ハンブレッダーズのスタンスとは? 『ユースレスマシン』に込められた意味を徹底解剖!
ハンブレッダーズ | 2020.02.27
ロックンロールでもJ-POPでも、これはまるで自分の歌なのでは?と思える瞬間――生モノの輝きを封じ込めたギターロックで頭角を現してきたハンブレッダーズが、1stフルアルバム『ユースレスマシン』でメジャーデビュー。4人のギタリストを演奏と共同アレンジャーに迎えたことでレンジの広がった音楽性、ユーモアも切なさもテンプレになることなく丁寧に描くムツムロ アキラ(Vo, G)の歌詞は新たなアプローチも見せて、聴きごたえ十分な1枚に。正解なき時代をマイペースで歩んでいるように見えるこのバンド、果たしてそのスタンスは?
- EMTG:インタビュー初登場なので改めて伺えればと思いますが、みなさん高校の同級生ですか?
- ムツムロ:でらし(B, Cho)だけは違って、僕と木島(Dr)は高校から。遡れば小学校の頃も同じ系列の塾に通ってました。
- EMTG:今のハンブレッダーズの音楽を聴くにあたり、ムツムロさんにとってロックンロールの存在が大きかったんだろうなと思うんですが、どんなきっかけでバンドを?
- ムツムロ:えーと、成り行きですね。情熱というよりは(笑)。もともと、(現サポート)ギタリストの吉野(エクスプロージョン)がアニメの『けいおん!』がものすごく好きで、それを見て「バンドやろうよ!」と連絡をくれて。じゃ、バンドやってみようかなって、クラスにいた「太鼓の達人」がうまい松井ってやつに声かけたら「ベースがいい」って言われて(笑)。で、風の噂でドラムを叩ける木島ってやつが(同じ)学年にいるらしい、と。それで4人集まって。
- EMTG:その時のムツムロさんには何かビジョンはあったんですか?
- ムツムロ:いや、全然ないですね。中二病の延長じゃないですけど、自分が人と違うところがあったらいいのにな、みたいなことはずっと考えて生きていたように思います。それがバンドならあるのかもしれない、みたいなワクワク感だけでしたね。でもすごくシンプルに「次のライブ、何の曲しよう?」とか、練習してるのがすごい楽しかったからじゃないかな。そんな崇高な目的があったわけじゃなくて(笑)。
- EMTG:(笑)。でらしさんと出会ったのはどのタイミングなんですか?
- でらし:僕は田舎から京都の大学に行きまして、新入生歓迎会の時にムツムロさんが入ってるサークルに遊びに行ったんですよね。そこでムツムロさんに会って。僕がすごいオラついてた時代だったんですよ。
- EMTG:(笑)。
- でらし:意見をひけらかすタイプ。「俺はこんなバンド知ってるぜ」っていう感じだったんですけど(笑)。
- ムツムロ:そうそう。一つでも多くのバンドを知ってたやつがかっこいいと思ってる(笑)。
- でらし:男ってそういう時代あるんですよね。なんかそのときに負けじと食いついてきたのが……。
- ムツムロ:俺までそれ?(笑)
- でらし:「わかったわかった」ってやってくれたのがムツムロさんだったんで、「こいつ面白いな」ってなりました(笑)。
- EMTG:その頃の二人の議論の論点は?
- ムツムロ:Dr.DOWNERが好きって言ってたよね。Dr.DOWNERを聴くのは珍しい1年生やなって。
- でらし:あと、残響レコード所属のバンドが流行ってたから、mudy on the昨晩のコピーとかしてました。
- ムツムロ:でもハンブレッダーズはハンブレッダーズで、フォーキーなメロディのバンドをやってたんですよ。
- EMTG:でらしさんがハンブレッダーズに入ったのは?
- でらし:4年生の時です。絶対、ハンブレッダーズは売れるって僕は思って……売れるっていうか、陽の目を浴びるべきバンドだなと思ってたので。お客さんの僕から見て、そう感じてたので迷わず入りたいと。
- EMTG:どういう部分が?
- でらし:曲のクオリティが、他のバンドと全然違うと思ってました。圧倒的に歌えるし、耳に入ってくるし、1回聴いたら覚えられるし。そういうバンド、なかなかいないじゃないですか。なんか、言葉にはできないけどすごい魅力があるバンドだなぁとずっと思ってました。
- EMTG:インディーズ時代にも「銀河高速」のように、音楽を聴いたり、演奏したりする喜びを描いた代表曲がありますよね。その上でアルバムスケールの作品を作る時、どんなことを考えましたか?
- ムツムロ:あー……やっぱり「銀河高速」って曲は、自分の中ではあまりに現実すぎたというか、それが代表曲になったのは良くも悪くもって感じで。それにずっと頼ってちゃダメだなっていうのは作った時から思ってたんで、それ以上のものを作らないとなっていうのはありましたね。
- EMTG:自分に近すぎるんですか?
- ムツムロ:そうですね。ヒップホップっぽいというか。俺たちはこういう生き方をしてて、それをちょっとロマンチックに歌いすぎたと言うか。でもそれだけが答えじゃないし。歌っていくうちに「続けてみることにしたよ」って歌詞に救われる自分もいるけど、自分のことすぎて、それで突き放してしまう人も絶対いるなとは思っていたので。
- EMTG:ムツムロさんの書く歌詞は、勝ち組・負け組みたいな価値観を癒すのとはまた違うけど、物心ついた時から将来について不安な世代、そういう価値観が普通になってからのバンドだなと思うんです。
- ムツムロ:それはそうだと思います。景気のいい時代を知らないから。
- EMTG:それこそタイトルチューンの「ユースレスマシン」でも歌ってますね。
- ムツムロ:そうですね。必要のないマシンだけど、ちゃんと必要みたいな、そういうことはうまく書けたかなと思ってます。
- EMTG:自分たちはこういうマインドのバンドなんだということを歌いたかった?
- ムツムロ:ちゃんと名刺がわりでありつつ、それだけじゃない曲には絶対したかったですね。ちゃんと感動できる心のことを歌ってると思ってて。娯楽に対する愛情の曲っていうのはもちろんそうなんですけど、それ以上にちゃんと一つ一つのことで感動する心を忘れないでいよう、みたいなことを一つのテーマとして書いてるつもりで。わかりやすい勝ち負けじゃないところで感動できる心を絶対忘れないでいようっていうために、メジャーデビューの一発目で「ユースレスマシン」っていう曲を作ったっていう気持ちはありますね。
- EMTG:芸術と言わずに娯楽と表現している、その心は?
- ムツムロ:もうめちゃくちゃいろんな意図はあるんですけど、一つは、今でこそ音楽って芸術だって思ってるけど、始まりは娯楽だったんですね、僕らにとっては。例えば、アジカン聴いて感動したりとか、ラジオ聴いてこの音楽っていいなって思ったりとか。始まりはJ-POPだったかもしれないし。その娯楽的側面があったから、ここまでたどり着けたっていうのはすごく大きくて。そういう間口に自分たちもなりたいなっていう気持ちはすごくあって。だから娯楽って言い方をしたっていうのもあり……いろいろあるんですけど(笑)、それが大きいですかね。
- でらし:ロックバンドなんて「へっ」ていう人もいるじゃないですか、もちろん。必要ないかもしれないけど、でもそれが好きだしってことですかね。
- ムツムロ:就活の時、親父に絶対に必要のある企業に就職しろって言われて(笑)。家電だったり車だったり――車は今、わかんないですけど――土木だったり建設業だったり。で、今『ユースレスマシン』ってアルバムを出してる……。
- でらし:やばいね(笑)。僕と木島さんは1年ぐらい前まで働きながらこのバンドを土日だけでやってて。いざ仕事をやるかバンドをやるかっていうタイミングで、このユースレスなバンドを選ぶって意味でも何やってんだろうな?って(笑)。
- EMTG:メジャーデビューが決まったタイミングで仕事を辞めたんですか?
- でらし:いや、そういうわけではなく、バンドをやっていく上ではちょっと仕事を続けていくのは大変なんじゃないかという判断だったんです。
- EMTG:木島さんのバンドに対するスタンスも聞かせてください。
- 木島:いろんな意味で、唯一好きなことをやらせてもらえてるのはありがたいというか。ドラムに関しては特にそう感じてまして。変な話、ボーカル、作曲者が「こういうフレーズを叩いたほうがいい」って言うバンドもあるにはありますし、そういう意味では好きにやれてるからありがたいとは思ったりはします。だからこそ、新しいことや今までにない音楽の作り方ができるのかなと思ったり。なので、「サビにこういうのどう?」とかいろいろチャレンジできたり、みたいな感じで関わらせてもらってます。
- ムツムロ:はい。感謝してください(笑)。
- 木島:(笑)。
- でらし:木島さんはどちらかというとドラマーというよりコンポーザーというか。メロディと歌詞を殺すようなことはしないですよね。
- EMTG:確かに。普遍的な音楽性なんだけど、今らしさがないと聴けない。そこを木島さんが担っているのかな?と思ったんですが。
- ムツムロ:あ、それはそのとおりです。僕らが激しい曲を持っていっても、落ち着いたドラムを叩いてくれて中和してくれる側面があって。それでちゃんとポップスになるみたいなことは最近感じます。僕とでらしは感覚で音楽を聴いてるので、ギターがすごいでかくて、ベースでかくて、ギターの音がカッコよかったらもう最高!みたいな(笑)聴き方をするんですけど、木島は「いや、それは歌が聴こえない」って。「ハンブレッダーズでやるのはそうじゃない」って、ストッパーになってくれてる。
- EMTG:なるほど。加えて、今回はアレンジャーとして4人のギタリストが参加しています。アレンジで参加している曲ではその人が弾いているんですか?
- ムツムロ:そうですね。
- EMTG:この永田 涼司さんはCoupleの?
- ムツムロ:そうです。3~4年前からかな?お互い好きで。永田さんはこれまでもずっと曲を書いてたんで、第二のソングライター的な見方をしてくれて面白かった。今作のギタリストに関しては、ラッパーのフィーチャリングみたいな意識です。
- EMTG:各々のギタリストの持ち味は?
- ムツムロ:例えば、吉野はギターソロのフレーズをレコーディングスタジオのその場で弾いたのが一番いいみたいな、ちょっとスピリチュアルな考え方を(笑)持ってたんですけど。
- EMTG:テイク0が最高みたいな?
- ムツムロ:そうそうそう。逆に永田さんは、フレーズをすごい決め打ちで作ってきてくれて、歌えるフレーズになってて。そういうところは新鮮だったよね?
- でらし:うん。「マイラブリーボアダム」とか「都会に憧れて」を弾いてるyokodoriは、他の3人とは違ってポップセンスのあるギターを弾いてくれるギタリストで。こっちが思いもしないようなフレーズを持ってきてくれたりするので、そういうのを期待してましたね。それから、うきくんには一番ハードロックっぽいギターを弾いてくれることを期待してました。
- EMTG:パーマネントな一人のギタリストもいいですけど、こういう形も聴いてて楽しかったです。
- ムツムロ:あ、よかった。
- でらし:それが今回一番目指してたところなんで。
- ムツムロ:あとは、去年、吉野がサポートメンバーに降格したことをマイナスにしたくなかったんですよね。それをポジティブに考えて、いろんな面白いことをやったらアルバムが面白くなるでしょっていうところから始まったので。
- EMTG:楽曲が描いてる世界も広がってると思います。歌詞もムツムロさんらしさが全開で。「聞こえないように」は男子ファン悶絶ですね(笑)。
- 一同:(笑)。
- EMTG:好きだって呟きを聞かれたくないのに、本当に聞こえてないとがっかりするという。面倒くさい性格のリスナーはよくわかると思うんですけど(笑)。
- ムツムロ:めちゃくちゃめんどくさい。なんかちゃんとストンと落ちる曲にしたくないんですよ。一つひっかかりがあるものにしたいというか。
- でらし:確かに、ムツムロさんが普通のラブソングを歌ったらちょっとびっくりする。ただ愛してるとか好きだとか、そういうことだけを歌ってる曲を書いてきたら、逆に「え?どうした?」ってなるかもしれない。
- EMTG:物語の運び方が絶妙なんですよね。
- ムツムロ:ありがとうございます。ストーリーテリングをちゃんとしようっていうのは、今回からちょっとは思ってたかもしれないですね。「ユアペース」も「ブランコに揺られて」も、自分の経験じゃないけども、ちゃんとストーリーテリングをしようと考えてました。
- EMTG:ムツムロさんは、歌詞を書くうえで、例えば映画とかアニメ、漫画とか小説の影響ってあるんですか?
- ムツムロ:めちゃめちゃありますね。それこそ「ユアペース」の“時速88マイル”っていのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』からの引用で。「ユースレスマシン」は映画の『インターステラー』のセリフから来てるんです。
- EMTG:セリフから?
- ムツムロ:なんかさらっと出てくるんですけど、それがすげえいいなと思って。「SUMMER PLANNING」って曲も、『パターソン』っていうアダム・ドライバーが出てる映画があって。べたべたにお互い愛し合ってる関係ではなくて、ちょっとざらついたすれ違いみたいなのが続いてる夫婦の、ある一週間を描いた映画なんですけど、それがすごいリアルでいいなと思って。「SUMMER PLANNING」もラブソングだけど、すれ違ってる感じが出せたらいいなと思って書きましたね。
- EMTG:それこそ、『パラサイト 半地下の家族』のオスカー受賞に際しポン・ジュノ監督がスピーチで、マーティン・スコセッシからの影響で「個人的であることがクリエイティブなんだ」と言ってましたが、歌詞も個人の言葉でどこまでストーリーテリングできるか?みたいなところはあると思います。
- ムツムロ:ほんとにそうだと思う。去年、社会的なことを書いたほうがいいのか、個人的なことを歌ったほうがいいのか、っていうバランスの中でずっと迷ってた1年を過ごしてきたので、あのアカデミー賞を受賞した時のポン・ジュノ監督の言葉はすごくグッと来ましたね。
- EMTG:さて、アルバムリリース後のツアーも3月からスタートするので、最後にツアーに対する抱負を一言ずつお願いします。
- でらし:アルバム自体、僕たちが中高生だった時にこういうアルバムを聴いたら興奮しただろうなって思える作品を作りたいっていう思いを込めて取り組んでたので、同じくワンマンツアーも見にきてくれた人たちがちゃんと興奮できるようなツアーにできたらいいなと思ってます。
- ムツムロ:ハンブレッダーズのライブにはコール&レスポンスがないんです(笑)。するバンドはかっこいいですけど、僕らのスタンスとしてはしないほうがかっこいいと思ってるので。だからじゃないけど、僕らのライブはひとりぼっちでも楽しめるので、アルバムを聴いていいなと思ったら遊びに来てください。
- 木島:レコーディングでは4人のギタリストにサポートしてもらいましたが、ライブはライブで1日1人のギタリストに演奏してもらうことになると思うので。そういう面も楽しみつつ、新たに変わった僕ら3人を見に来ていただけたらなと思います。
【取材・文:石角友香】
ハンブレッダーズ「ユースレスマシン」Music Video
リリース情報
ユースレスマシン
2020年02月19日
TOY’S FACTORY
01.ユースレスマシン
02.見開きページ
03.ユアペース
04.ブランコに揺られて
05.マイラブリーボアダム
06.約束
07.聞こえないように
08.都会に憧れて
09.SUMMER PLANNING
10.逃飛行
11.大掃除の後
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ムツムロ アキラ(Vo/Gt)
ミッドサマー
『ミッドサマー』っていう映画が気になってて。アリ・アスター監督の新作で、これが2作目で。1作目が『ヘレディタリー 継承』っていうホラー映画だったんですけど、めちゃくちゃ怖くて。新作も……怖いんじゃないかな(笑) 。映画は胸張って「好きです!」って言えるほどじゃないんですけど、月に3本くらいは観てると思います。
でらし(Ba/Cho)
テラスハウス 軽井沢 その後
テラスハウスの軽井沢編のカップル、どうなってんのかな、そういえばあのカップルどうなったかな、と思って(笑) 。
木島(Dr)
工具
趣味で見ちゃうんです。「いいネジないかな」とか。理系のドラマーなんで、チューニングのためにネジ回しが必要なんですけど、いかに早くそれを終われるか?って観点から、電動ドライバーのクオリティは最近どう変わってるか、製品の質、トルクは何ニュートンで回るか、みたいなことを動画で調べたりします。
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ハンブレッダーズ
“この先の人生に必要がない”ワンマンツアー
03/12(木) [京都]京都Live House nano
03/15(日) [北海道]札幌BESSIE HALL
03/21(土) [石川]金沢vanvan V4
03/28(土) [宮城]仙台MACANA
03/29(日) [栃木]宇都宮HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2
04/04(土) [福岡]福岡DRUM Be-1
04/05(日) [岡山]岡山ペパーランド
04/11(土) [愛知]名古屋CLUB QUATTRO
04/12(日) [大阪]BIG CAT
04/19(日) [東京]マイナビBLITZ赤坂
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SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020
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03/22(日) 香川 festhalle/オリーブホール/DIME/MONSTER/SUMUS café瓦町駅地下広場/FM香川786ステージ(公開放送・トーク)
FM802×サンボマスター20th
「愛と平和のアホ年度末」
03/23(月) 大阪 Zepp Osaka Bayside
VIVA LA ROCK FESTIVAL 2020
05/02(土) 埼玉 さいたまスーパーアリーナ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
ムツムロ アキラ(Vo/Gt)
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