amazarashiの新しさと秋田ひろむの変化とは――2年ぶりのアルバム『ボイコット』での深化について

amazarashi | 2020.03.11

 amazarashiの音楽を聴くには、非常にエネルギーがいる。鮮烈な言葉の連射、秋田ひろむの切実な歌声、インパクトのあるメロディーが、途切れない緊張感となって、こちらに真正面から迫って来るからだろう。彼の楽曲のエネルギーは、見ないふりをしていた真相を露わにし、聴き手の深層に切り込んでくる。ゆえに、聴いていて無意識に自分を省みてしまう。“人生”を歩むには必要なことだと思うが、正直、心が痛む。だがこの“痛み”が次への糧になることも確かだ。“痛み”を感じて、受動態で生きる無様さから回避し続けようと思うことが出来るから。
 amazarashi、5枚目のアルバムが完成した。約2年ぶりのオリジナルフルアルバムとなる今作のタイトルは『ボイコット』。前述した“痛み”は健在ながら、随所に深化が感じられる。それは、言葉の選び方、メロディー、譜割り、アレンジ、曲調……と多岐にわたるが、最も顕著に深化を感じたのは、作品全体の包容力だ。優しさとはまた違う、例えば失敗や恥や罪を笑って話してもいいと言ってくれているような包容力。秋田ひろむの、無様な人間への許容力(もしかしたら諦めからきてるのかもしれないけれど)が、温かくじわっと滲み出ているからだと思う。
amazarashiの音楽と向き合うにはエネルギーがいる。そこは変わらない。でも新作『ボイコット』は、こちらが向けたエネルギー以上の、新たなエネルギーを私たちにもたらしてくれる。
秋田ひろむへメールインタビューを行った。彼からの一字一句、すべてを掲載する。

EMTG:「EMTG MUSIC」では、久しぶりのメールインタビューになるのでお伺いします。2018年、2019年を振り返り、最も印象的だった活動は? その理由も含めて教えてください。
秋田ひろむ:「未来になれなかった全ての夜に」ツアー(編集部註:2019年4月~7月に開催された全国14ヶ所18公演で開催されたライブツアー。同年11月に、同ツアーの中野サンプラザ公演をフルで収録した映像作品『amazarashi LIVE TOUR 2019「未来になれなかった全ての夜に」』がリリースされている)です。日本武道館公演はもちろん印象に残っているんですが、全国のリスナーに会いに行って感情を共有するっていう体験はミュージシャンならではの貴重なものだと思います。ライブでは毎回amazarashiの新しい境地に辿り着きたい、新しい景色を見たいっていうのが目標なんですけど、それをリスナーと一緒に果たせた気がして印象に残ってます。
EMTG:2018年、2019年は、秋田ひろむにとってはどんな2年間になったと思いますか?
秋田:ツアーだリリースだって忙しくしてたはずなんですが、そんな大変だった記憶はないです。一ミュージシャンとして、ようやく気持ちが安定してきたかなっていう2年でした。これまでは焦りもあって、必死過ぎたと思うし、それで身体的にも精神的にもしんどい場面が多かったので。ようやく自分をコントロールできるようになった気がします。
EMTG:ニューアルバム『ボイコット』についてお伺いします。アルバムの制作がスタートしたのはいつ頃?
秋田:漠然と、ずっと曲は作ってて、いい曲が沢山できたらリリースかなと思ってました。去年の夏くらいから曲が揃ってきたので、具体的にアルバムをイメージしはじめました。テーマを考えたり、テーマに足りない曲を新しく作ったり。
EMTG:アルバム『ボイコット』を作るにあたり、ご自分の中に課したテーマや、挑戦などはありましたか?
秋田:自分に課すというほどではないですが、今まで築いてきたamazarashiらしさとかは一回忘れて新しい気持ちで作りたいなと思ってました。結局はいつもの僕っぽいなあって思うんですけど、出来上がっている定型をなぞるのだけは止めようと思ってました。
EMTG:『ボイコット』を聴かせていただき、個人的に、最も印象に残ったのは、メロディーの譜割りの変化でした。一音に言葉を詰め込まなくなったように感じましたし、そこに、amazarashiの新しさを見出しました。歌やメロディーに対する意識の変化があったのでしょうか?
秋田:もうメロディーも要らない、詩の朗読だけでいいんじゃないかって思ってた時期も昔はあったんです。それだけ言葉の力と自分を過信してました。最近になって音楽の楽しみを再発見してるような気がします。気持ち的なものもあるだろうし、ライブでメンバー皆と演奏して楽しいっていうプリミティブな部分も大きいし、サブスクリプションやYouTubeでの音楽の出会い方の変化も大きいと思います。多分一番大きいのは飽きだと思います。今までやってきた方法に飽きてきたから。同じ事やっててもずっと新鮮にやってる音楽家はかっこいいと思います。でも、自分が飽きはじめたらそれはもう方法を変えるしかないですしね。
EMTG:収録曲の「夕立旅立ち」。イントロから洗練されたポップスを感じさせるアレンジに驚きました。この曲が出来上がった背景を教えてください。
秋田:この曲はギター一本で作ったんで、その印象ではとてもフォーキーなものでした。この曲は好きな曲なのでアルバムには絶対入れようと思ってたんですが、出来上がったときのイメージから後半に入れようと想像してました。でもアレンジが出来上がって、すごい開けた感じのサウンドだったんで、前半に入れようと決めました。前二曲との対比も美しいと思って。
EMTG:「夕立旅立ち」は、歌詞の韻の踏み方も面白いと思いました。いつも以上に繰り返して韻を踏んでることで、楽曲に軽快なテンポをもたらしていると思います。言葉のセレクトは大変でしたか?
秋田:大変ではなかったと思います。わりと素直に出てきた言葉で出来上がった記憶があります。結構前に作った曲なので曖昧ですが。難しいことは考えず、情景を思い浮かべて作った曲です。
EMTG:「夕立旅立ち」のような繊細で流麗なポップアレンジで、そこを対比されるように、秋田ひろむさんの声質の個性がより明確になったように思います。自分の声質については、どう思われてますか? メリットと感じる部分を教えてください。
秋田:どうなんですかね。自分の声については客観的に見れないです。歌い方も意図して変えるとかはしたことがないですし。自分では変な声だと思ってるんですけど、何も記憶に残らない声よりは変な声で得してる部分も多いと思うんで良かったと思ってます。良くも悪くも耳に残るっていう意味で。
EMTG:「とどめを刺して」は“ダイナー”という言葉を使ったりと、映画を彷彿させるストーリー性を感じました。この楽曲のアイデアはどこから?

秋田:映画では『勝手にしやがれ』『俺たちに明日はない』『気狂いピエロ』『Buffalo‘66』みたいな、小説の『路上』とか、そういうのをイメージしました。あとは人間なんてそもそも不出来なんだから、罪を犯してもいいじゃないか、みたいな気持ちがアイデアの原点だったと思います。SNSとかで断罪文化になってるのを見ると、他人を断罪できるほどの自信がよく持てるなって感心します。僕は不出来な人間なので。
EMTG:「独白」に見られるような、ポエトリーリーディングは、amazarashiの強烈な個性だと思いますし、リスナーから強く求められている部分だとも思います。そこにプレッシャーを感じますか? また、まだポエトリーリーディングについて探求したい部分はどこですか?
秋田:プレッシャーはないです。もうちょっと詩的にしたいなっていうのは思ってます。伝えたいっていう気持ちが先行しすぎて説明しすぎかなっていうのが最近の反省です。もうちょっと詩は詩として、ポエジーを持って挑むべきだなって考えてます。
EMTG:アルバム『ボイコット』に限らず、amazarashiの歌詞には、沈丁花、花、風など、嗅覚や触覚に訴えかける言葉が散りばめられているように思います。秋田ひろむさんが、歌詞を書く際、最も大切にしている五感は何ですか? 意識して書いていないとしたら、自己分析してください。
秋田:多分それは田舎育ちで田舎暮らしだからだと思います。歌詞を書く上でもやっぱり視覚の重要度が大きいと思うんですけど、ある程度リアリティを伝えたいと思うとその他の五感のイメージも必要なのかなと思います。詩は感情を伝えるものだと思うので、完全にリアルを伝えるというよりは比喩したリアリティが大事なのかなあと思います。
EMTG:年代問わず、amazarashiの音楽に救われた方がたくさんいると思います。音楽を始めた時、音楽は人を救うことが出来ると思っていましたか? 今でも思っていますか?
秋田:始めた当初は人を救うなんて思ってませんでした。今になって僕らの音楽に救われたっていう人は実際に存在すると思います。そういう話は聞きます。でもそれで僕が「音楽で人を救うのだ」っていう姿勢になるのはどうしようもない勘違いだし、やりたい事じゃないです。使命感が一番邪魔です。楽しいからやりたくてやってるっていうのが一番強い動機で、それを失わせるような欲は捨てたいと思ってます。
EMTG:amazarashiの音楽を表現する際“ディストピア”という言葉がよく使われます。では秋田ひろむさんにとって“ユートピア”とは? 既存の意味を無視して、ご自分の見解をお聞かせください。
秋田:全ての人間が幸福に生きられる場所、時代っていうイメージなんですけど、人のイメージの中にしか存在しないと思います。僕はもう人間に失望してる人間なので、それを踏まえてどうやって生きるかっていう事を考えています。生存競争のフェイズに入ってると思います。人間にはユートピアなんて無理です。
EMTG:『ボイコット』の初回生産盤には、アルバム曲のアコースティックバージョンを収録したCDや映像作品が同封されてますが、アコースティックバージョンを同パッケージでリリースする理由は?
秋田:もう数年前からCDの時代は終わるって言われてて、でもなんでか今回もCDリリースできる形になりました。アーティストとしては曲を数珠つなぎで聴いてもらえるアルバムっていう形態は失いたくないんですが、時代も変わりつつあるので、しょうがない、いつか時が来たら腹を決めよう、と思ってます。そんな時代の最中でamazarashiは何故かCDが売れ続けてます。そんな稀有なリスナーへの恩返しじゃないですけど、形に残るものを届けるっていうのは必要だと思ってます。映像作品しかり、小説、詩集、やり過ぎな気もしますけど、やれるうちにやっておかないと後悔すると思うんで。
EMTG:音楽活動にも多々ありますが、その中で、最も、自分が生きていると感じる瞬間はどんな時? レコーディングであれば、その作業の詳細などまで教えてください。
秋田:ライブが終わった瞬間。ライブメンバー皆とハイタッチして、ハグして、打ち上げでライブの記憶をつまみにビールを飲んでるときです。
EMTG:全国ツアーも決まっています。最後にamazarashiを待っている全国の皆さんにメッセージをお願いします。
秋田:まずはアルバム『ボイコット』を聴いてもらって、気に入ったらライブに遊びに来てください。ツアーではアルバムでの結論からまた一歩踏み込んだ結論に達したいと企てているので、楽しみにしててください。

【取材・文:伊藤亜希】

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リリース情報

ボイコット

ボイコット

2020年03月11日

SMAR

01.拒否オロジー
02.とどめを刺して
03.夕立旅立ち
04.帰ってこいよ
05.さよならごっこ
06.月曜日
07.アルカホール
08.マスクチルドレン
09.抒情死
10. 死んでるみたいに眠ってる
11. リビングデッド
12. 独白
13. 未来になれなかったあの夜に (Long Edit.)
14. そういう人になりたいぜ

お知らせ

■ライブ情報

amazarashi Live Tour 2020「ボイコット」
04/28(火)大阪 グランキューブ大阪(大阪国際会議場)
04/29(水・祝)大阪 グランキューブ大阪(大阪国際会議場)
05/04(月・祝)福岡 福岡サンパレス
05/06(水・祝)愛知 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
05/10(日)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
05/19(火)東京 東京国際フォーラム ホールA
05/20(水)東京 東京国際フォーラム ホールA
05/24(日)青森 リンクステーションホール青森(青森市文化会館)

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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