Reol 1stミニアルバム『虚構集』ここに完成

Reol | 2018.03.13

 昨年10月に3人組ユニット「REOL」が解散し、今年の1月からソロアーティスト「Reol」としての活動がスタート。そして完成した1stミニアルバム『虚構集』は、とても力強い一歩が記されている1枚だ。全曲の作詞作曲をReol自身が手掛け、様々なサウンドプロデューサーを招いて生み出した世界は、「虚像」と「実像」の狭間で揺れながら生きる人間の姿を生々しく描いている。抱える想いを深く刻み付け、多彩なサウンドを響かせるこの作品にこめられているものとは? 本人に語ってもらった。

EMTG:「虚像」が作品全体で描かれていますが、このテーマが浮上した理由は何だったんでしょうか?
Reol:去年の10月にユニットが解散したんですけど、私にはずっと「ユニットのメンバーとして名を馳せたい」という気持ちがあったんですよね。だから、ソロに切り替わること自体が「嘘」みたいに思えたんです。私はネットシーンでの活動から始まって、ここまで来ているという経緯もあるので、年齢も明かしていなかったですし、「歌を歌うアイコン」みたいなイメージで捉えながら活動していたんです。でも、ビジュアルを出すようになったり、オリジナルの一次創作の曲を歌って、それまで明かしていなかった自分が考えているものを表現するようにもなったことで、「虚像であったことがいつの間にか実像になってる」というのを感じました。そういうことが、この『虚構集』に繋がっています。
EMTG:虚像と実像のギャップによって生まれる苦しみももちろんありますけど、虚像を演じる楽しさっていうのもありますよね? 
Reol:そうですね。ネットに投稿した頃は高校生だったんですけど、「学生でもなんでもない自分」っていうものになるのが新鮮でしたから。でも、「一個人」と「れをる(ユニット時代の名義)」という存在が、お互いに繋がっていくことに関して、葛藤もありました。
EMTG:でも、ユニットの頃は3人での活動でしたから、「一個人」として虚像と実像の狭間で悩むのとは異なる感覚ではないでしょうか?
Reol:はい。ユニットの頃はトラックメーカーのギガがいたので、彼の特色を活かしたいという気持ちもありましたし、彼の作る音楽専用の歌姫であろうという気持ちもあったんです。それは「嘘」ではないですけど、ある種、「虚像」でもありますよね。でも、ソロをやるにあたっては、そういうことがなくなりますし、「自分が描きたいことって何だろう?」って考えるようになりました。
EMTG:それが『虚構集』として形になったということですね。
Reol:そうです。私は人間が普段表に出さない生々しくて汚い部分も美しいと思っているんですけど、そういうところを、この作品に閉じ込めたかったです。自分が曲にしたいものを形にして歌うことに関して、ちゃんと需要があるのか不安がありましたけど、今、所属しているレーベルのスタッフに「もっとReolの核に迫ったものを、聴き手は求めてると思うよ」と言って頂いて、全曲の作詞作曲をすることになりました。
EMTG:サウンドアレンジ、サウンドプロデュースで参加しているみなさんが素晴らしいですね。例えばクラムボンのミトさんが参加した「エンド」と「あ可よろし」は、とても惹き込まれる仕上がりです。
Reol:ミトさんにお願いしたところ、快諾を頂いたので、必死でデモを作ったんです。「デモの段階でかなりプログラミングも入れていて、詰め込んでいるものをお渡ししたら、生楽器の水準を上げて頂けて、とても感謝しています。
EMTG:「あ可よろし」のギターアレンジでNARASAKIさんが参加しているのも、個人的に非常に痺れたんです。「ナイス人選!」と思いました。
Reol:ありがとうございます(笑)。「あ可よろし」のデモを聴いたミトさんが「シューゲイザーっぽいね」とおっしゃって、「NARASAKIさんにギターを弾いてもらったら、合うんじゃないかな」というご提案を頂いたんです。
EMTG:ミトさんは、NARASAKIさんとお仕事をされたことはあったんですか?
Reol:初めてだったみたいです。「この曲だったらやってみたい人がいるんだけど」ということで実現したので、ミトさんもすごく喜んでいらっしゃいました
EMTG:濃霧の中を突き進むような、不思議な感覚になる音です。
Reol:そうですよね。この曲で歌っているのも、「情報化社会の息苦しさの中に希望を見出したい」というようなことなので、シューゲイザー的なノイジーな感じがすごく合っていると思います。
EMTG:「エンド」のサウンドも気持ちいいです。
Reol:「エンド」は信念を歌っていますし、今回の核になる曲ではありますね。
EMTG:様々な葛藤を抱えつつも、リスナーからもらう反応をすごく大切に思っている気持ちが伝わってきます。
Reol:曲を作る過程というのは本当に孤独ですし、自分が作りたいものを作れたら、「こんなにいい曲が書けた! もう、こんないい曲は書けないかも」って、私は一旦満足してしまうんです。でも、ライブで歌ったり、リリースされた後に反応を頂くと、「また曲を書きたいな」って思えるんですよね。そういうサイクルで私の音楽制作は成り立っているので、リスナーの力は本当に大きいです。
EMTG:「平面鏡」は、先行配信されましたが、「Reol」として初めて世に出た曲ですよね?
Reol:はい。「Reolが作った今までの曲の中で一番いい!」っていう反応を頂いたのが、とても嬉しかったです。やっぱり、自分で塗り替えられるのは未来だけですからね。
EMTG:この曲のアレンジとサウンドプロデュースはギガさんですが、どういう経緯でお願いすることになったんですか?
Reol:私は今までの活動で培ってきたものをちゃんと持ち続けたかったですし、今まで応援してくださっていたみなさんのためにも、過去を否定したくなかったんです。そういう意図を汲み取ってもらうには、ギガにお願いするしかあり得ないと思っていました。ユニットの頃はやっていなかったようなサウンドで攻めてくれたのが、ありがたかったです。
EMTG:エキゾチックなテイストのシンセサウンドやラップのアプローチが刺激的です。
Reol:あまりないアプローチができたかなと思っています。私はもともとロックを中心に聴いていたんですけど、この3、4年でヒップホップも好きになって、音楽を始めた最初はクラシック。この曲は、そういう要素を凝縮したような曲ですね。
EMTG:「平面鏡」は鏡がモチーフで、今作のジャケットも鏡を使ったアートワークですが、どのような想いをこめたんですか?
Reol:ジャケットは鏡を割っていますけど、「虚像の自分を打破していきたい。いい形で殻を破っていきたい」ということですね。そういうアイディアを木村さん(木村豊/Central67)にお伝えしたら、「本物の鏡を使いたいよね」とおっしゃったんです。だから、このジャケット写真はCGではないんです。アナログならではの違和感みたいなものが活きていて、アートワークもすごく気に入っています。
EMTG:この曲を聴いても感じることですけど、「虚像」と「実像」の狭間で揺れる感覚って、あらゆる人にとってリアルなテーマですね。例えば「会社や学校の中での自分」というのもある種の虚像ですし。
Reol:そうですね。「他人からの評価=自分らしさ」になってしまいがちですし、誰もが他者からの目を気にするところがありますから。でも、私は「自分をだましたくない」ということを常に感じています。私も音楽をやっていますから、聴いてくださるみなさんに何かを感じてほしいですし、だからこそ嘘を言いたくないんです。思ってもいないことで共感を得ても何も嬉しくないですから。
EMTG:そういう想いは、「ミッシング」からも感じます。これはギターロックとしても、王道にかっこいいですね。
Reol:ギターの音で壁を作りました。私は音圧を上げるのが好きなんです。無意識に自分の声に合うサウンドを探しているところもあるのかもしれないですね。この曲は全部が嫌になって、逃げたい気持ちになっていた時に作りました。逃げたくても逃げられないんですけど、曲を作っている時だけはどこかに逃げられる感じがして、救いになったんです。
EMTG:「ミッシング」から、その次の「カルト」へと繋がる流れが、とてもゾクゾクします。「カルト」によって、深いところに一気に引きずり込まれる感覚になるのが快感です。
Reol:「一気に落としたい」みたいな気持ちがありました(笑)。今回の作品を5曲入りにするのは早い段階から決めていて、1枚として流れを作るというのも考えていたんです。
EMTG:「カルト」は、サイケデリックで危険な雰囲気を感じます。
Reol:私は無宗教なんですけど、「何かを信じたい」っていう気持ちは、誰もがどこかしらに持っていると思うんです。信じる対象は「神様」とかだけではなく「家族」「仕事」「友だち」とか、様々な形がありますけど、そういう「信じたい」という気持ちを紐解いて綴っている曲ですね。サウンド面に関しては、ギガと共作でプログラミングをしました。今回、他のみなさんとも、何度もやり取りをさせて頂いたんですけど、「ここのピアノは、こういう感じで」とか、いろいろ細かいことをお伝えしたので嫌われたかもしれないです(笑)。
EMTG:(笑)全力で取り組んだソロの第1作が完成したことで、活動の土台を作れたんじゃないですか?
Reol:そうですね。1人でやっている分、曲毎にいろんな方々に入って頂けて、手広くできたのが、新鮮でもありました。次の作品を早く作りたいという気持ちにもなっています。今回、ロックの中でもシューゲイザーとJ-POPのロックの方向に行ったわけですけど、ラウド寄りのことをやってみたいという気持ちも出てきています。私は重い音も好きですので。
EMTG:「あ可よろし」のエンディング間際に《あなたが向いてる方角こそ 前だと言い切ってよろしい》っていうフレーズが出てきますけど、このような気持ちで現在の活動に向き合っているんじゃないでしょうか。
Reol:たしかに、それは自分自身に言っているのかもしれないですね。一緒にユニットをやっていたギガとお菊もそうであってほしいですし、自分自身を鼓舞する気持ちもあります。「前向きに」みたいな言葉がありますけど、「前ってどっち?」って思うじゃないですか。
EMTG:「今やっていることは、正しい方角=前」という確信なんて、いつも持てるわけじゃないですからね。
Reol:そうですよね。だから「今、向いてる方角が前であってほしい」という願いを「あ可よろし」で歌っています。そういえば、この前、新聞の特集に、様々な才能の努力によって伸びる数値みたいなことが載っていたんですけど、数学とか将棋とかに比べて、音楽とか芸術って全然伸びないようでして(笑)。そもそも才能があるかどうかも、やってみなきゃわからないですし、編曲の才能があっても作曲の才能がないことだってありますからね。だから全部を試してみるしかないんです。音楽ってチャートの順位とかで目に見えることもありますけど、「採点できない楽しさ」みたいなのもあるので、活動の中でその都度、私の正解を導き出していきたいです。
EMTG: 今作は、「改めて音楽とピュアな気持ちで向き合う宣言」とも言えますかね?
Reol:そうかもしれないです。パソコンで作曲をしながら、私の音楽の原体験のピアノを始めた4歳の頃を思い出しましたから。「なんかわからないけど、音が出る。楽しい!」っていうのを思い出せたのは収穫でした。そういう気持ちは、続けるための一番の理由になりますから、それを思い出せてよかったです。

【取材・文:田中 大】

リリース情報

虚構集

虚構集

2018年03月14日

ビクターエンタテインメント

01.エンド
02.平面鏡
03.ミッシング
04.カルト
05.あ可よろし

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ギター コード
インストアライブでギターを弾くんですけど、そのためにギターのコードをいっぱい調べています。「私の曲には、どの響きが合うんだろう?」って、いろいろ試しながら探しているところです。私はピアノを8年間くらいやっていたので、どうしても作曲はピアノ主導になってしまうんですよね。自分が作った曲をギターに置き換えるのは、なかなか大変です。

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