福岡発の4人組バンド、ユアネスが初の全国流通盤ミニアルバム『Ctrl+Z』をリリース
ユアネス | 2018.03.20
福岡発の4人組バンド、ユアネスが初の全国流通盤ミニアルバム『Ctrl+Z』(読み:コントロールゼット)をリリースする。サカナクションやKANA-BOONらが所属する音楽プロダクションHIP LAND MUSICの新人発掘プロジェクト“xsprout.”で見出された彼ら。2016年に公開された「色の見えない少女」のミュージックビデオは14万回再生を超えるなど、ライブハウスを中心に少しずつ注目を集めている存在だ。複雑に展開するオルタナティブなロックサウンドとボーカル黒川侑司が紡ぐ美しいメロディ、丹念に心の内側を描く詞世界。現メンバーでの本格始動からはまだ1年ほどだが、ユアネスの音楽には“この4人でなければならない必然”が確かに感じられる。 以下のインタビューでは、彼らがどのようにバンドのオリジナリティを獲得したのか、メンバー全員に聞いた。まずは、取材の前日に初めて東京で開催した自主企画ライブの話から。
- EMTG:黒川くん、ライブでは裸足なんですね。
- 黒川侑司(Vo&Gt):そこからですか(笑)。まあ、裸足のほうが解放感があると言うか、「何をしてもいいんだ」っていう気持ちになるんですよね。裸足になるのって家ぐらいじゃないですか。だから、裸足でいられる環境のひとつにライブハウスも加えたいなと思って。
- 古閑翔平(Gt):けっこう前から裸足でやってるよね。
- EMTG:去年の夏はROCK IN JAPANにも出演してましたけど(新人オーディションRO JACK優勝アーティスト枠)、ステージ熱くなかったですか?
- 黒川:あれはサンダルでやりました。さすがに怒られるかなと思って(笑)。
- 古閑:ギリギリの解放感だったよね。
- EMTG:昨日のライブ(2月1日 ユアネスpresetns「少年少女をやめてから」@渋谷TSUTAYA O-nest)、良かったです。東京での初の自主企画だったんですよね。
- 田中雄大(Ba):福岡のバンド仲間(神はサイコロを振らない)との対バンで、しかも東京でやれて。お互いに思うところがあったんですよね。当日、ボーカル同士は絶対に声をかけないとか言ってたし。やっぱり意識をしてるバンドだったので、グッときちゃいました。
- EMTG:MCでは、「自分たちみたいなバンドが他にいなくて不安だったけど、神サイがいたから、一緒に切磋琢磨できた」っていうようなことを言ってましたね。
- 黒川:はい、本当にそうなんですよ。
- EMTG:バンドを組んだ当初は自分たちのバンドの方向性に迷ったりしてたんですか?
- 黒川:今もですけど、ジャンルを聞かれたときに、パッと答えられないんです。
- 田中:他の人にはオルタナティブロックって言われたり。
- 古閑:ポストロックとかも言われるよね。
- 田中:でも自分たちでは何かを狙って、そこにハメてやってるわけではないです。
- EMTG:じゃあ、「ジャンルは何?」って聞かれたらどう答えるんですか?
- 古閑:歌モノって答えます。
- EMTG:ああ、それもわかる気がします。バンドを組んだときから、こういう音楽をやりたいっていう方向性はなかったんですか?
- 田中:コンセプトを決め込んで、そこを目指すというよりは……。
- 黒川:思いつきでしかやってなかった(笑)。
- EMTG:カバーとかはやってましたか?
- 古閑:最初のメンバーのときはしてました。凛として時雨とかONE OK ROCKとか。ワンオクは、黒川が出会ったときに歌ってたのと、時雨は前のドラマーが好きだったので。
- EMTG:それぞれメンバーが好きな音楽は違うんですか?
- 黒川:そうですね。僕は母の影響で歌謡曲を聴いてました。松田聖子とか山口百恵、中森明菜とか。その頃の女性アイドルが魅力的なんですよ。至高の存在というか……。
- 古閑:カリスマやもんな。
- 黒川:そう、それ! カリスマ性があるんです。
- 古閑:自分は邦楽のロックバンドが好きですね。外国だと、マスロックとか。作るときに計画的に練られた音楽が好きなんです。ディス・タウン・ニーズ・ガンズっていうバンドがいるんですけど、変拍子を感覚で合わせてるように見えて、全部計算されてるんですよ。その影響を受けて、僕のギターのフレーズとかも旋律を聴かせる感じなんですよね。
- 田中:僕は小学校5年生のときに、姉に聴かされたBUMP OF CHICKENです。ずっとフレーズも覚えるぐらい聴いてました。そこから、ラッド(RADWIMPS)とかエルレ(ELLEGARDEN)、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)とか王道にいって。楽器を弾くようになってからは、レット・ホット・チリペッパーズとか洋楽を聴くようになったんです。歌詞よりも音がかっこいいバンドを追いかけてた時期もあったけど、いまは1周まわって、歌詞を際立たせる音の作り方ができたらっていう方向が強いですね。
- EMTG:小野くんは?
- 小野貴寛(Dr):もともと音楽に興味がなくて……僕、少林拳をやってたんですよ。その時に先生がかけてくれたB’zがかっこよかったんです。それで、B’zのライブを見に行ったときに、ドラマーのシェーン・ガラースっていう人を見て、「これはもうドラムをしなきゃいけない!」と思ったんです。そこからB’zのコピーをやったりしながら、メタルバンドにもハマり出して。今好きなのは、ペリフェリーとかイシューズです。ちょっと変な感じの面白いリズムにボーカルがのってるのが好きなんですよね。
- EMTG:なるほど。メンバーの好きな音楽はバラバラだけど、それぞれユアネスに通じるものがありますね。複雑なバンドの演奏のうえに、きれいなメロディがのってるっていう。
- 古閑:そうかもしれないですね。
- EMTG:いまみたいな音楽性になっていくのに試行錯誤はありましたか? たとえば、最初は今よりも歌モノっぽかったとか?
- 黒川:ああ、逆ですね。もっとテクニックとか楽器優先でした。
- 古閑:最初は(黒川も)ギターが弾けなかったから、ピンボーカルだったんですよ。で、自分は(専門学校の)ギターコースだったので、授業が終わったら、教わったことをそのまま教えるみたいなことをやってたんですけど。(黒川が)ギターを持つようになってから、曲の幅が広がったし、より自由になっていったんです。
- 田中:あと、(黒川の)歌も上手くなっていったから、それを大事にしたいなって思うようになったしね。それまでは、「こっち(楽器)がやり切るしかねえ!」っていう感じで弾いてたけど。少しずつ、僕らのいちばんの武器が開花していったというか。
- EMTG:黒川くんの伸びしろが、今のユアネスをかたちづくっていった?
- 黒川:あはははは! そうです。
- 古閑:お前が言うなよ(笑)。でも、まあ、実際そうですね。
- 田中:自分たちが持ってる武器をうまく使える方法を探していったら、こういうかたちになったっていうのがいちばんじゃないですかね。
- EMTG:それ、『Ctrl+Z』を聴くとよくわかります。4人の武器が噛み合ったこのタイミングだからこそ、広がりも出せた作品だと思いますけど。まず制作は何から着手しましたか?
- 黒川:何曲ぐらい入れようか? っていうところから考え始めました。3~4曲ぐらい先に作ってた曲があったので、そこから「Ctrl+Z」っていうコンセプトがなんとなく決まって、曲的に足りない部分を埋めつつ、先に曲順から決めていったんです。
- EMTG:やはり全てを計算して作っていくのが好きなんですね。
- 黒川:そうですね。だから、最初は「虹の形」を1曲目にする予定だったんですけど、曲を並べていくときに、「虹の形」に入るまえに、SEとして「雨が通る景色」が欲しくなって。過去2作品のMVに出てくる女の子にセリフを喋ってもらうことで、アルバムの一貫性を出したので、アルバム全編のシナリオを感じてほしいなと思ってます。
- EMTG:「Ctrl+Z」っていうコンセプトはどういうふうに決まったんですか?
- 黒川:曲のイメージとして、過去のことが多かったので、自然とそうなっていきましたね。Ctrl+Z は(パソコンのショートカットキーで) “元に戻す”っていう意味なので。
- EMTG:どうして、ユアネスは過去の曲が多いんでしょうね。“元に戻す”と言うと、過去に戻りたいという意味にもとれますけど……。
- 古閑:と言うよりも、人間は絶対に過去の感傷に浸る部分があると思うんですよ。あの頃はどうだったとか、こうしてればよかったとか。それが僕にとって自然なんですよね。
- EMTG:「あの子が横に座る」も、“放課後”っていう言葉が出てきたりして、学生時代を思い出すような曲ですが、いつ頃できた曲なんですか?
- 古閑:これを作ったのは2年ぐらい前なんですけど。浅野いにおさんが描かれてる漫画、『世界の終わりと夜明け前』の「東京」っていう話がモチーフなんです。漫画家を目指して上京した主人公の男の子が同窓会で帰ってくるんですよ。で、昔、両想いだった女の子と出会って。昔のことを振り返るっていう話で。その男の子が、車の廃棄場みたいなところで女の子に、「漫画を描かなくなったね。絵を描いてるときのあなたが好きでした」みたいな感じで想いを打ち明けるんですけど、そこのシーンがめちゃめちゃ好きなんですよ。
- EMTG:曲作りは漫画とか小説からインスパイアされることが多いんですか?
- 古閑:全部ではないんですけどね。自分たちが初めてミュージックビデオを作った「色の見えない少女」っていう曲も、イラストレーターのしらこさんが描かれていた「色の見えない少女」っていう4枚の漫画をツイッターで見て、衝撃を受けて曲を書いたんです。で、しらこさんにタイトルを使わせてもらって、「ミュージックビデオも作りたいんですけど」っていう話をしたら、そのための絵も全部描いてくださったりしたんです。
- EMTG:なるほど。昨日のライブでも披露してたバラード曲の「Bathroom」は、どういうふうにできたんですか? 「名曲です」って紹介してましたね。
- 黒川:壮大な感じの曲ですよね。
- 古閑:「Bathroom」は、いちばん最後にできた曲だったんですけど。これは「あの子が横に座る」のもう片方の歌というか。「あの子が横に座る」は男の子目線の曲だったんですけど、逆に、「Bathroom」は女の子目線で曲を書きたいなと思って書いたんですよね。
- EMTG:夢を追いかけている男の子の側にいた女の子みたいなイメージ?
- 古閑:そう。それも浅野いにおさんの「東京」がモチーフなんです。
- EMTG:今回の『Ctrl+Z』のなかで描かれる夢とか未来って、“みんなで未来に向かって頑張ろう!”っていう泥臭い感じじゃなくて、すごく切ない感じがするんですよね。
- 古閑:ああ……僕ら、そういうのしか作れないんですよね。
- EMTG:アルバムを締めくくる「100㎡の中で」もライブハウスの曲だけど、やっぱり過去の感傷があったうえで未来に向かってる。それがユアネスらしい未来の描き方なのかな?
- 黒川:この曲を作ったとき、一緒にやってたバンドが辞めてしまったんです。それで、“どうしてだよ”っていうような、毒づく感じというか、ああいう歌詞になっちゃったんですけど。歌いよるときは、「僕らは、先に行くけどな」っていう気持ちはありますね。
- EMTG:今回、『Ctrl+Z』はどんな作品になったと思いますか?
- 古閑:自分たちが戻ってこられる場所になったと思いますね。「100㎡の中で」みたいに、いままでずっと演奏してきた曲には、いろいろな思い出もあるので。
- EMTG:今後、ユアネスはどんなバンドになっていきたいと思いますか?
- 古閑:難しいなあ……。
- EMTG:じゃあ、『Ctrl+Z』を完成させたことで、見えてきたものってありますか?
- 田中:今回のミニアルバムにはいろいろ幅広い曲を入れられたんですよ。だから、進むのが1本の道じゃなくて、世界がぶわーって広がった感じがしたんです。
- 黒川:そうだね。だから自分たちがいけるとこまでガンガン進んでいきたい。
- 小野:そのためには、ずっと続けていきたいですよね。
- 黒川:どこまで進んでいくかは、正直、僕にはわからないけど。ずっと自分の最大限をやり続けることで、より良いものを出せたらいいなとは思います。
【取材・文:秦理絵】
リリース情報
Ctrl+Z
2018年03月21日
HIP LAND MUSIC
1. 雨の通り道
2. 虹の形
3. cinema
4. あの子が横に座る
5. Bathroom
6. pop
7. 埃をかぶった時刻表
8. 100m2の中で
※8曲目「m2」は平方メートルが正式表記になります。
2. 虹の形
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お知らせ
■マイ検索ワード
黒川侑司(Gt/Vo)
ベロア ジャケット
ライブ後に挨拶をした関係者のなかに、青いベロアのジャケットを着た人がいて。靴とか服が好きなので目がいっちゃいました。似たようなのがほしいなと思って検索しました。
古閑翔平(Gt)
京王ライナー
電車の中吊り広告で見た京王ライナーのカエルがめちゃくちゃ可愛かったので調べました。
田中雄大(Ba)
筋トレ
筋トレをする道具を探してたら、予測検索で出てきました。腹筋ローラーは持ってるんですけど。いろいろなタイプがあるみたいで迷ってます。
小野貴寛(Dr)
ダイエット
ファスティングっていう固形物を食べないダイエットを友だちと一緒にやったら、3日で3.5キロぐらい痩せたんです。炭酸水とかを飲みながら、キツくなったら、塩を舐めるみたいなやつなんですけど。続けると、朝、健康的に起きられるんですよ。
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