雨のパレード 充実のサードアルバム 『Reason of Black Color』

雨のパレード | 2018.03.14

 最新アルバム『Reason of Black Color』は、おそらく多くのリスナーにとって、新鮮な発見の連続となる作品だと思う。瑞々しいメロディが際立つ王道のポップスを堪能できる一方、心地よいビートと音像が広がるクラブミュージック的な曲、様々なイマジネーションを掻き立てるインストゥルメンタルも異彩を放っている1枚だ。「音」という抽象的な要素によって生み出せる無限の世界を全力で追求し、それをキャッチーな音楽として提示できる「雨のパレード」というバンドの稀有な魅力を、ぜひこのインタビューを読んだみなさんにも実際に感じてほしい。

EMTG:どんなアルバムにしたいと思っていました?
福永浩平(Vo):特に決め込んではいなくて、この1年を通して自分たちが作ったものたちの中から厳選した14曲です。雨のパレードは、前からもともと幅広い面を持っていたんですけど、1曲の中にいろいろな面が含まれているバンドだったのかなと。自分たちの中にあった様々な色が、それぞれの曲で、より濃く表現されたのが、このアルバムだと思います。
EMTG:このアルバムの曲、それぞれが独自の色を持っているから、「同じバンドなの?」ってなるリスナーもいそうです。
福永:そうでしょうね(笑)。いろんな入り口があってもいいのかなと思うようになったんです。曲は昔からセッションで作り続けているんですけど、メンバーそれぞれ、ポテンシャルが高いので、要求するいろんなことに応えてくれるんです。そうやって発揮される幅が、よりわかりやすく反映された結果、こういうアルバムになったんだと思います。
EMTG:山崎さん、「シンセじゃなくて、もっとギターを弾かせろ!」って思うことはないんですか?
山崎康介(Gt&Syn):今回、十分弾いたと思っています(笑)。でも、「ギターソロ、弾いていいんですか?」って、スイッチを入れる感じはありました。
福永:「曲として一番いいのは、これなんじゃないか?」っていう判断を、みんなですごく理想的にやれているバンドなんですけど、今回もまさにそうでしたね。
大澤実音穂(Dr):私はサンプリングパッドを叩き始めたのが、このバンドからなんですけど、機材好きの2人(福永と山崎)からいろいろなことを教えてもらいつつ、頑張ってやっています。
福永:例えばドラムに関してだったら、とてつもない印象のバスドラのワンショットとかをサンプリングパッドに入れて、スタジオでリアルタイムで音を出すんです。だから、ほぼジャムセッションみたいな感じなんですよね。ベースも、その場でエフェクターを使って音色を変えながら面白いサウンドを探してやっていますし。「なんとなくできちゃった」っていう感じではないんですけど、その場で肉付けをしていくセッション的な部分は強いバンドなのかなと思います。
是永亮祐(Ba):このバンドでベースを弾くようになって、僕は大きく変わりました。昔は「亀田誠治さんに憧れているベーシスト」という感じだったんです。でも、このバンドに入ってからは、「この曲に必要な音って、どういうものなんだろう?」っていうことを、すごく考えるようになりました。
EMTG:そういうみなさんが作る曲は、奏でられているいろんな音が醸し出す世界に浸る気持ちよさが、すごくあります。
福永:ありがとうございます。僕は「聴きながら、その世界に落ちていく」みたいなのが好きなんです。「瞑想」っていう感じにも近いんですかね? そういうのが、雨のパレードの曲に反映されているのかもしれないです。
EMTG:今作の1曲目の「Reason of Black Color」も、まさにそういう面が出ていると思います。神々しい響きのサウンドが、想像力を激しく掻き立ててくれますから。
福永:僕も音に引っ張られて歌詞を書くことが多いですからね。おっしゃる通り、「Reason of Black Color」も、そういう面が出ている曲だと思います。
EMTG:変な質問をするようですが、「どんな音楽をやってるの?」って訊かれた時、みなさんは、どう答えています?
福永:答えに困るんですよ。
山崎:たしかに「何系?」って訊かれても困るなあ。
福永:「うーん……歌もの?」って(笑)。
大澤:「ええと……ロック?」っていう感じしょうか(笑)。
是永:「ロックなんですけど激しくなく……ええと……何ですかね?」っていう感じで、いつもさらっと流しています(笑)。
福永:いろんな要素が入っているからそうなるんでしょうけど。
山崎:今回のアルバムもバラエティに富んでいますからね。機材が大好きな僕は、「いっぱい使ったなあ」っていうことも思います。
福永:作ってて、すごく楽しかったよね?
山崎:うん。ほんとそう。コラボもしたし、いろいろ新鮮だった。
EMTG:「Hometown feat. Tabuzombie (from SOIL&”PIMP”SESSIONS)」は、どういう経緯でコラボレーションが実現したんですか?
福永:僕とタブさんは、地元が一緒なんです。この3人(福永、山崎、大澤)は、鹿児島の出身なんですよ。僕が幼少期から通っていた本屋さんが、タブさんの実家というご縁があります。「Hometown」は、お互いに共有している風景とかをイメージして作りました。
EMTG:本当に曲それぞれで作風が幅広いですよね。例えば「Shoes」は、歌を前面に出した作風ですけど、「Dive」はクラブミュージック的なアプローチですし。
福永:「Shoes」とかで雨のパレードを知って、このアルバムを試しに聴く人は、1曲目の「Reason of Black Color」を聴いてびっくりするんでしょうね。このアルバム、エレクトロ、トラップとか、いろんな要素を感じて頂けるはずです。
EMTG:「Hwyl」は、エレクトロですね。
福永:はい。この曲、すごく気に入っています。
EMTG:「Hwyl」のようなシンセの音を思いっきり楽しめる曲がある一方、ギターが気持ちいい曲もあるっていうのは、実に贅沢なことです。「You & I」は、ギターソロが気持ちよかったですよ。
山崎:ありがとうございます。ソロ、弾いちゃいました(笑)。
福永:完全にジョン・メイヤーになってもらいました(笑)。ロマンチックな曲を作りたかったんです。最初、ストリングスを入れる予定はなくて、スタッフに提案されたんです。「ハマるかな?」って思っていたんですけど、入れてもらったら、すごくいい感じになりました。
EMTG:「What’s your name? (plus strings ver.)」も、ストリングスが加わって、すごく華やかになりましたね。
福永:はい。ストリングスが入って、新しい印象になっていますね。「What’s your name? (plus strings ver.)」と「Shoes」は、懐かしいポップスの感じだと思います。「Shoes」は、「CDを買って音楽を聴いていた世代のリスナーを振り向かせたい」というのがあって、こういうのを作ってみたんですけど、やってみたら楽しかったんですよね。
EMTG:「MARCH」も、歌ものとしてのストレートな気持ちよさがあります。
福永:「卒業ソングは、どうでしょう?」っていうのをマネージャーがずっと言っていて、最初は躊躇していたんです(笑)。でも、この曲に関しては、「卒業ソング」というのが、すごくハマりが良かったんですよね。
EMTG:「卒業ソング」って、J-POPの王道の1つですけど、そういうものも自分たちなりの作り方で提示できるバンドですよね?
福永:はい。自分たちなりの捉え方と外し方で形にできるんです。そういうことも、すごく楽しんでいます。自分たちにできる限りのことを形にしたいんですよね。
EMTG:雨のパレードって、「マニアックな音楽愛好家と、ポップスが好きなリスナーの両方が大喜びできるバンド」と言っていいのでは?
福永:その通りです。例えば、ユーミンさんもそうだと思うんです。ものすごくかっこいいことをたくさんやっているのに、みんなが「ポップス」として認識しているじゃないですか。どんなにマニアックなことをやったとしても、みんなに広まれば、それは「ポップス」なんですよね。雨のパレードも、自分たちがかっこいいと思うものをどんどん取り入れて、僕らなりのポップスという形で表現しています。
EMTG:インストの「#556b2f」や「GOLD」とかも、みなさん流のポップスになっていると思います。「#556b2f」っていう、タイトルが気になって調べたんですけど、デザイナーとかが使う色の番号みたいですね。
福永:はい。「#556b2f」は、ダークオリーブグリーンです。この曲は、環境音を入れているんですけど、面白い雰囲気になっていると思います。
EMTG:「GOLD」は、ユニークな響きの音が入っていますが、これは?
是永:それは、多分ベースです。エフェクトをかけて、いろいろ試して、気に入った音ができたんで、入れてもらいました。
福永:もともとは入れる予定じゃなかったんですけど、「入れたい」って言われたので入れました(笑)。
EMTG:(笑)アコースティックギターの伴奏で歌っている「H.Apartment」の、すごくラフな音の感じも気になったんですけど。
福永:上京してからずっと住んでいたアパートから、今度、引っ越すんです。だから「この家の曲を書こう」と思って、その家で録りました。マイクを1本立てて、康介さんにギターを弾いてもらったんです。
山崎:エンジニアさんからリボンマイクを借りて、マイクを2人で挟むような感じで録ったんですよ。だから完全にモノラルな音源です。
福永:遊び心も、いろんなところで発揮できたアルバムになりましたね。
EMTG:3月31日の仙台公演からツアーが始まりますけど、この曲たちをどのように表現していきたいですか?
福永:自然体で、やりたいことをやりまくりたいです。
大澤:東京は、日比谷野外大音楽堂なので、すごく楽しみですね。カラーが違う曲がたくさんあるので、かっこいい流れのセットリストを考えたいです。
是永:今回のアルバム、レコーディングでベースを8本くらい使ったので、ライブで何本使えるのか考えているんですけど……。
大澤:プロがよく使っている、箱型のスタンドを用意しないとね。
是永:ライブは、どうするかじっくり考えます。レコーディングでも自由にやれたので、ライブでも自由にやりたいと思います。
山崎:今回のツアーは、久しぶりに行く場所もあるので、それも楽しみです。ライブは音源とはまた別の良さがあるので、そういう部分もお客さんに感じて頂けたらいいですね。
福永:過去最高傑作のアルバムを作れたので、いいライブをしたいと思っています。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

Reason of Black Color

Reason of Black Color

2018年03月14日

ビクターエンタテインメント

1. Reason of Black Color
2. Dive
3. Horizon
4. GOLD
5. Shoes
6. ice
7. (soda)
8. Hometown feat. Tabuzombie (from SOIL&”PIMP”SESSIONS)
9. You & I
10. What’s your name? (plus strings ver.)
11. H.Apartment
12. Hwyl
13. #556b2f
14. MARCH

お知らせ

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■ライブ情報

ame_no_parade Oneman Tour 2018 “COLORS"
03/31(土)[宮城]仙台Rensa
04/01(日)[新潟]新潟studio NEXS
04/06(金)[香川]高松MONSTER
04/08(日)[福岡]福岡BEAT STATION
04/12(木)[北海道]札幌cube garden
04/15(日)[広島]広島セカンドクラッチ
04/17(火)[愛知]名古屋CLUB QUATTRO
04/18(水)[大阪]なんばHatch
04/21(土)[東京]日比谷野外大音楽堂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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