Nulbarichのケミストリーが存分に味わえる1st EP『Who We Are』をインタビュー

Nulbarich | 2017.05.23

 90年代にレアグルーヴやアシッドジャズをリアルタイムで聴いていたリスナーも、新世代のトーキョー・シティポップとして新鮮な感覚で捉えた若いリスナーも巻き込んで、新しいグルーヴの磁場を形成するNulbarich。昨年、大きな話題を呼んだアルバム『Guess Who?』に続いて、1st EP『Who We Are』をリリースする。音楽を聴いた瞬間のあふれ出るような喜びを表現したMVも話題の「It’s Who We Are」などを収録した本作を軸にフロントマンであるJQに話を聞いた。

EMTG:今回のEPはどういうタイミングで制作していたんですか?
JQ:ワンマンライブのリハーサル中と並行してたんです。『Guess Who?』を出してみて、いろいろライブもやってみて、初めてのワンマンに向けて、バンドメンバーがポジティヴになってるタイミングで今回の曲たちを作り上げて行ったので、『Guess Who?』の時より、バンドのそれぞれの趣味がもう少し強く入っていたり、歌詞とかも少しですけど、ポジティヴになっていたり。自分の中でもすごい発見の多かったEPですね。
EMTG:EPの中で早めに今回のテーマの萌芽が見えた曲ってどれですか?
JQ:「Ordinary」は元々ライブでも歌っていたのでそれを除くと、一番最初にビートを組んだ「Follow Me」が一番早かった気がしますね。
EMTG:この歌詞の譜割がJQさんっぽいというか特徴的ですね。
JQ:ふ~ん。じゃ個性ってことでいいですか?(笑)
EMTG:(笑)、個性でしょう、そりゃ。こう、英語と日本語が何行かずつ分かれてる人はいると思うんですけど、JQさんの歌詞は一行にも混ざってますよね。
JQ:元々、ラフな英詞でメロディに乗せていって、歌詞を固めて行く中で、そのメロディに対して日本語がハマりやすいメロディと、英語のままいった方が耳障りのいい時ってあるんで、その時々に合わせて、「日本語をはめてみよう」とか、「意外とここ全部、日本語で行けた」とか。なるべく日本語は多くして行きたいんですけどね。
EMTG:一行の中に混ざるのってLOVE PSYCHEDELICOのKUMIさんみたいだなって。
JQ:ああ、すごいセンスありますよね。僕には真似できないですけど、そう言ってもらえるならもっと言ってもらえるように頑張りたいですけどね。やっぱり、英語の間に入って来る日本語っていうのは、どうしても音数的には3音だったら、英語だったら文章出来上がっちゃうんですけど、日本語だと3単語だし、そこに詰められる情報量って少ないんで、やっぱそこで「何入れようか?」っていうのはすごく気をつけてるところではありますね。
EMTG:確かに。今回はミュージックビデオも作られた、リードトラック的な立ち位置の曲が「It’s Who We Are」なんですね。ちょっと逸脱した内容の映像で、でも気持ちはすごく分かるMVでした。
JQ:ちょっと癖があるMVにしたかったっていうのと、癖だらけでもよくないっていう。そこで監督さんとかプロデューサーさんと話してる中で、さらっと見れちゃうけど、なんか一回戻って「ん?ん?」みたいな場所が何個かありたいっていう。で、見れば見るほどはまっていくものにしたいというか。で、僕たちの音楽もそこを大事にしてるのもお伝えして、最終的にお台場の海に入って行って、多摩川から出て来るっていう。鮭みたいな、産卵しに上って行ってるんで(笑)。
EMTG:ははは。産卵はしてないですけど。
JQ:なんかやなことがあった後にヘッドフォンで音楽聴いて、夢中になって、海に入っていくことにも気づかないっていう、そのぐらい一旦、遮断しちゃおうぜみたいな。それは曲でもちょっと言ってるんですけど、よりメッセージとしてすごく伝わったMVだなと思ったので、言葉なしでここまで伝わるんだなっていうのが今回、発見でしたね。
EMTG:MVも今までのNulbarichのイメージをいい意味で裏切ってきたなと思って。
JQ:ああ、はい。でもまぁ、何も考えてないっていうのが答えかもしれないんですけど(笑)。僕たちのバンドって、何かのコンセプトを元に集まったというよりは、元々仲良いメンバーが多いので、それを僕がかき集めて、「なんか今やれることやってみようよ」と。今いいと思えるものを持ち寄って、そのケミストリー待ちな部分があるバンドなので。今回のEPはワンマンのリハーサルの時にみんなが持ち寄ったもののケミストリーなんで、逆にもう「このミュージシャンが好きで」「この音楽が好きだから」というのが元に出来上がったバンドじゃない強みとしては、僕らは逆に変わっていくことがベーシックにあるというか、変わっていくことが当たり前のバンドかなと。そこは僕らの強みなのかなと思ってます。
EMTG:「It’s Who We Are」はわかりやすくエレクトロな要素も入ってて、しかも曲自体がマイナーチューンだっていうのも新鮮ですね。
JQ:もともとこういう感じになると思ってなかったというか、それこそ化学反応にびっくりさせられた曲だったんで。「お!上がってったな」、「意外と明るくなったね」みたいな感じだったんですよ。なんでもそうなんですけど、一つの出来上がりのものに対して説明書があって、それを組み上げていくっていうのが昔から苦手で。プラモデルとかもそうなんですけど。
EMTG:取説を読まない人?
JQ:「これってもしかするとこれとこれじゃね?」みたいなのを組み立てて行って、それで作り上げて行った時の方がやっぱ嬉しさがあるんですよね。最初に正解を置かない作り方が昔からあるので。
EMTG:冒頭では「つまらない日曜日」だったのに、最後には「今日、パーティどう?」ってところまでたどり着いてますからね。
JQ:最後は「まぁ明日がどうせ来るから楽しもうよ」ってところに行くのも、ケミストリー待ちバンドの、曲が出来上がるところが見えた感じかなと(笑)。
EMTG:そして「On and On」はアルバム『Guess Who?』に収録されていた「Spread Butter On My Bread」の進化系というか、ビートが面白いですね。
JQ:うん。そうですね。あれは挑戦的なものではなく、バンドとセッションしてると自然に出てきちゃうものだったりする曲調なんです。これもあんまり悩まず、ポッてできちゃったんで。
EMTG:ちょっと揺れるビートはメンバーのどなたの志向が強いんですか?
JQ:結構、みんな好きだと思います。もともと、僕自身が好きなので。ビートが揺れるとかっていうのは、J・ディラとか、あとはPrefuse 73とか。結構サウンド・クリエーター系の影響はあります。もともと、僕がトラックを作ったりとかが好きなので。まさにMPCで作ってたりする人たちはあんまりクオンタイズかけずにそのまま行ったりとかするので。で、4小節のループで戻って来るのがカッコ良かったりするので。
EMTG:今回の4曲はタイプが違う4曲で、自己紹介的にはいいEPなのかなと。
JQ:1つコンセプトを決めて、ストーリーを作ってくようなアルバムも今後は挑戦してみたいなとは思うんですけど、やっぱこれが今、僕たちができるすべてですって、作品で全て出したいなと思ってるんですね。Nulbarichのポテンシャルを見てもらうことが今、僕たちにとって大事なことなので、曲はバラエティに富んでる方が逆に僕らっぽいというか。今後みんながNulbarichを知ってくれたら、コンセプトのあるアルバムも作ってみたいですね。
EMTG:そして今回のジャケットのアートワークは、フィルムカメラや木のカードケースの中に、Nulbarichを象徴するキャラクターが存在していて、この作品の主人公の好みが表現されてるように見えたんですが。
JQ:まぁでも、これも考えたら、自分たちの匿名性を絞るアイテムになるのかな?って思うんですけど。その時はあんまり…….考えてなかったというのが正直なところで。でも今まではこの暫定の「ナルバリくん」が景色の中にいたけど、今回は逆にこのキャラクターを日常に入れるために、メンバーの私物の中に入れるという案を出したというか。そこで思い入れのないものの中に埋もれても表現が非日常になっちゃうので。そういう意味では今回のジャケットは「暫定ナルバリくん」が日常に入り込んだタイミングになったのかなと思いますね。

【取材・文:石角友香】

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リリース情報

Who We Are[初回限定盤]

Who We Are[初回限定盤]

2017年05月23日

スペースシャワーミュージック

<収録曲>
1. Follow Me
2. It’s Who We Are
3. On and On
4. Ordinary

<DVD収録曲>
1.Hometown
2.Fallin’
3.NEW ERA
4.Lipstick
5.Spread Butter On My Bread

お知らせ

■マイ検索ワード

ノンアルコール 酔う
最近、喉のケアとかも含めてライブ前に飲むのやめとこってなった時に、ノンアルコールビールならいいかなって。で、ノンアルコールビールの定義って、0.9%以下じゃないですか? それを3本飲んだらビール1本分なのかな? と思うと、「あれ?これ酔うんちゃう?」と思って検索しました。科学的にはわからないけど、8本ぐらい飲んだら饒舌になってたので、酔わずにそういう状態になれるんだなぁ、と(笑)。

■ライブ情報

Nulbarich ワンマンライブ 2018
2018/03/17(土) 新木場STUDIO COAST

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Nulbarich 1st ONE MAN TOUR
11/02(木) 仙台MACANA
11/11(土) 心斎橋 JANUS
12/01(金) 福岡DRUM BE-1
12/13(水) 恵比寿LIQUIDROOM

FM802 BIRTHDAY 「FUNKY 28th BIRTHDAY -RADIO HUNTER 802-」
06/01(木) 心斎橋JANUS

TOKYO MUSIC LINER
06/11(日) 台北 Legacy Taipei

夏びらき MUSIC FESTIVAL 2017
07/01(土) 服部緑地野外音楽堂
07/15(土) 所沢航空記念公園 野外ステージ

CORONA SUNSETS FESTIVAL
07/08(土) 美らSUNビーチ野外音楽特設ステージ
07/09(日) 美らSUNビーチ野外音楽特設ステージ

PEANUTS CAMP 2017
07/22(土) 一番星★ヴィレッジ

NUMBER SHOT 2017
07/23(日) 海の中道海浜公園野外劇場

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO
08/12(土) 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

SUMMER SONIC2017
08/19(土) ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ

Jin Rock Festival in KAMO 2017
09/10(日) 新潟県加茂市加茂山公園野外ステージ

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017
09/23(土) - 09/24(日)
岐阜県中津川市 中津川公園内特設ステージ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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