ロックのど真ん中はここにある! WOMCADOLE、1stフルアルバム『今宵零時、その方角へ』

WOMCADOLE | 2018.03.15

 滋賀県出身の4人組。2011年結成、2016年7月に現在の編成となる。この度リリースされる1stフルアルバム『今宵零時、その方角へ』は、2018年、ロックのど真ん中はここにある! と断言したくなる会心作だ。ロックとは孤独や喪失や悲哀をぶった斬るためのものであり、それらに埋め尽くされた心模様を明るい響きで晴らせてくれるものであり、何も解決してはくれないけれど空っぽの頭でただただ踊らせてくれるものである。そう叫ぶ全13曲を聴いていると、心から救われるような気がするのだ。しかも踊る要素の「MayDay」「頂戴」「今夜君と」はWOMCADOLEにとって新境地で、さらなる飛躍さえ予感させてくれる。アルバムの根幹と音楽制作の源泉についてメンバー全員に訊いた。

EMTG:『今宵零時、その方角へ』、めちゃくちゃ素晴らしいです!
全員:ありがとうございますっ!!
樋口侑希(Vo&Gt):これを聴かずして何を聴く? と。
安田吉希(Dr):言い過ぎ(笑)。でも自信しかないな。
樋口:CDを作る時はいつも最高新記録、最高のもんを作ってるんで、確実に最強なもんができたと思っております。フルアルバムとしては初めてですけど、その分、気合いはバリゴリに入ってました(笑)。
古澤徳之(Gt&Cho):今までは作品のコンセプトがはっきりしていて、わりと統一性のある楽曲が揃ってたんですけど、今回、共通するのは“夜”っていうイメージだけなんですよ。全13曲に違う主人公がいて、音楽的なジャンルも全然バラバラで。それぞれがそれぞれの方角へ歩いてるからこそ、いろんな人に当てはまるようなアルバムができたんじゃないかなと思います。
安田:うん、1曲1曲のクオリティがすごく高くて、アルバムとしてどうまとまるんだろうと思ってたんですけど、今の曲順で聴いてみると1本芯の通ったいいものができたなあと思いますね。ドラムに関して言えば、今まで聴いてきたものの中からまずは自分に落とし込んで、WOMCADOLEというバンドのビートとしてしっかり出せたし、実験的なこともすごいできたんでよかったです。
EMTG:「頂戴」のシャッフルとか?
安田:そうですね、「頂戴」は曲自体がシャッフルで、フラム打ちみたいなことをしてますし、リフものではキックの当てはめ方を工夫したり。ただ変に主張せず、あくまでロックバンドの一部としてええ塩梅を狙えました。
EMTG:黒野さんはどうですか?
黒野滉大(Ba):曲が揃って、まだアルバム名が決まってない段階から、ベースフレーズ自体を夜の方向へ持っていってる自分がいたんですね。夜っていうのは、気持ち悪くないんやけど気持ち悪く聴こえるとか、不気味やったり、ロマンティックなフレーズやったり。で、タイトルは樋口が決めたんですけど、それを耳にした時に「おぉ!」ってなりました。
樋口:たしかにロマンティストやね?
黒野:そうなんすよ。
EMTG:自分で認めるんだ(笑)。
樋口:はははは。それこそ過去一番ロマンティックな作品になったし、色気も熱量もすごいことになってるなあと。ぜひ感じてほしい、覗いてほしいですね、俺の中身を。
EMTG:やっぱり自分自身を曝け出してるわけだね?
樋口:それは絶対あります。1stミニアルバム『ワタシノハナシ』の時は物語性というか、自分の中で映画を作ろうと思って。それに対してのオープニング、劇中歌、エンディングとして曲を作ったんですけど、前作の『アオキハルヘ』は自分自身を改めて歌ったんですね。で、今回はその両方を出せるようになってて。進化したなって感じますね。
EMTG:歌詞に小説のような部分もありますもんね。ただ僕がこのアルバムから一番感じたのは、孤独に溺れ、喪失に焼かれてる感じなんですよ。
樋口:ああ、たぶん俺の歌ってそういうのが多くて。基本ハッピー野郎なんですけど、ただのハッピー野郎じゃないんですよね。普段ほんまにどうしようもないんですよ。不登校やった時もあったし。それぐらい抱え込むタイプでもあるので、そういう歌が樋口侑希の歌ですね。
EMTG:というかそういうネガティブな気持ちをぶった斬るのがロックだ! みたいな歌ですよね、主にアルバムの前半は。
樋口:たしかに! ライブに来てくれる子たちって、何かしらの爆発を求めてると思うんで、そういう子たちには武器を渡したいっつーか、「どうしようもない敵が現れたら俺が刀になってやるよ」ぐらいのつもりで歌ってますね。あと自分自身、曲作る時は、田舎に住んでるんで爆音を鳴らしてるんですよ。ひとりで叫びまくってる(笑)。家に来てもらったらわかるんですけど。
安田:来てもらおうとするな(笑)。
樋口:大きい音ですごい気持ちを乗せて作るタイプで。突進しかできないんですよ、ドーン!パラパラパラ、バーン! みたいな……はい、すいません(笑)。
古澤:(笑)僕、樋口のひとつ年上で、中学から一緒なんですけど、その中でも徐々に変わってきてるなと思って。こんな大人になると思ってなかったですもん。もっとペコペコするようなイメージやったのに、今はレジスタンスなんですよ。
樋口:反逆者やん!
古澤:そう(笑)、自分で革命を起こすタイプになってる。常に闇を抱えながらも、もがきつつ、それを曲に落とし込む、しっかりしたボーカリストになったなと。たぶん昔は叫ばずに、ただ溜め込んでましたね。今になって吐き出す術を見つけたというか。
樋口:まあ中学ぐらいの時はいろいろあったんでね。何もかもがめんどくさくなって、1週間ぐらい、音楽聴きながらチャリで旅したこともあったんですよ。もともとドラムをやってたんですけど、歌に変わったのもたぶんそういうとこからで。何か違うなって思いながら叩いてたけど、いざ歌ってみたら「これやんけ!」って。
EMTG:それが吐き出す術だったんだね。
樋口:歌うきっかけとしては、古澤とバンド組んでて、彼がギターボーカルだったんですけど、先輩なんで先に卒業しちゃったんですね。でも当時めちゃくちゃ大好きな子がいたんで、俺が文化祭で歌って、カッコいいとこ見せて告白したろと。したらまさかの、本番2日前にその子に彼氏ができるっていう(笑)。でもそれは人の歌を練習してたからダメやったんやと思って、そっから自分の歌を作り出しました。
安田:そんなことあったんや、きっつ(笑)。
古澤:地元じゃ有名な話やで。
EMTG:すごい話だ(笑)。今回の曲で言うとさ、「夜明け前に」の《飛べない鳥の合唱に吠えない犬の遠吠えに怯えた夜の迷走が騒いだり泣いたりしてる/穴の空いた空白に音が消えた一拍に/眠る前の数分前に僕はドアを開けて走り出したよ》。これって樋口くんにとっての歌の意味が詰まってるんじゃない?
樋口:うーん、この曲を作ったのは東京で、先輩ん家に1週間くらい居候してた時なんですね。初めて人の家で作ったんで、あんまり叫べんくて。《吠えない犬の遠吠えに》って、そういうところから来てるんですよ。けど、近くにスタジオがあったんで、そこまで行けば爆音を出せるから走り出したっていう(笑)。
全員:はっはっは!
古澤:そういう衝動やったんや(笑)。これはもともと『夜明け前に』って2ndデモアルバムに入ってるんですけど、そのジャケットが部屋から抜け出そうとしてる絵なんで、もっと他のイメージがあるのかと思ってたんですけど。
樋口:そりゃいろんな感情がありますよ。まあ東京っていうでっかいとこに行ったのが初めてだったんで。東京へ行くだけで夢がすぐ叶うんじゃないかって勝手に思ってて。そういう歌でもあるんですけどね。
EMTG:現状から抜け出したいとか爆音で叫びたいとかね、そういう鬱積した感情をメジャーキー、明るいメロディで晴らせてくれるのもロックですよね。っていう曲がアルバムの締め括り、「21g」や「馬鹿なくせして」なのかなって。だって《死んだ方が楽なのかもな》って気持ちになっても、明るい響きだからこそ最終的に《生きて行くとここに誓う》と歌える気がするんですよ。
樋口:ああ、そうかもしれないです。「21g」とかは、歌詞を最後まで作るにあたって、どうしても前向きな方に持っていきたかったから、自然とそういう曲調になったんですよね。
EMTG:だからそれを歌うこと自体、聴き手からすれば聴くこと自体に救われるっていう。
古澤:すごくわかります。救済みたいなところがありますよね。これは特殊能力って言っても過言ではないと思うんですけど、樋口が作ると、最終的に前を向けるような曲になるんですよ。
EMTG:それはね、樋口くんがまず心の中の自分に聴かせてあげたいと思って曲を作ってるからだろうね。
樋口:そうっす! まず自分に、ですね。作曲者ってみんな自分が感動しなければ人に聴かせられないって言いますけど、そんな生温いもんじゃなくて、たぶん俺が一番自分の歌に救われてるんですよ。だから曲を作ってるし、曲を作るのがすごい好きなんです。

【取材・文:秋摩竜太郎】

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リリース情報

今宵零時、その方角へ

今宵零時、その方角へ

2018年03月21日

UNCROWN RECORDS

1.月
2.リム
3.絶望を撃て
4.夜の向こうで
5.アオキハルへ
6.夜明け前に
7.MayDay
8.頂戴
9.今夜君と
10.雨上がり
11.独白
12.21g
13.馬鹿なくせして

お知らせ

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■ライブ情報

5th ANNIVERSARY 「OTOEMON FESTA 2018」 Supported by Eggs
03/16(金) 大阪福島LIVE SQUARE 2ndLINE

「SANUKI ROCK COLOSSEUM」 ~BUSTA CUP 9th round~
03/17(土)or18(日) ※出演日は後日発表になります。
<有料会場> 高松 festhalle、高松オリーブホール、高松DIME 高松MONSTER、高松SUMUS Cafe
<無料会場> 瓦町駅地下広場、786FM 香川ステージ

alcott Presents "神戸大監禁" 2018 -愛の手錠編-
03/19(月) 兵庫神戸太陽と虎

WOMCADOLEインストアイベント
03/21(水) タワーレコード京都店イベントスペース
03/26(月) 名古屋パルコ西館1Fイベントスペース
03/24(土) TOWER RECORDS横浜ビブレ店店内イベントスペース
04/14(土) タワーレコード広島店イベントスペース
※CRAZY VODKA TONIC合同インストアイベント
04/26(木) TOWER RECORDS新宿店 7Fイベントスペース
reach the sky vol.7
03/25(日) 東京新宿LOFT&BAR

アルコサイト2nd mini Album「WOLF」Release tour ぶっ刺されたい奴かかってこいドライブ TOUR FINAL ONE MAN LIVE
03/29(木) 大阪福島LIVE SQUARE 2ndLINE

総合学園ヒューマンアカデミー ミュージックカレッジpresents 「高校生限定イベントBREAK OF LIMITグランドチャンピオン大会2017」
03/30(金) 大阪阿倍野ROCKTOWN

己の心に吠えろよツアー
04/01(日) 滋賀B-FLAT
04/13(金) 広島SECOND CRUTCH
04/15(日) 山口周南LIVE rise SHUNAN
04/27(金) 神奈川横浜F.A.D
04/28(土) 静岡UMBER
05/05(土) 宮城仙台enn2nd
05/13(日) 岡山CRAZYMAMA 2ndRoom
05/25(金) 香川高松DIME
05/26(土) 福岡天神graf
05/27(日) 大分CLUB SPOT
06/09(土) 大阪心斎橋Music Club JANUS
06/14(木) 石川金沢vanvanV4
06/24(日) 愛知名古屋APOLLO BASE
06/29(金) 群馬高崎clubFLEEZ
07/03(火) 東京恵比寿LIQUID ROOM

The Cheserasera 春の喧騒 2018 スリーマン Tour
04/06(金) 愛知名古屋HUCK FINN
04/07(土) 大阪福島LIVE SQUARE 2ndLINE

FM NORTH WAVE & WESS PRESENTS 「IMPACT! XIII」 supported by アルキタ
04/22(日) Sound lab mole、KRAPS HALL、BESSIE HALL、SPIRITUAL LOUNGE、KLUB COUNTER ACTION q

ハルカミライ "赤く青く燃えてツアー 苫小牧編"
04/23(月) 北海道苫小牧ELLCUBE

COMING KOBE18
04/28日(土)or29日(日)
みなとのもり公園(神戸震災復興記念公園)、神戸ポートターミナルの2会場同時開催
※WOMCADOLEの出演はどちらか1日になります。

NIIGATA RAINBOW ROCK 2018
05/04(金) 新潟ライブハウスなど11会場

wata presents 【TRUST YOUR SOULS】-ROAD TO FREEDOM NAGOYA2018-
05/30(水) 愛知大須RAD HALL

SUMMER TIME LOVER CIRCUIT「サマラバ!」2018
06/30(土) 仙台市内ライブハウス6会場サーキットイベント

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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