LILI LIMITの新機軸ポップチューン「LAST SUPPER EP」

LILI LIMIT | 2017.06.28

 昨年の7月にメジャーデビューし、精力的な活動を繰り広げてきたLILI LIMITが、2017年最初の作品となる「LAST SUPPER EP」を完成させた。収録されている4曲は、どれも「食」をテーマとし、人々の出会いや別れなどの日常を描いている。各曲に刻まれている多彩な物語、風景がとても印象的だ。そして、精緻に構築されているサウンドとメロディが圧倒的に心地よい。リスナーのイマジネーションを無限に刺激するこの作品には、どのような想いがこめられているのだろうか? 牧野純平(Vo)に語ってもらった。

EMTG:どのようなEPにしたいと思っていました?
牧野:今までのイメージを一新できるようなものというか、新しいステージへ行くようなものにしたいと思っていました。あと、変化として大きいのは、アレンジをメンバー全員で今まで以上にしたという点です。メジャーデビューしてからは、土器大洋の頭の中にあるサウンドを具現化していく曲作りをしていたんですけど、今回はメンバー全員が意見を交換しあったんです。それぞれの中での流行りとか、影響された音楽も反映されていると思います。
EMTG:そういう作り方をした理由とは?
牧野:「それぞれが持っている要素を活かさないともったいないな」というのが大きかったです。5人それぞれがいろいろな音楽を聴いているので、それをちゃんと反映したかったということですね。そういう作り方をすると、リスナーの層が広がっていくことにも繋がるのかなという考えもありました。
EMTG:「より広い世界へ飛び出したい」という想いが強いんですね?
牧野:はい。それがメジャーデビューしたということの意味ですから。
EMTG:昨年の10月にアルバム『a.k.a』をリリースした後、全国ツアーを回って、今年の4月にはCzecho No Republic、フレンズ、ねごととの2マンツアーがありましたけど、メジャーデビュー以降の様々な経験から得ているものも多いですよね?
牧野:そうですね。僕らは「ライブをどう表現していこうか?」というのを、より一層考えるようになっているんですけど、なかなか答えが出なかったんですよ。そういう僕らにとって、Czecho No Republic、フレンズ、ねごととのライブは大きかったです。あの3バンドのライブから共通して感じたものは「多幸感」というか。ライブが終わった時に「幸せ」をお客さんが得ていると感じたんです。僕らのライブもきっとそういうものが求められているんだなと考えるようになりました。
EMTG:そのことによって、ライブの見せ方も変わりました?
牧野:変わったと思います。ステージに立っている人間の顔の表情や歌い方によって伝わるものも大きいので、そういう部分に気を遣うようになりました。そうやって伝えたものによって、お客さんに幸せになってほしいです。今までは、ライブの時間の中でLILI LIMITの音楽性の振り幅を観て頂くことに重点を置いていたんですけど、今は目標の立て方が変化しました。
EMTG:なるほど。では、今作に関する具体的なお話に入りましょう。まず、4曲を通して、「別れ」とか「最後の晩餐」というものが描かれているのが印象的だったんですけど、このテーマはどのようにして出てきたものなんでしょう?
牧野:昨年出した『LIVING ROOM EP』が「住」について歌っている作品なので、今回は「食」について歌おうかなというのがありました。例えば4曲目の「STREET VIEW」は、《ただ歩いて ただ出会って また歩いて また出会って》と歌っていますけど、人は出会いとか別れを体験した時はいろいろ感じつつも、すぐに忘れていってしまう面もあるんですよね。つまり、忘れながら成長と失敗を繰り返していくのが人間。そして、それは「食」に通ずるものがあるのかなと。人間は「昨日何を食べたか?」とか、すぐに忘れちゃうものですから。そういう「食」と「人生」を繋げて書いたのが、今回の歌詞です。
EMTG:1曲目の「LAST SUPPER」は、同棲を解消する前夜の物語が浮かぶ曲ですけど、これも最後の晩餐をモチーフとしながら人生を描いているんですね?
牧野:そうですね、「次のステージに行こう」という、バンドの現在と未来を描いたんですけど、そういうものを具体的に描き過ぎると冷めてしまう自分がいるので、恋愛をイメージできるようなものに置き換えて歌詞にしました。あと、昔からLILI LIMITを知っている人たちにも伝わるものがあったらいいなと思ったので、山口で活動していた時代にやっていた、僕らが最初に企画した「思い出モニュメント」というイベントのタイトルも歌詞に盛り込んでいます。
EMTG:超初期のイベントなんですね。
牧野:はい。そのイベントに出ていたのが、以前土器と丸谷がやっていたバンドなんですよ。この言葉を入れることによって、昔のお客さんが当時のことを思い出してくれたらなと。あと、恋愛に置き換えた歌詞であることによって、より多くの人の体験とリンクしたらいいなあというのも思っています。
EMTG:「LAST SUPPER」は、クラブで流れたら気持ちよさそうなサウンドですね。
牧野:僕はこういうサウンドがすごく好きですし、自分の中の流行が素直に出ている曲でもありますね。
EMTG:先ほど、「メンバーそれぞれの要素を加えて制作した」とおっしゃっていましたけど、各自の好きなものをバンドとして表現するのは、匙加減の難しさもありますよね?
牧野:確かに、全体のバランスをとるのは難しいですね。でも、今回、そういうことも良い具合にできたので、今後に繋げられそうです。僕らは自分たちが好きなことに対してしか興味が出ないですし、時代によっていろいろ変化もするんでしょうけど、そこが武器なのかなということも思いました。
EMTG:多彩さもありつつ、「キャッチー」なのも、LILI LIMITの武器だと思います。牧野さんの歌声自体も、すごくキャッチーさに繋がっているんじゃないですかね?
牧野:僕の声は好き嫌いが分かれますけど、そう感じて頂けたら嬉しいです。マニアックな部分を押し出したものにはしたくないので、キャッチーさを出せる今みたいなバランスで、これからもやっていきたいです。
EMTG:今、おっしゃったようなバランスは、「LIKE A HEPBURN」に出ていると思います。理想と現実の狭間で悩む人を、『ティファニーで朝食を』とか、オードリー・ヘップバーンをモチーフとして描いているのが粋ですよ。
牧野: SNSとかを通じても、理想と現実の狭間で悩んでいる人が多いのを感じるんですよ。だから「君は君らしくあれば、それが素敵なことなんじゃないか?」っていうことを歌詞にしています。
EMTG:普遍的なテーマをヘップバーンという誰もが知っているスーパースターに託して描いているのが、この曲のキャッチーさの源だと思います。
牧野:ありがとうございます。ポップアイコンを探す中で、こういう歌詞になりました。いろいろな方々の名前を試させて頂いたんですけど全然音が合わなくて、最終的にヘップバーンに辿り着いたんです。音がハマったら、他の人になっていたかも(笑)。
EMTG:(笑)3曲目の「ERAION」は、不思議な雰囲気を持った曲ですね。
牧野:この曲は土器が作ったんですけど、聴いた時に僕の中でいろいろイメージがふくらんだんです。
EMTG:金属がこすれるような音が盛り込まれていますけど、これはナイフとフォーク?
牧野:そうです。バイノーラルマイク(実際にその場にいるような臨場感があるサウンドを録れるマイク)を使って録ったと言っていました。あと、サビの歌詞に関しては「日本語でも英語でもない感じがほしい」っていうのも土器は言っていましたね。そういうことを踏まえながら、この歌詞になっていきました。
EMTG:この歌詞は、リスナーによっていろいろな解釈があると思います。
牧野:メッセージ性をあまり強くしたくなかったので、抽象的にしたんですよ。だから、自由に想像して頂けたらなと思っています。でも、「分からない」というのをそのままにするつもりはなかったので、4曲目の「STREET VIEW」で全ての伏線を回収する流れになっています。
EMTG:「STREET VIEW」の作曲クレジットは「LILI LIMIT」ですね、
牧野:作曲クレジットが「LILI LIMIT」なのは初めてです。今、メンバー全員が作曲をするようになっているので、こういうのも新しいLILI LIMITに繋がっていきそうです。
EMTG:1曲目の「LAST SUPPER」と「STREET VIEW」の両方に《あの日々にバイバイ》という一節が出てくるのも興味深いポイントです。
牧野:そこもいろいろ想像して頂けると嬉しいです。あと、今回は去年リリースした『LIVING ROOM EP』と繋がっているEPでもあるので、両方を聴くと、より楽しめるんじゃないかなということも思っています。例えば、「STREET VIEW」の歌詞の中で町を歩いている主人公は、『LIVING ROOM EP』の「Bed Room」に出てくる彼なんですよ。リンクするそういう部分も踏まえて聴くと、いろいろな発見があるんじゃないかと思います。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

LAST SUPPER EP

LAST SUPPER EP

2017年06月28日

Ki/oon Music

01. LAST SUPPER
02. LIKE A HEPBURN
03. ERAION
04. STREET VIEW

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お知らせ

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■ライブ情報

LILI LIMIT presents Archive
09/02(土) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd
09/08(金) 名古屋ell.FITS ALL
09/10(日) 福岡DRUM SON
09/16(土) 渋谷WWWX
09/18(月・祝) 心斎橋Music Club JANUS

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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