モノクロームから『オリオンブルー』へ――Uruが新たに表現する自身の色とは
Uru | 2020.03.30
前作『モノクローム』から約2年3ヶ月ぶりとなる、Uruの2ndアルバム『オリオンブルー』が完成した。ドラマ『テセウスの船』の主題歌「あなたがいることで」や、ドラマ『中学聖日記』の主題歌として話題となった「プロローグ」など全13曲が収録されているが、今回はそのほとんどの楽曲をUru自身が手掛けている。それぞれの曲に込めた思い、また制作段階で起こった奇跡的な出来事など、興味深い話を聞くことができた。
- EMTG:2ndアルバム『オリオンブルー』が完成しました。
- Uru:前作が『モノクローム』といって、私の原点――YouTubeの頃の白黒で何もカラーがなかったところを意識したものだったので、今回も色に関連したものにしたいなというのがあったんですね。私はデビューして、もうすぐ4年になるんですが、その中で、モノクロだったところから自分なりの色を纏えて来たのかなというのがあって。自分で作曲して、自分で表現したい曲調や歌詞も結構詰まっているので、これが私のカラーなんじゃないかなというものが作れたと思っています。一度、いつも応援してくださっている皆さんに訊いたことがあるんですよ。私の色は、例えるとしたらなんですかと。その中でブルー系というのがあって、自分でも「そうだよな」と思いました(笑)。
- EMTG:ご自身でも納得だったと。
- Uru:ライブの照明やジャケット写真のイメージ、それに私はバラードをたくさん歌わせていただいているので青系が多いかなと思っていたんですが、やっぱり自分が思っているような色が伝わっていたんだなと。あと私は緑も好きなので、ちょっと自分の好きな色味も加えたものがこのオリオンブルーだったんです。エメラルドグリーン寄りの、鮮やかな水色。
- EMTG:オリオンブルーという色の名前が実際にあるんですね。
- Uru:はい。このオリオンっていうのは冬の星座の代表であるオリオン座のことなんですが、そもそもこのオリオンという名前は、アッカド語の“Uruアンナ(天の光)”が由来とされているらしいんです。
- EMTG:すごいエピソードですね!
- Uru:なんだか運命を感じてしまって。導かれたような感じで、すごくびっくりしました。
- EMTG:選曲に関してはどんなふうに考えていったんですか?
- Uru:私が自分で曲を作ったものが、前回は4曲だったんですが、今回は10曲入っているんですね。私がこんな曲を書くのかっていう部分も認識してもらえるかなと思いますし、いろんな曲調にも挑戦しているので、そういう新しい部分も聴いてもらえたらと思って選んでいきました。
- EMTG:Uruさん自身が考えるその新しさは、どんな曲に表れていると思われますか?
- Uru:私はバラードというイメージがあると思うんですが、例えば「space in the space」や「marry」、「頑な」などミディアムだったりビートのある曲かなと思います。でもこういうものって、いわゆる挑戦ではなく、もともと持っているものを形にしていった感じなんですよね。
- EMTG:「space in the space」は、Kan Sanoさんがアレンジを手掛けていらっしゃいますね。
- Uru:はい。アレンジしていただくにあたって私のイメージ――妖艶な感じにしたいということと、後ろで鳴っているフレーズはそのまま使って欲しいということをお伝えしたんですが、それをすごく広げてくださいました。以前、「追憶のふたり」の時も素敵なアレンジをしてくださったので、すごく信頼を置いていましたし、今回も素晴らしいものにしてくださるだろうなと思っていたら、期待以上のものが返って来て感動しました。
- EMTG:「marry」は、サビのなんともいえないエモーショナルなUruさんの歌声も印象的でした。
- Uru:この曲、自分でデモを作った時は、結構しっかりリズムを入れていたんですが、Shingo Suzukiさんにアレンジをお願いしたところ、ギター中心のドラムレスに仕上げてくださったんです。最初はリズムがないから「え!?」となったんですが、聴いていくうちに「すごくいい!」と。以前のものを聴くと、逆に違和感を覚えるくらいになってしまいました(笑)。
- EMTG:曲が、本来あるべき姿になったのかもしれないですね。
- Uru:本当にそうですね。ちなみにこの曲はウエディングソングを作りたいなと思って書いたんですが、サビに鐘の音が入っているんですね。その音は、あのノートルダム大聖堂の鐘の音なんです。
- EMTG:去年火災が起きましたよね?
- Uru:Shingo Suzukiさんが以前向こうに住んでいらっしゃった時に、たまたま録っていたものを入れてくださったんです。しかもその鐘、いくつかあるんですがその中のひとつが“マリー”。スペルは違うんですけどね。これもすごいなと思って、またまた運命を感じてしまいました(笑)。実際のこの生音、ぜひ改めて聴いてみてください。
- EMTG:今は、作ろうと思えばどんな音だって作れるだけに、贅沢ですね。
- Uru:そうなんですよね。「何か鐘の音があったら入れていただきたいです」とは言っていたんですが、てっきりソフトの中の音かと思ったら、まさかの(笑)。鳥肌が立ちました。もちろん感動したというのもあるんですが、Shingo Suzukiさんみたいに、引き出しがたくさんあるってすごいなと思ったんです。私も思いついたことをメモしたりしていますが、私にとっての引き出しってなんだろう?って一瞬考えたりもしました。いっぱいいろんなことを感じていかなきゃなって、引き出しを増やしていきたいなって思いましたね。
- EMTG:「頑な」は、オリンピックイヤーの今年は特に背中を押される方も多いのではと感じました。
- Uru:この曲を書いたのは、今から4年ほど前、和氣慎吾さんというプロボクサーの方のドキュメンタリーを見たのがきっかけだったんです。すごく感動してしまって、見終わってすぐに作りました。私は、その頃ポジティブな曲というか、こういう<負けるな>のように元気が出るような前向きな言葉をチョイスした曲を作ったことがなかったんですね。でもそのドキュメンタリーを見て、こういう風に「自分も頑張ろう」って思わせてくれるような人ってすごいなと思ったんです。本当に感動して、その感想を書くようにして作っていきました。勝手に、テーマソングじゃないですけど(笑)。
- EMTG:それほどまでにつき動かされるものがあったんですね。
- Uru:今年がオリンピックだからというのはあまり考えていなかったと思うんですが、選曲をするにあたって、こういう前向きなミディアムバラードみたいなもの入れたいなというのもあったので収録しました。私の曲で、例えばスポーツをしている人が練習や試合前などに聴いて元気が出るようなものって少ないから、そういうのもあるんですよ!っていう思いも込めて。
- EMTG:ちなみに和氣選手は、もうこの曲をお聴きになったんですか?
- Uru:いや、本当に勝手に作ってしまいましたから、ご本人は全然知らないと思います(笑)。
- EMTG:(笑)。だけどスポーツに限らず、この曲にはいろんな局面で励まされる方も多いでしょうね。
- Uru:そうだと嬉しいです。このタイトルの「頑な」って、本来は「頑なに」って使うと思うんですね。しかも「頑なに拒む」のように、否定したり、ちょっとネガティブなイメージの言葉。でも少し距離を置いて考えてみた時に、なんだかかっこいいなと思ったんですよ。自分の中に貫く気持ちがあるから、燃えているものがあるから、人に何を言われても「違う」と言える。そういう譲れない何かがあるのっていいなという、羨望の気持ちもこもっています。
- EMTG:頑なな一面があるかと思えば、次に収録されている「いい女」は、思い切り相手の気持ちを第一にして身を引く女性が描かれていますね。
- Uru:前作の『モノクローム』に「いい男」という曲があるんです。別にアンサーソングになっているわけではないんですが、「いい男」を作ったら「いい女」も作りたくなって(笑)。同性なので、女性にとってのいい女像というのがちょっと難しかったですね。すがらない、強がっている、もしかしたら相手にとっては都合がいいってことになるのかもしれないですけど、好きな人ができて自分の元から去っていく時に、キレイさっぱり「じゃあ行ってこい」って言われたら、切ないけど、離れて行けるんだろうなって思ったりして。
- EMTG:「いい男」でも最後は<幸せになれよ>って送り出されていましたよね。ここには、Uruさんの恋愛観も出ているのかなと思ったのですが。
- Uru:もしかしたら(曲の主人公と)似ているのかもしれないです。たぶん負けず嫌いなので、かっこ悪いみたいに思われたくないというか(笑)。色々と妄想しながら書いているつもりでも、どこかに私のアイデンティティーが混ざりこんでいるのかもしれないなと思います。
- EMTG:そんな風にご自身の言葉やメロディーで書いたものと提供された楽曲とでは、歌う気持ちとして何か違いがあったりしますか?
- Uru:自分が曲を作っている時は、こういう曲にしようと思って雰囲気から作っているので割と入り込みやすいですし、いただいた曲もそんなに差はないですね。いただいた曲に自分で歌詞を書いて、どういうテンションで歌おうかなって考えたりはしますけど。自分だったらこういうメロディーは作れなかったなって、新しい発見があります。
- EMTG:ドラマ『テセウスの船』の主題歌にもなっている「あなたがいることで」は、Uruさんが作詞と作曲、アレンジは小林武史さんです。小林さんとの作業はいかがでしたか?
- Uru:イントロがすごく印象的になりました。デモを送った時の雰囲気をすごく大事にしてくださっているんだなというのがよくわかりましたね。アレンジというより、この曲が持つ本当の色とか特徴をすごく膨らませてくださったというか。そこに、小林武史さんにしか生み出せない素晴らしいイントロを組み合わせてくださいました。
- EMTG:アルバムの幕開けを告げる「プロローグ」は、ドラマ『中学聖日記』の主題歌としても話題になりましたね。
- Uru:この曲でたくさんの方に知っていただけたということもありましたから、1曲目に持って来たいなという思いがありました。このアルバムを再生した時に「あ、これこれ!」と思ってくださるかなと思って。
- EMTG:Uruさんはこれまでにもたくさんのアニメやドラマのテーマ曲などを歌われていますが、いわゆるタイアップの曲を作ったりすることは、その後のご自身の制作にもよい刺激になっていたりするんでしょうか。
- Uru:タイアップの場合は、何度も原作や脚本を読んで歌詞を書くんですが、主人公を立てるというか、キャラクターをつけていく感じはそういう経験で培われたかもしれないです。
- EMTG:これまで耳にして来た楽曲も、初収録となった新曲も、改めてじっくりと聴き込んでいただきたいアルバムだと思います。ちなみに初回盤は、映像盤とカバー盤の2種類がありますね。
- Uru:映像盤にはTOKYO DOME CITY HALLで収録したライブ映像も収録されているんですが、今回初めてMCも入るんですよ(笑)。ちょっと恥ずかしいですが、ライブの雰囲気が伝わればいいなと思います。カバー盤にはアクエリアスのTVCMで歌わせていただいた「Funny Bunny」(the pillows)の他、「Pretender」(Official髭男dism)や「白日」(King Gnu)など、割と幅広い感じで歌いたかったので新旧織り交ぜた内容になっています。
- EMTG:アルバムリリース後はライブも予定されていますが、今回は初のツアー形式なんですね。
- Uru:はい。名古屋と大阪と東京の3ヶ所になるんですが、アルバムのツアーということで初披露の曲がほとんどになると思います。例えば「space in the space」なんかは、この音源の雰囲気をライブでどんな感じで歌おうかなって楽しみですし、「Scenery」はすごく広がりのある楽曲なので、これもどんな感じになるのか、どの曲も本当に披露するのが楽しみです。今回初めてライブに来てくださる方もいらっしゃると思いますが、ぜひこの初のツアー形式でのライブ、楽しんでもらえたらなと思います。
【取材・文:山田邦子】
リリース情報
オリオンブルー
2020年03月18日
Sony Music Associated Records
01. プロローグ
02. 今 逢いに行く
03. あなたがいることで
04. space in the space
05. marry
06. 願い
07. Don’t be afraid
08. 頑な
09. いい女
10. PUZZLE
11. Scenery
12. 横顔
13. remember
Special Track
14. Binary Star / SawanoHiroyuki[nZk]:Uru
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豆狸 おいなりさん
豆狸(まめだ)のおいなりさんが大好きなんです。
中でもわさびいなりが本当に美味しくて、いくつか買って来た時には必ず最後に食べます(笑)。
たまに無性に食べたくなる時があるんですが、今回も、今いる場所の近くにお店がないかなと思って検索しました。
■ライブ情報
Uru tour 2020「Orion Blue」
04/12(日)大阪 NHK大阪ホール
04/25(土)東京 昭和女子大学 人見記念講堂
05/02(土)愛知 名古屋市公会堂(振替公演)
Uru Live「Precious One day 〜Uru-u Year 2020〜」
05/08(金)東京 中野サンプラザ(振替公演)
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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04/12(日)大阪 NHK大阪ホール
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