FILTER 自身の音楽性を更に確立した2nd Mini Album 『Our Breathing』
FILTER | 2019.09.03
「多興感」「多光感」「多高感」…。これらは全て「たこうかん」と読むのだが、FILTERのニューミニアルバム『Our Breathing』を聴いているうちに、私の中で今作を称すべきこれらの形容の数々が去来した。
自身の音楽性の確立に至り、今後への指針が伺えた前作アルバムを「多幸感」(たこうかん)と標榜していた彼ら。対して今作『Our Breathing』は私の中で、エキサイティングで、光を感じさせ、高みまで連れて行ってくれる、まさにそんな作品のように感じられたのだ。
2011年に結成され、観る者を惹き込み、巻き込む音楽性が魅力の男女混合5人組のFILTER。「フェスティバルサウンド」とも称される彼ら独自の音楽性は、メンバー全員からなる圧倒的なシンガロングやユニゾンフレーズと、骨太なバンドサウンドや土着的なリズムが特徴的。それらは初見者でも一発で楽しむことができ、その輪の中に入ることが出来る一撃必殺性を有している。
自身の音楽性を更に確立したと同時に、今後の彼らの新しい可能性や幅、さらなるオリジナリティに向け、重要になっていくであろう今作。そんな今作についてを「FILTERというバンドとは?」も含めメンバー全員に解いてもらった。
- EMTG:結成から8年間活動されてますが、当初から現在のような音楽性だったんですか?
- 豊方亮太(Vo&G):音楽性の根本は変わっていないんですが、表層はけっこう深化しています。ポストロック/音響系な時代もあれば、ホーンやストリングスを入れて華やかに伝える音楽性の時期もあったり。常にブラッシュアップしてきたというか。
- EMTG:では、今の音楽性に向かってきたキッカケは?
- 豊方:あべス加入以降ですね。それ以降シンガロングが増えて、ここ2~3年でようやくまとまった感はあります。全員が一緒に歌えることで現れるエナジー等の武器に自覚でき始めたというか。
- 木村 彰(Dr):幸せにもなれて、感動が出来て、泣けて…といった、例えると映画のエンディングロールで流れそうな曲を目指す、その根本は当初から変わっていない気がします。そこからメンバーが変わっていくうちに音楽性も段々と変化していって。そんな中ですね、シンガロングやリズム感、多幸感が全面に溢れる音楽性に辿り着いたのは。それも併せて、今の5人は必然的に集まったメンバーな気がしています。
- 高野優裕(G):僕も途中加入ですが、FILTERの元々の音楽性や取り組む姿勢が好きだったんです。そこで自分の力が活かせればなって。自分としても、FILTERとしてどう自身を表現し、且つバンドが向かう方向性に寄与できるかを加入以降ずっと模索していて。それらがようやく結実したのが昨年秋発売の1stフルアルバム(『euphoria』)だし、それが確立できたのが今回の2ndミニアルバム(『Our Breathing』)かなと。
- 葛西達也(B):僕は元々メロコア系のバンドをやってました。だけど雑食で色々な音楽を好んで聴いていて。そんな中どこか「リズムで持っていく」そんなバンドへの憧れもあったんです。ここ最近は観点がよりグルーヴやリズム感に移ってきた気がして。それによる歓びに出会えたのもこのバンドに居るからだなと。
- EMTG:先ほど豊方さんが、「あべスさん加入以降、音楽性が変わった」とおっしゃってましたが。
- あベス(Key&Vo):それは私が入ったことで、男女混合のボーカル性がより出せるようになったことだと思います。実は私、このバンドの前はギター&ボーカルで。このバンドで初めてキーボードをやったんです。「弾けないけどいい?」みたいな(笑)。
- EMTG:「キーボードを弾けなくてもあベスさんが欲しい!!」的な何かを有していたわけですね?
- 豊方:それが人間性でした。バンド経験もあるし、華もあるし、歌えるしで、前の女性キーボードが脱退した際に真っ先に声をかけたんです。元々あベス自体、リズムを強調したリズミカルな音楽性のバンドをやっていたこともあり、「これはいい刺激や融合になるだろう」と。キーボードはかなり特訓してもらいましたが(笑)。
- EMTG:みなさんの代表曲にして今や代名詞的な、シンガロング性が強く土着的なリズムとバンド全体の一丸性も印象的な、前作アルバム収録の「Last Dance」という曲があります。現在のFILTERはあの曲以降、自分たちが目指す路線に自覚的になったと私は捉えていて。あの曲に至った経緯を教えて下さい。
- 豊方:あベスが入ったタイミングで、「もっとリズムを取り入れよう!!」と自分が思い立ったのがキッカケでした。元々下敷きになる曲があって、それらを経て誕生したんですが、とにかくリズミカルでアッパーな曲にしたくて。「FILTER史上最もアッパーな曲を作ろう!!」と挑んだんです。
- 木村:コンセプトに行き着くまでに時間はかかりましたが、「これだ!!」と見つけてからは速かったですね。すぐ出来た!!って印象があります。
- 豊方:たぶんそれはリズムありきだったからだと思います。いわゆるメロディから作るのではなく、この曲のリズムを聴いているうちに歌とメロディが同時に自然と湧いてきたというか。この曲が生まれたときには、ありそうだけど、まだ誰もやったことない音楽が出来た感があって。今やライブでもキラーチューンなので、自分たちでもまさにエポックな曲と捉えています。
- EMTG:この曲の一丸となるユニゾンでのシンガロングは、ある種、凄く聴いていて力が湧いてきます。そして、一緒に声を合わせたくなる。
- 豊方:最初はメンバー間でも躊躇がありました。えげつないぐらいに最初から最後までシンガロングしてるじゃないですか。「これってやり過ぎじゃない?」との意見も。でも、とりあえず押し通して良かった。結果、自分たちでも新しい道が拓けましたから。だからその感想は非常に嬉しいです。
- 葛西:この曲の出現以降、ライブでのお客さんの反応も如実に変わりました。特に初見の方は遠くで聴いていた感じから、一緒に歌ったり盛り上がったりする場面も多々出てきたので。初めて接した方に対しても、惹き込む力は凄くありますね。
- 木村:じんわりサウナ系の汗のかき方から、完全にスポーティで爽快な汗のかき方へと変わりましたね。それは僕らもお客さんもお互いに。
- EMTG:分かります。相乗効果やエネルギーの交歓によって、どんどんその熱量が上がっていく曲ですもんね。
- 豊方:いま思い出したんですが、このメンバーが揃った段階で、「盛り上がりたい」「汗かきたい」って話をしました。「盛り上がることによって生まれるエネルギーを共有したい!!」って。今はその「盛り上がりたい」という本能的なものから、感動したい、させたいへと、それがどんどん深くなってきています。
- EMTG:そんな中、今回のミニアルバムのリリースですが、前作で見つけたFILTERの向かっていく音楽性を踏襲しつつ、深化、そしてそれだけじゃない今後の可能性を多分に感じました。
- 高野:そうですね。「euphoria」での一体感や多幸感は継承しつつ、今回は各メンバー個人がどうしたいか?の話をして楽曲を作っていきました。なので根本は変わりませんが、そこに各人が聴いてきた音楽性やバックボーンがより各曲に反映された感はあります。
- 木村:またリズム感が増したかなって。もちろん多幸感やシンガロング性は多分に活かしつつ、よりダンサブルさが増しましたから。それはみんなが新しい音楽を聴くようになったのも大きくて。自分としてはこれまで聴いてこなかったアフリカ音楽等も沢山聴いたり。あとは達也(葛西)とは、「どうやったらグルーヴを上手く出せるか?」を色々と研究したり工夫したりしました。前作よりも曲数は少ないですが、音楽のバリエーションではそれを超えるものが出来たかなと。
- 葛西:おかげさまで成長に繋がる曲たちになりました。前作で曲のストックもほぼなくなり、文字通りゼロから作った作品でもあるので。特にリズム隊が要(かなめ)になる自負もあったので、かなり話し合い煮詰め合いました。音符の長さにまでこだわったり。
- 豊方:進化の過程が伺える作品になったかなって。前作からの延長線上の曲もあれば、これからを伺わせる曲もあったり。挑戦のアルバムでもありました。
- あベス:私も前作以上に色々とチャレンジしたなという印象です。
- EMTG:あベスさんの作詞と歌唱した曲も今作ではアクセントになってます。
- あベス:ありがとうございます。元々1曲歌うことは決まっていたんですが、だったら歌詞も書きたいなって。FILTERでの作詞は初だったんですが、バンドの雰囲気を壊さないように、しかも日本語で踊れる歌や歌詞を目指しました。ちょっとしたキュンとなる切なさもこれまでこのバンドには無かったので入れ込みたかったし。
- 豊方:ここまでかなり土着的だったのに、急にアーバンになりましたから (笑)。いいコントラストになったかなって。
- EMTG:前作のキャッチフレーズって「多幸感」だったじゃないですか。対して今回は同じ「たこうかん」と読んでも「多光感」や「多興感」「多高感」だったりを感じたんです。
- 豊方:素晴らしい!嬉しいっす!!確かにそうですよね。今作で言うと「たこうかん」はまさにそっちの方がしっくりきます。
- EMTG:あとはスケール感のアップにも驚かされました。
- 豊方:その辺りは無意識でした。というか、元々自分たちの中では、これぐらいのダイナミズムやワイド感でやっていたつもりだったんです。だけどどうしてもそれが出し切れていなかったようで。それが今回ようやく出せたかなって。より奥行き感を出す。その意識は音作りの際もミックスの際にもありました。特にラストの「Stand By Me」は、その辺りを意識して作ってました。
- EMTG:個人的にはこの「Stand By Me」こそ、これからのFILTERを感じさせる楽曲のように響きました。雄々しさやブレイブ感はあるんだけど、キチンとエモさや哀愁性も同居していて。
- 豊方:この曲が今作にあってほんと良かったです。この曲のおかげで今作が締まったし、逆に次への期待を湧かせてくれる。自分たちでも前作で見つけた、「これだ!」という感覚を更に自分たちらしく伝えられたので、ホント今後のFILTERにとっても大事な曲になっていくんだろうなって。実はこの曲は最後の最後に出来たんです。というか、何かラストに相応しく且つ今後を感じさせる曲で締めたくて。そのわりにはスッと出来て。エンジニアさんにも録っている時に言われましたもん。「なんかこの曲、感動するんだよな…」って。でもそれこそが正解だなと。この曲は歌詞に関しても始めて自分の気持ちを乗せてみたんです。今までは曲の雰囲気重視だったこともあり、その辺りあえて避けてきましたが、書いてみて、これぐらい赤裸々でもいいし、その方がより楽曲としても信憑性もあり伝わるだろうと。最後の最後にそれに気づけたので、僕としては、このような曲をあと6曲ぐらい加えてフルアルバムにしたかったと今になって思います(笑)。
- EMTG:その辺りは次作でのお楽しみですね。
- 豊方:そういった意味では今作はなくてはならない作品だし、「次作も任せてよ!!」と言いたいです。
【取材・文:池田スカオ和宏】
FILTER「Stand By Me」
FILTER「Day After Day」
apple music
https://music.apple.com/jp/artist/filter/1195521095
spotify
https://open.spotify.com/artist/5iqcmM1KJhZUVjDmdDlBV5?si=9h4XALIuTFuj0PQn7h_
リリース情報
Our Breathing
2019年09月04日
living,dining&kitchen Records
1.Into The Fire
2.Day After Day
3.Rumba
4.Friend Like Me
5.All Night Long
6.Stand By Me
2.Day After Day
3.Rumba
4.Friend Like Me
5.All Night Long
6.Stand By Me
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■マイ検索ワード
豊方 亮太(Gt/Vo)
胸筋 下部 鍛え方
最近筋トレにハマっていて。胸筋の下部だけ、どんなに鍛えても痛くならないんです。痛くならない=鍛えられてない証拠で。その部位の鍛え方を検索しました。結果、腕立ての幅をもっとぐっと広くしてやればいいようで。その知識を得て更に鍛えようかと。
木村 彰(Dr/Cho)
動画 アフリカドラム
FILTERの中でも裏ノリをもっと強化したいというのがあり、勉強の為、色々と観て研究しています。アフリカ人のリズム感覚って元々日本人には無いリズム感覚だったりもして。彼らは常に体の中に三拍子が流れていることを発見したんです。と同時に、それが身体にキチンと沁み込んでいるので、リズムが走ったり、もたったりせずに正確にビートを刻み続けられるんだなと。その差をまざまざと見せつけられました。
高野 優裕(Gt/Cho)
FUJI ROCK 持ち物
今年初めてフジロックに参加したんです。前知識として色々な方から様々な情報を得ていたんですが、それに加えネットでも調べて。それを基に必要なものを買い揃えて、いざ挑みました。でも色々と調べて良かったです。当日は記録的な豪雨だったこともあり、調べた装備や持ち物で行かなかったら、どうなっていたことやら。
あベス(Key/Vo)
お祝い 花言葉 門出を祝う
前の職場の方が出世するらしく、そのお祝いで花を贈ろうとしたんです。結果、青いバラをあげようと。花言葉的には「夢叶う」があるらしく。ところが近所の花屋さんに青いバラが全然置いてなくて。諦めて、結局ハーバリウムを自分で作って贈ろうかと思っています(笑)。
葛西 達也(Ba/Cho)
セメント 上手な塗り方
自分の家をリフォームしようと、今の壁をちょっとモルタルがだらっと垂れた感じにしたくて調べました。材質や水の割合等を調べたんです。次の休みにでもさっそく実践してみます。
■ライブ情報
”Our Breathing”TOUR 2019
09/21(土)天神Early Believers(福岡)
10/05(土)札幌SPiCE(北海道)
10/25(金)仙台enn 3rd(宮城)
11/01(金)心斎橋Pangea(大阪)
11/02(土)名古屋CLUB ROCK’N’ROLL(愛知)
11/09(土)柏DOMe(千葉)
11/29(金)新代田FEVER(東京)
ゆるめるモ! × NIGHT ON THE PLANET!pre
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10/14(月)大阪ミナミ一帯のライブハウス
HUNGRY OVER 2019
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下北沢にてTOUR 東京公演
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下北沢にてTOUR 大阪公演
11/22(fri)Pangea / CLAPPER
下北沢にてTOUR 名古屋公演
11/23(土)名古屋R.A.D / Party’z
下北沢にて’19
12/07(土)、08(日)
下北沢GARDEN / SHELTER / 251 / 440 / BASEMENTBAR / THREE / 近松 / MOSAiC / Daisy Bar / Laguna / ERA / GARAGE / WAVER / ReG / mona records / and more
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
豊方 亮太(Gt/Vo)
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