テスラは泣かない。の新章、約2年ぶりのニューアルバム『永遠について語るとき、私たちの語ること』
テスラは泣かない。 | 2017.06.27
疑問に思っていた。このテスラは泣かない。のベーシスト吉牟田直和の1年間の学業に専念する為の不在時のサポートメンバーの起用手段を、だ。“いま停ってられない!"“吉牟田が戻った際に即発進できるように”“その席を常に温めておく為"等、活動休止にしなかった理由は分かる。しかしそこから、あえて13人ものタイプも様々で個性的なベーシストの起用は通例ではありえない。何故なら、バンドのアイデンティティやカラーを揺るがし、芯のブレを生じかねないからだ。しかし彼らはそれを行い、経て、吉牟田が戻り活動を再開した際に、これまで以上の確固たるものやフレキシブルさ、この4人らしさを得たり、気づいたり、より強固なものにすることができた。結果は大成功だった。そして、それはこのニューアルバム『永遠について語るとき、私たちの語ること』の至る所に表れている。そう、今作は、これからの彼らの可能性や新側面、そしてテスラらしさでいっぱいだ。
その辺りをソングライティングを務める村上学(Vo.&G)と吉牟田が答えてくれた。
- EMTG:吉牟田さん、無事に大学のご卒業、そして晴れてテスラは泣かない。への復帰おめでとうございます!!で、まずは村上さん。その間にサポートベーシストを13人も迎えて継続させた真意から教えて下さい。
- 村上:吉牟田にはキチンと大学を卒業したい希望があって。その間も僕たちはバンドを続けたくて。そこの両立の最良が今回の形でもあったんです。なので、その分、デメリットもメリットも覚悟して挑みました。
- EMTG:どういった部分がメリットになるだろうと?
- 村上:吉牟田が1年間バンドを離れて、彼が違った視点から自分たちを見てくれることでの俯瞰性や客観性と、それらのバンドへの還元ですね。我々3人も続けることでの成長と、何かを得て戻ってきた際の吉牟田との融合で、また新しいものが生まれるんじゃないかって。おかげさまで以前とはちょっと違った感じで、再び4人が揃って並べて今は凄く嬉しいです。
- EMTG:逆にデメリットは?
- 村上:再び一緒に演奏した際のブランクによる彼の感覚を取り戻すまでのロスと、ずっと続けてきた我々とのギャップですね。とは言え、先日久しぶりに一緒に合わせたんですが、全然弾けてるし、ブランクを感じさせなかったんです。逆に非常に人間的に成長したように見えて。約束通り1年で卒業しなくてはならないプレッシャーを乗り越えて到達した、その一皮むけた感とでも言うか。その辺りも音に表れていましたからね。以前にも増してどっしりと構えて、俯瞰したり認知する感覚も更に増して長けていたし。何かを表現したりパフォーマンスをする身としての成長感が凄くあったんです。
- 吉牟田:この1年、お互い目標がはっきりして進んでましたからね。僕は勉強して大学をしっかり卒業して再び戻ってくる。バンドはたゆまず進んでいくといった。個人的には、地道にリズムマシン練習したのが良かったかなって。
- EMTG:それは?
- 吉牟田 :ひたすらリズムマシンに合わせてストイックに弾いてましたから、この休んでいた間は。ある意味それが自分自身や自分のプレイを見つめ直すキッカケや成果にもつながっていたように思います。
- EMTG:でも不思議だったのは、サポートベーシストたちの起用でした。13人もの多彩さもですが、それぞれが得意ジャンルも出自も違う方ばかりだったので、自分たちを見失ったり統一感を失う懸念もありそうですが。
- 村上:確かに、“えっ、テスラってこんなんだったっけ?”や、僕ら自身の軸がブレる懸念はありました。逆に色々なベーシストを入れることによって、<一体バンドとは何か?><グルーヴとは何か?>を、もう一度残った3人の身体に覚えこませたいところもあって。色々なベースを入れてもキチンとテスラの音を常に鳴らせる。それは言い変えると、小さいハコでも大きな会場でも、屋内でも野外でもキチンと自分たちのグルーヴを出せることであり、自分たちの根っこさえしっかりと張っていれば、どんなベーシストと一緒にやってもその方々に負けずに自分たちの音を変わらずに鳴らせると信じていてのことでもあったんです。あえてこのみなさんと一緒に演ることで、何か自分たちの確固たるものが身に着けられるんじゃないかって。実際、1年やり続けてその通りになりましたからね。
- EMTG:確かに。
- 村上:ベーシストのみなさんは各人色々な味の方々ばかりでしたからね。おかげさまで自分たちのブレちゃいけないところを見つけることが出来ました。夏頃まではベースの方に引っぱられてしまうライブが多かったんですが、夏以降は一緒に融合しつつも、キチンとこちらが主導して、お客さんとも共鳴できるようになっていて。まっ、ドラムの實吉が一番苦労したんでしょうけど(笑)。
- EMTG:リズム隊ですもんね。それを吉牟田さん的には外側で見ていていかがでした?自分がそこに不在のジレンマや焦りもあったのでは?
- 吉牟田:ところが休止中もけっこう安心してましたよ。“この3人だったら大丈夫だろう”って。自分のバンドを俯瞰で見れる機会ってなかなかないですからね。そのテスラを一度客観視して制作に臨めたのは大きかったです。
- EMTG:そんなニューアルバムですが。これまでのテスラとこれからのテスラが見事に同居した作品印象を持ちました。
- 村上:このアルバムを聴けば、自分たちのこれまでとこれからが分かる、そんな1枚を目指しました。シングルコレクションじゃないけど、これからに向けてのベスト盤とでも言うか…。気持ちの上での今後の代表曲になりえるであろう曲たちを収めてますから。いわば現時点での自己ベスト盤。
- 吉牟田:今回惜しくも入れられなかった曲も沢山あって。かなり厳選された珠玉の8曲が収まってます。
- EMTG:とは言え、初期の頃と決定的に違うのは、詰め込み方にしてもキチンと計算されているし、それをゴチャゴチャに感じさせない整頓さやダイナミズム、大らかさを擁しているところかなと。
- 村上:変な焦りはなくなりましたから。あれもしたい、これもしたい、こうしなくちゃいけないんじゃないか、ああしなくちゃいけないのでは?、といった類いが今ではほとんど無くなっていて。まっ、経験的に色々と挫折やくじけも味わってきましたから(笑)。それを経て、削ぎ落とすことを学び、一つの正解に辿り着いた感はあります。だからどの曲も最も足さず引かずの良い状態で収まってます。
- 吉牟田:学さん(村上)が作った大きな枠組みの中で僕らは自由に遊ばさせてもらっただけですから。おかげさまでパッと浮かんだアイデアや遊び心も多々入れることが出来ました。
- EMTG:「GLORY GLORY」と「Like a swallow」はそれぞれ対照的な曲ながら、各々にテスラの新境地やこれまでになかった新しい要素を感じました。
- 村上:まさに「GLORY GLORY」は自分たちの中でも新しい扉を開けた曲になりました。このアルバムの中では最も色々とチャレンジした曲でもあるんです。それこそ衝動だけで作りましたから、この曲は。お客さんと一緒にアンセム出来たらいいですね。これが完成したことで、まだまだやりたいことがむくむくと湧いて出たところはあります。
- 吉牟田:ミュージシャンライクな曲ですよね。村上学が鹿児島時代からずっと持って温めていたものが、ここにきて結実した曲だなと思います。
- EMTG:反面、「Like a swallow」のようにここまで美しい曲もテスラとしては初ですよね。
- 村上:歌モノの曲もちゃんと作れるんだゾという部分を現してみました(笑)。これまでの僕たちのアイデンティの一つとしてサビでコブシが上がるというところがあったし、目指していたところでもあったんです。だけど、この曲に関してはその辺りを一度無視して作ってみました。たまにライブで披露はしてたんですが、みんな意外だったのか、当時はきょとんとして聴いていたんです。だけど、ライブ後にみなさん感じたものがあったようで。凄く反響も良かったんです。“ああ、コブシが上がらなくても伝えられる曲がようやく出来たな…”と実感しました。この曲も新しい扉を開けた感が凄くしています。
- EMTG:この曲はある種、吉牟田さんに捧げられた歌詞にも注目ですね。
- 吉牟田:「捧げられた」と言われるとちょっと照れますが(笑)。バンドというのはメンバーだけでなくお客さんも交えて出来たり、完成するものでもあるので。この曲に関しても、お客さんの中にも去年の僕のように環境が変わる人や変わった人もいると思うので、そういった人たちも是非自分を重ね合わせて聴いて欲しいです。
- 村上:その通りです。今回の吉牟田のような物語とは、シチュエーションや内容は違うでしょうが、みなさんの中にも絶対に近い感情や想いはあるはずで。僕たちの物語をみなさんも自身に置換えて聴いて欲しいんです。みなさんにも帰る場所や季節が待っているから、まさにそういった曲なんです。なので、僕たちの曲であり、みなさんにとっての曲にもなれると嬉しいですね。
- EMTG:そもそもこの曲の発生の経緯は?
- 村上:最初は明るい曲を作ろうとの意図だけでした。そこからLike a swallowという言葉が降りてきて、それに合わせてギターを弾いているうちに出来た曲だったんです。なので、頭で考えたというよりかは自分の中の深い場所から自然とわき出てきたり掘り起こされて出てきた曲でもあるんです。
- EMTG:今作は以前にも増して全体的にエモい印象を受けました。
- 村上:それは嬉しいですね。そのエモさは常に大事にしているところで。レコーディング中も基準の一つとして、「もっとエモく」「エモさが足りない」等、その言葉が頻繁に出てくるんですが、今回は制作中、その「エモい」に加え、「カタルシス」という言葉もよく出てきました。今回はそのエモさもですが、各曲のどこかにカタルシスも作ってあげたくて。
- 吉牟田:今作は自分も復帰してキチンと基に戻る前の新鮮さも作品に入れられたかなと。が故に前作の延長線上の作品に納まっていないのも特徴ですね。
- 村上:そうそう、初めてこの4人が揃った時のような、いわゆる初期衝動感も多分に詰め込まれていますからね。「一緒に合わせていて楽しい!!」みたいな。回り道をしたけど、凄くいいアルバムができたと自負しています。この感覚は忘れちゃいけないし、常に持っていたいですね。
- EMTG:では、忘れそうになったら、また誰かが一旦長期お休みしましょう(笑)。そうしたら、またきっと初期衝動性たっぷりな作品が…(笑)。
- 一同:(大爆笑)。
- 村上:まっ、そうならない為にも、この新鮮さを保ち続け更に進んでいきますから(笑)。
【取材・文:池田スカオ和宏】
リリース情報
永遠について語るとき、私たちの語ること
2017年07月05日
mini muff records
1.アテネ
2.GLORY GLORY
3.名もなきアクション
4.Like a swallow
5.私とあなたとこの町のグラビティ
6.TO GEN KYO
7.ミスターサンライズ
8.フール フール フール
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■ライブ情報
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08/26(土) 鹿児島 SR HALL
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09/09(土) 大阪 心斎橋 pangea
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※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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