め組 自分が快適だと思えるものを大切にーー3人態勢で初のミニアルバム

め組 | 2018.10.09

 今年の5月にメンバー2人の脱退という大きな変化に直面しため組。しかし、立ち止まることなく活動を重ねてきた彼らの力強い一歩が、ミニアルバム『Amenity Wear』には記されている。瑞々しいメロディ、骨太なバンドサウンド、温かな音色、ハッとさせられるフレーズの数々が絶妙に融合している各曲は、ワクワクできる瞬間の連続だ。今作にこめられている想いとは、どのようなものなのだろうか? メンバーたちにじっくりと語ってもらった。

EMTG:最初にプロフィール的な話から始めさせてください。結成は2015年7月ですが、どういう経緯でスタートしたバンドなのでしょう?
菅原達也(Vo&Gt):僕が前にやっていたバンドが、「音楽のスキルアップをしよう」ということで活動休止になったんです。それで始めたのが、め組です。
EMTG:出嶋さんは、音楽大学出身ですよね?
出嶋早紀(Key):はい。3歳くらいからピアノをやっています。ルーツはクラシックです。ロックはあんまりやってきていないので、正直言ってよくわからないところもあるんですけど(笑)。でも、それが逆にいいのかなと最近思うようになりました。
EMTG:富山さんの加入の経緯は?
富山京樹(Gt):もともと音楽の専門学校に通っていて、卒業後に学校の近くを歩いていたら先生に会ったんです。「ギタリストを探しているバンドがいるんだけど、どう?」と。それで2回くらいセッションをしてから加入することになりました。
菅原:クラシックをやっていたり、専門学校で勉強していたりしたメンバーと一緒にバンドをやったことはなかったので、それはすごく新鮮でしたね。だから2人からいろいろ教わっています。僕は譜面が読めないですし。ダル・セーニョとか、ピアニッシモとかも知らなかったです(笑)。
EMTG:(笑)音楽理論に裏付けされたプレイをするメンバーと一緒にやる面白さが、このバンドにはあるということでしょうか?
菅原:それもあるし、「よくわかんないまま、よくここまでやれたな」ということも感じています。2人も、そういう僕が作る曲を面白がってくれているのかなと。
EMTG:その点に関して出嶋さんと富山さんは、いかがですか?
出嶋:菅原くんは、あんまり出会ったことのないタイプだったので、羨ましさを感じることがよくあります。ずっと教育されてきた身だと、正解と不正解が顕著に分かれているんですよね。だから自分の感性がどこにあるのかが、よくわからなくなったりもするんです。
富山:もともとの自分が持っていなかった引き出しのものを要求されたり、本来の自分にはなかったものが思い浮かんだりもするのが、このバンドでやっていて楽しいところです。新しい挑戦をしたり、自分を高めたりすることに、すごく繋がっています。
EMTG:メンバー各々がお互いに刺激し合っているバンドということみたいですね。
菅原:はい。こういうメンバーのバランスでやれているのって、奇跡だなと思います。
EMTG:今年の5月にベースの下山さんとドラムの大熊さんが脱退して3人になりましたけど、これは当然ながら大きな出来事でしたよね?
菅原:そうですね。ライブの予定とか、レコーディングも決まっている中で抜けちゃったので、不安はありました。でも、「より音楽に集中できるための選択肢を選んだ」と考えるようにしたんです。
EMTG:7月に東名阪でマカロニえんぴつと2マンをやりましたし、全く立ち止まらなかったですよね。
菅原:はい。周りのおかげというのも大きいんですけど、進み続けました。進んでいる道が正しいのか間違っているのかは定かではなかったんですけど、迷いはなかったです。
EMTG:今回のミニアルバムに収録した曲たちは、メンバーが3人になってから制作を進めたんですか?
菅原:実は、少し作り始めていた頃にメンバーが抜けることになったんです。そこからこの3人でのアレンジになったので何と言うか……大変でした(笑)。でも、サポートのメンバーのみなさんにも助けていただいて、結果的にいいミニアルバムになったと思います。
EMTG:1曲目の「Amenity」は、いろいろ迷った末に辿り着いた「自分らしくやるしかない」という気持ちが描かれている印象がしました。様々な変化を経ため組の気持ちを表わした曲として受け止めたんですけど。
菅原:我々としても、この曲ってそういうものですね。「Amenity」って「快適さ」ですけど、「自分が快適だと思えるものを大事にしよう」という気持ちで作ったので。
EMTG:あらゆる境遇の人に関して言えることだと思いますけど、結局いろいろ迷いつつも、「自分」という存在として生きていくしかないですよね。
菅原:そうですね。取ってつけたようなお気に入り、愛着とかじゃなくて、もっと自分の奥深いところに根差しているものを大事にしようっていうことです。だって、結局のところ嫌なくらい自分が自分の人生の主人公じゃないですか。
EMTG:はい。「自分の人生の主人公なんだから、もっと高スペックで生まれたかった」ということも思いますけど。
菅原:そうなんですよね。「だったらそういう風に作ってください、神様」っていう話なんですけど(笑)。
EMTG:(笑)メンバーとしても、「ここからまた前に進む」という気持ちを重ね合わせられる曲なのでは?
出嶋:はい。「再出発の曲」という感覚がすごく大きいです。メンバーの脱退ってマイナスのイメージのことですけど、メンバー各々の力でポジティブなものにして強くなっていかなきゃいけないと思っています。
EMTG:この曲、もうライブでも演奏しているんですよね?
富山:はい。嬉しそうにお客さんが聴いてくれているのが見えると嬉しいです。
EMTG:メッセージソングとして受け止めるリスナーも多いと思いますよ。
菅原:そうなんでしょうね。例えば《心、可愛くない人でいてね》っていうのも、実は僕自身に言っていたりもするんですけど、「私も心、可愛くない人でいます」というような反応を見ると、「自分らのリスナーなんだなあ」っていうのを感じます(笑)。信頼感みたいなのが湧きますね。
EMTG:僕の勝手な解釈ですけど、2曲目の「5.4.3.2.1」も「Amenity」と通ずるものを感じたんですよ。この曲からも「結局、自分として生きるしかない」という想いが伝わってくるので。
菅原:「Amenity」ができてすぐの頃に、質感の違うダークサイドの部分を描いた曲も欲しくなって作ったのが「5.4.3.2.1」でしたから、そういう感じもあるのかもしれないですね。
EMTG:この曲の主軸となっているのは、20代後半辺りの人物の焦燥感ですよね?
菅原:はい。みなさんも経験があると思うんですが、飲みに行くと「結婚ってどう思う?」っていうネタがすごいじゃないですか? 大体それで終了と言ってもいいくらい。《幸せをおさらいしてばかり》って歌詞に書いていますけど、そういうことです(笑)。でも、うんざりしているつもりでいながら、そういう話が本当は楽しかったりもするんですよね。焦っていないふりをしちゃったりもするし。
富山:僕は「わかる!」っていうより、「数年後には俺もこうなるんだ?」っていう感覚でこの曲を聴いています(笑)。
菅原:いずれ絶対にこうなるから(笑)。
出嶋:私は菅原くんと同い年なので、すごくよくわかります(笑)。この曲、音色的にもいつもと違ったものが欲しかったので、ピアノじゃなくてクラビネットを弾きました。最高に気持ちよかったです。
菅原:90年代の渋谷系みたいな雰囲気を出したくて機材の面でも新しい試みをしたんです。
EMTG:《セイイェーイって言ってる場合じゃない 場合じゃない なのに》っていうのがいいですね、焦りと開き直りが入り混じったこの曲のムードが凝縮されていると思います。
菅原:言ってる場合じゃないのに、言っちゃっているという感じですからね(笑)。
EMTG:(笑)3曲目の「愛をさけるチーズみたいに」は、サウンドが突然の展開を遂げるから驚いたんですけど。
富山:レディオヘッドの「クリープ」的な感じですね。サビでいかにそういう感じにできるかを意識してギターを弾いています。
EMTG:トリッキーな要素がありつつ、出嶋さんの歌がすごく際立っていると思います。
出嶋:ありがとうございます。前のアルバムの「あたしのジゴワット」で歌わせてもらったんですけど、それとは違ったタイプなので、歌い方をいろいろ研究しました。
菅原:付き合っている人との別れの曲なんですけど、それだけじゃないところもあるんですよね。《綺麗事がキラキラして見えたの 未来を着こなしてたあたし》というところとか、いろんなニュアンスで感じてもらえるんじゃないかと思います。女性が歌うことを想定して作ったのは初めてだったので、いろいろ考えましたね。
EMTG:《筆圧のないデジタルな名言に胸打たれて 全然眠れなかった》というフレーズも印象的ですね。め組の曲の歌詞って、随所にこういうキラーフレーズが散りばめられているのも、聴いていて楽しいところです。
菅原:嬉しいですね。僕はそれくらしか自分の特徴、武器がないと思っている自信ない人間なので(笑)。すごいバンドはたくさんいるので、「俺はこれしかない」って思って意地張ってやっているところがあります。
EMTG:「こういう感覚ってあるよな」というのを独特な表現を通じて噛み締められるのも、め組の曲の大きな魅力ですよ。例えば、「しあわせのほっぺ」で描かれている「幸せ過ぎるから頬をつねる」っていうこの感覚、「なるほど」と思いますから。
菅原:まだリリース前ですけど、「しあわせのほっぺ」は、聴いてくれた人の反応がいいです(笑)。この曲を作ったのは、実はメンバーが抜けるという話になっていた時期なんですよね。いろいろ大変だったからこそ、自分の必殺技に集中して作れたのかもしれないです。
EMTG:歌詞に関しては、四季の風景をさり気なく織り込んでいますよね?
菅原:はい。この曲の仮タイトルは「M男の春夏秋冬」だったんですけど……。そのタイトルはナシになって「しあわせのほっぺ」になりました(笑)。
EMTG:(笑)「真夏の朝2人乗り」も、ファンの間で人気が出ると思いますよ。自転車の2人乗りって、顔をお互いに合わせているわけじゃないのに、背中越しに伝わってくる何かがあるじゃないですか。そういう感覚がよみがえる曲です。
菅原:ちょっと前に恋人でもなんでもない人をチャリで送り迎えした時に、昔の記憶が、ふとよみがえったんです。そこから一気に書いたのが、この曲です。
EMTG:歌詞にあるような《お尻を痛くしないよな優しさ》とかを思い出しました?
菅原:はい。久しぶりの2人乗りだったんですけど、前輪に重心を置いてペダルを漕いでいたコツって、身体は忘れないんだなと思いました。そういうのが、昔付き合っていた人への一生懸命だった気持ちの痕のように感じたんです。
富山:この曲は、アレンジもすごく上手くいっている気がします。エンディングに向かって高まっていく感じが、気持ちいいと思いますから。
EMTG:今作は、サウンド面でもかなり凝っていますよね。
菅原:はい。自分たちのやりたいようになっているから、わかりにくいものになっていないか毎回不安なんですけど(笑)。でも、そういう部分は特徴として捉えてアプローチしていかなきゃいけないなと思っています。
EMTG:お客さんが今回の曲たちをどう受け止めるのかは、もうすぐ始まるワンマンツアーで直に感じることになるんじゃないでしょうか。
菅原:そうですね。ワンマンのお客さんって、「め組ってどうなんだろう?」っていう目で観る人もいる場だと思うんです。だから気を引き締めて臨みます。
富山:作るべきものをちゃんと作ったので、あとはライブでしっかり披露するのみだと僕は思っています。
出嶋:3人になってから最初のワンマンツアーですから、結構、緊張しています。リハーサルに入って手探りする部分もありますけど、すごく楽しみですね。
EMTG:「愛をさけるチーズみたいに」も、おそらく歌うんですよね?
出嶋:はい。緊張しますね(笑)。頑張って、いいツアーにしようと思っています。

【取材・文:田中 大】




め組「Amenity」MUSIC VIDEO

リリース情報

Amenity Wear

Amenity Wear

2018年10月03日

Ren’dez-vous Records

1. Amenity
2. 5.4.3.2.1
3. 愛をさけるチーズみたいに
4. しあわせのほっぺ
5. 真夏の朝 2人乗り

お知らせ

■コメント動画



■ライブ情報

ミニライブ&サイン会
10/18(木)[愛知] タワーレコード名古屋近鉄パッセ店 特設イベントスペース
10/20(土)[大阪] タワーレコード梅田NU茶屋町店 6F イベントスペース
10/28(日)[北海道] タワーレコード札幌ピヴォ店 特設イベントスペース
11/04(日)[福岡] タワーレコード福岡パルコ店 特設イベントスペース
11/10(土)[宮城] タワーレコード仙台パルコ店 特設イベントスペース

め組 “Amenity” ワンマンツアー ~セイイェーイって言ってる場合じゃない!~
10/19(金)[愛知] 名古屋Heartland
10/27(土)[北海道] 札幌SOUND CRUE
11/03(土祝)[福岡] 福岡Queblick
11/11(日)[宮城] 仙台enn3rd
11/18(日)[大阪] 心斎橋BRONZE
11/25(日)[東京] 代官山UNIT

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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