森友嵐士ニューアルバム『PEACE ROCK』は時代や流行りに流されない森友嵐士流の感性がつまった作品。

森友嵐士 | 2015.07.13

 森友嵐士。
 この名前に見覚えがある方は、1990年代が自分の思い出が刻まれている方ではあるまいか。この時代は、日本の音楽シーンにおいても、重要な時期だったと思う。ビックセールスを記録するアーティストが何組もデビューし、ミリオンヒットを連発した。カラオケボックスが一般的な娯楽として浸透した影響で、歌える曲がヒットチャートを占めていた。当時のヒット曲が、今なおカラオケの人気曲として上がるのは、90年代シーンのひとつの象徴と言えるだろう。この象徴の中に名を連ねるのが、T-BOLAN。前述した森友嵐士が率いるロックバンドである。T-BOLANは、91年にメジャーデビューし「離したくはない」「Bye For Now」など、誰もがすぐ口ずさめる数々のヒット曲を世に送り出した。が、96年に活動休止。その理由は、ボーカル森友嵐士の原因不明の発声障害。森友嵐士の音楽活動も、ここで一旦、ストップした。

「歌えなかった期間は、歌ものの音楽が本当に聴けなかった。聴いてたのは、川のせせらぎの音とか、ヒーリング系のCDやクラシックだけだった」(森友)
 笑いながらこう話してくれたのは、2009年にソロとして音楽活動を再開することができたからだろう。
「再開にあたって1番戸惑ったのは、自分の中で止まってしまっていた音楽の時間と、今の音楽シーンの差。それからレコーディングのシステムの進化でしたね。90年代にレコーディングしていた時には、マルチ(テープ)だったけど、戻ってきた時には、プロトゥールス。そこに足並みを揃えるという形で、ファーストアルバムがあって、その次が今回のフルアルバム」(森友)

 フルアルバムとしては、22年ぶりとなるニューアルバム『PEACE ROCK』について、森友嵐士に聞いた。

EMTG:今回、アルバムを作るにあたりコンセプトは?
森友:何を1番大事にして作ればいいんだろうと思った時に出てきたキーワードが“Back To The Basics”。自分に返ろうという。周りを見るとギャップを感じたり、いろいろ不安になるところもあるけど、そもそも俺自身、あの頃、周りと比べて音楽作ってきたかっていうと、まったくそうじゃ無かった。その時聴いていた音楽たちに影響を受けたりはしたけど、それは音楽を制作していく上でずっとそうだったんだよね。だから今回も、今、自分の感性に正直に自分の感性にピンとくるものを頼りに向き合っていこう、それで十分だと思った。今の自分の環境だったり、感性だったりをベースにして、昔と同じ感覚で、もう1回、音楽を作り上げてみようと思ったんだよね。だから作り方は、それこそ90年代の時と同じ。先ずは今自然の流れの中で僕が出逢っている人の中で、感性をリスペクトしている奴らと始めようと。あくまでも自分なんですよね。これもまぁ、90年代の頃と考え方は変わっていないんだけど、新しく出逢った人がこの20年の中でたくさんいたわけで。そういう意味では、時代とシンクロしている部分も選択していたのかもしれませんね。あとまぁ、俺にとっては、楽曲を作るっていうのは、日記を書くのと同じようなところがあって。
EMTG:というと? 書いて当たり前ってことです?
森友:違う違う。(笑)日記って、書きたい日もあれば、書きたくない日もあるじゃない? 書きたい日っていうのは、何か素敵なことがあった日。例えば、恋でもいいし、友情でもいい。出会いでも別れでもいい。自分の思いでもいいし、周りの人の様子を見て感動したとかでもいい。何か日常の中で心が動いた瞬間っていうのが、俺の場合はやっぱり音楽につながっていく。ずっとそこを大事にしてきたし、やっぱり1番大切だな、と。
EMTG:その“日常の中での出来事”って、例えば20年前とは変わってるのでは?
森友:変わってるよ、そりゃもちろん(笑)。昔は昼間起きてなかったけど、今は昼間起きてるし。秋が好きだったけど、今は春夏秋冬、全部好きだし。20年前の自分と、今の自分じゃ、日常も好きなものも随分変化してると思う。
EMTG:じゃあ、感動するポイントは変わりました?
森友:感動するポイントは変わらない。ただ、昔より増えたよね。
EMTG:増えた理由を具体的にお願いします。
森友:例えば、親になったからとか。あと歌うことができなくなってしまって、富士山の麓に生活の拠点を移したことで、今まで自分の中で素敵だと思ってなかったものが素敵に映り始めたとか。ほんと単純に好きなものが増えてって、その好きなものがまた、心を動かしてくれるんだよ。
EMTG:お話を伺っていると、森友さんの楽曲制作の元になっているのは、基本はポジティブなエネルギーだと感じるのですが、いかがでしょうか?
森友:ポジティブなことにしたいけど、それだけじゃないよね。ポジティブかネガティブかって、言葉にするとすごく難しい。ネガティブに見えるっていうのは、誰かが見た結果の答えであって、本人にとってはポジティブかもしれないでしょ? 真意は簡単にはわかんないよね。俺自身はポジティブでありたいと思うし、俺の音楽を聴いてネガティブになられたら嫌だなっていうのもある。もしネガティブに向かう感情や思いがあったとしても、それを歌で表現したいとは思わないし、わざわざ作品にしたいとも思わない。例えばさ、声が出なくなったことを発表しなかったのは、治るのがいつかわからない病気だったから。希望が見えない病気の発表じゃ、絶望しかないもんね、そこには。そんなの言いたくない。希望があることしか表現したくないんだよね。それはつまり、ポジティブなことを表現したいと思っているんだろうな、と。特に今回のアルバム『PEACE ROCK』は、みんなで元気になりたいっていう思いがあったんだと思うんだよね。これは、いろいろ『PEACE ROCK』について語っていく中で“あぁそうだったのか、俺”って、後から気が付いたことなんだけど。感じたままに出てくるものを曲にしていくと、後から気が付くことも、多いんですよ。
EMTG:なるほど。今回の『PEACE ROCK』は、森友嵐士にとっての“Back To The Basics”ということで、90年代にT-BOLANを聴いていた人が、うるっとくる曲も入っていると思ったんですよ。例えばミディアムバラードの「いつまでも変わらない愛をずっと」とか。
森友:この曲は、90年代をリスペクトしたいと思って、あえて、そこを狙って作ったんです。こういう作り方したのは、僕の音楽人生の中では初めてですね。
EMTG:90年代を狙って作った……つまり狙って作ったのが初めてだったということですね?
森友:そうそう。遊び心だよね。自分自身もそうなんだけど、90年代っていう自分達がいた時代があって、この曲を聴いた時にその90年代の自分を思い出すっていうか。ちょっとセンチメンタルな感覚がよみがえるような……そのエネルギーにフィーチャーするような曲を作ってみたかったんですよ。なぜかっていうと、そこで俺の音楽も止まってたから。だからそこを直接意識したもので1曲作ってみたいねって話がレコーディング中に出てきて。で、今回のレコーディングに参加してもらったミッキー(=酒井ミキオ)の家に行って、仲間たちと一緒になって作った。理科の実験室みたいにあれこれ試して(笑)。楽しかったねー、これは。
EMTG:森友さんが思うに、日本の音楽シーンの中での90年代は、どういう時代でしたか?
森友:メロディが特徴的だよね。サウンドというよりも歌って感じがとっても強いよね。あとコードの展開にもその時代の匂いみたいなもの、あるよねぇ。時代って面白いよね。
EMTG:匂いを思い出すために、昔の曲を聴いたりも?
森友:聴かないよ、だって、自分の中に全部あるもん。俺、90年代を思いっ切り生きてたもん(笑)。もうさ、イメージするだけであの時代に飛べるよ。自分の中に全部あるから、すぐに飛ぶ飛ぶ(笑)。この曲は、本当に遊び心から出来た曲だと思うんだよ。さっき好きなものが増えたって言ったけど、それは結局、より自由になって、幅が増えたってことなんだろうな。
EMTG:歌う楽しさも広がっていたりします?
森友:はい、もうどんどん楽しくなる。歌いたいっていう欲望って際限がないなって思う、本当に(笑)。最初は歌えるだけでも良かったはずなのに、もっともっとって思うんだよ。もっと自分が思うように歌いたいとか、新しい音に影響を受けてみたいとか。経験したこと無いところに、自分の身を置きたいってね。ソロになったということもあるけど、可能性は自分次第でいくらでも広げられる。自分の好奇心に素直になってやりたいだけなんだ。自由に好きな事に自由でいたいんだよね。それが、ルールかな。ジャンルも関係ないし、本当、もっともっとって今、思いますね。随分欲張りになったもんだよね(笑)。
EMTG:最後に、8月からスタートする全国ツアーについてお願いします。
森友:気心知れたメンバーでのバンドを引き連れて、みんなと一緒に、元気というキーワードでライブを楽しめたらいいなと思ってます。みんな、気になるのはセットリストだと思うんですけど、新曲はもちろんですが、ここはホントに第二章の始まりということで(笑)、自分が今まで生み出した曲たち全部、セットリストの対象になってもいいんじゃないかと思ってて。まぁ、90年代の懐かしい曲ももちろん、いろいろ混ぜ繰り合わせながら、みんなで元気になれるようなセットリストにしたいなって思ってます。真夏のツアーですからね。思いっ切りの笑顔でみんなと会いたいですね。

【取材・文:伊藤亜希】

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ビデオコメント

リリース情報

PEACE ROCK

PEACE ROCK

2015年07月08日

日本クラウン

1.どうなってんだいJESUS
2.真夜中の太陽
3.LOVE SONG
4. いつまでも変わらない愛をずっと
5.ファイティングマン
6.Baby Baby
7.TRUE LOVE
8.愛にKISSした
9.ROCK&SHOUT!
10.Let Me Rule
11.RUN BABY LOVE
12.サヨナラは歩き出す

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お知らせ

■ライブ情報

MORITOMO ARASHI CONCERT TOUR 2015 PEACE ROCK
2015/08/07(金)福岡:Zepp Fukuoka
2015/08/09(日)東京:Zepp Tokyo
2015/08/13(木)名古屋:Zepp Nagoya
2015/08/14(金)大阪:Zepp Namba
2015/08/16(日)仙台:darwin
2015/08/23(日)札幌:Zepp Sapporo
2015/08/29(土)広島:BLUE LIVE HIROSHIMA

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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