“元”聖飢魔Ⅱのデーモン閣下が約5年ぶりのソロアルバムリリース!

デーモン閣下 | 2017.03.14

 一昨年、聖飢魔Ⅱは地球デビュー30周年記念で期間限定にて再集結を果たし、昨年2月に日本武道館2デイズ公演を大成功に収め終了した。そして、このたびデーモン閣下が5年ぶりとなるソロアルバム『EXISTENCE』を完成! 今作も盟友スウェーデン人サウンド・プロデューサーのアンダース・リドホルムを迎え、さらに聖飢魔Ⅱの信者でもある芥川賞作家の羽田圭介氏、コラムニストのブルボン小林氏、「テラフォーマーズ」(コミックス・アニメ)原作者の貴家悠氏の3人による作詞楽曲も収録。奇想なアイデア、型破りな曲調に驚きながらも、ストーリーと情景描写豊かな普遍性を感じるソロ作について、デーモン閣下に話を聞いた。

EMTG:今作は5年ぶりのソロ作ですが、構想はいつ頃からあったのでしょうか?
デーモン閣下:昨年、聖飢魔Ⅱの30周年再集結が終わって、すぐ来年にはソロを出しましょうと。で、昨年の夏から具体化していったのかな。ただ、時期的には厳しくて……今だから言えるけど、最初は2月に出す予定だったけど、聖飢魔Ⅱが終わったあとにコラボや演劇とかすでに5、6つ決まってるものがあって。このスケジュールでまったく新しいフル盤を作るのは大変だぞって。曲は誰が書くんだ?と。
EMTG:ええ。
閣下:俺?みたいな(笑)。全部は無理だから、吾輩と誰かが何曲か書いて、歌詞も全部書くのは大変だから、他人に3曲ほど振ろうと。聖飢魔Ⅱの頃からシアトリカルな曲調は多いけど、今回はメタルの切り口とはまた違うドラマティックさというか、ニュータイプのドラマティックな作品が作れたかなと。
EMTG:なるほど。今回はメタルメタルした作風ではないですもんね。
閣下:聖飢魔Ⅱが終わった直後だし、同じものをやっても意味がないから。例えばハードロック/ヘビーメタル視点で言うなら、いわゆる暴力的、過激、マッチョな感じの様式美はいらないなと。これはあまり知られてないけど、30年近くライフワーク的に関わっている日本の伝統芸能……そこは相当深いところまで足を突っ込んでやっているんだな。昨年は10ステージ以上、邦楽器と一緒にコラボレーションしているからね。だから、日本の邦楽器には詳しくて。せっかくそういう活動をしているんだから、ソロ作の中で日本の伝統楽器の特徴や醍醐味を活かした曲をやろうと。今回も3、4曲入れたかったけど、非常に実験的な要素が強いし、楽器の良さや雰囲気が活きないと意味がないので、時間がかかるんだな。で、結果的には1曲になったという。
EMTG:その邦楽器の魅力を詰め込んだ「深山幻想記 -能ROCK-」の破壊力が半端じゃないです!
閣下:ははははは。
EMTG:最初は副題の“能Rock”の意味合いがイマイチ掴めなかったのですが、聴けば“能ロック”としか言いようがない楽曲で。このバランス感は相当難しかったんじゃないですか?
閣下:両方の良さが活きないと、意味がないんでね。ポップスでも和楽器を音色として使っている人たちは増えているけど、我輩はそこでは終わりたくなくて。楽器が持ってる個性を活かす。そこがポイントであった。
EMTG:ああ、なるほど。
閣下:元々この曲は昨年、作曲者の一噌幸弘氏の能舞台の公演に我輩がゲストで呼ばれて。一噌氏がインストでやっていた曲に対して、我輩が出るから、それに歌を付けましょうと。それでやってみたら面白くて、今回ソロを作るにあたって、「あの曲入れてもいい?」と問うたのだ。ただ、ギター、ベース、ドラムを入れたものは今回が初収録だね。かつ、アレンジがスウェーデン人だから、能なんて知らないわけだ。固定概念がない人がどう受け止めて、どう料理するのか、それに我輩も興味があってね(笑)。
EMTG:いやぁ、本当にすごい曲だと思います。しかもこの曲だけ英語、漢字、ひらがな、カタカナを使ってますよね。その言葉の響きもプログレッシブな曲調に合ってるなと。
閣下:ああ、そうだね。この曲はその点でも遊んでるね。今回のアルバムでは自分の裏テーマとして“日本語でどこまでいけるか”というのがあって。この曲は違うけどね(笑)。
EMTG:今作は日本語主体という意味でも、映像や情景が浮かんでくる楽曲が多いですね?
閣下:作り始めたときはそこまで意識してなかったけど、日本語でいけるところまでいこうと。ひとつの大きな理由として、アンダースが書いた曲が5つ今回は入ってるけど、それはこのソロ作のためではなく、こちらで聴いて選んだものなのだ。その曲たちにはすでに英語の仮歌が乗っていたわけ。そこにまったく違う英語を乗せるのは失礼だから(笑)、逆に日本語で頑張ろうと。
EMTG:まったく違う言語をぶつけたほうがいいだろうと。「Shibuya Scrambled Crossing」は、まさに街の臭いがする楽曲ですね。
閣下:そこは意識したね。どういう景色が見える曲にしようかって、日本のプロデューサーと我輩で1曲ごとに話し合いをもったからね。1曲1曲に風景が見える感じは、今までやったことがない試みで、自分的には新しかった。ぶっちゃけ、我輩も30年以上、200曲ぐらい書いてて、そんなにもう歌で言うこともないわけ(笑)。そしたら、「閣下はタイアップのときにすごくスラスラ書きますよね?」と言われて。だったら、1曲1曲架空のドラマを作って、そのテーマソングを作る気持ちでやろうと。聖飢魔Ⅱは説教臭いものが多くて、文学で言うところの随筆や論文みたいなものだから。エッセイストが小説書きました、みたいな歌詞にしようと。
EMTG:今までとは違う筋肉を使って?
閣下:はい、新しい扉が開いた感覚はあったね。
EMTG:あと、「地球へ道づれ!」はミュージカルチックな曲調ですね。
閣下:これは「テラフォーマーズ」原作者の貴家悠氏が書いたもので、歌詞のほうを先に作ってもらったのだ。その歌詞を元にメロディを作ったので、緩急のあるミュージカル風な仕上がりになったね。
EMTG:この歌詞はかなりぶっ飛んでますよね。身も蓋もないというか(笑)。
閣下:“息子”に宛てた歌だけど、最終的には息子への愛情に溢れてて、妙に感動的なんだよね(笑)。まあ、すごい歌詞だよね。それは人に頼んで良かったなと。自分じゃ書かないもんね。
EMTG:「方舟の名はNoir」はブルボン小林さんが作詞した楽曲ですよね?
閣下:仮タイトルは「微笑み仏壇返し」で、キャンディーズの「微笑がえし」の我輩バージョンみたいなもので。仏壇返しという言葉は大相撲の正式な決まり手ではないけど、裏決まり手と言われるもので、これはすごい曲名が来たなと思ったけど、本人がもう少しマジメな曲名にしますって。
EMTG:随分、オシャレな曲名に変更しましたね。
閣下:ははは、そうそう。フランス語だしね。
EMTG:今作の中でも打ち込み主体のポップな曲調ですね。
閣下:そう、これはアンダースがアレンジに悩んだ曲だね。テクノっぽいアプローチにして、彼の得意とする音楽畑ではないけど、最終的にメロディに似合う味付けにしようと。
EMTG:なるほど。そして、「Stolen Face」は羽田圭介さん作詞によるものです。これは閣下が直接オファーしたんですよね?
閣下:3名とも我輩がオファーしたぞ。この3人に共通するのは、我輩または聖飢魔Ⅱのことが大好きであることを公言している人たちで。
EMTG:ああ、信者なんですね。
閣下:そうそう。3人とも作詞のプロではないけど、文筆業に関わっているし、我輩がどんな歌を歌ってきたかも知ってる。そんな人が“こんな曲を歌わせたい!”と思って歌詞を書いたらどうなるかなと。で、羽田君はカッチリした整然とした歌詞で、マジメな性格が出てるなと(笑)。頼んだ3人の中では社会性のある歌詞で、マジメだなあ、マジメすぎるなあと思って。「ちょっと比喩を使って、柔らかい部分を作りませんか?」と提案して、あの大サビが出来た。
EMTG:わかりました。バラエティに富んだ楽曲と歌詞を束ねるように、今回のアルバム名はとても力強いですね。
閣下:歌い終わった頃に、今回はどれもアルバム名にする曲名がないなと。で、歌詞を振り返ると、物語性を考えたにせよ、主人公が自分の存在感や、世の中での立ち位置、居場所について悩んだり展望したりしているものが多かったから。存在、存在感みたいなものがテーマになってるのかなと。最初は“ビーイング(=いる・ある)”というアルバム名が第一候補だったのだけれど、有名な会社の名前だし(笑)。じゃあ、ちょっと硬いけれど名詞の“EXISTENCE(=存在)”にしようと。
EMTG:今作の全国ツアーが4月から始まりますが、どんな内容になりそうですか?
閣下:歌も演奏も難しいからね。やりたい曲も多いんだけど、セットリストはちょっと考えなきゃいけないね(笑)。

【取材・文:荒金良介】

リリース情報

EXISTENCE[初回生産限定盤]

EXISTENCE[初回生産限定盤]

2017年03月15日

アリオラジャパン

1.深山幻想記 序曲
2.ゴールはみえた
3.Forest Of Rocks
4.Just Being -ここにいる そこにいる-
5.Shibuya Scrambled Crossing
6.地球へ道づれ!
7.てふのやうにまひ
8.方舟の名はNoir
9.深山幻想記 -能Rock-
10.Post Truth -青空が殺気立つ-
11.Stolen Face
12.Heavy Metal Strikes Back -血まみれの救世主(メサイア)たち-

【初回生産限定盤】DVD収録内容
1.「ゴールはみえた」Music Video
2.H.E. Demon Kakka’s Commentary

お知らせ

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■ライブ情報

音市音座 2017
03/20(月・祝) 日本ガイシホール

DEMON’S ROCK "EXISTENCE" TOUR, DC19
04/21(金) Zepp Osaka Bayside
04/30(日) 豊洲PIT
05/06(土) 福岡電気ビルみらいホール
05/07(日) 広島市南区民文化センター
05/19(金) 仙台PIT
05/25(木) Zepp Sapporo
06/01(木) Zepp Tokyo
06/08(木) Zepp Nagoya

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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