夜の本気ダンス、ロックの異物感とキャッチーさのバランスが絶妙にマッチした新作

夜の本気ダンス | 2016.03.09

 メジャー1stアルバム『DANCEABLE』をリリースするロックバンド「夜の本気ダンス」。胸の内で妖しく渦巻く衝動をダンサブルなサウンドにそのまま転じているかのような楽曲の数々は、新鮮な刺激をたっぷり噛み締めさせてくれる。そして、強烈な個性を放つパフォーマンスも、このバンドの恐るべき武器。音楽フェスや様々なイベントで入場規制を連発している理由は、彼らのライヴを一度でも体験すればよく分かるはずだ。独自の音楽性、スタイルを確立している彼らの背景にあるものとは? 米田貴紀(Vo・G)、町田建人(G)、マイケル(B)、鈴鹿秋斗(Dr)に語ってもらった。

EMTG:サウンドがすごくカッコいいです。洋楽の香りをすごく感じるんですけど。
米田:踊れるロックが流行っていますけど、そういうものとはまた別の僕たちの個性っていうのは、今おっしゃって頂いたことだと思います。
EMTG:バンドを結成した当時から、方向性って明確にあったんですか?
米田:「踊れるのをやろうぜ」っていうのはなかったです。当時、僕たちの地元の京都のシーンってポストロックとか、静かな感じの音楽が多かったんですよ。
EMTG:内省的な感じ?
米田:はい。そういうものに対する反動で、僕たちはアグレッシヴでお客さんとコミュニケーションがとれるようなロックをやり始めました。だから京都でやっていなかったら、全然違うバンドになっていたかもしれないです。
鈴鹿:もともと僕は銀杏BOYZとかが好きで、4つ打ちの曲は全然やっていなかったんですよ。そういう要素は、米田と一緒にやり始めてから教えてもらったことです。知らなかった洋楽をいろいろ教えてもらいましたから。Franz FerdinandとかTHE MUSICとかThe Strokesとか。
EMTG:みなさんそれぞれ、どういう音楽がルーツなんですか?
米田:初めてロックに触れたきっかけは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONです。そこからいろんなものを聴き始めて、Franz FerdinandとかArctic Monkeysも聴いて、大学に入ってからは岡村靖幸さん。岡村さんからは、エンタテインメントなライヴを学びました。
EMTG:岡村さんって聞いて、すごく納得です。米田さんのライヴパフォーマンスに通ずるものがありますからね。マイケルさんは?
マイケル:いろいろ影響を受けたんですけど、一番「なりたい」と思ったのはPOLYSICSです。テレビでライヴの中継を観て、すごく楽しそうにやる人たちだなと。その前からベースはやっていたんですけど、「バンドってこういうもの」っていうのを思ったきかっけです。そして、ハヤシさんの影響でニューウェイヴのバンドを掘り下げました。DEVOとか。そして、ニューウェイヴのリヴァイヴァルが流行っていた時期でもあったので、Bloc PartyとかFranz Ferdinandとかも聴きました。
米田:僕もニューウェイヴ、好きです。僕は基本的にライヴハウスに行かないタイプだったので、自分の部屋で音楽を聴いて1人で踊っていたんですよ(笑)。だから僕の中の「踊る」っていう要素は、「みんなで楽しむ」っていうよりは「1人で黙々とリズムを刻む」っていうものなんです。
EMTG:もしかしたらポストパンクのバンド、JOY DIVISIONとかも好きですか?
米田:好きです。イアン・カーティス(JOY DIVISIONのヴォーカリスト)の動きにも影響を受けました。「気持ち悪いんだけど、かっこいい」というような。
EMTG:岡村さんとイアン・カーティスって、言われてみれば「なるほど」ですね。鈴鹿さんのルーツは? ORANGE RANGEが大好きなのは、よく存じ上げていますが。
鈴鹿:ドラム始めたいと思ったきっかけは、ORANGE RANGEです。その後、僕は高校の時に大失恋をしまして(笑)。銀杏BOYZの失恋の曲を友人から聴かされて、心の中が「ドカン!」となったんです。そして、動画サイトで銀杏BOYZを観たら、関連動画でゆらゆら帝国とかが表示されて聴き始めて。ミドリとかSPARTA LOCALSも聴いて、最終的にあぶらだこ(80年代から活動をしている日本のロックバンド。アンダーグラウンドシーンに多大な影響を与えた)に辿り着きました。でも、アンダーグラウンドに行き過ぎると帰ってこられなくなると思って引き返したんですけど。
EMTG:20代の人から「あぶらだこ」っていう単語を聴いたのは、生まれて初めてです(笑)。町田さんのルーツは?
町田:ギターをやろうと思ったきっかけは、ジミ・ヘンドリックス。聴いて、「かっこいいなあ」って思ったんです。だからギターに関してはジミヘンの影響で、ファズで歪ませて「ギャーン!」みたいなのが好きです。あんまりピロピロ弾くのは好きじゃないんですよ。
EMTG:今挙げて頂いたルーツ、みなさんのサウンドに反映されていますね。あと、今回のアルバムを聴いて感じたんですけど、歌詞は日本語ですけど、結構英語っぽい響きがありませんか?
米田:それはよく言われるところです。リズムを重視したいと思っていますので。そういうのも岡村靖幸さんに影響を受けて生まれたスタイルですね。あと、歌詞の内容に関しては、リスナーそれぞれにいろんな解釈ができる方が面白いと思っています。
EMTG:「LOVE CONNECTION」の《愛がなびくWatching you》とか「escape with you」の《アガる真っ赤なフィーリング》とか、口ずさむと気持ちいいですし、いろんなイメージがふくらみますよ。
米田:そういうのも「ヴォーカルも楽器」っていうくらいのイメージで、リズムを重視してできていったものですね。
鈴鹿:演奏をしていても気持ちいいですよ。僕はあんまりオカズを入れずにシンプルに4つ打ちを叩いていることが多いんですけど、いろんなメロディも加わるので、雰囲気がどんどん変化していくんですよね。楽しみながらやっています。
EMTG:ダンサブルさに関して、独特なものを感じるバンドです。先ほどニューウェイヴの話が出て納得したんですけど、明るくスポーティーに踊る感じじゃなくて、舌打ちしながら踊るようなヒリヒリした風味を感じますから。
鈴鹿:もともと4つ打ちの音楽を聴いていた方ではないので、「自分なりに持っている8ビートの感じを4つ打ちに出せへんかな?」っていうのはあるんですよね。
米田:視覚的にお客さんに楽しんで欲しいというのもありますし。
EMTG:ライヴ中の米田さんのクネり気味のダンス、すごく印象に残ります。
米田:ロックの中の「気持ち悪さ」って残したくて。僕も最初に岡村靖幸さんを観た時、「気持ち悪っ!」って思って(笑)。カッコいいとは思わなくて、「なんやねんこれ? 得体の知れん……」と。でも、何回か観ている内に「めっちゃかっこええわ!」ってなったんです。そういうのを僕たちも出したいんですよね。
EMTG:ロックって何が正解ってわけでもないですけど、「気持ち悪い」っていうような異物感って、実は大事な要素ですよね。
米田:ほんとそうですね。
町田:ジミヘンも弾いてる時の顔がヤバいですし(笑)。
鈴鹿:銀杏BOYZも(笑)。
マイケル:POLYSICSだって変なバンドですよ。初期はパンをまいていましたし(インディーズ時代、食パンを観客に向かってまくパフォーマンスが行われていた)。DEVOだってわけが分からないバンドじゃないですか。そういうところに魅力を感じるっていうのが、この4人の共通するところなのかもしれないです。
米田:とはいえ、キャッチーでもありたいんです。キャッチーさは正義。それはないとダメだと思っています。
EMTG:「Crazy Dancer」もキャッチーですよね。すごく踊れるし、サビでお客さんが大合唱している画が浮かびます。
米田:キャッチーであることによって、お客さんとの距離が縮まるんです。キャッチーではないと一方的なものになってしまうんですよね。
EMTG:「Feel so good」もカッコいいです。ダンスをすることの喜びが描かれていて、夜の本気ダンスを象徴する曲だと思いました。
米田:歌詞の中に「夜の本気ダンス」っていう言葉を散りばめてあるんですよ。そういう意味でも、一番僕たちらしい曲ですね。
EMTG:《3分間の交わりだってそれが愛おしい》って、バンドのポリシーを感じます。
米田:3分間で終わらせるのって、ロックミュージックの一番カッコいい形だと思うんです。だから今回のアルバムは3分台の曲が多いです。「Dance in the rain」のようなスローな曲だと、3分以上になりますけど。
EMTG:こういういろんな曲を聴いて改めて思うんですけど、みなさんは様々なロックの中から見出したカッコよさの形を上手く活かしているバンドですね。
米田:やはり、そういう部分はありますね。洋楽に行き過ぎず、日本のロックの良さも上手く反映するバランスは、すごく考えているところです。
EMTG:4人の内、1人だけ名前が外国人風の「マイケル」なのも、洋楽と日本のロックの絶妙なバランスの表れ?
マイケル:えっ? はい(笑)。
米田:(笑)今っていろんな音楽を手軽に聴ける時代ですから、僕らもいろんな要素が感じられるバンドだと思います。だからライヴもいろんな世代のお客さんが来てくれます。キッズもいますし、年上の人も全然いますよ。
EMTG:ライヴの時の鈴鹿さんのインパクト抜群なMCも、幅広い層を掴むいいきっかけになっているのでは?
鈴鹿:そうだと嬉しいですね。MCでかっこいいことを言うのもいいと思うんですけど、笑って帰って頂きたいので。
EMTG:「Crazy Dancer」のMVも笑いましたよ。鈴鹿さんがラーメンを食べるのは、毎回のお約束なんですか?
鈴鹿:「WHERE?」っていう曲のMVで食べたのに続いて2回目です。今回に関しては、僕は後づけで、「メジャーに行っても変わらない」っていう意味をこめているものとして考えています。「メジャー行っても変わらんといて」ってよく言われるので。
米田:完全なる後づけです(笑)。
EMTG:(笑)まさに今回の作品でメジャーに行くわけですが、何か目標は?
鈴鹿:「ダンス」と聞けば、夜の本気ダンスと直結するようになったらいいですね。あと、みんなでよく話しているのは、「コピーされるようなバンドになること」です。
EMTG:楽器やバンドをやっている人に?
鈴鹿:はい。ぜひやって欲しいです。
米田:スコアとか、もし出ることになったら嬉しいですよ。僕にとってのアジカンのように、将来に影響を与えられるようなバンドになりたいです。「なんでバンドをやってんのやろう?」って思っていた時に、アジカンの後藤さんがそうおっしゃっている記事を読んで、「たしかにそうやな」って思ったんです。だから自分らもロックのバトンを渡していくような、種をまいていくようなことをやれたら幸せです。
EMTG:みなさんのルーツの音楽を辿ってみるのもファンにオススメしたいです。
米田:ぜひいろいろ聴いて頂きたいです。夜の本気ダンスを好きになって欲しいと同時に、ロックミュージックをいろんな人に好きになって欲しいですから。

【取材・文:田中大】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル 夜の本気ダンス

リリース情報

東京

東京

発売日: 2021年02月10日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: ユニバーサルミュージック

収録曲

01.東京
02.日常

リリース情報

DANCEABLE

DANCEABLE

2016年03月09日

ビクターエンタテインメント

1. Oh Yeah
2. Crazy Dancer
3. By My Side
4. LOVE CONNECTION
5. Love is always new
6. escape with you
7. Feel so good
8. Logical heart
9. Dance in the rain
10. Show down

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お知らせ

■マイ検索ワード

●米田貴紀(Vo・G)
ストライプ シャツ

僕の衣装は基本的にストライプなんです。だから「ストライプ」と「シャツ」で定期的に検索にかけています。それで調べて、実際に店舗に行って買うことが多いですね。かわいい感じじゃなくて大人っぽい雰囲気のストライプが好きです。

●町田建人(G)
テレビゲーム 歴史

YouTubeでゲーム対戦みたいな動画があるんです。昔のファミコンとかから今のPS4まで、どういう歴史を辿ったのかが分かるんですけど。それで、古いゲームの本体についてウィキペディアとかでも調べました。

●マイケル(B)
オムライス ふわふわ

クックパッドとかをよく見ています。キャベツとウィンナーの炒め物を最近作りました。オムライスにもハマっていて、ナイフで切れ目を入れて開いて、フワッとした部分が出てくるやつの作り方も調べましたね。あと、ピクルスはよく家で漬けています。

●鈴鹿秋斗(Dr)
フィナンシェ 砂糖

フィナンシェっていう洋菓子が好きなんです。差し入れで頂くことが多いんですけど、「どれだけ砂糖が入ってんだろう?」って思って調べました。その数字を踏まえて、適度なペースで食べようと思いました。


■ライブ情報

レコ発記念ワンマン「WONDERFUL! DANCEABLE! ENSEMBLE!」 ツアー
2016/06/10 (金) 心斎橋 BIGCAT
2016/06/12 (日) 高松 MONSTER
2016/06/18 (土) 名古屋 BOTTOM LINE
2016/06/25 (土) 札幌 cube garden
2016/07/02 (土) 広島 CLUB QUATTRO
2016/07/03 (日) 福岡 BEAT STATION
2016/07/09 (土) 新潟 CLUB RIVERST
2016/07/10 (日) 仙台 CLUB JUNK BOX
2016/07/15 (金) 恵比寿 LIQUIDROOM

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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