集団行動 配信限定リリース3作を含む、待望の3rd アルバム『SUPER MUSIC』

集団行動 | 2019.04.02

 アルバム3枚目にして、集団行動はついに「バンド」になった。いや、そもそも真部脩一(Gt.)が「バンドをやりたい」という意志のもとに集めたメンバーで結成したのがこの集団行動なわけで、そういう意味では最初からバンドだったじゃないかと言われたらそのとおりなのだが、ニューアルバム『SUPER MUSIC』を聴いていると、やっぱりこれまでとは違うバンドメカニズムが彼らの中で動き始めていることを実感せずにはいられないのだ。なぜそのような変化が起きたのか、真部と成長著しいヴォーカリスト齋藤里菜のふたりに話を訊いた。

EMTG:去年から今年にかけて、かなりの数のライブをやってきましたよね。
真部:そうですね。ライブを増やそうと思った目的としては……ひとつは「バンド感」を高めるためというのと、もうひとつは、セカンド(2018年リリース『充分未来』)を作った時点で、結構コントロールしたアルバムを上手に作れたという気がしたので、次はライブで曲を育てていくような形でアルバム制作をしようと思っていたんです。そういうなんとなくの目標があって、そのために武者修行というか、曲を育てていく作業としてライブをガンガン入れていったんですね。
EMTG:真部さんの言う「バンド感」っていうのをもう少し説明すると?
真部:僕、(集団行動を始める以前)しばらくひとりで音楽を作っていたんですけど、そうするとどうしてもアーティスティックになっていくっていうか、自分の好みに引っ張られすぎちゃうというのがあって。どうしても「この曲を作る意義は?」みたいなことを考えてしまうんです。それだと僕の作りたい軽くて洒脱な音楽とはかけ離れてしまうので。そうじゃなくて、自分も含めて「これはいいね」「悪いね」「そうでもないね」みたいなものを共有できる最小単位が欲しかったという。それが集団行動というバンドなんです。
EMTG:その共有の度合いが、去年ライブをやる中で高まっていけばいいなと考えていたということですね。
真部:そうですね。
EMTG:去年の夏にはサポートメンバーだったミッチー(Ba)さんが正式加入しましたよね。4人で撮った最初のアーティスト写真を見たときに、「バンドだなあ!」ってすごく思いました。バンドとしての一体感みたいなものが今まで以上に生まれてきているんでしょうね。
真部:そう、だからようやくアルバム3枚目にしてバンドサウンドになってきたっていう感じがします。自分ひとりではできないことを追求するって、口で言うのは簡単なんですけど、本当に大変で。でもいちばん大変だったのは、そういう僕に振り回されたメンバーでしょうね。もともと、自分の想定外のことをやりたくてバンドを始めたんですけど、想定外のことが起きるとプリプリしちゃうんですよ、僕。人間らしく(笑)。自分から遠いメンバーがいい、なるべくキャラクターはバラバラなほうがいいって言いながら――要するに3年B組みたいな感じですよね。僕、ドラマを観ていたときは「なぜ3年B組にばっかりこんなに事件が起こるんだ、これはむしろ金八に問題があるんじゃないか」と思ってたんですけど――。
EMTG:はい(笑)。
真部:よくよく自分の身に置き換えて考えてみると、やっぱり金八、つまり僕に問題があるんじゃないかと(笑)、メンバーとの関係性を見つめ直すところもたくさんありまして。僕にも言い分はある、メンバーにも言い分はある。いろいろ振り回す、振り回されるを繰り返した結果、絆が強固になってきたんですけど。そんな中でいちばん振り回され振り回したのが齋藤さん(笑)。
齋藤:いや、まあ……これまでのアルバムもいろいろあったんですけど、今回もいろいろありました(笑)。
真部:毎回齋藤さんがレコーディングスタジオから逃げ出すっていう(笑)。
EMTG:前回そういうことがあったというのは聞きましたが、また逃げ出したんですか。
齋藤:今回は逃げ出しまではしてないですかね(笑)。でも制作の時期は関係が難しくなるっていうか、どう応えたらいいかわからなくなったりもするし。
EMTG:でもそのたびに乗り越えて戻ってくるっていうのが偉いですよね(笑)。
齋藤:乗り越えるたびに「もうやめてくれよ」って言われるんですけど。何だかんだありつつ、乗り越えられないことはたぶんないと思います(笑)。
EMTG:ど根性ですね(笑)。齋藤さんは、今回のアルバム制作にどういうふうに臨んだんですか?
齋藤:セカンドのときはファーストで習得したことを使ってアルバムを作る感じだったんですけど、今回はまったく新しいところに挑戦していった感じがあって。「SUPER MUSIC」とか「セダン」とか、今まで歌ったことがないリズム重視の歌も増えたので、練習量も増えましたし、アルバムを作るなかで成長できたかなって思います。
EMTG:確かに、今回の曲って結構難易度高いですよね。
真部:そうなんです。セカンドアルバムはバンドの世界観を強固にするために、わりと選りすぐりというか、齋藤さんが歌いやすくて齋藤さんが映える曲っていうのを選んで、その中で齋藤さんのヴォーカルスタイルを1回固めてもらおうとしたんです。今回はそこで得たテクニックとか感性を活かして新しいところに取り組んでもらいたいなと思ってたので。そういう意味では結構スパルタなんですよね。
齋藤:でもアルバム12曲、曲単位で練習してできるようになっていったかというとそうではなくて。極端に言ったら「SUPER MUSIC」と「セダン」をめちゃくちゃ練習したら他の曲も歌えるようになったっていう感じなんです。アルバム単位でできることがぼんって上がった感じがしていて。このアルバムができたことはとても大きいなと思います。
EMTG:「SUPER MUSIC」と「セダン」をやることで、どういう部分がレベルアップしたと思いますか?
齋藤:今までは「もっと感情を乗せて」って言われることも多かったんですけど、感情って、ただ自分の「感情を乗せる」だけかな?ってずっと思ってたんです。テクニックで感情を乗せることができるんだってことを知ったりとか、考え方が変わりました。歌を歌うこと自体への気持ちが。
EMTG:なるほど。現体制になって、まず『ティーチャー?』が出て。あれは初期からずっとライブでやってきた曲ですけど、それをこのタイミングで音源化しようと考えたのはどうしてですか?
真部:「ティーチャー?」に関してはいちばんライブ曲っぽいっていうことで、アルバムの取っ掛かりになるっていう意味でいいのかなと。音源化されてない中で、ショーの中でハマっている曲だったんですよ。なのでみなさんに「次はこういう感じですよ」ってプレゼンするにはいいと思って。
EMTG:あの曲を聴いたときにすごく新鮮に感じたんですよ。「あ、変わったな」っていう。サウンドも、歌も。すごくエモーショナルな歌だなと思ったんですが。
真部:ああ、そうですね、確かに。
齋藤:もっと早くリリースされていてもおかしくなかった曲だと思うので、このサードアルバムというタイミングで収録する意義を自分なりに考えながらレコーディングしました。アウトロ部分の感情の乗せ方とか、色々試行錯誤してみたんです。バンド感を増した楽器隊の演奏に影響された部分も大きいですし、結果的に初期のころからライブでこの曲を聴いてくれている方にも、楽曲の進化を楽しんでもらえるようなテイクが録れたと思います。
EMTG:齋藤さん、バンドへの向き合い方みたいな部分も変わってきました?
齋藤:はい、今はめちゃくちゃ楽しいです。ファーストのときはオケの上で歌っているような状態だったんですけど、今は歌いながらドラムの音が聞こえてきたり、ギターの音が聞こえてきたり、細かいところを聞きながら自然に歌えるようになったので。それがわかってからすごく楽しくなりました。今は私も「声」という一つの楽器として関わりたいと思うし、ギター、ベース、ピアノ、全部聴きながらやりたい。それがわかってきたことは私にとっても大きいし、バンドにとってもたぶん大きいんじゃないかと思います。
真部:スタッフに聞いたんですけど、今年の目標は「脱まじめ。」らしいですね。
齋藤:え、いつ聞いたんですか?(笑)
真部:こそっと聞きました。
齋藤:「脱まじめ。」です。まじめすぎてもつまんないなと思って。まじめも大事ですけど、まじめじゃなくなることでプラスになることも多分ある。
真部:齋藤さんは、ヴォーカリストとして「自我を持て」ってずっと言われていて、それでいざ自我を出すと「エゴを出すな」と言われ(笑)。わりと理不尽な環境におかれているんです。まじめだと振り回されちゃうもんね、それに。
齋藤:そうなんですよ! もっと自由にやれたらなって。真部さんに何か言われたら、違うものも出してみようかなって最近思うんですよ。それが曲にとってプラスになるかもしれないし、怖がらずにやりたいと思ったらやってみようかなと思って。
真部:そういう意味ではメンバーがいい感じにやりたい放題やれるようになってきているんです。そういうほうが自分もバランスが取りやすいというか、プロデュースに向き合いやすいのかなって思います。
EMTG:そうなるとこのバンドにおける真部さんに立ち位置や役割も変わってくるんでしょうね。
真部:それが結構難しいところで。僕がプロデュースを一任される形というか、先導してコントロールする形ってもしかしたら適切じゃないのかなと思って、今回のアルバムに関してはメンバーに任せて一度プロデュースを放棄したんですよね。でもそれだと上手くいかなかった。そこで一度考え直しまして、今までは僕だけがコントロールルームに閉じこもっているのは不本意だなと思っていたんですけど、今はたとえばドラムはバカスカ叩いて、その後ラウンジでゲラゲラ笑っていてもらったほうが、バンドにとってはいいんじゃないかなと思ってきています。
EMTG:まあ、学校でも先生が放棄したらクラスが荒れるだけですからね(笑)。
真部:まあ、金八色は一度払拭したいですけど。これからはグレートティーチャーでいきます(笑)。
EMTG:ゴリゴリいくぞ、と(笑)。最後に、アルバムタイトルの『SUPER MUSIC』というのがこれまでの2作とはまったく語感が違うんですけど、これは?
真部:もともと4文字縛りでアルバムタイトルを決めていこうかなと思っていて、次は『1999』にしようかなと思っていたんですよ。でもツアーバンで移動中にメンバーと「もしソロアルバムを作ったら」という話になって。ソロアルバムを作るなら僕は自分のイニシャルをタイトルにすると言ったんです。「S」HUICHI 「M」ABEで『SUPER MUSIC』にしますよと。「あっはっは、それおもろいね」って話になって。
EMTG:それで『SUPER MUSIC』に?
真部:しかもそこで僕がふざけて「SUPER MUSIC」のさわりを歌ったんです。この曲はそこでみんなで笑って忘れ去られるはずの曲だったんですよ。そしたらドラムの西浦(謙助)さんが――こんなこと彼と10年付き合ってきて初めてのことなんですけど、ポケットからiPhoneを取り出して「真部くんそれ、録っといたほうがええで」って(笑)。そのときに、これを完成させたら、自分の意図していない形で、バンド特有の曲が生まれるんじゃないかと思って、お家に帰ってがんばって完成させました。そういう意味でも、アルバムのタイトルにするべき曲なんじゃないかなと。
EMTG:めちゃくちゃ意外な成り立ちですね。
真部:いい話ですよね。バンドっぽい話なんですよ。初めてなんです、そういうのが。最近その話をしたら西浦さんは「覚えてへん」って言ってましたけど(笑)。

【取材・文:小川智宏】




<ミュージックビデオ>

集団行動 / 「1999」Music Video(Short ver.)

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リリース情報

SUPER MUSIC

SUPER MUSIC

2019年04月03日

CONNECTONE

1. SUPER MUSIC
2. 1999
3. テレビジョン
4. 皇居ランナー
5. セダン
6. クライム・サスペンス
7. スープのひみつ
8. 婦警さんとミニパト
9. ティーチャー?
10. パタタス・フリータス
11. ザ・クレーター
12. チグリス・リバー

お知らせ

■マイ検索ワード

真部脩一(Gt.)
キューティクル
「急に来る」みたいな言葉を自分で言ったときに「キューティクル」を連想して。キューティクルってなんなんだろうってふと思って。調べてみたら結構概念として難しかったです(笑)。特定の物質を指す言葉でもなくて。

齋藤里菜(Vo.)
焼き鳥屋
焼き鳥屋さんばかり検索してました。1月、2月で体をめちゃくちゃ鍛えていまして、鶏肉ばかり食べていたんです。ごはん行こうよって誘われてもお寿司とか食べられないんです、自分のモチベーションに反するというか。で、焼き鳥ならいいよって……おもしろくないな、これ。恵比寿の松本っていう焼き鳥屋さんのアスパラがおいしかったです。



■ライブ情報

SUPER MUSIC TOUR -MUSIC編-
04/18(木)名古屋CLUB UPSET
04/19(金)大阪Music Club JANUS
04/28(日)渋谷WWW X

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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