奥華子というアーティストの個性がしっかりと込められた9枚目のアルバム『遥か遠くに見えていた今日』

奥華子 | 2017.05.15

 恋が始まったときのドキドキ、自分から別れを告げることの切なさ、悲しい思い出から抜け出そうとする意志――。奥華子の9thアルバム『遙か遠くに見えていた今日』は、恋、愛にまつわる様々な思いを色彩豊かに描き出した作品となった。「キミの花」(TVアニメ 「セイレン」オープニングテーマ)、「最後のキス」、「思い出になれ」「愛という宝物」といったシングル曲のほか、インディーズ時代の名曲としてファンの間で根強い支持を得ている「Rainy day」、「ひとりの女性としてのリアルな気持ちが込められた」という弾き語り曲「遥か遠くに」など全14曲を収録。自らアレンジを手がけた曲が増えるなど、奥華子というアーティストの個性がしっかりと込められているのも本作の魅力だろう。

EMTG:9枚目のオリジナルアルバム『遥か遠くに見えていた今日』がリリースされます。シングル「キミの花/最後のキス」のインタビューのときは「新曲を書こうとしてるんだけど、なかなか出来ない。いままでで最高にヤバいかも」と仰ってましたが、無事に完成しましたね。
奥華子:良かったです(笑)。「ヤバイ、書けない」っていうのは毎回なんですけど、今回は“早目、早目”の精神でやってたので。まあ、そんなに余裕はないですけどね。
EMTG:「遥か遠くに見えていた今日」というタイトルはいつくらいに決めたんですか?
奥:それもギリギリで、「今日中に決めてもらわないと困ります」というタイミングだったんですよ。アルバムの最後に入っている「遥か遠くに」のなかに「遥か遠くに見えていた未来」という歌詞があって、そこから持ってきたんです。この曲に対しては「絶対にいい曲にしたい」という思いが強かったし、アルバム全体のテーマにも繋がってるんじゃないかなって。
EMTG:「歩いても 辿り着けない 夢がまだ心にあるから」という歌詞も印象的でした。
奥:どの曲もそうなんですけど、特にこの曲にはひとりの女性としてのリアルな気持ちが込められたと思います。年齢を重ねるにつれて、感じることもどんどん変わってくるんですよね。遥か遠くに見えていたはずの大人になっても、いつも目の前のことに追われてばかりで、全然余裕がなかったり…。日々、何かに終われているのはいいことだと思うんですよ。それがないと、何もしないだろうし(笑)。ただ、そのなかには“でも…”という気持ちもあるんですよね。人生は長いと思ってたけど、意外とアッという間だなとか(笑)。
EMTG:年齢を重ねて感じ方が変わることで、曲の幅も広がってきて。シンガーソングライターとしては、すごくいいことなんじゃないですか?
奥:どうなんだろう(笑)。「遥か遠くに」を作ってるときはすごく苦しくて、レコーディングが終わったときもフラフラだったんです。それくらい気力を使う曲なんだなって。あ、でも、良いこともありました。レコーディングはずっと一人でやってるんですけど――歌の録音も自分でやって、出来たらプロデューサーに聴いてもらうというやり方なので――今回のアルバムで「いま、いい声で録れてるな」というのが掴めてきたんです。それは曲の伝わり方にも関わってくるし、自分にとってはすごく大きいことでしたね。
EMTG:1曲目の「Rainy day」はファンのみなさんの間でも根強い人気がある楽曲だとか。
奥:そうなんです。インディーズ時代のCDに弾き語りで収録したことがあって、私も大好きだったし、ファンのみなさんにも人気があって。「いつかもう一度レコーディングしたい」と思ってたんですけど、思い入れが強いせいもあって、簡単にはやれなかったんですよ。きっかけは「最後のキス」のレコーディングですね。最高のミュージシャンに集まってもらえて、「この人たちだったら、『Rainy day』をレコーディング出来る!」と思って。もともと自分のなかにはバンドサウンドのイメージがあったし、ミュージシャンのみなさんも愛情を持って演奏してくれて。「上手くいかなかったら収録しないでもいい」と思ってたんですけど、想像を超えるくらい素晴らしいテイクが録れたと思います。これならファンの人たちも納得してくれるんじゃないかな。
EMTG:ひとつひとつの音に気持ちが込められた、すごくエモーショナルなサウンドですよね。曲を書いたのはいつなんですか?
奥:22歳くらいのときですね。その頃って、絵を描くようなイメージというか、映像やシーンを思い浮かべながら曲を書くことが多かったんです。「Rainy day」もそういう感じて書いたんですけど、歌詞の比喩表現も好きだし、切なさと前向きな気持ちが同時に感じられるメロディも気に入っていて。こういう曲は書けないですね、いまは。感受性が全然違うので。
EMTG:この曲の主人公は、一人で出て行ってしまった“君”を想う男性。別れの切なさを描いているという意味では、「これぞ奥華子」という楽曲だと思います。
奥:そうなんですよね。感じ方はどんどん変化しているんだけど、歌っていることは変わってないっていう。いま歌っても、全然違和感がないんですよ。それは良かったなって思います。
EMTG:TVアニメ 「セイレン」のオープニングテーマ 「キミの花」、MASTのCMソングとして話題を集めた「プロポーズ」なども収録されていますが、いわゆるタイアップソングも増えてますよね。
奥:「ほのぼの行こう」(ニンテンドー3DS用ソフト『牧場物語 3つの里の大切な友だち』イメージソング)、「愛という宝物」(2016 cross fm オフィシャルGREEN キャンペーンソング)もそうですけど、自分ひとりだったら出来てなかったと思うし「作らせてもらった」という感じですね。たとえば「プロポーズ」のときは「とにかく幸せな曲をお願いします」と言ってもらったり。そのイメージに向けて作るので、私としてもやりやすいんですよ。何もないところから自分の曲を作るほうが大変ですね。
EMTG:そのときに歌いたい曲を自由に作ればいい、というわけではない?
奥:「ホントに思っていることしか歌いたくない」という気持ちが強くなるんですよ。それは鏡に映ってる自分をじっと見つめるような作業だし、すごくキツイんですよね。なかなか曲が出来ないときなんて、「人として価値がない」って思っちゃうんですよ。いい曲が出来たときは、それだけで生きていると思うし。自分の価値とか生きる意味みたいなものが、曲によって左右されてるというか。アルバムを作ってるときはいつもそうですね。思うように出来ないときは「もうヤダ!」って壁にスリッパを投げたりしてるので(笑)。
EMTG:自分に向かい合うことで曲が出来て、そのことによって生きる意味を感じる。すごいですよね、ホントに。
奥:いつもそんな感じではないですけどね(笑)。「スタンプラリー」のレコーディングのときに、「彼女」という曲にストリングスを入れてくれた女性のミュージシャンがたまたま残ってくれていて、アドリブでセッションしたんです。そのときの雰囲気がすごく良かったし、みんなでワイワイやってる感じもしっかり出てるんじゃないかなって。そういうときはすごく楽しいんですよね。あと、今回は自分でアレンジした曲が多いんです。私は編曲の勉強をしてるわけではないので、ずっとアレンジャーの方にお願いしてたんですけど、「アレンジに正解ってないよな」と思うようなって。「こういう感じにしたい」というイメージがあって、それを自分で作れるんだったら、自分でやったほうがいいなって。そこもいままでとは違う部分ですね。
EMTG:5月からは弾き語りによる全国ツアー「奥華子コンサートツアー2017 弾き語り~遥か遠くに見えていた今日~」がスタートしますね。
奥:10周年のときはスペシャルなライブが多かったので、全国を細かく回るのは久しぶりなんです。新しいアルバムの曲もそうですけど、会場に来てくれた方が「この曲を聴きたかった」と思ってくれるような曲もやりたいですね!

【取材・文:森 朋之】

tag一覧 アルバム 女性ボーカル 奥華子

リリース情報

遥か遠くに見えていた今日

遥か遠くに見えていた今日

2017年05月17日

ポニーキャニオン

1. Rainy day
2. 恋のはじまり
3. 愛という宝物
4. プロポーズ
5. 彼女
6. 365日の花束
7. キミの花
8. ほのぼの行こう
9. 思い出になれ
10.最後のキス
11.Mail
12.アイスクリーム
13.スタンプラリー
14.遥か遠くに

お知らせ

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■ライブ情報

奥華子コンサートツアー2017弾き語り ~遥か遠くに見えていた今日~
05/27(土) 秋田市文化会館 小ホール
05/28(日) 盛岡劇場 メインホール
06/03(土) 青森1/3
06/11(日) 福島テルサ FTホール
06/23(金) 仙台市宮城野区文化センター PaToNaホール
06/25(日) 山形テルサ アプローズ
07/01(土) めぐろパーシモンホール 大ホール
07/02(日) 青葉の森公園芸術文化ホール
07/06(木) 桜坂劇場ホールA
07/14(金) 名古屋アートピアホール
07/15(土) 津リージョンプラザ
07/22(土) 延岡総合文化センター 小ホール
07/23(日) 香川県教育会館 ミューズホール
07/29(土) 長野市芸術館 アクトスペース
08/05(土) 大阪市中央公会堂
08/10(木) 福井まちなか文化施設 響のホール
08/11(金) 北国新聞 赤羽ホール
08/13(日) 富山県教育文化会館
08/20(日) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
09/02(土) イムズホール
09/03(日) 長崎 ブリックホール国際会議場
09/08(金) 倉敷市芸文館
09/10(日) 広島市南区民文化センター
09/15(金) 佐野市文化会館
09/17(日) 新潟市民芸術文化会館 りゅーとぴあ 劇場
09/21(木) 松山市民会館中ホール
09/23(土) 松江AZTiC canova
09/24(日) 米子AZTiC laughs
09/30(土) 藤岡市みかぼみらい館 小ホール
10/01(日) 米原市民交流プラザ ルッチプラザ
10/09(月) しずぎんホール ユーフォニア
10/13(金) 横浜関内ホール
11/11(土) 鹿児島CAPARVO HALL
11/16(木) 札幌市教育文化会館 小ホール
11/17(金) 函館金森ホール
11/26(日) 府民ホールアルティ
12/01(金) 大分ブリックブロック
12/02(土) 熊本B.9 V1
12/10(日) 結城市民文化センター 小ホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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