coldrain、2年ぶりとなる待望のNEW ALBUM『THE SIDE EFFECTS』
coldrain | 2019.08.29
「coldrainが、よりcoldrainらしさに特化したアルバムをリリースした(嬉)!!」…それが今作を聴いた私の第一印象であった。私における彼らの魅力は、激しさや勢い、カッコよさや凄さはもちろんのこと、そこにキチンと根づいた美しさや哀しさを擁しているところ。故に彼らの音楽は国内外問わず、他のラウドロック系バンドとは一線を画した独自性が見い出されていると捉えている。そんな彼らの2年ぶりのニューアルバム『THE SIDE EFFECTS』は、その辺りが如実に現れたもの。世界照準の音楽性はもちろん、それを際立たせる為にも必要な「美」や「哀」も更に際立ち、ことさら彼らの独自性を確立させている。また、歌を全面に立たせ作品性を高めることにより、従来のファン層のみならず、幅広い層へとコミット出来るポテンシャルも多分に擁しているのも特徴的だ。とにかく彼らは、より開けた。その辺りを含め、今作のメカニズムをボーカルMasatoが解いてくれた。
- EMTG:今作は元々coldrainが持っていた美しさや哀しさの類いを、更に拡大再解釈させたかのような作品ですね。
- Masato:と、嬉しいことをおっしゃって下さいましたが、実際その辺りは無自覚で。気づいたら自然と、より出ていた。そんな感じなんです。
- EMTG:では何故、今作ではその辺りがより表れたのでしょう?
- Masato:どうしてなんだろう……。かつては僕らも「世界照準」をキーワードに、それを自身でも掲げていた時期もあったんです。だけど、前作辺りからそれらを意識したり、目指したりするのをヤメて。もっと自分たちらしさを出した方が、逆に国内でも海外でもみんなが求めているものなんだと、ここ数年の国内外のツアーを経て実感したんです。だったら海外に自分たちを合わせるのではなく、向こうでもキチンと勝負できる自分たちの音楽性の確立の方が大事だろうと。その辺りが無意識に出た感じは自分でもしています。
- EMTG:中でも今作は特に「哀」の部分をより強く感じました。その「哀」にしても色々な伝え方をしていて。
- Masato:自分の中でも「哀」って凄く日本人っぽいし、日本人独特だなと感じることが多いんです。それらが際立つからこそ、coldrainがただのラウドロックバンドじゃないとも言える。言っちゃうと、僕らは洋楽とも違った独自の音楽性ですから。その辺りがここにきて更に強くなってきているし、特に最近の海外ツアーで実感したんです。
- EMTG:そうなんですね。
- Masato:海外でのライブの際も、向こうの人から「ちょっと他のラウドロックバンドとは違う」と受け止めてもらっている感覚が凄くあって。メロディだったり楽曲のバランスだったり。その辺りを面白く捉えてもらえているのかなって。でもそれも決して自分たちで狙ったわけではなくて。個性みたいに、日本人ならではのルーツから培ってきたものが自然と滲み出ていたんでしょうね。
- EMTG:哀しさにしても様々な伝え方をしていますよね。激情的だったり、センチメンタルだったり、ノスタルジックもあれば、清涼感や爽快感を持った伝え方をしていたりと。決して一辺倒じゃない。
- Masato:その辺りは歴でしょう。もう12~3年このバンドをみんなでやってきていますから。若さだけじゃないというか(笑)。逆に今は何かを目指していないからこそ、一番自分たちの根底にある出したい音に近づいてきているんじゃないかな。もうここまでくると、「何かに影響されて云々」ではないでしょうから。もちろん色々な音楽からインスピレーションや刺激を受けたりはしています。だけど今やもう、「こういったバンドみたいになりたい!!」は皆無ですからね。
- EMTG:分かります。coldrainの音楽性は、ますます形容しがたくなってきているし、カテゴリしにくくなってきています。
- Masato:今作も何も考えずに、1曲1曲攻めていっただけでしたから。中でも今回はこれまで以上に、「こんなアルバムにしよう!!」「こんなアルバムにしたい!!」もなく、各曲作り進めていったんです。毎度のことながら、今回も全曲シングル且つベストアルバムの気概で臨んだし。おかげさまで、ありのままの今の自分たちを如実に表せたかなって。
- EMTG:言い換えると、どんなものが自分たちから出てこようが、それはすなわち自分たちの音楽なんだからという確固たる覚悟も芽生えたと?
- Masato:そうですね。特に今回はそれが強いかな。だから誰かから「このアルバムは嫌いだ!!」と言われても全然怖くない。前作アルバムが10年という節目や、その集大成的な武道館公演もあったりした中でのリリースだったので、無意識にそこに向けての総括的な形になっていたと思いますが、それを経て、理解した上で、「じゃあ次に何をやるか?」ってなったら、やはり「初心に戻って自由に作ることなんじゃないか」って。一旦前作で第一章を終え、今作からは新たな第二章の幕開けというか。
- EMTG:結果、coldrainのcoldrainらしさや本質がより如実に現れたのにも興味があります。
- Masato:自分的には、今作はこれまで以上に幅の広い楽曲たちが収まっていると自負していて。それこそ収録12曲、人それぞれで好きな曲が分かれる。そんなアルバムかなって。
- EMTG:その辺りは当初から目指していたものだったりしたんですか?
- Masato:目指してはいませんが、「こういったシーンのバンドだから、このような曲しかやらない」というこだわりはなくなっています。今回は最終的に、「やっぱりcoldrainっぽいアルバムだよね」と納得してくれればいい。出した時のみなさんの反応もだけど、好きな曲が分かれるのも含めて。基本、僕は一回作り終えちゃうと曲は聴き手に委ねちゃうタイプなので。逆に是非とも聴いた側のものにして欲しいんです。
- EMTG:今作でトラップミュージックも出現し、そのフレキシブルさにも驚きました。
- Masato:要はそういった面です。そのような部分で「時代を摘まむ」というか。芯を変えずに摘まむところは摘まんでというのは常に持っていて。そんな中、今回最も摘まんでいるのは、全然時代遅れなラウド方面の曲だったりもするんですが(笑)。なんなら今回は、J-POPっぽい要素が入ってる曲もあったり。
- EMTG:そのJ-POP的な楽曲構成の現れには驚きました。頑なにその辺り拒んできた印象があったもので。
- Masato:いやいやいや。そんなこと全然ないですよ。僕ら洋楽で言ったらボン・ジョヴィになりたいし、邦楽で言ったらB’zになれば勝ちとさえ思っているんで。
- EMTG:中でも、「STAY THE COURSE」はJ-POP的な解釈の曲ですよね。
- Masato:もう、あの曲に関しては自分の中では勝手にB’zだと思っているので(笑)。デモを聴いた瞬間から、「これはもう日本のロックだな」って。とは言え、もっと日本のロック的なものになると思ってました。これ、僕が歌わなくてcoldrainが演ってなかったら完全にJ-ROCKになってたでしょうね。そう考えると自然と、どんな音楽性を取り込もうが、演ろうが、自分たちを通すと結局は、どの国のどんな音楽でもなくcoldrainの音楽になるんだなって。それはこの曲から改めて実感しました。
- EMTG:あと今作は、凄くボーカルに突出したアルバムという印象もありました。
- Masato:それは強くあります。これまでとボーカルの音量が全然違うんです。ミックスでの歌の音量がこれまでで最も大きい。何よりも歌が聴こえる作品にしたくて。ギターも2本いるし、我々は楽曲としても詰め込むタイプなので、今回はあえて歌を中心に音作りをしました。もう「ボーカルをベースにした作品!!」と言い切ってもいいぐらい。
- EMTG:ボーカルにしてもかなり作品的ですよね。一人何役のようにチェイスしたりリレーションしたりと、ライブではかなり大変そうです。
- Masato:もうライブでの再現は捨ててます(笑)。今回のプロデューサーの考え方自体、ライブはライブ、作品は作品という考え方の人なので。したがってボーカルは鬼タイト(笑)。ライブは徐々に作品に近づけていくしかない。逆を言えば、また成長させてくれるアルバムでもあります(笑)。あと今回はハモりも重視しましたね。その辺りも今まで以上に大きく録ってます。そこもJ-POPに通ずるところがあって。
- EMTG:それもあり、今作はよりマイルドで包み込まれる要素が現れたり、より美しく感じたりしたんでしょうね。今回ボーカルをより前面に出したのは、従来のファンのみならず、そのもっと向こう側の人たちにも届けたかったからですか?
- Masato:そうです。今まではやはり、激しい面をより激しく、僕もボーカルでありながらも、そっちの方に重点を置いていましたから。だけど振り返ると、「いいアルバムだな…」と感じるものの多くはボーカルが前面に出ているものばかりで。面白かったのは、特にそれは僕が言い出したわけでもないんですが、メンバー各人も作っていくうちに気づいていったようで。メンバー自ら自分の音を下げだしたりしましたから(笑)。で、「もっと歌を上げようよ」って話になったり。これは新鮮であると同時に、ライブに対するボーカリストとしてのハードルも上がるなって(笑)。ここにきて改めて試されている感はあります(笑)。
- EMTG:作品では凄く細かいニュアンス的な部分にも気を遣って歌われてますもんね?
- Masato:その辺りが激しい曲が好みではない人たちに届かせるためにも大事な部分で。あとは僕の声がこういった感じっていうのも幸いしているのかも。
- EMTG:元々けっこう繊細な歌声ですもんね。
- Masato:基本、叫んでいてもそんなにロックな声じゃないですからね。僕も渋い声に憧れたし、それがカッコいいと感じていた時期もありましたが、いつからかIncubusやLinkin Parkのように線の細いボーカルに惹かれ始めて。それらのバンドのファンって、決してロック好きだけじゃないじゃないですか。そういった人たちにもキチンとコミット出来る歌声というか。それが幅広い人たちに好きになってもらえる要素の一つでもあるし。今回のアルバムは特に、ロックやラウドロックファンじゃない方々が聴いてどう思うか?それも楽しみなんです。
- EMTG:歌う際に何か意識したことは?
- Masato:これまで以上に何も考えずに歌ったかな。考えずに、感じたままに歌っただけ。自分の歌声にビビらなくなってきている自分が居るんですよね、最近は。強がらず、背伸びせず、大きく見せようとせず、ナチュラルに出たもので勝負してみました。
- EMTG:「JANUARY 1ST」はバラードながらMVも作っており、そこには対訳もあったりして、かなりの本気度を感じました。それにしてもこの曲はむっちゃイイ。感動しました。
- Masato:何年か前だったらバラードを推し曲としてMVを出すなんて、スタンス的になかったでしょうね。だけど今やバラードを出しても、「変わっちゃったな…」と言われない自信があって。この曲こそ広く浅く色々な人に聴いてもらえるし、僕らを知ってもらえる楽曲になる可能性を多分に秘めている。聴いてもらえる層を広げるにはいい曲かなと。むちゃくちゃいい曲だな…としみじみ思いながら歌ってました。そんな中、プロデューサーはこの曲を録り終えた後、ボソッと「金の匂いがする曲だ(笑)」と言ってました。僕ら的にはそれは「多くの人に届く」と解釈しています(笑)。
- EMTG:coldrainが他のJ-POPのバンドと決定的に違うのは、他のJ-POPのバンドは大体サビの部分にカタルシスを持ってくるけど、coldrainはまるでそこまで貯めているかのように、最後に向かうにつれカタルシスに包まれていく部分かなって。
- Masato:それは確かにあります。だけど自分たち的にはそれは必然で。僕がJ-ROCKやJ-POPの苦手な部分って、サビの歌詞が変わっていくところなんです。サビの歌詞が変わるって、僕の中では、それこそ歌が全部変わるって意味でもあって。対して僕らはあえて一緒のサビにしているんです。が故に、その中で感情を変えていくしか表現の変化の付け方がない。中にはあるじゃないですか。最初のサビで、「待ってました!!」と気持ち良く一緒に歌いたかったのに、自分が知ってて、よく流れていたサビが実は2番のサビだったって(笑)。「えーっ、あのCMで流れていたのって2番だったの!?」って(笑)。逆に僕らはサビでは歌詞を変えることはあまりしないし、逆に最後のサビが勝負なので、そこに全エネルギーを持っていくんです。その為にも1番と2番のサビは同じでなくちゃ意味がない。
- EMTG:その辺りを自覚し始めたのはいつ頃からでしたか?
- Masato:それはこのバンドを演り始めた頃から変わってないですね。例えばアニソンってそんな感じのが多いじゃないですか。1番の頭90秒ぐらいしか流れないから、カラオケとかで挑戦しても、「あれ、2番ってこうなってたんだ?」とそこで気づいて歌えなくなったり(笑)。映画だったらクライマックスやハイライトシーンをキチンと用意している。それが曲中、そんな場面が幾つも出てくるってちょっと違和感がありますよね?そんな中、僕らはジワジワと伝えていく。それで最後にドカンと。例えるなら無印良品ですよ。シンプルだけど気づいたらあの入れ物がちょうど良かった、みたいな。キチンと機能性がある。還ってくるところや最後に落ち着く場所。僕らもそんな存在でいたいですね。
【取材・文:池田スカオ和宏】
リリース情報
THE SIDE EFFECTS
2019年08月28日
ワーナーミュージックジャパン
01. MAYDAY feat.Ryo from Crystal Lake
02. COEXIST
03. SEE YOU
04. SPEAK
05. THE SIDE EFFECT
06. JANUARY 1ST
07. INSOMNIA
08. ANSWER / SICKNESS
09. BREATHE
10. STAY THE COURSE
11. REVOLUTION
12. LI(E)FE
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03. SEE YOU
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英検 資格 証明
テレビを見ていたら小学五年生の子が英検の準一級を取ったのが流れていて。僕、必死に頑張って高校生の時に英検一級に合格したんです。だけど今、その際の賞状とかが手元にないけど、その証明ってどうしたらいいんだろう?って。ほら、もしバンドがダメになったりヤメたりしたら、そんな資格が役に立つかもしれないじゃないですか(笑)。僕の人生の保険でもあるので(笑)。で、調べたら2年分ぐらいしか証明してくれないみたいなんです。それでヤバいと思って。実家になかったらどうしよう (笑)。とは言え、今やこんな社会不適合者なのに、かつては英検をキチンと取っていた。そのギャップには自分でも笑えましたけど(笑)。
■ライブ情報
"THE SIDE EFFECTS" ONEMAN TOUR 2019
09/22(日) Zepp Nagoya
09/28(土) Zepp Osaka Bayside
09/29(日) 高松オリーブホール
10/04(金) Zepp DiverCity
10/11(金) 新潟LOTS
10/12(土) 仙台PIT
10/14(月祝) Zepp Sapporo
10/18(金) 広島クラブクアトロ
10/20(日) Zepp Fukuoka
10/26(土) 桜坂セントラル
10/27(日) 桜坂セントラル
11/06(水) 新木場STUDIO COAST[追加公演]
-------------------
SWEET LOVE SHOWER 2019
08/30(金) 山梨県 山中湖交流プラザ きらら
*TRIPLE AXEでの出演になります。
RUSHBALL 2019
08/31(土) 泉大津フェニックス
*TRIPLE AXEでの出演になります。
TRIANGLE’19
09/01(日) 福岡シーサイドももち海浜公園
TREASURE05X 2019
09/07(土) 蒲郡ラグーナビーチ
*TRIPLE AXEでの出演になります。
シミズオクト Presents 氣志團万博2019
~房総ロックンロール最高びんびん物語~
09/14(土) 千葉県・袖ケ浦海浜公園
THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019
10/06(日) 桜島多目的広場&溶岩グラウンド
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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