みんなと共感し合いたい――the peggiesが『アネモネEP』で改めて伝えたかったこと

the peggies | 2020.04.13

 昨年のツアーで初披露されて、観客の心を強く動かしていた「アネモネ」。失恋によって震える心情を描写しているこの曲が、島田昌典の編曲によって、とても瑞々しく輝いている。この表題曲の他にも多彩な作風が発揮されている『アネモネEP』は、the peggiesの演奏、歌の表現力の豊かさも、幅広いリスナーに伝えるに違いない。収録されている各曲に込められた想い、レコーディングのエピソードなどを3人に語ってもらった。

――「アネモネ」、とても良い曲ですね。

北澤ゆうほ(Vo/Gt):ありがとうございます。ずっと、こういうミディアムの曲をリード曲にして発表したいと思ってたので、その念願も叶いました。
石渡マキコ(Ba):リリースが決まる前から作ってた曲で、去年のツアーで初めてお披露目したんですけど、お客さんの反応もすごく良かったんです。
大貫みく(Dr):みんなの演奏もすごくいいですし、ドラムでもいろんな表情を付けられたので、手応えを感じています。
――ストリングスが入っている華やかなサウンドですけど、ちゃんとバンドの熱量も活かされているアレンジだと思いました。
北澤:核の部分は3人でしっかりと土台を作って、そこに島田さんがストリングスを入れてくださったんです。そのアレンジによって、より表情が豊かで、華やかになったのはもちろんですけど、情緒あふれる雰囲気にもなりました。さすが島田さんです。
――島田さんにお願いするのは、初めてでしたっけ?
北澤:はい。ずっとお願いしたかったんです。島田さんのアレンジの通りにギターの練習をしていったら、「もっと自分が弾きたいように弾いていいよ」って仰っていただいたのも印象的でした。ギターも島田さんのビンテージの楽器を選びながら弾かせていただきましたし、いろいろ教えていただきつつ、自分の色もちゃんと出せたレコーディングでしたね。
石渡:私も島田さんが持ってきてくださったビンテージのジャズベースを弾かせていただきました。あと、レコーディングでは、ストリングスのみなさんの演奏も聴かせていただいて、すごく感激したんです。
北澤:いろんなパターンをレコーディングして、「どういう組み合わせで弾いたら、もっと広がって聴こえるだろう?」って、いろいろ工夫してくださったんです。「島田さん節みたいなものが欲しいです」というお願いもしましたね。イントロとアウトロのコード進行を少し変えただけで、曲が始まった瞬間に物語が見えるような音になって、切なさが増したのも、すごく嬉しかったです。「コードを少し変えただけで、こんなに効果が出るんだ」っていうのは勉強になりました。
大貫:レコーディングが終わった後、聴きながら家に帰ったら、私もすごく切ない気持ちになりましたからね。
――歌詞を通しても、切ない心情が深く伝わってきますよね。
北澤:the peggiesの歌詞は、弱さをそこまで表現しないというか。弱いところが根底にありつつも、しっかり前を向こうとする中で垣間見える強さみたいな部分を描いているんです。でも、「アネモネ」には、弱い部分も落とし込むことができたんですよね。
大貫:<ねぇ行かないで>とか、ここまでストレートに表現した歌詞は、今までになかったと思います。「遠距離恋愛」という、昔出した曲の続編みたいな意味合いも「アネモネ」は持っているので、ずっとthe peggiesを好きでいてくれる人は、いろいろ発見しながら想像を膨らませることもできると思います。
北澤:<切符は今はもう使わないし>とか、「遠距離恋愛」を聴いたことがある人には、何か感じてもらえる部分かもしれないですね。
――「この感覚わかる!」というのも、リスナーがたくさん発見できる歌詞だと思います。<「ねぇ昨日面白い映画を見てさ」 君に電話しようとして手を止めた>とか、この感じに心当たりがある人はたくさんいるはずです。
北澤:ほんとは<今日>にしたかったんですけど、音の響き的によろしくなかったので、<昨日>にしたんですよね。
大貫:でも、<昨日>だから、「映画を観た日から次の日にかけてずっとその人のこと考えてたのかな?」っていうことを私は思った。「何か理由をつけて連絡したいんだけど……」っていう気持ちが詰まったから、<昨日>で良かったと思う。
北澤:リスナーの鏡(笑)。「アネモネ」は、「今、この瞬間にやりたいこと」というのを存分にできた手応えもあるんです。タイアップで創作するのもすごく好きで、そういう作家としての自分もいるんですけど、「アネモネ」は、それとはまた別の形で作れた曲ですね。
――例えば、映画『アルプススタンドのはしの方』の主題歌になった「青すぎる空」は、作家として創作に取り組んだ曲ということですね。
北澤:はい。でも、この曲に関しては、「自分の中にあるものを出してくれて大丈夫だよ。今までのゆうほの感じで書いてくれれば合うと思うから」と言われてました。青春をそのまま真空パックしたような曲も私たちの“らしさ”なので、そういうものになってると思います。
――映画のストーリーに共鳴できる部分もたくさんあったということですね。
北澤:はい。私もみなさんが思い浮かべるような「青春」みたいなものに参加できないタイプで、「参加したいわけでもないし」という葛藤を抱えてましたから。
石渡:私も学校にいる自分よりもライブハウスでライブをしてる自分の方が好きだったので、「青すぎる空」の感じは、よくわかります。
北澤:私は学校の友だちも先生も大好きだったんですけど、一番自分らしく翼を広げられる場所ではないという感覚もあって、「自分は青春できてないな」と思ってました。でも、今、振り返ると、そういう感じだったこと自体が、めちゃめちゃ青春でしたね。
石渡:<端っこの特等席>っていうところとか、そういう学生生活の雰囲気が出てると思います。
――映画でこの曲が流れたら、すごく物語とリンクするものがあるでしょうね。
北澤:完成した映画を観るのが楽しみなんです。アニメのタイアップとかでも、作品にマッチするものになった時の喜びは、何ものにも代えがたいものがありますから。
――「weekend」も理想的なタイアップになりましたね。HONDA原付きバイクとのコラボレーションMVが新鮮な仕上がりです。
北澤:この曲は「アーバンな、大人ペギーズ」って言われて、「アーバン」っていうことを考えながら作ったんです。アレンジをしていく中で、自分が最初に弾き語りで作ったものとは、いい意味でどんどん違ったものになっていったのも楽しかったです。「絶対、ワウペダル入れたくない?」って入れたりもして。
石渡:ゆうほが、ワウを踏むのが上手でびっくりしました。あまりにも上手く踏んでるから、スタッフが「え?」ってなってましたからね。
北澤:テーブルの下で踏んでたのでみんなから見えなくて、「誰が代わりに踏んでるの?」ってなってたんです。だから「私だよ」と(笑)。
大貫:そうだった(笑)。この曲、ソウルとかの雰囲気があるので、「ベースとドラムをいかに合わせるか?」ということも考えました。レコーディングの時は、リズム隊のふたりで一緒に録ったんです。
石渡:録る時、すごく緊張しました(笑)。イントロのシンセの音も気に入ってます。ゆうほの歌も、今までと違うんですよね。声を張るのではなくて歌い方が大人っぽくて、聴きながら「耳が幸せ」ってなってます。
北澤:歌はいつも、ディレクターさんにめちゃくちゃいろいろなことを言われながらレコーディングをしてますからね。「なんでこのテイクが良くないのかわからない」とか思うこともあるんですけど(笑)。でも、「そういうことを積み重ねてる甲斐があるな」と、こうして完成した作品を聴くと感じます。
――4曲目の「ロンリー」も、歌声が心地よいです。
北澤:これは、私がナレーションをさせていただいてる恋愛バラエティのテーマソングです。
――ABCテレビの『やすとものいたって真剣です』ですね。
北澤:はい。「ロンリー」はもともとあった曲なんですけど、歌詞に<A→B→C>って入ってるから、「ぴったりだ!」と(笑)。
――(笑)。こういう茶目っ気も、the peggiesらしさを感じるところです。昔の彼氏の誕生日を思い出せないのに、<右手薬指のシルバーは かわいいしまだ付けてます>って歌っているところとか、笑っちゃいました。
北澤:「このフレーズは、使いたいよね?」ってスタッフとも話してたんです。
――「別れちゃったけど、これ高かったからなあ……」みたいなのは、僕も覚えがあります。
北澤:忘れられないからじゃなくて、単に物としての価値があるのをわかってるから捨てないってことなんですよね(笑)。
石渡:暴走気味なのに、こういう冷静な判断がふと出てくるところが、ゆうほらしいですね(笑)。
大貫:いつも歌詞はレコーディングのギリギリまですごい悩んでるんですよね。完成したのを読んで、「どういうことなんだろう?」っていろいろ考えるのが楽しいです。
石渡:自分なりに、いろいろ考察するよね?
大貫:うん、する。
――今回、インディーズ時代の「いきてる」の弾き語りも収録されていますけど、この曲で描かれている葛藤も、リスナーそれぞれが自分の人生を重ねながら聴くと思います。
北澤:デビューしてからの私たちのイメージは元気でポップな感じだと思うんですけど、根底には誰しもが持ってるこういう部分があるんですよね。私たちが特別ネガティブでドロドロしてるということではなくて、みんなと同じように抱えきれない悩みとかがあるというのを、改めて伝えたかったんです。
大貫:私もこういうことを感じる時がありますからね。あるある(笑)。
石渡:言い方、軽っ!
北澤:「あるある(笑)」って書いておいてください(笑)。
大貫:でも、私もいつも笑ってますけど、ひとりになった瞬間に、谷に落ちるというか、深い方へ行ってしまうタイプなんですよ。
北澤:今までの自分たちは、「背中を押してもらいました」「そういう考え方もあるんだと思いました」とか言っていただくことが多かったんですけど、私的にはみんなに教えを説きたいとかいうことじゃなくて、お互いに会話をしながら「わかる」って言い合ったり、共感し合いたいというのがあるんです。作品に対する自信があると同時に、なかなかそういうことができない苦しさみたいなのが、ずっと募っていたんですよね。今回の作品をきっかけに、「ゆうほちゃんたちも、こういうことで悩むんだ?」「こういう失恋をするんだ?」とか対話ができる距離感になれたらいいなあと思ってます。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

アネモネEP

アネモネEP

2020年04月08日

EPICレコードジャパン

01.アネモネ
02.青すぎる空
03.weekend
04.ロンリー
05.いきてる -弾き語り-

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