a flood of circleがセルフタイトルを冠したニューアルバム『a flood of circle』をリリース!

a flood of circle | 2018.03.09

 8作目にしてセルフタイトルを冠したニューアルバム『a flood of circle』をリリースしたa flood of circleが、そのリリースと同時に、約1年半にわたりサポートギタリストを務めたアオキテツの正式加入を発表した。初代ギタリストの失踪に始まり、12年間にわたりギタリストがなかなか定着しなかったa flood of circle。そこに初の一般公募で採用されたアオキテツは「a flood of circleに骨を埋める」という覚悟で、バンドの新たな一員へと加わった。いうことで、今回のインタビューでは、佐々木亮介(Vo&Gt)と新ギタリスト、アオキテツの2人に正式加入の経緯を聞きつつ、a flood of circle史上最も自由奔放に完成させたアルバム『a flood of circle』について話を訊いた。より強くなった“バンド”としての意識、世界のポップカルチャーにも目配せをした貪欲なクリエイティビティ、さらに“世界平和”を語る外向きなモードや貴重なデモ音源を持ち込みながらの制作秘話まで、ざっくばらんに語ってくれた。

EMTG:テツくんは佐々木くんのいくつ年下でしたっけ?
佐々木亮介(以下、佐々木):6つです。俺が31歳で、テツが25歳ですね。けっこう離れてるんですよ。
EMTG:正式加入の決め手は何だったんですか?
佐々木:これまでa flood of circleが百何曲、いろいろなスタイルの曲を作ってきましたけど、テツはどれもちゃんとフィットして弾けるんですよ。それプラス、これから先もどんどん個性を爆発させてほしいっていう期待感を込めて、ですかね。
EMTG:好きな音楽の話をしても気が合うんですか?
佐々木:俺はテツが聴いてきた音楽のことをあんまり知らなくて、基本的に(奥田)民生さんとチバ(ユウスケ)さん、あと、生形(真一)さんでできてるっていう感じみたいです。
アオキテツ(以下、アオキ):そうですね(笑)。
EMTG:テツくんはここ1年半ほどa flood of circleのサポートを経ての加入ですけど、実際にa flood of circleと一緒に活動してみてどうでしたか?
アオキ:けっこう伸び伸びと楽しくやってます。
EMTG:それはライブを見てても感じます。いい意味で生意気な感じがありますよね(笑)。
佐々木:そうそう(笑)。あんまりプレッシャーを感じないタイプみたいなんですよね。「鈍いのかな?」っていうぐらい。そこが可愛いんですけど。
アオキ:プレッシャーを感じてやってもしゃあないのでね。
EMTG:今回のアルバムが完成したタイミングで正式加入が決めたそうですけど、本人にはどういうふうに伝えたんですか?
佐々木:レコーディングが全部終わって、改めてメンバーと「テツ、どうしようか?」みたいなことを話したんですけど。もちろん満場一致で「あいつしかないでしょ」って感じだったんですよ。リハのあとにそのままみんなで居酒屋に行って、しばらく焦らして(笑)。俺とナベちゃん(渡邊一丘/Dr)と姐さん(HISAYO/Ba)が目配せをして、「いつ言う?」みたいな感じで。
EMTG:それはもう言われるってバレバレだったんじゃない?
アオキ:俺はふつうにお疲れ会だと思ってたら、なんか途中からよそよそしくなってきたんですよね。「なんだ、こいつらは?」と思ってたんですけど(笑)。
佐々木:そわそわしてたよね(笑)。で、まあ、「良いレコーディングができたと思うし、やる気があるなら入れよ」って言って。
EMTG:即答でOK?
アオキ:もちろん。「待ってました」っていう。
佐々木:泣いてましたよ。
EMTG:そうなんだ。もうお互いに「言うか、言わないか」だけだったんでしょうね。
佐々木:そうなんですよね。今回のレコーディングでもフレーズを作ってもらった部分はたくさんあるし。ただ、ライブは変わると思いますね。今までセットリストを組むのも、事後報告的に「これやってね」って頼んでたけど、これからはやるだけじゃなくて、作る発想になってほしいし。これからテツの視点が入ってくるのは楽しみなんです。
EMTG:で、セルフタイトルアルバムですけど。かなり今回はやりたい放題な作品だなと。
佐々木:そうなんですよ。今まででいちばん尖ってるんじゃないかっていうアルバムですよね。全くバランスをとってないですから。
EMTG:わかる。っていうか、逆にこのアルバムを聴いて、今まですごくバランスをとって作ってたんだなあと思いました。
佐々木:逆にね(笑)。たとえば、今までだったら、「Where Is My Freedom」と「One Way Blues」みたいな曲をどっちもひとつのアルバムに入れちゃうっていうのはやってないんですよね。どっちかひとつでいいやって思ってたから。
EMTG:こういうスポークンワード的な攻めた曲はアルバムに1曲あれば十分だったと。
アオキ:だから「Where Is My Freedom」は1回没になりかけたんですよ。
EMTG:この曲はアルバムには絶対必要でしょう。
佐々木:それ、ナベちゃんも言ってて。ナベちゃんが言うから入れようと思ったんですよね。今回は全部がそうなんですよ。できるだけみんなで作りたかったから。
EMTG:みんなで作りたかった?
佐々木:去年ソロを出して、すごく自由な気持ちになれたんですよね。メンバーのありがたみを感じたんです。今までは俺が「こういうアルバムを作ろう」っていうものに、みんながついてきてくれてる感じだったんですけど、今回はナベちゃんにエンジニアを決めてもらったし(前作に続き、ザビエル・ステーブンソンを起用)、姐さんがデモを全部作ってるんです。バンドとしてのマジックが起きてほしい、自分の想像を超えてほしいと思ったときに、みんなで作るっていうことをやりたかったんです。当たり前のことなんですけどね。
EMTG:そのバンド感って、今回、間違いなく音源に反映されると思います。今回、あんまり“良い歌”を書こうとしてないっていうか……この言い方は誤解があるかな?
佐々木:ううん、いいですよ。聞きたい。
EMTG:決して“良い歌”がないっていう意味じゃないんですよ。たとえば、「再生」みたいなメロディの強い曲もある。ただ、歌でバンドを引っ張ることにセンシティブになるよりも、バンドとして良い曲を作るほうに発想がシフトしてそうだなと思ったんですよね。
アオキ:うんうん。
佐々木:そうかもしれない。自分のメロディで勝負っていうよりは、バンド全体だし。今度、チャンス・ザ・ラッパーが来日するじゃないですか。あの人はノートパソコンとかにパッとラップを入れて、そのままリリースしてるんですよ。反射神経で作ってるのが、超楽しそうなんですよね。それが良いメロディに聴こえるから。今の時代はむしろそれぐらいがイケてるんじゃないかっていうのがあるんです。そういう楽しそうなやつがサマソニで大トリをとるんだから、根詰めてやるのはバカらしいじゃないですか。
EMTG:なるほど(笑)。
佐々木:だから、どこかに隙間がある状態にしたかったんですよ。(ソロで行った)メンフィスのミュージシャンたちもそうで。ブルーノ・マーズはみんなの意見を全部試すらしいんですよね。俺もその影響を受けてるんですけど。誰かを否定するのは、委縮しちゃうだけだから意味がないから、全部やって良いのを選べばいい。そういう良い空気の人たちほど、ゴールドディスクとかグラミーを獲ってるんですよね。
EMTG:たしかに。話を聞いてると、いまの佐々木くんはかなり開けた状態みたいですね。
アオキ:メンフィスから帰ってきたとき、すごく良い表情をしてました。
EMTG:そうなんですね。あと、今回のアルバムの目玉のひとつが、UNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)の田淵さんと手がけた「ミッドナイト・クローラー」です。ユニゾンとa flood of circleのハイブリッド・ロック。
アオキ:俺、最近、この曲のことで思い出したことがあるんですよ。
佐々木:お、いいね。何?
アオキ:この曲、もともとタイトルが「Miracle we needed」だったんですよ。
EMTG:それはどういう意味で?
佐々木:これはフェニックスの(「1901」の)歌詞を仮タイトルにしてたんです。あっ、この曲のデモ聴いてもらって、どういう雰囲気の曲だったか書いてもらおうかな。(パソコンを取り出して、「ミッドナイト・クローラー」のデモ音源を流す)
EMTG:……うわ、遅いですね(笑)!全然雰囲気が違う。ちょっとロマンチックなムードもあって、これはこれでけっこう好きですけど。
アオキ:最初めちゃくちゃ遅かったんですね。
佐々木:テーマとしては、MGMTみたいな2000年代の洋楽の感じをいまやったらどうなるだろう? っていうので作ってたんです。ちょっとサイケっぽい、遅めのダンスビートにしたくて。それを田淵さんに渡したら、BPMが倍になって返ってきたっていう。
EMTG:田渕さんには、この1曲だけを投げたんですか?
佐々木:いや、もともとデモが20曲くらいあって、そのなかから10曲ぐらい投げたんですよね。もうちょっとユニゾンっぽい曲もあったはずなんですけど、これに反応したから「あ、意外だな」と思って。全然ユニゾンっぽくないじゃないですか。「なんでだろう?」と思ったら、最終的にユニゾン節に変換しやすかったんでしょうね。
アオキ:信じられないぐらいイントロも速くなってました。
佐々木:もともと田渕さんが「a flood of circleの好きなところを全部ノセでいきたい」みたいなことを言ってたんですよ。「俺が好きなのは「Dancing Zombiez」とか、「The Beautiful Monkeys」みたいな、スピードがあって、ドカンと盛り上がる曲なんだ」みたいなことを言ってくれて。だから余計に「なんでこのデモを選んだんだろうな?」っていうのはあったんですけど、このステップの仕方には、みんな度肝を抜かれましたね。
EMTG:それもa flood of circleを10年前から知る人だからこそ、できたことかもしれないですね。
佐々木:本当にすごく近い目線で俺たちのことを見てくれてますからね。a flood of circleの得意技を知ってくれてるし、持ってないものもわかってるし。
EMTG:今回のアルバムには今までのa flood of circleにはない新鮮な曲も多いけど、この「ミッドナイト・クローラー」は、ひとつa flood of circleらしさの軸になる曲だったんじゃないですか?
佐々木:ああ、それで言ったら、同時に今回のアルバムにはa flood of circleっぽい曲もいっぱいあるんですよ。実は、「ミッドナイト・クローラー」を作る前までは、今までのa flood of circleっぽい曲はもういらないと思ってたんですよね。でも、田淵さんが手綱をとってくれたんです。「いやいや、a flood of circleはここでしょ」って。「ミッドナイト・クローラー」があったから、安心して他ではもっといける! っていうのができたのかもしれなですね。
EMTG:新しい雰囲気の曲で言うと、特に終盤、「Where Is My Freedom」から「Rising」と「Wink Song」にかけて。緻密なコーラスワークとエフェクティブな音像がとても良い。
佐々木:(エンジニアの)ザブがエフェクトをかけまくるんですよ。フィルターっていう、音をこもらせて、だんだん明るくしていくやつとか。あれ、ザブが大好きなんですよね。でもよく聴いてると、海外のポップスで多く使われてるんです。カミラ・カベロとかね。これはギターのエフェクターっていうより、ポストプロダクションで変なことをしてますね。
アオキ:だから俺らが録ったときはふつうなんですけど、後日聴いたら、「あれ? 俺ら、風呂場で録ったっけ?」みたいな音になってるんですよ(笑)。
佐々木:あと、コーラスに関しては、2年ぐらい前のチャンス・ザ・ラッパーとかフランク・オーシャンとかが、みんなゴスペルをやってた時期があったじゃないですか。それで、「よし、いまだ!」と思ってやったんです。
EMTG:「Summer Soda」のハーモニーとか。
佐々木:そう、あれもライブを考えると、今までだったら「再現できないでしょ」って思ってたんですけど、今はもう「それは同期でいいや」っていうぐらい振り切ってるので。ためらわずにやりました。あと、遂にバンドものよりもラップが売れてるっていう世界(のチャート)になったじゃないですか。
EMTG:ああ、いよいよって感じですよね。
佐々木:俺、それがすげえ悔しいんですよ。どうにかギターで勝ちに行けないかって、ずっと考えてるんです。そうなったら、ラップは敵対するんじゃなくて、取り込まなきゃダメだと思って。それで、今回のアルバムでは、歌に関してメロディを細かく詰めるっていうよりも、リズムとハーモニーに着眼点がいってるんです。
EMTG:a flood of circleってブルースがルーツで、ロックンロールバンドって言われがちだけど、ちゃんといまの音楽にも敏感だし、それを貪欲に吸収してるんですよね。
佐々木:うん。で、いまの音楽しか聴いてない人にはできないことができるのは、もとのブルースっていうルーツがあるからだと思うし。そこを攻めたいんですよね。
EMTG:では、最後にラストソング「Wink Song」の話を。この曲に関しては、歌詞について聞かせてください。“ありのまま 愛してるよ”って壮大なラブソングじゃないですか。
佐々木:他の曲が膿だらけなので。全部出し切って、10曲目は清々しい気持ちで歌ってます(笑)。他の曲では怒ったり、文句を言ったりしてるけど、それは誰かを傷つけたいわけじゃなくて。もっと良い世界になってほしいっていう願いが常にあるんです。
EMTG:それも、なかなかデビュー当時には歌えなかったテーマじゃないですか?
佐々木:うん。究極、歌いたいのは“世界平和”なんじゃないかって思うんですよね。最近、ピースでいたいなと思ってるんです。かなり根本的なんですけど、俺が今まで生きてきた世の中はマジでろくでもないなと思うんですよ。でも、この先の世界は絶対にハッピーになってほしいんですよ。っていうのを、最近思ってるところがあって。だから、「Wink Song」では、最後にギリギリで願いを書いておきたかったんですよね。
アオキ:たぶん、この曲は、あらかじめ「Wink Song」の歌詞を知って、ギター録りをしてたら、すげえつまらない曲になってたかもしれないなあって思うんですよ。
佐々木:たしかにサウンドは攻めてるかもしれない。
アオキ:どの曲よりもギターはうるさくて歪んでるから、ただの良い曲じゃないんです。
佐々木:俺もきれいな曲にしたくなかった。歌詞では“完璧じゃないウィンクのほうがかわいい”っていうようなことを歌ってるから。それがロックバンドのいいところだと思うんですよ。完璧である必要はないし、過去にあったロックの価値観である必要もない。一見失敗に見えるぐらいのほうがチャーミングな気がしてて。そういうことを歌ってるんです。
EMTG:このアルバムができて、a flood of circleができることは相当広がりましたよね。
佐々木:マジで無限にあるんですよ。俺、自分が子どものときにポップミュージックを聴いて、すごくワクワクしてたんですよ。それってきっと知らない世界があるっていうことを知れたからだと思うんです。だから、いまもまだ音楽で面白いことが起きるかもしれないっていう可能性に賭けたいんですよね。それに気づかされたレコーディングでした。
EMTG:次回作では正式メンバーになったテツくんがどれだけ爆発するかっていう楽しみもあるわけだから、もうワクワクしかないじゃないですか。
佐々木:本当にそうなんですよ。ちょっと数字的なことを言っちゃうと、今回、オリコンのデイリーチャートが今までいちばん良かったんです。
EMTG:お! デイリー8位?(※ウィークリーチャートも自身最高位16位を記録)。
アオキ:そうなんです。日本も捨てたもんじゃないですね(笑)。
佐々木:だけど、もっといける気がしてます。振り向いてもらうんじゃなくて、自分らでいくっていう感じにしたくて。もう受け身でいるのは嫌なんです。

【取材・文:秦理絵】

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リリース情報

a flood of circle

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2018年02月21日

TEICHIKU ENTERTAINMENT

01. Blood & Bones
02. ミッドナイト・クローラー
03. Leo
04. One Way Blues
05. Summer Soda
06. 再生
07. Lightning
08. Where Is My Freedom
09. Rising
10. Wink Song

お知らせ

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■ライブ情報

HIROSHIMA MUSIC STADIUM -ハルバン’18-
03/11(日) 広島某所

avengers in sci-fi 15th Anniversary Final "SCIENCE MASSIVE ACTION"
03/18(日) 新木場STUDIO COAST

ZIP-FM "GROOVER’S DIVE presents K-ON MASTERS Vol.3"
03/23(金) 名古屋SPADE BOX

佐々木亮介単独公演"春の嵐2018"Live at 京都紫明会館
03/24(土) 京都紫明会館

IMAIKE GO NOW 2018
03/25(日) 名古屋PARADICE CAFE 21 ※佐々木亮介弾き語り

golden jubilee~ウエノコウジ50生誕祭~
03/27 tue 渋谷TSUTAYA O-EAST

I ROCKS 2018 stand by LACCO TOWER
03/31(土) 群馬音楽センター

RADIO BERRY "haruberrylive 2018
04/01(日) うつのみやLaLa stage(JR宇都宮駅西口ララスクエア11F屋上)

New Album "a flood of circle" Release Special Party
04/07(土) 渋谷CLUB QUATTRO
04/20(金) 千葉LOOK
05/06(日) 横浜F.A.D
05/13(日) 静岡UMBER
05/14(月) 四日市CLUB CHAOS
05/16(水) 京都MUSE
05/18(金) 小倉WOW
05/19(土) 大分club SPOT
05/25(金) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
05/27(日) 郡山HIPSHOT JAPAN
06/01(金) 高松DIME
06/02(土) 高知X-pt.
06/08(金) 金沢vanvanV4
06/09(土) 長野J
06/15(金) 名古屋CLUB QUATTRO
06/16(土) 大阪umeda TRAD
06/23(土) 福岡CB
06/24(日) 広島SECOND CRUTCH
06/29(金) 札幌cube garden
07/01(日) 仙台CLUB JUNK BOX
07/08(日) 東京マイナビBLITZ赤坂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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