黒木渚インタビュー連載 「渚辞典」。1曲を掘り下げ、彼女の内面に迫ります

黒木渚 | 2015.09.18

 黒木渚の人間性、そして人生観に迫るインタビュー連載。
 毎回、1曲、楽曲をピックアップ。その歌詞の世界から、黒木渚の音楽に対峙する姿勢、心の中、人生観を探ります。
 時には、楽曲制作にまつわる、キュートなエピソードも飛び出すかも……?
 透明だけど幾重にも重なる、彼女のベールを1枚ずつはがしていきます。




Piece 1「無責任な誰かの 大 大 大予言」
「この曲を書く時に、誰かが「日本に大地震が来る」と予言して、SNSで賑わっていたんです。そういうことを言われると、たとえ信憑性がなかったとしても、何か恐ろしい感じがしますよね。私は昔からノストラダムス、ユリ・ゲラー、清田少年とか、「ムー」的なものに興味津々で、そこにあるインチキくささも含めて好きなので、この曲では他人のデタラメな発言に振り回される滑稽さを書こうと思っていました。その人の軸がしっかりしていないと、振り回されてしまうよということですね。
 最初の「汚れた海から怪物が生まれる」や「傾いた平和がバランスを失う」という歌詞は、時事的なものと関連づけられるし、みんなピンときますよね? 歌詞全体を通して、最初はもっと優しい感じだったんですけど、黒木渚は強い女として生きてきて、勇気をもって表現することは絶対に崩しちゃいけないと思ったので、聴いた人が想像できる余白を残しつつ、ギリギリまで強い言葉に書き換えました」


Piece 2「残酷だらけの世界をぶん殴ってゆけ」
「環境や境遇のような、自分ではどうしようもないことに翻弄されることってありますよね。でもそれに対してずっと文句を言ううっとうしさが私はすごく嫌いで、自分を苦しめる境遇に対して殴りかかるぐらいの気迫を見せる、私はそういう人を愛したいし、自分もそうでありたいと思っています。
 とはいえ、本当にどうにもならないこともいっぱいあるんですけどね。特に思春期はそうで、「なんで私ばかりこんな目に」とか考え始めると、解決からどんどん遠ざかっていく。私もそういう時期がありました。でもある時にネガポジが逆転する瞬間があって、それを超えて今みたいな心境になってきたんです。ある種の開き直りですね。「神様がもしいるとしたら、会ってめっちゃ文句言いたいことがあるぞ!」と(笑)。そういう方向になってきて、乗り越える力が出てきました。
 そこでたった一つの条件は「死なないこと」。死なずにそこを乗り越えた人には、きっとネガポジ反転する瞬間が訪れる。私はそう信じています」


Piece 3「魂以外はくれてやる」
「サビは初稿からだいぶ変わったんですが、「魂以外はくれてやる」というフレーズは絶対に動かなかった。すごく力がある言葉だから、周りの言葉もそれに引っ張られていきましたね。絵画と同じで、ここに黒を塗ったら隣はこの色だろうとか、別の色にすれば両方いい感じに見えるとか、そういうことに似ている気がします。
 この曲は、予言に翻弄される滑稽さを書いたものですけど、自分の未来を予言して行くことで叶うこともあると思うんです。たとえば「絶対武道館のステージに立つ」という大予言をすれば、そこに向かって行く力がきっと生まれてくる。自分の未来を決めるのは自分だし、誰にも自分の予言はさせない。いろんな比喩を使ってますけど、言ってることはかなりシンプルなので、私の言いたいことは全部伝わるんじゃないかな。この曲を聴いてちょっとでも爽快感を感じて、やる気が出てくれれば嬉しいなと思います」


■「大予言」レビュー
黒木渚のニューアルバム『自由律』のコンセプトは、定型から抜け出して次なる黒木渚へ。あえてテーマを設けず、やりたいことをすべてやる。これまで築いたパターンをぶっ壊す。奇想天外な発想を取り込む。かくして出来上がった革新的な全9曲の中でも、とりわけリード曲「大予言」のインパクトは強烈だ。シンセと電子音を大胆に取り込んだポップなダンス・トラックの上で、沖山優司(B)と柏倉隆史(Dr)という猛烈にパンクなリズム隊が暴れ回る。明るい広がりのあるメロディと、凛とした伸びやかな歌が心の開放を促す。そして歌詞は、「大予言」に振り回される世の中をシニカルに描きつつ、自分の未来を予言するのは自分だけだと聴き手を鼓舞する。「革命」「虎視眈々と淡々と」に連なる、黒木渚の新たな代表曲の誕生だ。

【取材・文・レビュー:宮本英夫】


tag一覧 女性ボーカル 黒木渚

リリース情報

獣たちの夜 / RONDO

獣たちの夜 / RONDO

発売日: 2019年05月22日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: ビクターエンタテインメント

収録曲

01.獣たちの夜
02.RONDO
03.獣たちの夜 - version of Cube Juice -

リリース情報

自由律

自由律

2015年10月07日

ラストラム・ミュージックエンタテインメント

1. 虎視眈々と淡々と
2. 枕詞
3. 大予言
4. アーモンド
5. 107
6. 命がけで欲しいものひとつ
7. テンプレート
8. 君が私をダメにする
9. 白夜

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お知らせ

■ライブ情報

黒木渚 ONEMAN TOUR 2015「自由律」
2015/11/22(日)福岡DRUM LOGOS
2015/12/06(日)大阪BIGCAT
2015/12/13(日)名古屋ボトムライン
2015/12/19(土)仙台MACANA
2015/12/20(日)札幌DUCE
2016/01/11(月・祝)東京EX THEATER ROPPONGI

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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