2020年のネクストブレイクを予感させる福岡在住5人組男女混合ロックバンドNYAI、EMTG MUSIC初登場!

NYAI | 2020.01.29

 バンド名の響きからしてユルそうで、なのにエモくて、どこか捻くれてもいて、なんだかとってもクセになる。それが福岡在住の5人組ロックバンド、NYAI(ニャイ)だ。80年代末から90年代の洋邦の音楽シーンを席巻したオルタナティヴロックの匂いを芬々と立ちのぼらせたギターロックサウンドと、日本語で綴られたけっして明るくはない歌詞、男女のツインボーカルによって織り上げられる独特なNYAIワールドは2020年のネクストブレイクをはっきりと予感させる。昨年リリースの2ndアルバム『HAO』はタワレコメンにも選出、この1月22日にはLD&Kより1stアナログシングル「Pomason/tape drug」をリリースした彼らのことを、もっとじっくり知りたい! そんな想いのもと、バンドのソングライティングを一手に担うtakuchan(vo,gt)をキャッチ。結成から現在に至るまで、音楽への想い、そして新作についてたっぷりと聞いた。大至急、チェックすべし。

EMTG:地元・福岡を中心に活動されているNYAIですが、昨日(1月18日)は東京でライブだったんですよね。いかがでしたか。
takuchan:なんとかいい感じでできました(笑)。最近ライブのやり方をいろいろと意識し始めるようになってきたんですよ。もともとそんなにライブをするバンドじゃなかったので、どうやって聴かせるかとかよくわかってなかったんですけど、いろいろ試してきたことが昨日、初めていい感じになって。
EMTG:ライブより楽曲制作のほうに重きを置いていらっしゃる?
takuchan:はい。やっぱり音源がいちばんですね、自分の中では。ライブをやりたいっていう欲求がそんなにないんですよ(笑)。もちろん楽しいんですけど、今までは自分たちの音楽をライブではなかなか上手く表現できないことにストレスを感じることもあって。でも昨日はやったことがちゃんと伝わったっていう手応えがあったので……どう伝えるか、聴かせるかっていう意識をもっとしっかり磨いていけばライブもさらに楽しくなってくるのかな、って今ちょうど思ってるところです(笑)。
EMTG:すごくいいタイミングでインタビューさせていただけるんですね。ぜひNYAIについていろいろ教えていただければと思います!
takuchan:よろしくお願いします。
EMTG:まずは結成のいきさつから。以前のインタビューなどを拝読したところによるとメンバーをmixi(2000年代に興盛を誇ったSNSの先駆け)で募集されたそうで。その始まり方からしてユニークだな、と。
takuchan:方法がそれしかなかったんですよ。周りにはバンドをやりたい友達がいなかったし、楽器屋さんにメンバー募集のチラシを貼るような時代でもないじゃないですか。地元でいちばんメンバーを集めやすい掲示板がmixiだったんですよね。単純にここがいちばん人が集まりやすい場所かなと思ったし、変な人がいっぱい集まったほうが化学反応みたいなものが起こって面白いんじゃないかっていう幻想もあったんです。実際、集まってみたらめちゃめちゃ大変だったんですけど(笑)。それでも、なんとかやってこれたのでよかったのかなって。
EMTG:ちなみにいつ頃の話ですか。
takuchan:8年くらい前だと思います。
EMTG:それまでにバンド経験は?
takuchan:自分にとってはNYAIが初めて組んだバンドなんです。それまではずっとリスナーで。ギターは中学生の頃から弾いてたんですけど、NYAIを始めるまでホントずーっとリスナーで、好きなアーティストをどんどん掘って聴いていく、みたいな。
EMTG:なぜ、ここにきてバンドをやりたいと思ったんですか?
takuchan:ずっと普通に社会人してたんですけど、20代後半ぐらいにいろいろあったんですよね、長く付き合ってた彼女と別れたりとか……恥ずかしい理由ですけど(笑)。
EMTG:大きな出来事ですよ。なんなら人生設計も変わっちゃうぐらい。
takuchan:そういうのもあって、だったら、ちょっとやってみたかったし、バンドやろうかなって思って。DTM環境って言うんですか、ちょうどパソコンで音楽を作るのが簡単になった時期でもあったんですよね。Macを買ったらソフトが付いてきたりとか、自分でも普通に作れるのがわかったからというのもあって。
EMTG:いろんなタイミングが合致したんですね。では遡って音楽に目覚めたきっかけというと?
takuchan:聴き始めたのは普通に中学生とか高校生のときですよね。GLAYとかL’Arc~en~Cielとかジュディマリとか、ちょうどバンドがめちゃくちゃ売れていた時代で。だからバンド=普通の音楽という感覚だったし、バンドへの憧れもすごくありましたし。ただ、当時は周りにそういう友達がいなかったんです。僕、友達が少なくて(笑)。たぶん、こだわりも強かったんでしょうね。音楽の好みが合わない人とはやりたくないじゃないですか。そういうのもあって周りにはいなかったのかなって。田舎だったからライブハウスとかもないですし。
EMTG:「文化祭でバンドやろうぜ!」とはならなかったんです?
takuchan:自分で人を集めるとか、そこまでしてやりたい感じでもなかったというか……そういう人ではなかったので(笑)。
EMTG:どんなアーティスト、バンドが好きだったんですか?
takuchan:スーパーカー、くるり、ナンバーガールとかですね。スーパーカーを知ったときに、こういうアンダーグラウンド寄りのバンドがあるんだなって思ったんですよ。こういうふうにやっていいんだって思えたというか。
EMTG:こういうふうにやっていい?
takuchan:それこそバンドが流行ってた時代ですし、売れてるバンドがカッコ悪いって思うような時期ってあるじゃないですか。ちょうど音楽カルチャーのメインがヒップホップに移行して、バンドはナードなものになりつつあった時代でもありましたし。そうした中で、こういうふうにやっていいんだって思えたのがスーパーカーやくるり、ナンバーガールだったんですよ。ナンバーガールとか、めっちゃ大学生みたいな人が眼鏡掛けてすごい顔して歌ってるのを観て、こんなふうにやっていいんだ! カッコいい!って。
EMTG:音楽シーンの過渡期、90年代後半から00年代に移行していくドラスティックな変遷をリアルに体感してきた世代なんですね。
takuchan:入口はバンドブームだったし、ギターもその流行りの中で始めたようなものでしたけど、いろいろ知っていくにつれ、カッコいいバンドサウンドってまだいっぱいあることがわかってきて。そこから洋楽も聴き始めたし、音楽雑誌も読み漁って、どんどん勘違いしていくんですよ(笑)。
EMTG:かなり尖ったリスナーだったのでは。
takuchan:はい、尖ってました(笑)。
EMTG:NYAIの作品から立ちのぼる洋楽のニュアンス、それこそソニックユースとかペイヴメントを彷彿させるような90年代前半のオルタナティヴサウンドの匂いは、そういうところで培われたものだったりするんでしょうか。
takuchan:スーパーカーとかくるり、ナンバーガールってちゃんとルーツがあるっていうことを明確にしてるバンドだったと思うんですよね。“すごく音楽好きの人たちがやっている音楽”っていうか。田舎だったので、それを身近に体感することはできなかったけど、音楽雑誌の向こう側にはそれが広がっていたというか……雑誌の企画やインタビューでも載ってるじゃないですか、“私を作った5枚”とか“影響を受けたアルバムBEST 3”とか。そういうところで紹介された洋楽の作品とかを頑張って聴いてました。ソニックユースやペイヴメントもそう。最初は意味がわからなくても「これがわからないとダメだ!」って、ずっと聴き続けて。
EMTG:興味を持ったらとことん探求・追求していきたいタイプ?
takuchan:理解したい、みたいな気持ちはありましたね。そうやっていくうちにいろんな音楽に出会っていって。
EMTG:話を結成当初に戻しますが、メンバーはすぐに集まりました?
takuchan:案外すぐ集まりました。ホントにすぐ集まったから、これは俺の人徳が成せる業だな、と(笑)。面識は全然なかったんですけどね。
EMTG:そのときにイメージしていたバンド像は?
takuchan:やっぱりスーパーカーが好きだったので、シンプルなサウンドで、聴いた人がバンドをやりたくなるようなバンドをやりたいなって。募集のときもスーパーカーとか、くるりとか、ナンバーガールとか好きなバンドを書き並べて「興味ある人は連絡ください。ユルい感じでやりましょう」みたいな。飲み仲間兼バンドメンバーみたいな感じで募集したので、みんなわりと気楽な感じで来たんだと思いますけど(笑)。
EMTG:最初はコピーバンドから始まったんですよね。どのあたりからオリジナルをやりたいっていう欲求が生まれてきたんでしょう。
takuchan:オリジナル欲求は最初からありました。でも恥ずかしくて言えないじゃないですか、「自分の曲、やってもいい?」とか(笑)。
EMTG:「バンドやろう」は言えても「オリジナルやろう」は言えないんだ(笑)。
takuchan:めっちゃ恥ずかしくて、なかなか言い出せなかったですね。結局、半年ぐらい経った頃に「ちょっとオリジナルやってみない?」って切り出してみたら「いいですよ」って言ってくれて。みんなやさしいから「いい曲だね」「俺、好きっすよ」みたいな感じでやってくれました(笑)。
EMTG:曲は作っていたんです?
takuchan:こっそり作ってました、バンドを始めてから。いつかやろうと思っていたので。でも、やっぱりオリジナル曲をやり始めると自分の思い通りにならないことがいっぱいあるんです。メンバーみんなが正しい知識を持ってるわけでもないから、上手くいかないなって思うことも多くなってきて。ただ、ライブはそんなにやらなかったし、自分は音源を作れればいいかなって感じだったので、なんとかなってましたけど。
EMTG:音源を作るのこそ大変そうな気がしますが。
takuchan:たまたまギターのshowheyちゃんが、ギターの専門学校に通ってて、ミックスとか録音ができたんですよ。おかげで音源はわりと早いうちから作り始めていたんです。いちばん最初に作った無料配布のミニアルバムと1stフルアルバム(『OLD AGE SYSTEMATIC』/2016年)と2ndミニアルバム(『OUT PITCH』/2017年)まではshowheyちゃんが全部ミックスをやっているんですよ。で、去年リリースした2ndフルアルバムの『HAO』は自分がミックスしていて。自分でもミックスがやりたかったので勉強してやっとできるようになったんです。
EMTG:すごいな、やっぱり探求&追求型。
takuchan:結局、自分でやりたくなっちゃうんですよね。エゴだと言えばエゴなんですけど。
EMTG:そうやってバンドも楽曲もイチから手探りしながら形にしていったんでしょうね。
takuchan:まさにそうでした。ライブハウスにどうやって出るかすらわからなかったですからね。そのせいで半年ぐらい活動が練習だけだったっていう(笑)。練習しながら「そろそろライブハウスに出たいね」とか話すんですけど、どうしたらいいかわからないんですよ。いろいろ探るうちに、どうやらライブハウスにブッキングっていうのがあるらしいと知って、ようやく出られるようになったりとか。ホント手探りでここまで来た感じです。
EMTG:でも福岡ってロックが盛んな土地ですし、シーンに飛び込んでいきやすそうなイメージもありますけれど。
takuchan:たぶん、どこのシーンもそうだと思うんですけど、大学とかの音楽サークルや軽音部から派生しているものだったりするじゃないですか。そういうところに属してなかったから、なかなか入っていきにくかったんです。今だってライブの本数も多くはないですし、シーンの中にいるのかどうか(笑)。
EMTG:メインストリームに乗っからず線路がまったくないところで独自に道を切り拓いていくなんて、スタンスからしてオルタナティヴだったんですね、NYAIは。
takuchan:どこかには線路があるはずだと思ってたんですけど、そこにどうやって乗っていいかわからなかったんですよ(笑)。乗れるなら乗りたかったんですけど、歳も歳だし、誰かが声を掛けてくれるっていうのはまずないだろうという気持ちもあって。自分たちで音源も作れるし、プレスも流通もできるし、MVも作れるし、だったら全部やってみようかなって、手探りでやれることをやってきた感じですかね。
EMTG:それってすごい情熱じゃないです? なぜ、そこまでやれたんでしょう。
takuchan:何かしらあったんでしょうね、パワーというか、執着というか(笑)。それ以外何もなかったですし、やりたいことが。というか、単純に楽しいんですよ。自分が曲を作って、それに反応をもらえるっていうのはやっぱりすごく楽しいことだから、それはモチベーションになりますよね。
EMTG:ネットで自ら発信できる時代だというのも大きいでしょうね。
takuchan:そうですね、時代も間違いなく合っていたと思います。
EMTG:そうした中で一発大きく当ててやろう、みたいな野心や野望は?
takuchan:妄想はありますよ、「バズりてぇ!」みたいな(笑)。そういう気持ちはやっぱりないとダメだと思うんですよね。
EMTG:音楽で食べていきたいっていう想いもありましたか?
takuchan:そこはあんまり……。そうなったら素敵だなとは思うんですけど、それは音楽をやること自体には関係ないかな。別に働きながらでも音楽はできますし。人によっていろいろやり方があると思うんですけど、僕自身はそこにこだわりはないっていうか、「絶対音楽で食っていくぞ」みたいな意気込みはないです。どっちかって言うと自分が作った曲をたくさんの人に聴いてほしいとか、いい曲を作りたいとか、そういうところですね。
EMTG:NYAIを8年間やってきて危機を迎えたことなどは?
takuchan:さすがに何回かはありましたね。単純に自分はもうちょっと音楽に集中したいのに、みんなは生活があるから、みたいなところでズレが出たりとか。そのときはそれまで通りのペースでNYAIを続けていくことを選んでやってきたわけですけど、今回、LD&Kに所属することになって、そのへんの意識は変わってきていると思います。
EMTG:今がいちばんの転機かもしれない?
takuchan:そうですね。その前にも「さすがにちゃんとやらなきゃいけなくなるから、そろそろ真剣に考えたほうがいい。できないようなら言ってね」っていう話はしたんですよ。そしたら、みんな「やる」って言ってくれたので。今はもう腹を括ろうって感じですね。
EMTG:それは『HAO』を作っていた頃ですか。
takuchan:作ったあとです。実は『HAO』を作ったら、しばらく活動を休もうと思ってたんですよ。『HAO』はもうとことん自分たちを擦り減らしながら臨んでいて(笑)。制作もそうですし、プロモーションにしても、とにかくできることは全部やろうっていう。で、やるだけやって休もうと思っていたら『HAO』がタワレコメン(タワーレコードスタッフが世間で話題になる前のアーティストをいち早くピックアップ、大々的にプッシュする名物企画)に選出されて、ポンポンポンと動きが出てきて、LD&Kと契約できるまでになったんです。
EMTG:バンドにとして次の段階に進んだんですね。それにしても活動を休むことを考えてらしたとは。
takuchan:趣味で音楽を作りながら生きていくのも素敵じゃないですか。そういうのもいいかなって思ってたんですけどね。でも、それは『HAO』がそこまで評価されると思ってなかったから。もちろんやるだけはやりましたけど、やった以上のものが返ってきてくれたので、「ああ、もうちょっとやっていいんだな」って。
EMTG:そう思えたのは、誰かの心にしっかりと届く音楽を作りたかったからですよね。自分の好きな音楽だけを作って生きていくのも素敵だけど、やっぱり人に届けたかったから。
takuchan:はい。『HAO』はその方向性で全力を注いだので。本当にいろんなものを擦り減らしたんですよ。死んでもいいと思ってやってましたから(笑)。
EMTG:本当に素晴らしいポップアルバムだと思います。
takuchan:自分たちにとってもすごく大きなアルバムになりましたね。僕、基本的に自信がない人間なんですよ。もちろん『HAO』には全力を注いだんですけど、その一方で「みんな、すごくいいって言ってはくれるけど……」みたいな気持ちもあるんです。タワレコメンにしても「あれ? ホントに決まっちゃうんだ?」みたいな(笑)。
EMTG:面白いなぁ、その感じ。
takuchan:やったぶんだけ返ってくるとは思ってないんです、基本的に。やっても返ってこないのが普通だから、やった以上に返ってきたことにびっくりしたんですよね。本当に報われるときってあるんだなって。もちろん、それまでの作品もそれなりに反響はあったんですけど、自分でわかるんですよ。「これはここまでの評価しかされない」って。だって自分もリスナーとしていろいろ音楽を聴いてきましたから。自分がリスナーとして聴いたときに、このアルバムをいちばんに持ってくるかって言ったらそうはならないってことがよくわかるんです。だからこそ『HAO』を作るときには、その“いちばん”にできる限り近づけていこうとしてたわけですけど。
EMTG:とても冷静に時代や状況を見ていらっしゃるんですね。けっして楽観しないというか。
takuchan:そもそも上手くいくわけはないと思っていましたから。でも、だからってやらないのはイヤだったんですよ。やりたいんだからやってみて、もしダメだったら諦めもつくし、自分がいいと思うものはできたんだからっていう気持ちでいたんですけど、そしたらこうポンポンポンと(笑)。
EMTG:そして今回、所属されたLD&Kから1stアナログシングル「Pomason/tape drug」がリリースされました。この2曲がシングルになった経緯は?
takuchan:休むと言いつつ、結局『HAO』を作ったあとにも曲は作ってたんですよ。「Pomason」はちょうどその頃の曲で。
takuchan:で、今回リリースするにあたって、もう1曲必要だからということで「tape drug」を作ったんですけど、サラッとできたんですよね。しかもめっちゃいい曲で、って自分で言っちゃいますけど(笑)。 
EMTG:タイプの違う2曲ながらNYAIらしさはもちろんあって、でも、これまでの作品にはない新しさも感じます。
takuchan:明確に、やってることが変わったんですよ。バンドは変わってないんですけど、ミックスをプロのエンジニアの方に初めてお願いしたんです。ゆらゆら帝国を手掛けてらした中村宗一郎さんという方に今回、やっていただいて。東京のスタッフと福岡の僕らとでLINEとかでやり取りしながら進めていったんですけど、こんなに上手くいくんだなって思いましたね。特に「Pomason」はミックスでめちゃくちゃ化けましたから。
EMTG:この2曲を聴いて改めて思うのは、NYAIの音楽ってどこか不穏さを孕んでいるなということで。takuchanの書かれる歌詞によるところも大きいと思うんですけど、素直に希望を歌ったりしないじゃないですか。むしろ迷っていたり、疑っていたり、諦めを滲ませていたり。あえてそういう部分を出そうとされているんですか?
takuchan:そうなっちゃうんですよ。絶対書けないんです、「頑張ろう!」みたいなものは。どうしようもないけどやっていこうっていうものだと思っているからですかね、人生を(笑)。ただ、それを悲しい曲調には乗せない、最悪な歌詞をすごく明るいポップソングにするっていうのが一応、自分の信条としてあるんです。そこに面白さがあるんじゃないかなって感じていて。
EMTG:「Pomason」の歌詞に“まだ見えない意味”というフレーズが登場しますけど、takuchanご本人も常に“意味”を探していらっしゃる気がします。
takuchan:意味なんてないとも思ってるんですけどね。意味はないけど、なんとなく……意味がないことに意味があるのかな、みたいな。よくわからないですけど。
EMTG:おお、哲学的。
takuchan:ははははは(照)。
EMTG:あるいは意味があってほしいとどこかで思ってるのかなって。
takuchan:ああ、そうかもしれないです。だから「たぶんダメだろうな」と思いながらも、本当は「『HAO』、めっちゃ売れるだろうな」って気持ちもどこかにあっただろうし、そのために頑張ったわけだし。でも、こんなこと思っちゃいけないって思ってたことがポンポンポンと実現していくから、今はちょっとびびってますけど(笑)。
EMTG:ネガティヴの皮をかぶったポジティヴだったり?
takuchan:どうなんでしょうね。悲観してるわけじゃないんですよ。どうしようもないのが当たり前だし、それでもやっぱり生きていくってことが大事じゃないですか。どうしようもない日常だけど、それでもなんとなくテンション上げて生きてる、みたいな、そういう微妙な感じを表現するのに音楽ってうってつけだと思うんですよね。歌詞はわりと後ろ向きなのに曲はめっちゃハイテンションだったりとか、そういう心を表わすのにすごく適していませんか?
EMTG:その通りだと思います。NYAIの魅力ってまさにそこで。
takuchan:言葉にできない気持ちを表現するものが音楽なのかなって思うんです。
EMTG:そういう意味では歌詞に書いた言葉が表現したいことそのものじゃないときもありませんか?
takuchan:ありますね。
EMTG:行間とか言葉の裏にあるニュアンスで表わしていたりとか。
takuchan:あと、自分たちの活動のスタンス自体もそうかなって思いますね。音楽だけでなく、絵を描いたりもしてますし、NYAIというものを全体的に見たときに、なんとなくみんなの生きる糧みたいになってたらいいなって。自分自身、どうしようもない人生を生きていこうとしていますけど、だからってそれを悲観してるわけじゃない。ダメだと思ってるわけでもなく、ちゃんと生きていくっていうことをNYAI全体から感じてもらえたら。
EMTG:「tape drug」の“僕らはまだまだ欲しいんだ”というフレーズもすごく印象的だったんですよ。これって実は本音じゃないのかなって。
takuchan:これは作ってて、ポンって出てきたフレーズなんですよ。いつも最初はめちゃくちゃな言葉を適当に乗せて作るんですけど、そのときに“僕らはまだまだ欲しいんだ”って出てきて。ちょっとホロリとくるじゃないですか。こんなおじさんが「まだまだ欲しいんだ」って言ってる感じがすごいエモいなって(笑)。なんの脈絡もなく唐突に出てきた言葉だからこそ、本当に本音なんだろうなと思います。
EMTG:この2曲が大きく開かれた入口となってたくさんの人をNYAIの世界へ連れてきてくれそうですね。
takuchan:そうなってほしいです。そろそろ本格的にバズりたい(笑)。
EMTG:ところでNYAIというバンド名には何か意味が?
takuchan:ホント語感だけというか……適当にメンバーと話し合って決めたんですけど。でも“NYAI”っていう字面はすごく扱いやすいんですよ。当時、長い名前のバンドが多かったんですよね。曲名みたいなバンド名とか。もちろん、それはそれでいいんですけど、あんまり長いと覚えられないじゃないですか、自分たちはやっぱり覚えてほしかったので、みんなで「“NYAI”、いいね」って。
EMTG:可愛らしいと思わせておいて実は毒も含んでいたり、ユルそうでいて鋭く胸を抉ってきたり、知れば知るほどクセになる音楽にぴったりのバンド名だと思います。
takuchan:好きなんですよね、そういうのが。深そうで実は浅いんですけど(笑)。
EMTG:いや、浅いと見せかけて、本当は深いに違いない!
takuchan:あはははは! そう思わせたいっていう感じです(笑)。

【取材・文:本間夕子】

リリース情報

Pomason/tape drug[アナログ7inch]

Pomason/tape drug[アナログ7inch]

2020年01月22日

PTA/living, dining and kitchen records

A面:Pomason
B面:tape drug

お知らせ

■マイ検索ワード

堂本剛
さすがに痩せろっていう周りからの圧力があって(笑)、最近ダイエットをしてるんですよね。もともと自分は丸顔なんですけど、丸顔で、ある程度年齢も重ねたカッコいい男の人って言ったらやっぱり堂本剛さんだろう、と。そう思って今、目標にしているんですよ。とりあえず痩せたら少しは近づけるんじゃないかってところで今、頑張っているんです。メンバーは「何言ってんの?」みたいな感じですけど(笑)。



■ライブ情報

でらロックフェスティバル2020
02/01(土) 栄CIRCUS

"Boys Loved Her" Release Party in Fukuoka
02/10(月) 親不孝Kieth Flack

Necomamma 2nd EP Release Live "Kaigansen"
03/15(日) 熊本NAVARO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る