18歳の新人SSW、Karin.にとっての「愛」のかたちと「歌」への思いとは――。
Karin. | 2019.08.07
2019年8月7日、アルバム『アイデンティティクライシス』でデビューを飾るシンガーソングライター、Karin.。2001年生まれ、現在18歳の彼女が歌うのは、子どもと大人の狭間で揺れ動く心であり、自分を変えたいという願いであり、全身全霊をかけた存在証明だ。昨年6月に初めて人前で歌い始めたという彼女の歌は、そのキャリアの浅さとはまったく関係なく、表現することや歌うことのいちばん大事な部分――つまり何よりも正直であること――をいきなり掴んでいると思う。彼女を歌に駆り立てるものとはなんなのか、語ってもらった。
- EMTG:歌い始めてからまだ1年ぐらいというなかで、ものすごいスピードで進んできたと思うんですが、今世の中にKarin.という名前と歌が放たれていくっていう状況をどう受け止めていますか?
- Karin.:最初はついていけなくて、スピードに。本当に不安しかなくて、「これ大丈夫なのかな」と思ったんですけど、今になってみればあっという間な気もします。でも思い返すとすごい長い半年だったなって思います。
- EMTG:この1年で、自分自身のどこが変わったと思いますか?
- Karin.:なんだろう、自分の表し方、表現の仕方がすごく変わったなと思って。最初は自分の思いだけをとげとげしく歌ったりしてたんですけど、最近はいろんなことを感じるっていうか。自分の感情のコントロールの仕方がちょっとずつできてきたんじゃないかなって。だんだん丸くなってきますね(笑)。
- EMTG:はははは。
- Karin.:自分には歌しかないと思っていたので、自分そのものを歌で表せたらいいなって思ってきたんですけど、最近はもっといろんなことに挑戦したいなって。たとえば小説とかも書いてみたいし、ミュージックビデオとかを撮って、演技でもないんですけど、そういうのもすごい楽しくて。もっといろんな表現の仕方ができたらいいなって思ってます。
- EMTG:そもそも歌うのが好きだったんですか?
- Karin.:歌うのはすごい好きでしたけど、あんまり上手じゃないし、自分の声もあんまり好きじゃなくて。でもほかにやることもないし、私このままだと自分がなくなっちゃうんじゃないかなって思ったんです。何か自分が必要とされるものが欲しいと思って、じゃあ歌おうと思って人前で歌うようになりました。それが去年の6月です。
- EMTG:「自分がなくなっちゃう」っていうのは、ずっと思っていたんですか?
- Karin.:私にしかないものっていうのがなかったので。だから私なんか……死ぬ理由はないけど生きる理由もないっていうのがいちばん辛かったです。何か理由が欲しいなと思って。私、自分が周りと違うのがすごく嫌だったんです。自分に特別感が出るのが好きじゃなくて。学校の持久走大会とかでも、10位以内入賞だったら「絶対10位目指そう」みたいな(笑)。なんか1位になるとか自分がトップに立つのが好きじゃなくて。順番数えたりしていました。
- EMTG:かといってビリになるのも嫌?
- Karin.:ビリも目立っちゃうじゃないですか。謎に拍手されたりして。それで「あんなに拍手されてたよ」とか言われるのも嫌だし。なんか、そうだっけ?って言われるところがいいなって思っていました。
- EMTG:あんまり目立ちたくない人ということですか? 基本的には。
- Karin.:自分が目立つことによって誰かが傷付いたりするのが嫌だったんです。例えば……ピアノを習ってたので、学校で伴奏をやってくれる人みたいな募集をしていた時に「やろう」と思ったんですよ。初めて「やりたい」と思って。オーディションだったんですけど、頑張って練習したから選ばれて。でもそこで選ばれなかった子が泣いちゃうわけですよ。その泣いちゃった子の友達から「なんで泣かせてんの」みたいなことを言われて。別に泣かせてないのに、そんなふうに言われて「私が泣かせちゃったんだ」って思って。それから、そういうのはもう絶対にやめようと思いました。
- EMTG:その感じと、ステージでギターを背負って歌うことの飛距離がすごいんですけど、そこの間にはどういう変化があったんですか?
- Karin.:中学生の頃にショックな出来事があって落ち込んでて。その時、すごく大好きだった女性の若い先生がいるんですけど、仲良かったので「昼休み来なよ」みたいな感じで美術室に呼ばれて、行ったんですよ。そしたら先生がギターを持ってて、「何か歌ってあげるよ」って。その人は元バンドマンなんですね。それで私もギターを持って歌いたいと思ったんです。誕生日プレゼントで親にギターを買ってもらって、高校に入って弾き始めました。楽器屋さんのイベントで初めて人前で歌って、そこからライブハウスで歌うようになりました。
- EMTG:初めて人前で歌った時、どう感じました?
- Karin.:ひとりで弾き語りだったんで、ステージの上に自分だけ立って、しかも私以外誰も喋ってないし、全員私のことだけを見てて。そういうのって、歌ってなかったら絶対にありえないじゃないですか。学校では協調性を守りましょうとか、家ではそれぞれの役割をとか。でも私だけを見てる、私だけが歌ってるっていうその空間が新鮮で、すごい気持ちよかったのを覚えています。
- EMTG:アルバムの1曲目「愛を叫んでみた」は、まさにライブで歌うということについて歌っている曲だと思うんですが、これを聴いていると、ただ「気持ちいい」だけじゃないところもありそうですよね。
- Karin.:「愛を叫んでみた」を作ったのは去年の年末なんですけど……歌ってなかったら、私は誰にも愛されないんじゃないかと思って。今はこうやって悩んでることを歌にしてるけど、この悩みもいつかなくなっちゃうし、なくなったら曲を書けなくなって、みんなも私のことを忘れちゃって、私は消えちゃうんじゃないか――って思ったら怖くなって。それで「歌いたくない」って、ライブの日に――水戸のライブハウスで、近くに水戸黄門の像があるんですけど、その裏で泣いていたんです。なんとか頑張って歌ったんですけど、帰り道も泣きじゃくって。それでも、私は結局歌ってたんですよね。やっぱり歌いたいって気持ちがあればいいんじゃないかなと思ったんです。歌っていれば消えないでいられるんだったら、ずっと歌っていようって。それが曲になりました。自分とちゃんと向き合えた曲だと思っています。私ができる精一杯の愛――私なりの愛を、誰に届くかわからないけど……歌にして愛を伝えたいなって思いました。
- EMTG:「愛」というのはすごくいろいろな意味をもった、Karin.さんにとってとても大事な言葉だと思うんですけど、もうひとつ、「嘘つき」という言葉もすごく印象的に使っているなと思って。たとえば「teenage」とか。
- Karin.:これは去年の7月、最初に作った「あたしの嫌いな唄」の次くらいにできた曲なんですけど。大人が……都合のいいようなことばっかりする大人がすごく嫌いで。私はそんな大人になりたくないけど、でも自分もだんだんそうなってるんじゃないかって思うようになったりして。私たちのために嘘をついてくれたりしてくれたんですけど、そういうのがすごく汚く思えたんですよね。でも、ほんとは大人になりたくても、結局なれずにここまできてしまった、年齢だけを重ねてしまった大人もいるんじゃないかなって。私みたいに、それを愛している子供達もいるんじゃないかと思って「teenage」ってつけました。
- EMTG:この曲に限らず、「嘘つき」「嘘」って言葉がKarin.さんの歌詞にはいっぱい出てきますよね。それはなぜだと思いますか?
- Karin.:「嘘」っていう言葉が好きだったんだと思います。やっぱり嘘ついちゃうし、自分も。嘘つきは嫌いだって言っても、結局は好きだったから嘘って言葉が自然と出てきちゃうんじゃないかなって。
- EMTG:うん。「好き」というのはつまり、Karin.さんにとって1つの愛情表現みたいな言葉ということなのかなって。「嘘つき」っていうのは悪口でもあるけど同時に愛しているってことでもあるし、愛してほしいってことでもある。そんな感じがしました。
- Karin.:ああ、でも本当にそのとおりで、愛してほしかった、愛が足りないって感じる瞬間がすごく多くて。愛情がほしくて嘘ついたりとか。もう嘘つくのやめようってわけじゃないけど、「私、嘘ついてたんだよ」っていうのも入ってますね。
- EMTG:ラストの「青春脱衣所」という曲でも、まさに「僕は嘘をついたんだ」と歌っていますね。
- Karin.:これは去年の9月にできた曲なんですけど、今までの自分、歌う前の自分を書いた曲です。周りがどんどん大人になっていって、自分だけ置いてかれてると思って。何もできない自分が嫌で、夜に家でひとりで泣いたりしていたんです。「いつか大人になる」って言うけど、その「いつか」っていつなの?と思って。でも結局はみんな大人になるんだよっていう気持ちを込めて、青春を脱ぐっていう意味で「青春脱衣所」って曲にしました。
- EMTG:青春が終わって大人になっていくという感覚は、今実際に感じていたりするんですか?
- Karin.:大人になってきてるとは思います。学校でも、やっぱり私ほど大人と接している人ってあまりいないと思うし、周りを見渡すと自分だけが浮いた感じがします。周りからも「大人だよね」って言われることが多いし。でも私の中ではそこまで……だんだん大人になってきてるなとは思うんですけど、まだまだ子どもだなって思う時もあるし。大人ってなんだろうって思います。
- EMTG:「大人」ってどういうことだと思いますか?
- Karin.:うーん……今持ってる感情がすべて消えたら大人なのかなと思ってます。消えてもいいと私は思うんですけど、しばらくは人間不信とかそういうものは消えないんじゃないかなと思って。だからまだ子供なのかなって思う。そんなに人を信用してないので。「どうせ裏切るんだ、この人も」とか思うシーンが多いんですけど、最近は何も感じないです。もう、裏切られてもいいやみたいな。諦めとは違うんですけど……でも、信じなきゃ裏切られますからね。だから結局は信じちゃうんだと思います。
- EMTG:うん。曲を聴く限り、Karin.さんという人は人を愛したいし、自分も愛したいし、人を信じたい、そういう人なんだろうなと思います。そこで生まれる感情がすべて歌になっているという感じがします。
- Karin.:私は悲しいことも歌にできるんだなって思います。私は悲しみも愛せるし、悲しみを愛して曲ができる。それなのに、泣きながら携帯に録音した曲が誰にも聞かれないまま朽ちていってしまうのは嫌だなと思います。だから……自分を表現するっていうことだけは絶対にやめないでいたいと思ってます。
【取材・文:小川智宏】
Karin.「愛を叫んでみた」Music Video
Karin.「青春脱衣所」Music Video
リリース情報
アイデンティティクライシス
2019年08月07日
ユニバーサルミュージックジャパン
01. 愛を叫んでみた
02. teenage
03. だいじなもの
04. 貴様に流す涙なんて
05. 白色のコンバース
06. あたしの嫌いな唄
07. エンドロール
08. 青春脱衣所
02. teenage
03. だいじなもの
04. 貴様に流す涙なんて
05. 白色のコンバース
06. あたしの嫌いな唄
07. エンドロール
08. 青春脱衣所
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世界一美しいミイラ
ミイラって、何百年という歴史の中で保管されているじゃないですか。保管されるってことは、それほどすごい人だったのかなって思って。で、そのすごい人ってどんな人なんだろうと思って。
そこでふと「美しいミイラ」って誰なんだろうって気になって、調べてみたら小さい女の子で。お偉いさんの子供で、病気で亡くなっちゃって。
でも、幼い頃に亡くなったのがショックだったのか、そのまま残しておきたいみたいな感じで保存されていて。それでも全然老化しないんですよ。
見た目もそのままで、臓器とか、レントゲンで撮ってもきれいなままで。しかも1時間に1回瞬きをするって書いてあって。
たぶん生きてはいないと思うんですけど。
私も一時期病んでた時とか、才能が無いからもう誰か私のことを殺して作品にしてくれないかなとか思ってたので、同じ気持ちでミイラになってんのかなって気になったんですけど、そうでもなかったです(笑)。
■ライブ情報
BEA Presents
『Don’t miss it...vol.7』
08/22(木)福岡ROOMS
w/ ASTERISM / 立花綾香
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10/05(土)仙台市内ライブハウス
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11/16(土)水戸ライトハウス
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※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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