森友嵐士、全国7大都市ツアー。本人の強烈な求心力でひとつになったZepp Tokyo
森友嵐士 | 2015.08.14
勇壮かつドラマティックなオープニングSEとともにステージに登場した森友嵐士は「いくぜっ!」というシャウト一発、最新アルバム『PEACE ROCK』のリードトラック「どうなってんだい JESUS」を放つ。キレのいいビート、ラウドなギターサウンド、そして、まるでディストーションでエフェクトされてるような手触りを持ったボーカルが響き渡り、会場の熱気が一気に上がる。こんなにも強烈な存在感を持ったシンガーは、やはり稀だ。
全国ツアー「MORITOMO ARASHI CONCERT TOUR 2015“PEACE ROCK”」、Zepp Tokyo公演。90年代前半にT-BOLANのボーカリストとしてデビュー。「離したくはない」「Bye For Now」など数多くのヒット曲を送り出すが、バンドが絶頂期を迎えた’94年に心因性の発声障害により歌えない状態になった森友。その15年後の2009年にソロ活動をスタートさせ、今年7月、じつに22年ぶりとなるフルアルバム『PEACE ROCK』をリリース。そして、ソロとしては初のバンドセットによる全国ツアーを開催――そんな経歴を追っていけば、彼がステージに立っていること自体が奇跡のように思えてしまう。だが森友は、そんな感傷を少しも感じさせることなく、攻撃的なパフォーマンスを繰り広げる。中心になっているのは新作『PEACE ROCK』の収録曲。アコースティックギター2本の絡みも印象的なラテンテイストのナンバー「真夜中の太陽」、<ききわけのない 愛しさだけが/オレを追いかける>というフレーズが胸に迫るロックバラード「LOVE SONG」。過酷な日々を越え、50歳を目前にした森友は“大人の色気を備えたロックシンガー”として新たな魅力を放出している。ニューアルバムの楽曲からは、そのことがはっきりと伝わってくる。
「がんばってアルバムを完成させて、やっと今日を迎えることができました。今夜はPEACEな夜にしたいと思います。キーワードはSMILE。最高の笑顔で、最高にPEACEな夜にしましょう!」というMCの後は、T-BOLAN時代のレゲエナンバー「Happiness」を披露。さらにニューアルバムから「Baby Baby」「TRUE LOVE」などのミディアムチューンをじっくりと聴かせる。ライブ中盤のポイントは「20歳くらいときに書いた曲」という「あこがれていた大人になれなくて」。原田喧太、SUNAOのツインギターと森友のブルースハープが絡み合い、理想と現実のギャップをテーマにした歌詞が広がっていく。ヘビィなブルース・フィーリングをたたえたこの曲のステージングは、今回のツアーの大きな見どころと言えるだろう。
ライブ中盤からは現在の森友の幅広い音楽性を体感できるシーンが続く。まずはアコースティック・コーナー。ツアー前に募集された“ツアーでやって欲しい曲リクエスト”で上位に入った曲「マリア」など――説明するまでもなく、T-BOLAN時代の大ヒット曲だ――にアコースティック・アレンジを施し、ひとつひとつのフレーズを慈しむように歌い上げる森友。その姿からは、自らの過去とナチュラルに向き合えていることが感じられた。「このアレンジ、昭和の雰囲気だよね(笑)」とメンバーに話しかけるリラックスした表情も印象的だった。
続いてシークレットゲストとして宇徳敬子が登場。彼女がコーラスとして参加した「刹那さを消せやしない」(森友のMCによると、宇徳の声があまりにも個性的で、最終的にはツインボーカル的な雰囲気になったのだとか)が披露されると、会場からさらに大きな歓声が上がる。そして、新作の収録曲「いつまでも変わらない愛をずっと」。90年代J-ROCKのテイストを意識したというこの新曲がリクエスト1位を獲得したことは、アルバム『PEACE ROCK』と“2015年の森友嵐士”の充実ぶりを証明していると思う。
「挑戦してるすべてのヤツらに捧げます!」という声に導かれた「ファイティングマン」によって、ライブは後半に突入。ヘビィなギターリフを軸にした「Let Me Rule」、ストレートなロックンロールナンバー「ROCK&SHOUT」など高揚感溢れるナンバーが続き、フロアの熱気はさらに高まる。エッジの効いたバンドサウンド、キャッチ―なメロディ、聴く者を鼓舞するようなメッセージに貫かれた歌詞がひとつになり、すべてのオーディエンスが惹きつけられていく――この求心力の強さは、やはり別格だ。
アンコールではまず、森友が「もうひとりのゲストを紹介します」と鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)の写真パネルをステージに持ち込む。笑いが起きるなか、森友と鬼龍院のユニット“morioni”の楽曲「サヨナラは走り出す」が始まった瞬間、本物の鬼龍院がいきなり登場し、美しいメロディを響かせる。この予想外の演出に、会場はもちろん大盛り上がり。「うわー緊張した」(鬼龍院)「いい感じだよ」(森友)というやりとりも、なんだか微笑ましい。
ふたりでT-BOLAN時代のアップチューン「SHAKE IT!」を披露した後、森友は改めてファンに向かって語り掛けた。
「ずいぶん遠かった、ホントに。だけど、辿り着けるんだなって、今、実感してます」
「自分のなかから大事なものが消えていって、魂さえ止まってしまうような時間のなか、でも、いろんなPEACEなものに力をもらいました」
「まわりのスピードに自分を追いつかせるんじゃなくて、自分の感覚でいい。今回のアルバムを作ることで、そのことに改めて気づきました」
ラストの「RUN BABY RUN」における<強がる明日に泣いても 自分をなくさないで><君を生きて欲しい>というフレーズ。それはおそらく、森友が自分自身に向けた言葉でもあるのだろう。復活という言葉を超え、新しい森友嵐士をしっかりと見せつけた今回のツアー。彼の本当のキャリアはここからスタートするはずだ。
【取材・文:森朋之】
【撮影:田中和子(CAPS)】
リリース情報
セットリスト
MORITOMO ARASHI CONCERT TOUR 2015「PEACE ROCK」
2015.8.9@Zepp Tokyo
- どうなってんだい JESUS
- 真夜中の太陽
- LOVE SONG
- Happines
- Baby Baby
- TRUE LOVE
- 愛にKISSした
- あこがれていた大人になりたくて
- マリア
- Lovin’ You
- 離したくはない
- 刹那さを消せやしない(with宇徳敬子)
- いつまでも変わらない愛を(with宇徳敬子)
- ファイティングマン
- Let Me Rule
- ROCK & SHOUT
- MY LIFE IS MY WAY
- サヨナラは歩き出す(morioni/with鬼龍院翔-ゴールデンボンバー-)
- SHAKE IT!(with鬼龍院翔-ゴールデンボンバー-)
- RUN BABY RUN
お知らせ
MORITOMO ARASHI CONCERT TOUR 2015「PEACE ROCK」
2015/08/16(日)仙台:darwin
2015/08/23(日)札幌:Zepp Sapporo
2015/08/29(土)広島:BLUE LIVE HIROSHIMA
氣志團万博2015
2015/09/19(土)千葉県・袖ケ浦海浜公園
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。