yonige 「笑おう(album ver.)」を含む約1年ぶりの新作『HOUSE』
yonige | 2018.10.02
2017年9月にリリースした1stフルアルバム『girls like girls』がオリコンチャートのトップ10にランクイン。アルバムを引っ提げた全国ツアーは全公演でソールドアウトとなり、au“三太郎シリーズ"「笑おう」篇のCMソング「笑おう」が大きな反響を呼ぶなど、メジャー進出以降、破竹の勢いで突き進んできたyonige。夏フェス会場限定シングル「リボルバー」、「笑おう(album ver.)」を含む約1年ぶりの新作『HOUSE』は、抑制を効かせたボーカル、日々の何気ないシーンを切り取った歌詞など、新たな作風を提示した作品となった。「自分で自分を好きになれる曲を作りたかった」(牛丸ありさ/Vo&Gt)という本作について、メンバー2人に聞いた。
- EMTG:メジャーデビューから1年。この間の変化について、どう感じていますか?
- 牛丸ありさ(Vo&Gt):うーん、自分たち自身はあんまり……。そのことについてよく聞かれるんですけど、インディーズのときと変わってないような気がしていて。フェスのステージが大きくなったなとは思いますけど。
- ごっきん(Ba):住んでる家が大きくなったわけでもないですからね(笑)。スタッフの人数が増えたことくらいですかね、変わったところは。
- EMTG:バンドをやること、音楽を作ることに対する意識も変わらず?
- 牛丸:あ、でも、メジャーデビューが決まってからは、肩に力が入ってました。前回の『girls like girls』を作ってるときも切羽詰まりまくって、かなり迷走していたんですけど、そこから曲作りが楽しくなくなってしまって。私は「アルバムを作ります」と言われてからじゃないと曲を作らないんですけど、今回のミニアルバムのリリースが決まってからも、なかなか曲が書けなくて。信頼できる友達に相談したときに、「上手くいかなくても、のたれ死ぬわけじゃないから。絶対、周りが助けてくれる」と言われて、「確かに」と思ってから少しずつ書けるようになったんです。「ちょっとくらい失敗してもいい」と思えるようになったというか。その後「リボルバー」が出来て、そこから『HOUSE』につながった感じです。
- EMTG:牛丸さんが曲作りに行き詰っていたとき、ごっきんさんはどう接してたんですか?
- ごっきん:曲のことを聞くのは野暮というか、そういう話はぜんぜんしないんです。どんな恋愛をしてるか? みたいなことはめっちゃ話すんですけど、曲作りのことはまったくわかわらなくて。こういうインタビューで初めて知るっていう。
- 牛丸:曲作りやバンドの話はまったくしないんですよ、ホントに。
- ごっきん:目標を決めたことも1回もないし。
- 牛丸:ルールも一切なくて。
- ごっきん:のびのびやって、ここまで来ました(笑)。基本、ウチが牛丸フリークなので、彼女の視点に合わせてるところはありますけどね。
- EMTG:なるほど。「リボルバー」が出来た後の曲作りはどうでした?
- 牛丸:ポンポン出来たわけではないですけど、方向性が定まったんですよね。ミニアルバム全体の統一感も持たせたかったし、時間はかかったけど、自分のなかのゴールに向けて進んでいったというか。いままでは曲作りのルール、方程式みたいなものがあったんですよ。「サビにキャッチ―なフレーズを入れる」とか「ひとつの言葉を繰り返す」とか。それをまったくやりたくなかったんです、今回は。世間の人たちに聴かれることよりも、まずは自分で自分のことを好きになれる曲を作りたかったので。
- EMTG:曲作りの方程式を使わないということは、いままでの“yonigeらしさ"とは別の曲を作るということになるのでは?
- 牛丸:そうですね。いま思ったんですけど、インディーズの頃は誰も聴いてくれる人がいなかったから、キャッチ―な曲にしたかったんです。聴く人が増えたことで、そういう気持ちが少なくなったのかも。
- ごっきん:ハハハハ(笑)。
- EMTG:落ち着いたトーンの曲が多いですよね。
- 牛丸:キーも低めですからね。声も張り上げていないし、全体的にムリしない感じにしたかったというか。『HOUSE』というタイトルを含めて、生活感みたいなものを意識していたんですよ。生活をしているなかで、自然と流れているような音楽にしたくて。あとは恋愛以外の歌詞を書きたいという気持ちもありました。
- ごっきん:いままでのyonigeは恋愛の曲、しかも不幸な状況を歌ってる曲が多くて。それは牛丸が不幸な状況に陥った曲なんですけど、「バンドが長く続いていくとムリが出て来るかもな」と思っていたんですよね。牛丸が不幸な状態じゃないと曲が出来ないってなると、どんどん負のループに入っていくような気がして、長い目で見ると「どうなんだろうな?」って。でも、今回のアルバムは恋愛の曲ではなくて、生活のなかの何気ないことを拾い上げた曲が多いんですよ。「チャリの曲が出来た!」って持ってきた曲があるんですけど、そういうのも最高だなって。
- EMTG:「顏で虫が死ぬ」ですね。
- 牛丸:そうです(笑)。もともとチャリがめっちゃ好きで、東京に来て、4月くらいにやっとチャリを買って。「環七をチャリで爆走してたら、虫が顔にぶつかった」というだけの曲ですね、これは。何の意味もないというか、どうでもいいことを歌いたいという気持ちもありました。ちょっと前に自主制作で作った初期の曲をライブでやる機会があって。その頃の歌詞はしょうもなくて、薄っぺらいんですけど、それがいいなと思ったんです。最近は深いことを書こうとしていたけど、どうでもいいことを歌うのもいいなって。
- EMTG:「春の嵐」の“だいたいのことは暇つぶし"という歌詞もすごく心に残りました。
- 牛丸:そんなに深刻にならなくてもいいんじゃないかって思うんですよね。インディーズのときの「トラック」という曲は、機材車が横転事故したときのことを歌っているんですけど、そのなかに“いつだって僕らは冗談でしかない"という歌詞があって。そういう気持ちはずっとあるんですよね。どれだけ大変なことが起きても、逆境とか試練があったとしても、後になったら「経験してよかった」と思えることがほとんどなので。
- EMTG:曲が書けない時期も、経験できたよかった?
- 牛丸:曲が書けないっていうのは、yonigeを結成してからずっとそうなので(笑)。
- ごっきん:レコーディングも大変ですからね。今回はきっちり制作期間を取ってもらえたから良かったけど、去年のアルバムのときはスケジュールがきつすぎて、まったく覚えてないんですよ。
- EMTG:バンドやってていちばん楽しいのは、やっぱりライブですか?
- ごっきん:私はそうですね。
- 牛丸:私はライブも好きじゃないです。
- ごっきん:「じゃあ何でバンド?」という話になってきますね(笑)。会場に着いたときから「帰りたい」って言ってるので。
- 牛丸:(笑)でも、今回のミニアルバムの曲は「早くライブでやりたい」と思ってます。ライブ映えしそうな曲ばかりだなって。
- EMTG:11月からは全国ツアー『yonige presents 君のおへその形を忘れたツアー』がスタート。いままでよりはライブを楽しめそうですか?
- 牛丸:そうですね。自分で聴いていても「楽しいな」と思える曲ばかりなので。そういうアルバムを作れたのは良かったなと思います。
【取材・文:森 朋之】
リリース情報
HOUSE
2018年10月03日
ワーナーミュージック・ジャパン
01. 顔で虫が死ぬ
02. リボルバー
03. 2月の水槽
04. どうでもよくなる
05. ベランダ
06. 春の嵐
07. 笑おう(album ver.)
02. リボルバー
03. 2月の水槽
04. どうでもよくなる
05. ベランダ
06. 春の嵐
07. 笑おう(album ver.)
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