BURNOUT SYNDROMES、TVアニメ「銀魂.」エンディングテーマを収録した2ndフルアルバム『孔雀』をリリース!

BURNOUT SYNDROMES | 2018.02.26

 BURNOUT SYNDROMESが1年3ヵ月ぶりのニューアルバム『孔雀』をリリースした。トリオ編成の枠を超えたバラエティ豊かな作風に仕上げた前作『檸檬』から、さらに一歩踏み込んだ今作は、その創造性のリミッターを全解除して作り上げた快作だ。とにかく「前作と同じものは絶対に作らない」という執念にも似た想いが、彼らを突き動かしている。多様性を増した楽器のアンサンブル、デジタルとアナログの融合、動物やモノの擬人化で浮き彫りになる人間として生き方ーーいくつもの裏テーマを盛り込み、丁寧に作品と向き合うメンバーの言葉からは、いま何を作りたいかという衝動だけではなく、音楽家として大切にするべきものは何なのかを、常に自分自身に問いかける真摯な姿勢が感じられるはずだ。

EMTG:前作『檸檬』以降、曲ごとに全く違った世界観を作り上げるところをバーンアウトの強みにしてきましたけど、今回の『孔雀』でその振り幅がさらに広がりましたね。
熊谷和海(Vo・Gt):そうですね。今回は『檸檬』のときに手加減した部分を強化したんです。
EMTG:手加減してた?
熊谷:前回は、自分のなかでサウンドの上物をギターで埋めにいった意識があったんですね。それは自分の得意技でもあったんですけど、それだけじゃダメだろうなっていうのは、なんとなく『檸檬』の制作の後半ぐらいから感じていたんですよ。でも、あのとき、途中から方向転換するのは厳しかったので、それを次の課題にしようと思ったんです。
EMTG:じゃあ、前作ができてすぐに今作に着手してたんですか?
熊谷:いや、『檸檬』を出したあとは、それ以外の部分では、何をしたらいいかわからないぐらい空っぽな状態になっちゃったんですよ。だから、直後に次のアルバムを作り始めると、同じものになってしまいそうだったし、それだとアルバムを作る意味がないので。ちゃんと1枚ごとのカラーを明確に分けるために、構想を練る時間は結構かかりました。
EMTG:前作と差別するためのいちばん大きなポイントは何でしたか?
熊谷:サウンド面での変化ですね。今回、曲を書くときは、まずサウンドのアイディアありきにしたんです。たとえば、「花一匁」は和風っぽい感じでいくとか、「吾輩は猫である」はパーカッションでアコースティックな感じでいく、「Melodic Surfers」はラップする、「POKER-FACE」は打ち込みでとか。そこから、それに合う歌詞をつけていったので、今回はこの歌詞を歌いたいからっていうきっかけの曲は1曲もなかったんです。
EMTG:一応聞きますけど、熊谷くん、いま言ったようなアルバムの方向性をメンバーと共有したりは……。
熊谷:しないです(笑)。メンバーは全部完成してから、アルバムの全体像を知る感じじゃないですかね。こういうインタビューの場で「あ、そうだったの?」みたいな。
EMTG:そこは相変わらずなんですね(笑)。
廣瀬拓哉(Dr・Cho):でも、最初になんとなく「今回はパーカッションを増やそう」とか、「面白いビートを突っ込んでいこうと思ってる」っていうのは言われてたので。まあ、ふわっとし過ぎてるんですけど(笑)、自分の引き出しを増やすつもりで臨みましたね。
EMTG:制作に関しては、音のアイディア出しから始まって、一度その方向性が決まってからはスムーズに進んだんですか?
熊谷:うーん……正直やったことがないことばっかりだから、失敗するかもしれないって思いながらの制作でした。やっぱり新しいことに挑戦する以上、中途半端なかたちではやりたくなかったんです。1曲ごとに振り切りたかった。でも、振り切るっていうのはフルスイングなわけで、結果はホームランか空振りしかないわけじゃないですか。っていうのが、デモの段階からずっと怖かったんです。「これ、本当にいいのか?」って思いながら、そこはプロデューサーのいしわたり淳治さんがバランスをとってくれましたね。
石川大裕(Ba・Cho):僕は曲ができていくなかで、「めっちゃ良いやん!」とか言うんですけど、(熊谷は)「ほんまに!?」って疑うんですよ(笑)。やっぱり自分が納得いくものを突き詰めたいんでしょうね。
EMTG:曲ができていくなかで「これで本当にいいのか?」っていう不安が、「これなら大丈夫だ」って思えた瞬間はあったんですか?
熊谷:なかったです。できあがってみるまでわからなかったし、これが失敗かホームランかは、リスナーの方に聴いてもらったときにわかることだと思うんですよね。
廣瀬:僕は、熊谷の頭のなかにあるものを、いかに再現するかをずっと探してたから、完成したときに、「あ、今回も前を越える作品が作れたな」っていう安心感はありました。
石川:僕も期待以上のものを届けられる自信はありますね。
EMTG:今回、とにかく曲ごとの世界観がすごく鮮やかなんですけど、「POKER-FACE」とか「君をアンインストールできたなら」みたいな電子楽器の要素が増えたのも印象的です。
熊谷:今回はアナログとデジタルの融合っていうのが、ひとつテーマにあったんですよね。パソコンでデモを作ったり、ミックスの勉強をしたりしたので、そうなると、自分のなかで、デジタルの重要性がけっこう大きくなっていったんです。「君をアンインストールできたなら」なんかは、まずボコーダーを使いたいなって思って作った曲ですし。
EMTG:アンドロイドが恋をするという歌詞の設定もボコーダーに引っ張られて?
熊谷:人間って機械だなと思うきっかけがあったんですよ。だからバグがあって然るべきじゃないかなって。そのバグのかたちは人それぞれだと思うんですけど、「君をアンインストールできたなら」の主人公は……これはもうほとんど僕なんですけど。僕みたいに考え過ぎちゃう人にとっては、恋をするっていうのがバグになるような気がしたんです。「なんでこんなドキドキするんだろう?」っていうのは、バグの一種じゃないかなっていう感覚ですね。
EMTG:なるほど。それと対照的なのが、たとえば1曲目の「ヨロコビノウタ」。ベートーヴェンの「歓喜の歌」をモチーフにした曲で、ストリングスと聖歌隊を生で入れてるという。
熊谷:やっぱり前作1曲目の「檸檬」はけっこう発明だと思ったんですよ。
EMTG:ムソルグスキーの「展覧会の絵」を組み込んだ曲でしたね
熊谷:そう。クラシック音楽を使うっていうのはアイディアとして好きだし、それは我々のカラーとしてやり続けたらいんじゃないかなと思って、今回も入れたんです。
廣瀬:この曲は展開が複雑なように見せかけて、意外と洗練された曲だったりするので。正直、(熊谷は)「どういう頭のなかをしてるんだろう?」って思いますね(笑)。
熊谷:ストリングスとクワイヤ(聖歌隊)のみなさんが総勢40人ぐらい関わってるんですよ。それによって壮大さと同時に、いままでにないパワー感が生まれるんだなと思って。熱量はあるんだけど、くぐもった感じじゃなくて、カラッとした感じになりましたね。
EMTG:「歓喜の歌」をモチーフにした理由は何だったんですか?
熊谷:この曲にまつわるエピソードが好きなんですよ。もともとシラー(ドイツの詩人)の詩で「歓喜の歌」というのがあって、それを読んだベートーヴェンが感銘を受けて作ったのが、あのメロディなわけなんですよね。で、何百年か過ぎたときに、僕がそこに詞をのせるのが面白いんじゃないかなと思って。シラーの詩の内容は考えずに書いたんですけど、改めてシラーの詩を読んでみると、ほとんど内容は一緒なんです。詩から想像されるメロディ、メロディから想像される詞っていうのが、何年経っても一緒なのが面白かったですね。
EMTG:どちらも命が生まれる歓びがテーマなんですね。
熊谷:そうです。誕生の歓びですね。
EMTG:今回のアルバムには、全体として生きる喜びだとか、人間とは?みたいなものがテーマになっているような気がするんですけど、そのあたりは意識しましたか? 
熊谷:アルバムのテーマのひとつに、僕のなかでは「擬人化」と「擬物化」っていうのがあったんですよ。なんとなく阿部公房の感じというか。ああいうのを全体でやれたらなっていうのがあって。結局、全曲でやったわけじゃないんですけど、その名残があるんです。
EMTG:さっきの「君をアンインストールできたなら」だったら、人間をパソコンに擬物化してたり。
熊谷:あとは、「吾輩は猫である」は猫の曲なんですけど、それも人間のメタファーなんですよね。こういう関係が人間の理想というか、猫を見習うべきだなっていう曲であったり。あとは最後に入ってる「Dragonfly」もトンボの話なんですけど……。
EMTG:結局、それも人間のことですよね。すごく生きるエネルギーに溢れてる。
熊谷:やっぱりモノとか虫とか動物に喩えるのは、メッセージとして伝えやすいような気がしてるんですよ。それが単純に動物のことを歌ってるわけじゃなくて、人間の歌だって聴き手が解釈するのは、たぶんルールとしてあるんですよね。それが、ある種、僕の得意技でもあると思うので。まあ……それも次回は封印しようかな、と思ってますけど(笑)。
EMTG:いま出てきた「Dragonfly」は、これだけいろいろな方向に振り切ったアルバムのなかで、いちばんバーンアウトらしさを感じる曲でした。
熊谷:これが、僕のなかでは『孔雀』のど真ん中の曲かなと思ってます。いろいろなアプローチの曲とか楽器を入れて、いままでやったことがないチャレンジをするのは、僕のなかですごく怖かったんですよ。実はそういう自分を鼓舞するために、最初のほうで作ったのがこの曲なんです。前回までのバーンアウトらしさもあり、なおかつ新しい方向にも踏み出していて。だから、この曲にアルバムの最後を締めてほしいなと思ったんですよね。
EMTG:なるほど。サウンド的には進化していくけど、バーンアウト本来の青春性だとか泥臭さ、熱量みたいなものは変わらないっていう意味でも大切な曲じゃないですか?
熊谷:それは自分の引き出しとして、絶対に失わないんですよね。「出してくれ」って言われたら、すぐに出せるし、逆に言われなければ、出さなくていいと思ってる部分なんです。
EMTG:ある意味、らしさは出し入れ自由というか?
熊谷:そうです、そうです。僕、いままでのレコーディングのなかでエンジニアさんとか、いしわたりさんと交わした会話を全部覚えてるんですよ。曲を書いたときの感情も、狙いも、ミックスのときの指示も全部。その出し入れは常に自在なんですね。だからこそ、同じことをやる必要はない。タイアップとかで我々のファンじゃない、他のコンテンツのお客さんに誠意を見せる瞬間は、それにいちばん合った引き出しを開けますけど。それ以外の場所、今回のアルバムみたいに、自分たちのエゴが許されるところでは、それとは別の引き出しを増やしていくことが、僕の思うアーティストなんです。だから、同じことはしたくないんですよ。「どうせやれるし」っていうのがあって。「Dragonfly」と同じような曲を100曲書けと言われたら書けるんです。でも、それをやる必要がないんですよね。
EMTG:なるほど。インタビューの最初に言ってた、「『檸檬』とは違うものを作りたい」って言ってた、本当の意味がいまわかりました。
廣瀬:熊谷が言ってることは誇張ではなく、「そうなんだろうな」と思います。いつでも自分の引き出しは開けられる。だからこそ新しいものをやりたいんだなっていうのは、一緒にいて思いますね。それについていくために僕たちも成長しなきゃいけないんです。
熊谷:今回こういうアルバムを作ったから、次も、その次も、もう同じことはやらないと思うので。やっぱり「次、何をしてくれるんだろう?」っていうワクワクを届けるのが、我々の使命なのかなと思うんですよ。今回のアルバムを作ったことで、自分の伸びしろが曲に出てる気がしたし、なんとなく「次、もっとこうしたらいいな」っていうのはあるので。それを繰り返していったら、自分はどこに行けるんだろうな?っていうのが、いま楽しみなんです。それが、いろいろな楽曲、理論、技術を吸収していく原動力になっていますね。

【取材・文:秦 理絵】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル BURNOUT SYNDROMES

リリース情報

孔雀

孔雀

2018年02月21日

Epic Record Japan

1.ヨロコビノウタ
2.花一匁
3.若草山スターマイン
4.吾輩は猫である
5.Melodic Surfers
6.ハイスコアガール
7.君をアンインストールできたなら
8.POKER-FACE
9.斜陽
10.Dragonfly

お知らせ

■マイ検索ワード

■熊谷和海 (Vo・Gt)
<小指 湿布>
小指の第二関節に湿布を貼ると、交感神経が緩んで、よく寝られるんですよね。すごく効きました。あと足の裏とかこめかみに貼るっていう進化形態もあるらしいんですけど、一応、それはいざというときのために残してます(笑)。

■石川大裕(Ba・Cho)
<オティティメディア>
響きが可愛いと思って調べました。中耳炎のことみたいです。
(正しくは、 Acute otitis media)

■廣瀬拓哉(Dr・Cho)
<ステレオ モノラル 違い>
ミュージシャンとしてどうなのかと思うんですけど……。ドラムはアコースティック楽器なので、あんまり機械を使うことがないんですよね。でも最近、機械を使うことがあって。ようやく理解できました。


■ライブ情報

BURNOUT SYNDROMES「全国ワンマンツアー2018」
3/03(土) <大阪>梅田CLUB QUATTRO
3/17(土)<愛知>ell FITS ALL
3/21(水・祝)<宮城>仙台CLUB JUNK BOX
3/23(金)<東京>渋谷CLUB QUATTRO
3/25(日)<福岡>DRUM SON


【大阪】梅田CLUB QUATTRO LIVE
03/03(土) 梅田CLUB QUATTRO

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-ハルバン’18-

03/10(土) 広島市内ライブサーキット

【愛知】ell. FITS ALL LIVE
03/17(土) ell. FITS ALL

「SANUKI ROCK COLOSSEUM」~BUSTA CUP 9th round~
03/18(日) 香川・高松市内ライブサーキット

【宮城】仙台CLUB JUNK BOX LIVE
03/21(水・祝) 仙台CLUB JUNK BOX

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