゆけ》っていう歌詞の、本当の意味が虹がかかるってすげぇいいなと思って。
EMTG:なるほど。さっきから何度か、武道館であったり、大きな会場っていうワードが出てきますけど、いまはそこに気持ちが強く向いてるんですか?
佐々木:やっぱりいろんなものが固まってきたと思うんです。良くも悪くも。姐さんが入ったときに、グレッチのギター買って、革ジャン買って、覚悟を決めたんですよ。そうやっていままで続けてきた。だから10周年とか、30歳になるタイミングで自分が間違ってなかったと思いたいんです。そう思えたら、10,000人の前で歌えるブルースもできるんじゃないかって。だから、今回の「心臓」っていう曲では、せーので演奏する前に「ちょっと待った!いまどこで演奏してるつもりでやってる?」っていうところから始めたんです。
EMTG:ちゃんと、みんなが大きな会場を想像できてるかどうか?
佐々木:そうです。それができれば(下北沢)シェルターでも路上でも同じようにできると思うから。
EMTG:それでも、この「心臓」は大きな会場をイメージしつつ、タフに生きること、命みたいな、フラッドがずっと歌ってきたことが貫かれてるのがいい。
佐々木:デカいステージには行きたいけど、そこで何を歌いたいかをイメージしたときに、ちゃんと地に足が着いた歌を歌いたいと思ったんです。生きることの生々しさを伝えるために、ブルースとかロックンロールをやってるわけだから、それをハズしちゃダメだろ、と。だから「心臓」ができたのも、実際に甥っ子を抱きしめたときなんですよ。
EMTG:へえ。
佐々木:その場には、ばあちゃんがいて、両親がいて、妹もいて。先祖代々いるみたいな感じになってて。甥っ子は生まれたばっかりだけど、おばあちゃんは八十いくつだから……あんまり考えたくないけど、いつかは亡くなるわけじゃないですか。それが受け継がれて生きていくんだなと思った。でも、それは別に赤ちゃんじゃなくて大人同士でも抱き合ったら、わかることなんですよね。心臓はみんなここ(左胸を指しながら)にあって。こんな超身近なもので、すごくデカいことが伝わる。それで歌おうと思ったんです。まあ、ライブでお客さんを抱きしめてると思ってるって言ったら、気持ち悪すぎると思うんですけど(笑)。でも近いことをやってると思うんです。
EMTG:うんうん。それが佐々木くんらしい大きな会場への向き合い方なんですね。その気持ちのために、何かを捻じ曲げることは絶対にしないだろうし。
佐々木:だから才能ないなと思いますよ(笑)。でも尊敬してるもの、好きな人はいっぱいいるし、そういう気持ちを才能のない空っぽなところにギューギューに詰め込んでるんです。それは俺にしかできない詰め込み方だから、絶対にオリジナルだと思ってる。ちゃんとそれが伝われば、フラッドは勝てると思ってます。だから、才能がなくても、いまはがむしゃらに曲を作りたいんです。

【取材・文:秦理絵】




「ベストライド」ミュージックビデオ

tag一覧 アルバム 男性ボーカル a flood of circle

リリース情報

Too Much Is Never Enough

Too Much Is Never Enough

発売日: 2018年01月31日

価格: ¥ 2,800(本体)+税

レーベル: TWILIGHT RECORDS

収録曲

1. Sunshine
2. Ghost In My Place (Album ver.)
3. Gold Plate
4. Dance with Misery
5. Liberty feat. 踊Foot Works
6. Stay (Want You Mine)
7. Good Life feat. STAMP
8. My Sacred Chamber
9. Halfway Home
10. By Your Side
11. Young & Dumb
12. Gateway

ビデオコメント

リリース情報

ベストライド

ベストライド

2015年06月17日

Imperial Records

01 ベストライド
02 One Shot Kill
03 YES
04 Trash Blues
05 心臓
06 リヴェンジソング

このアルバムを購入

お知らせ

■マイ検索ワード

川崎競馬場
「ベストライド」のミュージックビデオを川崎競馬場で撮影したんです。死ぬほど過酷な撮影だったんでぜひ見てほしいです(笑)。


■ライブ情報

AFOC presents What’s Going On Tour 2015 "BRAND-NEW RIDERS"
2015/06/25(木)梅田CLUB QUATTRO
【共演】tricot
2015/06/26(金)名古屋CLUB QUATTRO
【共演】tricot
2015/07/03(金)渋谷CLUB QUATTRO
【共演】GLIM SPANKY
2015/07/04(土)渋谷CLUB QUATTRO
【共演】the band apart

AFOC presents VS tour “BATTLE ROYAL 2015”
2015/11/20(金)なんばHatch
2015/11/22(日)名古屋ダイヤモンドホール
2015/11/27(金)東京 ZEPP DIVERCITY TOKYO
*全公演対バンあり

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る