Maison book girlの魅力が鮮やかに結晶化した、最新シングル「elude」

Maison book girl | 2018.06.19

 現代音楽的なエッセンスをポップスへと昇華している音楽性によって、着々とリスナー層の幅を広げているMaison book girl。最新シングル「elude」もフレッシュな刺激の塊だ。変拍子、ミステリアスな音像、郷愁を誘って止まない瑞々しいメロディ、想像する喜びを届けてくれる歌詞……このグループのかけがえのない魅力が鮮やかに結晶化している。イギリスツアーを成功させるなど、頼もしい前進を続けている最近の彼女たちは、どのような想いを抱きながら表現に取り組んでいるのだろうか? じっくりと語ってもらった。

EMTG:去年の12月28日に観たワンマンライブ『Solitude HOTEL 4F』が衝撃でした。タイムリープっぽい設定を採り入れていて、演劇的でもありましたが、あれはみなさんもアイディアをいろいろ出したんですか?
矢川葵:やりたいことをなんとなく出しただけです。「ドアがあったらホテルっぽくてかっこよくないですか?」とか。
和田輪:あのライブが終わった後にいろんな意見があったんですけど、やってみてよかったなと思っています。
コショージメグミ:歌とダンスだけを届けるライブが怖いところもあるんですよね。プラスアルファの要素も加えて表現したら、よりいろんなことが伝えやすくなるのかなと。
EMTG:5月6日のVIVA LA ROCK EXTRA『ビバラポップ!』では、さいたまスーパーアリーナのステージに立ちましたけど、ああいう大舞台も似合うグループになってきていると思います。
コショージ:あの時はヤバかったですよ。他の出演者さん、すごい方々ばかりでしたから。
井上唯:花道なんて使ったことなかったですし。図面を事前に見て「21メートル」って知っていたんですけど、実際に会場に行って体感すると長かったですね。
EMTG:カオティック・スピードキングがバックを務めている生バンド編成のライブもどんどんかっこよくなってきていますし、最近のブクガはすごく力強いです。
矢川:ありがとうございます。でも、新しい曲の振り入れをする度に、打ちのめされているんですけど。
和田:ブクガの曲を歌って踊るのは、ずっと大変なんだと思います。多分、その時の私たちに合わせた大変な曲と振り付けをやり続けるんでしょうね。
井上:最終的にどうなるんだろうね? ポールダンスとかしだすの?
和田:ライブの度にポールを用意するの、大変だよ(笑)。
EMTG:(笑)5月はイギリスツアーもありましたが、現地のお客さんから良い反応をもらったらしいじゃないですか。
和田:お客さんが集まってくれたので、すごくホッとしました。
矢川:すごく不安だったんです。海外はカナダでライブをやったことがありますけど、また新しい場所でしたし。でも、ブクガのTシャツを着て待っていてくれている人もいて、嬉しかったです。
井上:YouTubeの動画とかでブクガのことを知ったお客さんもいたみたいですね。
和田:わたしたちのことを知らないお客さんの素直な反応を感じられたのも嬉しかったです。「rooms」の無音になるところで歓声が上がるのは、日本とは違っていて新鮮でしたね。
コショージ:「karma」もイギリスのお客さんの反応が良かったのを感じました。イギリスは、また行く気満々です。20ポンド残っているんですけど、まだ日本円に両替してないですから(笑)。
EMTG:(笑)ハプニングとかはなかったんですか?
コショージ:スモークマシンのトラブルで足元が見えないくらいなったことがありました。そのライブの最初の2曲くらいは、お客さんもスモークで何も見えなかったかもしれないです。
井上:私たちのライブ、ただでさえ照明が暗いのに(笑)。
コショージ:でも、ライブを観てくださった方が「MCを英語でした辺りから、お客さんが心を開いてステージを熱心に観てたよ」っておっしゃってくださって嬉しかったです。
井上:私たちのライブ、よくスモークマシンが壊れるんです。
和田:唯ちゃんは、よく携帯を壊すよね。
コショージ:一番壊すのは和田でしょ。
和田:物をよく壊すのはたしかに私だけど、いろんな装置を壊す磁場みたいなのを放っているのは多分、唯ちゃんだよ。
井上:そうなの?(笑)。
EMTG:(笑)では、ニューシングルのお話に入りましょう。「レインコートと首の無い鳥」は、ブクガならではの変拍子とミステリアスな雰囲気のサウンドが、すごく刺激的です。
和田:最初聴いた時は混乱したんですけど、何度も聴き込んでいく内に、カチッとハマる瞬間みたいなのが来ました。東京キネマ倶楽部のライブ(5月4日に行われた『Solitude HOTEL 4.9F』)で初披露して、終わった後の特典会で「すごい曲来たね!」って興奮気味に言ってくれるお客さんが何人もいたので嬉しかったです。
井上:私はブクガのメンバーだから「ポップな曲だなあ」って思うんですけど、みなさんはどうなんですかね?
EMTG:聴いているとワクワクします。心地よい違和感みたいなのがあって、何度も味わいたくなるのがブクガの音楽の不思議な魅力ですけど、この曲もまさにそういうものになっていると思います。
矢川:拍子の捉え方を教えてもらいながら歌ったり踊ったりしながら、私もいろんな発見をしています。「ここで鳴ってる音、かっこいいな」というのがたくさんありますから。
コショージ:イントロとアウトロで2人1組になる振り付けがあるんですけど、「首を刈られる人と刈る人」みたいな感じなんですよ(笑)。ライブではそこも見どころだと思います。
和田:タイミングを誤ると、たまにマイクで小突かれちゃう曲です(笑)。
井上:ライブで間違えないように、私たち、一生懸命頭の中で拍を数えています(笑)。
EMTG:(笑)衣装は、「忘れることを覚えた服」というコンセプトなんですよね?
コショージ:はい。特殊加工で、光が当たると千鳥格子模様が浮かび上がるんです。AIに一旦、千鳥格子模様を覚えさせて、それを忘れさせた途中で印刷したらしいです。
EMTG:今回の曲も、具体的なテーマとか意味に関しては、プロデューサーのサクライケンタさんからの説明はないですよね?
コショージ:今回もないです。でも、このシングルのタイトルの『elude』は「逃れる」という意味ですし、この衣装も「忘れることを覚えた服」ですし、そういうものからいろいろイメージがふくらんでいます。2曲目の「おかえりさよなら」も「レインコートと首の無い鳥」と繋がるものがあるなと感じていますね。
EMTG:その2曲からイメージしたものを表現したのが、コショージさんが詩を書いたポエトリーリーディングの「教室」?
コショージ:はい。これは今までのポエトリーリーディングの詩とは作り方が違うんです。私が体験した本当の記憶なので。でも、「記憶」っていうものは完璧ではなくて、どこかで実際に起こったこととは違っているところもあると思うんです。だから記憶していることを描くというのは「100%創作」ではないけど、創作も入っているんでしょうね。人間の記憶って、そういうところがあるのが面白いと思っています。
EMTG:今おっしゃったことは、「レインコートと首の無い鳥」と「おかえりさよなら」のテーマと繋がりそうですね。
コショージ:そうなんです。
EMTG:サクライさんは、「その通り!」と明言しないと思いますが。
コショージ:はい(笑)。「教室」は、本当に何も思い浮かばなかったからこうなったというのもあるんですけど、ピンチに対していい形で切り返せたのかなと思っています。
EMTG:「教室」のサウンドに関しては、サクライさんとの間にどういうやり取りがありました?
コショージ:今回も私の詩に対してサクライさんが音をつけてくださったんですけど、この曲が今回のシングルのための締め切りのギリギリだったみたいなんです。だからサクライさんは出来上がってすぐにメールしてくれました。でも、それがちょうどイギリスに行く日だったんですよね。電車に乗ってから聴いて「今、聴きました。ここをこうした方がいいかなと思います」って連絡したら、「イギリス行くの今日なの?」と(笑)。
EMTG:(笑)今回もいろいろ想像しながら聴く楽しさがすごくある作品ですね。
井上:楽しんでいただけたらなによりです。サクライさんの頭の中にある世界をわかりやすくみなさんに届けるのが、私たちなのかなと思っています。
矢川:私たちがポップにしているのかも(笑)。
和田:私たちが解釈してみなさんに届ける過程があるから、いろんな人に伝わりやすいものにできているのかなと感じることがあります。今回の2曲目の「おかえりさよなら」は、特にわかりやすさがある曲なのかもしれないですね。
コショージ:「おかえりさよなら」は、仮歌が入ったものを聴いた時から、「これはライブの最後に歌うのが合っている曲だな」というのを感じました。レコーディングの時にサクライさんに、「これはライブの最後に手を振る曲ですよね」って言ったら、「そう!」って(笑)。
矢川:新しいタイプの曲だと思います。とがった面もあるのがブクガですけど、こういう面も出せるようになってきているんですよね。
井上:じっくり歌を聴いていただけるタイプの曲ですよね。でも、振り付けは特殊な感じが入ったものになっているので、ライブではその点もぜひ注目してください。
和田:王道にメロディアスな曲ですけど、イヤホンで聴いていたりすると、変わったリズムを採り入れている部分もあるんですよ。ちゃんとブクガの世界になっている中で、こういうメロディアスさも出すというのは、パフォーマンスがまだまだだった初期の私たちでは表現できなかったのかしれないです。成長したのかなと少し思っています。
コショージ:まだまだ自信がないところがあるんですけど、自信を持たなきゃいけない瞬間ってあると思うので、そういう時には自信を持てるようになっておきたいですね。
EMTG:このシングルがリリースされた直後は、ツアーファイナルの公演が日本青年館でありますが、どんな意気込みで臨みますか?
和田:ブクガのワンマンライブでは初めての椅子のあるホールの会場なので、ゆっくり観たい派のみなさんにもじっくり楽しんでいただけるものになると思います。
井上:ブクガは今年に入ってからいろんな経験をしたので、そういうことも活かしたいですね。
矢川:初めての会場なので当日になってみないとわからないこともあるんですけど、ホールなので音の広がりがきれいなんじゃないかなと、楽しみにしています。
コショージ:「びっくりさせたい」みたいな気持ちは変わらずに持ち続けているので、そういう何かも感じてもらえるんじゃないかなと思っています。

【取材・文:田中 大】

tag一覧 女性ボーカル Maison book girl

リリース情報

elude

elude

2018年06月20日

ポニーキャニオン

1. レインコートと首の無い鳥
2. おかえりさよなら
3. 教室
4. レインコートと首の無い鳥(inst)
5. おかえりさよなら(inst)
6. 教室(inst)

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お知らせ

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■ライブ情報

Maison book girl new single「elude」リリースイベント
06/19(火)ヴィレッジヴァンガード渋谷本店
06/20(水)TSUTAYA IKEBUKURO AKビル店
06/21(木)HMV&BOOKS SHIBUYA
06/29(金)タワーレコード新宿店
07/01(日)タワーレコード渋谷店

tour final Solitude HOTEL 5F
06/23(土)日本青年館ホール

TEAM SAKUSAKU Presents サクライックボックス。’18 〜YOKOHAMA2118〜
06/30(土)DMM VR THEATER

アイドル横丁夏まつり!!〜2018〜
07/08(日)横浜赤レンガパーク

井上唯 COOKING PARTY 2018
07/10(火)LOFT9 Shibuya

ピエールフェス THE FINAL
2018年7月18日(水)東京都 LIQUIDROOM

加賀温泉郷フェス2018
07/21(土)山代温泉 瑠璃光

lyrical school tour 2018 “WORLD’S END"(前半戦)
07/22(日)新潟GOLDEN PIGS BLACK, 新潟

OTODAMA SEA STUDIO 2018 supported by POCARI SWEAT ~YOU R BEAUTIFUL 2018~
07/27(金)OTODAMA SEA STUDIO

TOKYO IDOL FESTIVAL2018
08/03(金) - 08/05(日)お台場・青海周辺エリア

サマソニ×TIF@幕張IDOL SONIC
08/19(日)千葉・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ

アーバンギャルド Presents 鬱フェス 2018
09/08(土)渋谷TSUTAYA O-EAST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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