Amber’s 初の作品でついに飛び立つ。その無限の可能性とは――1st mini Album『VOSTOK』インタビュー
Amber’s | 2019.09.19
2年前に結成されて以来、公開したデモ音源やセッションが話題を呼びSNSの界隈をざわつかせてきた2人組・Amber’sが、いよいよ初の作品となる7曲入りのアルバムを完成させた。リリースがない状態で今年の夏にはSUMMER SONICの「TikTokステージ」にもフックアップされたという事実も彼らへの期待値の高さを物語るが、その期待に全力で応える力作だ。福島拓人(Gt / Programming)と豊島こうき(Vo / Gt)、ふたりそれぞれがソングライティングを行うことから生み出される振れ幅と、その楽曲たちを力強いハイトーンボイスで表現していく豊島こうきのボーカル。そんなAmber’sならではの個性はここからどこへ向かうのか。ふたりに語ってもらった。
- EMTG:初めての作品ができました。今どんな感慨をもっていますか?
- 豊島:結成してからもう2年経ってるんですけど、ようやくアルバムが出せるということで、一番はワクワクしてます。言ってみれば2年かけて制作してきたみたいなものなので。
- 福島:今まで、自分たちの中だけで完結させてきた曲たちをいろいろな人が聴いてくれるわけで、その第三者の意見がどんなものなのかなっていうところに、少し不安を感じたりもするんですけど、それも含めてワクワクしているって感じですね。
- EMTG:最初は、拓人くんがこうきくんの声に惚れて声をかけたんですよね。そこからどういういきさつで一緒にやるようになったんですか?
- 福島:Twitterを何気なく見ていたら、当時こうきくんが30秒動画っていうのを毎日投稿していたうちのひとつがリツイートで流れてきたんです。その頃僕は、新しくバンドをやりたいと思ってボーカルを探していたんですけど、そこでその動画をたまたま見てすごく興味を引かれたんです。それで、すぐにライブ情報をチェックして、ライブに行って話しかけて。
- EMTG:結構グイグイいったんですね(笑)。
- 福島:そうですね、自分では考えられないぐらい(笑)。それでライブを見たんですけど、すごく独特なものを感じましたね。
- EMTG:話しかけられたこうきくんはそのときどう感じました?
- 豊島:最初は、結構チャラチャラしたやつが来て、チャラい感じで話しかけてきたなって感じだったんですけど(笑)、スタジオ入ってちゃんと話したら面白い人だなと思って。もうその日に「やろう」ってことになりました。そのときはスタジオ入っても一切音を出さず、もう喋りだけで1時間2時間過ぎたって感じで。技量はお互い知らないまま組んだんですよね。
- EMTG:どんな話をしたんですか?
- 豊島:映画の話をしました。その映画についてどう感じるかとか……その話が盛り上がりすぎた結果、彼がギターを弾くの一回も見ないでバンドを組むことに決めました(笑)。
- EMTG:(笑)。それでいよいよデビュー作にたどり着いたわけですけど、どういう作品にしたいと思っていました?
- 豊島:バラエティ豊富なアルバムにしようっていうのはふたりで最初に話をしましたね。
- EMTG:確かに振れ幅はかなり大きいですよね。曲によって歌詞の世界観が全然違うところが面白いなと思います。
- 豊島:そうですね。たとえば1曲目の「Interstellar」は拓人が最初にトラックを持ってきたんですけど、それを聴いて連想するものに対して自分が思うことを書いていくっていう感じなので。逆に「ネルシャツ」とかは僕が弾き語りで作ったので、ひとつの恋愛のことを僕の視点で好きなように書いているって感じですね。
- EMTG:拓人くんのトラックから曲を作っていく場合、拓人くんはこうきくんに曲に込めたイメージや思いについては伝えるんですか?
- 福島:僕はほとんど曲を渡すだけで、自分のインスピレーションは伝えないですね。もちろん自分の中でイメージとかテーマっていうのはあるんですけど、それを強要する気は全然なくて。自分の思いはなるべくサウンドからわかるように心がけて作ってるので、あえて伝えないようにしてます。だからこうきくんから返ってきたものが「まさにこれだ」っていうときもあれば、「あ、こっち行ったんだ」ってこともあるけど、聴いているうちに腑に落ちるというか、自分の意思とは違うけどこうも取れるな、面白いなっていうふうに思うので。「これ違うからやり直してよ」って言ったことはまだ一度もないですね。
- 豊島:僕からもそのへんはそんなに訊かないです。メロディについては「これはどういうメロをイメージしてる?」みたいなことを訊いたりしますけど。
- EMTG:なるほど。「miss take」のささくれだった思いみたいなものと、「ネルシャツ」で書いているちょっとセンチメンタルな恋愛感情って真逆みたいな感じもするんですが、どっちが自分自身の素に近いと思います?
- 豊島:でも僕はそのふたつがそんなに離れているとは思ってなくて。「miss take」でも「愛」って言葉が出てきたりするんですけど、その「愛」の中の一つの話が「ネルシャツ」みたいな。大きいのから小さいのまでいろんな規模の曲があって、でも根本的なところは全部変わらないと思ってます。
- EMTG:でも、単純に「miss take」の場合は英語の単語とか漢字を使った「四角い」言葉が多い印象で、「ネルシャツ」や「缶ジュース」はそれに対してちょっと「丸い」というような感じはしますけどね。
- 豊島:ああ、そうですね。「miss take」は最初メロを作ったんですよ。そのときに、にメロとサウンド的にかわいらしい言葉は似合わないなってところでこうなっていきました。そういうところはやっぱ考えながら作りましたね。
- EMTG:Amber’sのいちばんの魅力はこうきくんの声だと思うんです。この高さでしかもちゃんと強い歌を歌えるボーカリストってあんまりいないと思うんですけど、曲を作っていく上でその武器を最大限引き出すみたいな意識はありましたか?
- 豊島:そうですね。キーが高くなればなるほど、きつくなる瞬間もあるんですけど、拓人が「まだいけるっしょ」みたいな感じでキーを上げてくるっていうのもあるんで(笑)。「225error」なんかはそうですね。
- 福島:作曲のときに、ボーカリストにあったキーで曲を作るっていうのもあると思うんですけど、僕はそこを一回も気にして作ったことがないので(笑)。
- EMTG:自分で作って自分で歌うっていうだけだと、やっぱり自分の気持ちいいところに行きがちじゃないですか。Amber’sでのこうきくんの歌はそれを超えていますよね。
- 豊島:そうですね。自分が出しやすい所に逃げようとすると、拓人が――。
- 福島:やっぱり歌詞で強いことを言ってると、声も強くなって欲しいっていう思いが出てきて。「上行ってよ」っていう無理なお願いをするっていうことはたまにありますね。
- EMTG:今、「強い歌詞」と言っていましたけど、ニュアンスこそ違えど、どの曲も少し傷ついているというか、少し痛いというか、世界に対して違和感を感じているみたいな感じはありますよね。それはAmber’sの世界観ということなのか、それともこうきくんのパーソナリティによるところが大きいんでしょうか。
- 豊島:僕が根本的にかなり根が暗いので(笑)。今回Amber’sをやるってなったときから、自分が今まで触れてなかったような人だったりとか感情だったりとかと出会ってきたので、その中で感じることを曲に表現しました。あとは、僕、昔からずっとメモを取る人間だったので、そこから引っ張り出してきたものもありますね。
- EMTG:拓人くんからすると、最初は彼の声を聴いて「いいな」と思って、一緒にやろうって声をかけたわけじゃないですか。入口はそれでしかないから、音楽を作ってくる中で彼の知らなかった一面を知っていったところもあると思うんですよね。
- 福島:そうですね。最初にライブを見たときに、動画で見ていたときとは違う……何かモヤモヤしたものを彼に感じたんです。それはやっぱり、根暗な部分だったりとか、すごく繊細な部分から出ていたものだったんだなっていう確認というか、あのとき感じたものはこういうことだったんだなっていうのは、やってるうちにわかっていったところですね。見た目から想像していたものとは全然違うなっていうギャップを感じることも最初はすごくありましたし。でもこうきくんにしか書けないものがあるというのはすごく感じているので、そこは信じて任せているというか、自分の表現を出してほしいなっていう思いがありますね。
- EMTG:そのこうきくんらしさっていうところでいうと、「缶ジュース」という曲はすごく素朴な身近な物語を歌ってますよね。ある意味で、この作品の7曲の中でもすごく異質な曲だと思うんですけど。
- 豊島:これはアルバム作る前からできていた曲で。それこそ、日常のメモじゃないけど、地元の友達と遊んだ帰り道に、昔と変わった部分とかをメモしながら曲を作っていったんです。仲良かった友達とも大人になるにつれそんなに会わなくなったりとか、そういうところで自分がただ感じることだけを書いた曲ですね。今回アルバムを作るっていうので地元の友達とかもすごく喜んでくれて、実際に声も入れてもらったんです。
- EMTG:なんとなくイメージ的に生々しい人間性とは違うハイパーなところで勝負するバンドなのかなと思っていたらこの曲があって「なんだ、すごい人間臭いじゃん」って感動したんですよね。
- 豊島:それは嬉しいですね。
- 福島:うん。こうきくんには「さらけ出して欲しいな」って思ってるし、こうきくんも「さらけ出したい」と思ってるよね。そこは前面に出していったらいいんじゃないかなって思ってます。
- EMTG:そういう意味では、もちろんふたりでAmber’sなんだけど、豊島こうきっていう表現者の今まで出してなかった部分とか、出せなかったものとかを引き出す装置としてもすごくよかったってことなのかな。
- 豊島:そんなふうに感じてもらえるアルバムになったと思います。ずっとひとりでやってきた中でAmber’sを始めて、サウンドの面では確実に自由になったと思います。そんなに僕は楽器に関して詳しいわけじゃないんですけど、「こういう感じの音」って言うと拓人が出してくれたりとかもするので。そういう部分で、想像していたものを具体的に作れるようになったというのはありますね。
- EMTG:ラストに収められた「We wish on a STAR」は今話してくれたようなことも含めて、Amber’sとはどんな存在なのかというのを示したテーマソングのような曲ですよね。
- 豊島:これは最後に歌詞を書いたんですけど……ある女の子がライブに来て、「学校にあまり行ってない」っていうような相談を受けたことがあったんです。でもその時に彼女に対して僕は大したことも言えなかったんです。で、その帰り道に「どんなことを言ってあげたら良かったんだろう」ってすごく考えたんですよね。それを考えているうちに、僕もあまり学校に行かなかったほうなので「あの時の自分はどんなことを言われたかったんだろう」っていうことを思って。それで……誰にも痛みとか悩みとかがあって、終わりが見えなかったり、自分がどこにいるのかがわからなくなったりするけど、僕は僕自身の経験として、そういう苦しみには終わりがあるし、光は絶対に見えてくるっていうことを確信してるので、そういうことをそのまま描こうって思ったんです。昔の自分に対して今僕が感じることを伝えてあげたいっていう気持ちでしたね。
- EMTG:うん。この曲はちゃんと今、こうきくんがAmber’sで歌っている意味になっていると思います。
- 豊島:いつかみんなで大合唱できる曲にしたいですよね。そんなことを妄想しながら作りました。
- EMTG:Amber’sとしてどうなっていきたいかっていう表明でもありますよね。
- 豊島:そうですね。誰かの光になれたらと、僕は強く思ってます。
- EMTG:拓人くんはどうですか?
- 福島:僕はあえて自分の得意なところで言うと、Amber’sにしかない音、音楽をやっぱり作り出していくことが僕らの使命かなって思ってます。唯一無二のものを作る、そしてそれに共感してもらうっていうことを目指してやっていきたいなと思ってます。
【取材・文:小川智宏】
Amber’s - Interstellar【MV】
【Making Video】Amber’s - 1st mini ALBUM『VOSTOK』
リリース情報
VOSTOK
2019年09月19日
VION/Caroline international
01.Interstellar
02.miss take
03.満月の夜は
04.225error
05.ネルシャツ
06.缶ジュース
07.We wish on a STAR
02.miss take
03.満月の夜は
04.225error
05.ネルシャツ
06.缶ジュース
07.We wish on a STAR
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アニメなんですけど、僕今までアニメを全然観てなかったんですが、薦められて観てハマっちゃって。こんなに感情的になれるアニメーションに触れたことは今までなかったです。それからアニメの世界に興味を持って、色々なものを見るようになりました。
福島拓人(Gt/programming)
バスキア
画家の名前なんですけど、制作中に煮詰まってしまったときに他のことで気を紛らわそうと思って、なんか描いてみようと思ったんです。それで、たまたま自分の乗ってた電車にバスキア展の広告が出ていて、気になったので調べてみました。結局描くものとか何も持っていないので、ギターに三色ボールペンで絵を描いたりしてみました。
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