go!go!vanillas、カメレオンのように色を変えながら様々な景色を描いた新作の背景とは?

go!go!vanillas | 2016.02.10

 昨年(2015年)はメンバーの脱退&加入も乗り越えながら、3回の全国ツアーを完走。決して立ち止まることの許されないロックンロールの宿命を体現するように、がむしゃらに突き進んできたgo!go!vanillasが、ついに2ndアルバム『Kameleon Lights』を完成させた。
 カメレオンのように色を変えながら様々な景色を描いた全11曲は、前作『Magic Number』を凌ぐオリジナリティが溢れている。フォークの趣で旧友と酒を呑み交わすような「チルタイム」、我が子を愛する自分を妄想した「セレモニー」、ふたりの門出を祝福するハッピーソング「ツインズ」。これら人間くさい楽曲が生まれた背景には、バンドの成長はさることながら、ソングライティングを手がける牧達弥(Vo・G)の変化が肝になっていた。この進化と革新のアルバムで、バニラズは2016年もロックシーンに攻め込んでいく。

EMTG:年末の「カウンターアクション」ツアーはファイナルの赤坂ブリッツを見させてもらいましたけども、2015年バニラズの集大成になるかっこいいライブでしたね。
牧 達弥:全部で4本しかなかったんですけど、そのなかでちゃんと成長しなきゃいけないっていうのもあったので、全力を出し切ったツアーでした。いままでよりも楽しみながらできたと思います。いつもはプレッシャーもあって、まず自分が納得いくものを見せなきゃっていう気持ちのほうが強いんですけど。でも、最後にやった「カウンターアクション」では、メンバーひとりひとりが役割を全うしてくれたぶん、自分も歌の世界に入れたというか。すごく良い状態でいられたから、お客さんもちゃんと感じとってくれたのかなと思います。
長谷川プリティ敬祐(B):ワンマンライブって自分たち次第でどんな見せ方もできるじゃないですか。その自由度をいままでよりも活かせるようになってきたと思います。ライブを積み重ねていくなかで、もっとこういうふうな見せ方をしたいとか、こんな気持ちもお客さんに届けたいとか、そういう可能性がどんどん目の前に広がってきてるんですよね。だから、曲の演奏の仕方ひとつとっても、いままで以上に振り幅を見せられるようになったし。それは、今回のアルバム『Kameleon Lights』にも出てると思います。
ジェットセイヤ(Dr):自分はお客さんにかなりパワーをもらいましたね。いつもは「俺がお前らを奮い立たせるぜ!」ぐらいの勢いでいくんですけど、逆に奮い立たされるというか。すごくバニラズに対して期待してくれてるのも感じながら、「じゃあ、一緒にいこうぜ!」っていうか。そういう一体感を出せたと思います。
EMTG:去年、新メンバーとして加入した(柳沢)進太郎(G)くんはどうでしたか?
柳沢 進太郎:最初にライブをした7月15日と比べたら、すごく視野が広くなったなと思いました。そのときは、本当に目の前しか見られないぐらいの緊張だったんですけど。いまは遠くまで見られるというか。演奏的にも余裕が出てきて。とにかく練習した結果を出すっていうのを心がけてました。だから、ブリッツの音源を聴いたりすると、自分でも「ああ、よく練習したな」って思います(笑)。去年のいちばん大きい目玉のライブだったので、そこでしっかり自分の演奏を見せられたのは良かったと思います。
EMTG:ツアーでも『Kameleon Lights』の曲が新曲として披露されましたけど、とくに「ニューゲーム」は「初めて聴くんだよね?」って思うぐらい盛り上がってて。
牧:それは僕も全公演で思いました。新曲を披露するときって、まず緊張があるんですよね。演奏がちゃんと合うかなとか。けど、「ニューゲーム」は、はじめのギターでドキッとさせるっていう自信があったんです。だから、いままでとは違う余裕はあったんですよ。この曲はもちろんみんな知らないけど、ちゃんと響くだろうって。
EMTG:そのとき、アンコールで披露した「スーパーワーカー」も披露されて。
牧:また逆の曲ですよね。「ニューゲーム」を先に聴くから、みんなは「ニューゲーム」みたいな陽の感じが来るのなのかなと思ってるところに、違う色を見せることでアルバムに対する期待感をちゃんと持たせられるかなと思ったんです。実際、今回の『Kameleon Lights』は、どこかに焦点を当ててるわけじゃなくて、スポットライトが11個ついてる感じのアルバムになったから。その匂いもツアーでは出したかったんです。
EMTG:まさに『Kameleon Lights』は曲ごとのキャラクターが強い作品になってる。その理由を知りたいんですけど、意図的にそういう方向に持っていったんですか?
牧:意図的に何かをしようと決めた部分もあるけど……でも、形式ばって作ったっていうよりはポロポロと出てきた感じですね。
EMTG:基本的に、ギターとベースとドラムとっていうバニラズのベーシックなバンド編成のままで、これだけ曲ごとの違いが出るのが面白いなと思ったんですよね。
セイヤ:ギターの音色を曲ごとに変えてるから、それがけっこうデカいのかな。
プリティ:エフェクターをこれに変えてみようとか、こっちでやってみようとか、いろいろ試す心の余裕もあったし。そのあたりは本当に楽しんでできたんです。
牧:いままでは、いわゆる“良い音”っていうのを求めて、そこでしかなかったんですよ。その良い音にも実はたくさんあって、曲の雰囲気によって変わるじゃないですか。そこが違うと思います。前作の『Magic Number』では良い音がひとつできたら、「それでやる」みたいなところがあった。それで統一性はあったけど。より海外的ですよね。1曲1曲でドラムの音も全然違うし、ギターの音もバーンって歪ませるだけじゃなくて、「いや、これはもっとクリーンで残響感があったほうが気持ち良いよね」とか。曲に向き合う濃さが全然変わったなあと思いますね。ただ良い音じゃなくて、ちゃんと味があって、このアルバムでしか聴けない僕らの音ができたと思います。
EMTG:なるほど。音の違いもそうですけど、牧くんのソングライティングで見ても、いわゆる牧節が少なくて、「これも牧くんの曲?」ってくらい曲が多彩なんですよね。
セイヤ:その牧節ってよく言われるけど、本人はわからないんですよ。
プリティ:俺らは「お、これ出た!牧節ぃ~!」みたいなのを、『Magic Number』のときはけっこう感じてたんですけどね。セイヤとも話してたよね?
セイヤ:そう。でも、牧はそのクセみたいなのをなるべく出さないようにするって言ってましたね、常に。今回変化があったとすれば、その意識がデカいのかもしれないです。
進太郎:このアルバムが何回でも聴きたくなる要因のひとつはそれだと思うんです。『Magic Number』では、「きた!牧さん節!」ってなるのが、たしかに気持ち良くなるところだったけど、今回はそれがメインじゃないんですよ。全体がひとつのパッケージとして完成されてるから、それが気持ちよくて何度もリピートしちゃうと思うんです。僕もアルバムが完成してから、もう何回もリピートしてるので。
セイヤ:ちなみに、どのあたりに牧節を感じます?
EMTG:言葉で説明するのはすごく難しいけど。いままでだと「マジック」とか「オリエント」「エマ」みたいな代表曲は大体そういう雰囲気がある。あとは、今回だと「ラバーズ」とか「ニューゲーム」のメロディとか……。
牧:あ、メロディに感じるんですか?
EMTG:うん。歌詞だと、ちょっと古風な言葉遣いをするのが牧くんの特徴で(笑)。「ラバーズ」の《兜をかぶり叫べ》とか。
牧:ああ、そうかもしれない。
セイヤ:なるほど。
EMTG:歌詞の話をすると、今回すごくストレートになってて、歌詞カードを見なくてもスッと言葉が入ってきた感じがしました。とくに「スーパーワーカー」は、ベタな言い方だけど、働く人への応援歌っていうのがすぐにわかる曲ですね。
牧:そうですね。今回は、本当に自分の生活のなかにある事柄が多いんですよ。生活のなかのいちシーンみたいなものを切り取ることで、歌詞の世界をイメージしやすくしてたり。それは意図的にやったことですね。だから、こうやってインタビューを受けてて、昔はよく「この曲はどういうことを歌ってるんですか?」って訊かれてたんです。
セイヤ:ああ、そうだね。
牧:だから、ちょっと伝わりづらい歌詞だったと思うんです。たぶん、いろんな意味にとれるから、そのあたりを訊いてくれるんですけど。今回のアルバムだと、もう説明しなくても大体わかってくれてるんですよね。僕が何に対して歌ってるか、どういう想いか、みたいなものを。それだけ歌詞も変化してるんだと思います。
EMTG:その言い切ってる感じが、1曲ごとの強さにも繋がってると思うんですけど、どうしてそういう変化が起きたんですか?
牧:去年1年間いろんな人と会うことを意識してたんです。基本的にそれまで他人に興味がないところがあって。腹割ってしゃべる、みたいなことをあんまりしなかったんですよ。ひとつのプライドじゃないですけど、自分を持つことが大事に思えたから。でも、どんどん人と接していくほうが、何よりも自分がわかる。そうすることで、視界は広くなっていったんですけど、自分の想いを出すときには、より近いものに視野が向いたというか。結果として、自分の音楽自体にも重みが出てきてるし、自分でも納得できるものをコンスタントに作れるようになってきたと思います。
EMTG:そういうなかでラストの「ギフト」みたいな、ストレートな感謝の歌ができたんですね。まさにバンドマンがステージの上から見る景色が描かれていて。
牧:これはもうお客さんに対してでしかないですよね。いまワンマンも1,000人を超える場所でやれるようになってきて、ライブに来てくれる人には直接「ありがとう」が言えるけど。なかには僕らの音楽を好きだけど、いろんな理由でライブに来られない人もいると思うんです。そういう人たちにも「ありがとう」を感じてほしくて作った曲です。
EMTG:《太陽の子 綺麗なその目》っていうフレーズが素敵です。たぶん、お客さんがバニラズを見る目がすごくキラキラしてるんだろうなっていう。
牧:ライブをしてると本当に思うんですよ。お客さんが、めちゃくちゃきれいな目をしてる。本当にキラキラしてるんです。全然、俺らのほうが汚れとるわって(笑)。それが好きなものを見る目なんですよね。僕だって、たぶん好きなアーティストを見たとき、そうなってると思うし。そういう空間を作れることは本当に幸せだなと思ってます。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル go!go!vanillas

リリース情報

Slowmotion

Slowmotion

発売日: 2020年10月14日

価格: ¥ 1,800(本体)+税

レーベル: No Big Deal Records

収録曲

01.バーンアウト
02.逆夢
03.irony
04.死亡遊戯
05.アイウォンチュー
06.Error
07.サナギ

リリース情報

Kameleon Lights(初回限定盤)

Kameleon Lights(初回限定盤)

2016年02月10日

ビクターエンタテインメント

[CD]
1.ラバーズ
2.ニューゲーム
3.スーパーワーカー
4.バイリンガール
5.ビートクラブ
6.チルタイム
7.セレモニー
8.ツインズ
9.ヒートアイランド
10.カウンターアクション
11.ギフト
12.デッドマンズチェイス(kameleon version) ※初回盤限定ボーナストラック

[DVD]
「COUNTER ACTION TOUR 2015 Tokyo Akasaka Blitz 2015.12.03」
1.バイリンガール
2.セルバ
3.ハイテンション
4.メリーメリーメリー
5.カウンターアクション
6.ティーンネイジャーズノイズ
7.ライクアマウンテン
8.マジック

お知らせ

■マイ検索ワード

●牧達弥(Vo・G)
耳せん

新年会でROYさん(THE BAWDIES)に教えてもらったので試してみようと思ってます。ライブ用ですね。会場が大きくなると、反響とかで音が捉えられなくなるので。歌いやすくなるらしいです。

●ジェットセイヤ(Dr)
いなばのタイカレー

夏に長崎のスカイジャンボリーに出たときに置いてあったんです。それがめっちゃ美味しくて、最近は週2ぐらいで食べてます。ふつうは150円くらいですけど、100円ローソンだと100円で買えるのでお得です。

●長谷川プリティ敬祐(B)
エンキ・ビラル

僕の好きなバンデシネっていうマンガのジャンルがあるんですけど(フランス語圏におけるコミックの呼称)、そのバンデシネ界の巨匠です。その人の展覧会が銀座のシャネルであるらしくて。「いやいや、行けねえよ」って(笑)。僕といちばん対局にある場所なので、入った瞬間に追い出されるんじゃないかと思って、ドキドキしてます。

●柳沢進太郎(G)
にんじん ビタミン

ポトフを作って食べてるときに、にんじんのビタミンは何かが気になって調べました。ベータカロテンが腸内でビタミンAに変わるらしいです。まるまる1本入れたにんじんが煮込みすぎてシュワッて溶けるほど、いいポトフになりました。


■ライブ情報

Kameleon Lights Tour 2016
2016/03/04(金) 千葉 LOOK
2016/03/06(日) 水戸 LIGHT HOUSE
2016/03/12(土) 京都 磔磔
2016/03/13(日) 神戸 VARIT
2016/03/17(木) 周南 RISING HALL (※イベント)
2016/03/26(土) 松本 ALECX
2016/03/27(日) 金沢 AZ
2016/03/31(木) 仙台 JUNK BOX
2016/04/01(金) 盛岡 CLUB CHANGE WAVE
2016/04/03(日) 札幌 PENNY LANE 24
2016/04/14(木) 浜松 FORCE
2016/04/16(土) 宇都宮 HEAVEN’S ROCK VJ-2
2016/04/17(日) 新潟 GOLDEN PIGS・RED STAGE
2016/04/23(土) 広島 CLUB QUATTRO
2016/04/24(日) 岡山 YEBISU YA PRO
2016/04/26(火) 高松 DIME
2016/05/07(土) 名古屋 DIAMOND HALL
2016/05/08(日) なんば Hatch
2016/05/12(木) 長崎 DRUM Be-7
2016/05/14(土) 大分 DRUM Be-0
2016/05/15(日) 福岡 DRUM LOGOS
2016/05/20(金) 高崎 club FLEEZ
2016/05/28(土) 新木場 STUDIO COAST

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る