Nulbarichが2ndアルバム『H.O.T』をリリース

Nulbarich | 2018.03.06

 ブラックミュージックをベースとした洗練されたソングライティングと、クールでいながら熱量の込められたグルーヴが評判のNulbarich(ナルバリッチ)。2018年3月、ツアーやフェス出演などによりバンドとしての経験を積んだ彼らが2ndアルバム『H.O.T』をリリースする。前作よりもさらに研ぎ澄まされた楽曲とバンド演奏が収められた今作について、ボーカルJQにインタビューを行った。

EMTG:アルバムタイトル『H.O.T』は「ホット」と読んで良いのでしょうか?
JQ:「ホット」で大丈夫です。このタイトルは、自分たちにとって今一番アツいアルバムという意味での「HOT」。そして「Hang On Tight」つまり「(まだまだ先を目指すから)しっかりついて来てね」という意味をかけています。ツアータイトルでもあり曲名でもある「ain’t on the map yet」でも示している通り「僕たちはまだ何もなし得ていない」という思いがあるので、この先に進むという意思表示をしたかったんです。
EMTG:SpotifyやApple Musicといったサブスクリプションサービスによって、これまで以上に「アルバム」の意義が問われ始めている時代だと思います。今回新作アルバム制作にあたり、目指すべき完成のイメージはありましたか?
JQ:サブスクの普及が進んでいる今、プレイリストの中で曲が聴かれるということが増えているので「それぞれのプレイリストにいかに入り込んでいくか」ということについて意識しました。自分たちのオリジナル感は意図しなくても残るものだと考えた上で「曲ごとのパンチ力や明確なジャンル感を出していこう」と、自分たちに自信を持って寄せて行きましたね。

でも、僕自身もそうなのですが、その一方でアルバムを一つのパッケージとして聴くという方もいます。そういう意味でアルバムとしてのトータル感にもこだわりたかったので、インタールードを入れるなどしています。
EMTG:デビューアルバムだった前作には、ブラックミュージックをベースとしながらも、日本の音楽ファンが馴染みやすいインディーロック的な要素が盛り込まれていました。それに対して今作ではそうしたギターバンド的な要素が抑えられているように感じます。
JQ:全体的にグルーヴを重視しましたね。アルバムになると一時間ヴォーカルを聴かせるよりも、身体で感じて踊らせる方がみんな聞き流してくれるので。今までの曲もミックスし直して、アルバム的な聞こえ方になっていると思います。
EMTG:そうした変化には「前作が受け入れられたから、もっと自分本来の音楽性を出せそうだ」といった意識の変化があるのでしょうか?
JQ:意図してジャンル感を広げたとか、ブラック感を強くしたということはないです。ただ、僕は聞いてくれる人を無視して作ったアルバムというのは存在していないと思っています。僕らも「評価されたい」という思いや「こう認識されたい」という思いなど、様々なものを持っています。でも、そうしたいろんな思いを抱えた上で、僕たちがどうやって作品を作るかというと、一生懸命やるだけなんです。「今持っている全てを入れる」というのが一番自然体だなと。その上で、歌詞の部分でも、音楽的にも、ヴィジョンが広がったという印象がありますね。そうした「広がり」はライブのステージが広がっている感覚とシンクロしていて「フェスを経験してきたアーティストが曲を書くと、その影響が出てくるんだ」と自分たちでも感じられました。
EMTG:2018年現在、世界的にはバンド音楽不遇の時代だと思います。クオンタイズされ、迫力ある音質のビートが世間を席巻しているいま、本作においても明らかにビートに工夫がなされていると感じました。そうした現代の音楽プロダクションに対する意識はされていたのでしょうか?
JQ:生音と今のサウンド感の融合は意識しています。もともと僕はDTMの人間なので、全曲のドラムを生で録音した上で使うか使わないかなど判断しながら作っています。TR-808のスーパーローが鳴っているトラップの後に僕らの曲が流れて「ロー弱いよね」と言われるのも嫌ですし(笑)そういう意味では、どこのプレイリストに入ってもなじめるようなミックスにはなっていると思いますし、僕らなりのサブスクへのアプローチなのかもしれないですね。
EMTG:その一方でギターがそれぞれの楽曲の中で重要なポジションを占めているのが印象的でした。
JQ:ギターはヴォーカルみたいなものなので。音色も込みですごくこだわりますね。ギターとホーンに関しては、DTMで打ち込んだものは生演奏に勝てないんですよ。だからバンドの強みを出すとなった時にギターは重要で、しっかりとメンバーの脳みそを借りるようにしています。「自分では鳴らせない音」というイメージが明確にあるので、憧れを持って使っている部分もありますね。
EMTG:日本国内の状況はともかく、世界的には複数のソングライターが関わって様々なアイデアのを組み合わせて1曲を作る「分業制」が当たり前の時代です。Nulbarichにとってはバンドメンバーの存在がそうした「共作者」としての役割を担っている部分もあるのでしょうか?
JQ:あると思います。特に自分はベースやギターに関しては一切できないので、バンドメンバーの力を借りています。メンバーは1セクションに2人ずつくらいいるのですが、自分がラフを投げて彼らが挙手制で誰が参加するかを決めるようになっています。僕も曲の仕上がりはある程度想像しているつもりですが、その通りになっている曲はあまりないんじゃないかと思いますね。
EMTG:各楽器でメンバーが複数いるというのは「分業制」と「バンドセッション」の良いとこどりのようにも感じますね。
JQ:そうですね。楽器が変わるだけで音色が変わるじゃないですか。それと同じように、演奏者が変われば全然違うものになるんです。メンバーがみんなお互いをリスペクトし合って「ここは俺じゃなくてお前だな」とかそういうやりとりがあったりするのですが、Nulbarichはゴレンジャーや仮面ライダーにセーラームーンなどいろんなヒーローが集まったオールスターみたいなイメージです。めっちゃ自由なので、それをまとめるのは大変なんですけど(笑)
EMTG:楽曲制作の場はもちろんですが、ライブにおいても大きな効果をもたらしそうですね。
JQ:メンバーが一人入れ替わるだけで、そこにみんなが合わせていくので、全然別物になってきますね。しかも僕らの楽曲はほとんど楽譜がなくて、コード進行と展開くらいしか決めがないんです。それは歌も同じで、同じ曲でも歌う環境で別物になってきますね。
EMTG:歌う環境?
JQ:例えば、ライブが楽しい時にバラード曲をバラードっぽく歌えないんですよ。僕は演じるようにバラードの時だけその曲に陶酔するのではなく、楽しい気分ならバラードも楽しく歌うようにしています。ライブはライブの時の感情で歌いたいので。
EMTG:それは面白いですね。サブスクリプションと同時に、ライブでの体験が重視される現代のポップミュージックにおいて効果的な手法のように感じられます。
JQ:作品に込めた想いはCDまでにしています。それはCDが一番クオリティーが高い状態なので、ライブはライブの楽しみ方があると思うんです。人間として自分も感情がブレる分、メンバーにも「その時の感情で弾いてください」と言っています。
EMTG:このアルバム『H.O.T』もそうですが、Nulbarichの音楽は日常に寄り添う作品だと感じます。本作をどのように聴かれたいかを教えてください。
JQ:音楽と寄り添っている時間って人それぞれだと思います。1日でアルバム1枚聴く人もいれば1曲の人もいるだろうし、出勤時しか聴かないという人もいるでしょう。僕はそうした限られた時間の中、楽曲が1分だけでもいいからその人の生活の一部になることが大事だと考えています。
EMTG:はい。
JQ:例えば「失恋の曲」。元カレが好きだったアーティストを聴くとその人を思い出して切なくなるというシーンがあるとして、きっとその曲自体は失恋のことを歌っている曲じゃないと思うんです。そういう意味で僕たちの音楽が「みんなの音楽」になるには、できるだけみんなの日常に入り込むしかない。だから僕としては「聞き流してもいいから聴いて」という感じですね。

そして、それは僕たち自身も同じで。ライブで自分たちの楽曲を演奏するときなんかは、それぞれの曲にまつわる思い出を詰め込んで弾いているんです。

【取材・文:照沼健太】

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リリース情報

H.O.T

H.O.T

2018年03月07日

ビクターエンタテインメント

1. H.O.T (Intro)
2. It’s Who We Are
3. Almost There 
4. Zero Gravity
5. Handcuffed
6. In Your Pocket
7. See You Later (Interlude)
8. Supernova 
9. ain’t on the map yet 
10. Follow Me
11. Spellbound
12. Construction (Interlude)
13. Heart Like a Pool

<BONUS CD>
1. It’s Who We Are
2. Lipstick
3. Everybody knows
4. Spread Butter On My Bread
5. On and On
6. Ordinary
7. NEW ERA
8. Follow Me

お知らせ

■検索ワード

「 ニューヨーク 地下鉄 」 (NY Subway)
先日仕事でニューヨークに行きまして、結構あちこち地下鉄で移動をしたのですが、その際、かなり路線を検索しました。


■ライブ情報

Nulbarich ONE MAN TOUR 2018 "ain’t on the map yet" Supported by Corona Extra
03/14(水) なんばHatch
03/16(金) 新木場STUDIO COAST
03/17(土) 新木場STUDIO COAST
03/28(水) 仙台Rensa
04/06(金) 広島クラブクアトロ
04/07(土) イムズホール
04/13(金) 名古屋ダイアモンドホール
04/25(水) Zepp DiverCity Tokyo

ARABAKI ROCK FEST.18
04/28(土)-29(日・祝)
みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

VIVA LA ROCK 2018
05/03(木・祝)-04(金・祝)-05(土・祝)
さいたまスーパーアリーナ
※Nulbarichの出演日・出演時間は後日発表

JAPAN JAM 2018
05/03(木・祝)-04(金・祝)-05(土・祝)
千葉市蘇我スポーツ公園

森、道、市場2018
05/11(金)-12(土)-13(日)
愛知県蒲郡市ラグーナビーチ(大塚海浜緑地)&遊園地ラグナシア&???

METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2018
05/19(土) METROCK大阪特設会場
05/27(日) METROCK東京特設会場

GREENROOM FESTIVAL’18
05/26(日) 赤レンガ地区野外特設会場

頂 -ITADAKI- 2018
06/02(土) -03(日)
静岡 吉田公園特設ステージ
Nulbarich プレミアムライブ
06/08(金) 東京都内某所

SUMMER SONIC 2018 東京
08/18(土) - 19(日)

THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018
10/07(日) - 08(月・祝)
鹿児島市 桜島多目的広場&溶岩グラウンド

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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