ひかりのなかに、「卒業」から沸き起こった感情をぎっしり詰め込んだ『トーキョー最前線』

ひかりのなかに | 2020.04.30

 男女混成3ピースロックバンド・ひかりのなかにが、デビューミニアルバム『トーキョー最前線』をリリースした。今年の3月に高校を卒業した3人が、学生生活を振り返りながら「卒業」という節目を機に感じた将来への不安や焦り、現状に対する葛藤、そして未来への希望。リアルタイムで沸き起こった、そうした感情ひとつひとつに対し、彼らが丁寧かつ真摯に向き合った様子がしっかりと感じられた今作について、Fanplus Musicでは、昨今の実情を踏まえてメンバー全員にメールにてインタビューを敢行。作品についてはもちろん、バンド結成時の話や現在の心境についても訊いた。

――デビューミニアルバム『トーキョー最前線』のリリース、おめでとうございます! まずは、Fanplus Musicでは初めてインタビューさせて頂くということで、バンド結成の経緯から教えてください。
ヤマシタカホ(Vo/Gt):同じ高校の軽音楽部に3人とも所属していたのがきっかけです。その軽音楽部では、入部した新入生は期間内にバンドを組んで、その1ヶ月後には入部試験のようなものをするというのがきまりで、最初は私とひより(Ba)で組むことを決めました。ひよりとの出会いは、彼女が私に対して白目を剥いてきたというのが最初の記憶なのですが(笑)、その時は一緒にバンドを組むとは全く思っていなくて、とても陽気な人だし、むしろ私とは無縁なのかな?とさえ思っていました。でも、仲良くなって話をしている時に、ひよりの口から「私は卒業してもバンドやりたいし、メジャーデビューもしたいんだよね」と語られたことが決め手となり、組むことになりました。それから他のバンドでボーカルをやる予定だったジョー(Dr)に声をかけたら快く受けてくれて、今の「ひかりのなかに 」というバンドができました。
――ヤマシタさんはボーカルとギターを、たけうちさんはベースを、ジョーさんはドラムをやろうと思ったきっかけは何だったんですか? その時に憧れていたアーティストや、聴いていた音楽などはありますか?
ヤマシタ:幼い頃からピアノを習っていたということもあり、将来は何でもいいから音楽に携わる人、できれば表舞台に立つ人になりたいとずっと思っていました。ギターを始めたのは本当に何となくで、ギターもできたら楽しいかなあと思ったのがきっかけです。ロックバンドを好きになったきっかけは、2015年の「ROCK IN JAPAN FES.」でエレファントカシマシのライブを見てからです。それからはたくさんのバンドを見てきましたが、やっぱりチャットモンチーとSAKANAMON、銀杏BOYZの存在はとても大きく、バンドにも影響したと思います。
たけうちひより(Ba):小学生の頃、兄の影響でBUMP OF CHICKENを好きになり、金髪でかっこいいパフォーマンスをしていたCHAMA(直井由文/Ba)さんに憧れてベースを始めました! その時はBUMP OF CHICKENやRADWIMPSを主に聴いていました。
ジョー(Dr):僕は高校一年の春からドラムを始めました。軽音部でドラムパートの人数が足りておらず、カホとひよりに誘われたことをきっかけにスティックを握り始めました。その時から尊敬しているバンドは、Shout it Outです。今は解散してしまっていますが、今でも僕のヒーロです。
――普段から3人は仲が良いんですか? また、スリーピースバンドだからこその良さってどういうところにあると思いますか?
ヤマシタ:本当に仲が良いと思います! 少し前までは友達のような感覚だったのですが、最近は家族っぽさまであると勝手に思ってます(笑)。スリーピースバンドは結束力が強いと思います。誰かが欠けたらバンドが成り立たなくなってしまうので……!
ジョー:普段で遊びの計画立てるくらいには仲良いです。そんな3人でだからこそ、その曲にかっちりハマったユニゾンなどを考えてる時に「あー、楽しいな」とよく思います。
――みなさんは今年の3月に高校を卒業されたということで、今作は「卒業」をテーマに掲げてらっしゃいますが、小学校・中学校の卒業と高校の卒業とは、何か感じるものに違いはありましたか?
ヤマシタ:全然違いました! 高校2年生から通信制の高等学校に通っていた関係で、クラスメイトという概念のない生活をずっと送っていたので、本当に時の流れに身を任せていたらいつの間にか卒業していた!というような感じでした。なので、感傷的になることもなく、学び舎に思い馳せることもなく、すごくさっぱりとした卒業だったので、SNSなどで同級生達が上げている写真達や文章などを見て、羨ましいなあと思っていたりしました。
たけうち:やっぱり高校卒業を機にバンド1本でやっていくことになったので、長い間当たり前だった学校という環境から抜け出す新鮮さや不安はあります。
――高校時代は「青春時代」と言われることも多いと思います。最近までその渦中にいた「ひかりのなかに」の皆さんですが、自分たちだからこそ出せたと思える“ひかりのなかにらしさ”はどういうところだと思いますか?
ヤマシタ:私たちにとって、楽しいことやお金を犠牲にしてまで打ち込んできたのが「ひかりのなかに」というバンドだと思っていて、3人それぞれのベクトルは少し違うけど、一つのことにものすごく真剣に取り組める一生懸命さだったり、真面目ゆえの心配性だったりがあって、時に衝動的になって投げ出したくなってしまったりすることもあるんです。でも、そういう経験を経た3人だからこそ出せる「希望感」や、影が濃いからこそ眩しいくらいに光れるところが私たちらしさなのではないかなと思います。
たけうち:楽しいことがたくさんある反面、学校生活もバンド活動も辛いことがたくさんあったので、歌詞の節々や音楽などにそういうマイナスな感情が含まれていると思います。でも、それを昇華して前を向いて行こうという意思が表れているのが私たちらしさかなと思います。
――「卒業」から連想される様々な感情を「音楽」として再構築していく上で、音作りやメロディーラインの作り方、プレイなどで意識したことはありますか?
ヤマシタ:今作のリード曲である「ロンググッドバイ」は、まさに卒業式のイメージをふんだんに盛り込んだ楽曲になっています。シンガロングする部分は卒業式で歌う「合唱曲」のようなイメージで作りました。その他の楽曲に関しては、「卒業して次に進むための大事なアルバム」という気持ちは無意識のうちにはあったと思うのですが、「卒業」を意識して作った楽曲はあまり無かったような印象です。
――アルバムタイトルにも「東京」という地名が入っていますが、東京で育ったご自身たちが肌で感じる「東京らしさ」とは何でしょうか?
ヤマシタ:東京って何でも手に入るし建物も密集していて、ゴミゴミしてるというか、雑多なところです。でもそこが可愛かったりもするんですけど、やっぱり暮らしている中では自然と入ってくる情報の多さに疲れてしまうことが多いのが東京という街だと思います。音楽に関して言うと、人が多い分埋もれてしまうこともあって、その塩梅が難しいなあと思ってます。
たけうち:東京って本当に何も無いなってよく思うんです(笑)。なんでもあるように見せるのが上手いというか、でも実は何があったっけ?って感じだし、人はいっぱいいるけどみんな独りだという感じがすごくします。だからこそ、私たちがそういう人たちの味方になりたいなと思いますね。
――「椿のうた」の中に<大人に近づくほどに 嫌なことを知った このままでいれたらいいのにな>というフレーズがありますが、大人になるということに不安や抵抗はありますか? また、今のままがいいという「今」って、どういう状態のことでしょう?
ヤマシタ:不安は勿論あります。この曲を書いていた高校在学中は、それこそ何かがあっても他に後ろ盾があるような感じがして居心地が良かったし、安心できていたんですけど、卒業後は自分の足でしっかり立って、良くも悪くも全て自分次第になってしまうじゃないですか? それに対しての不安が今でもあります。歌詞の中の「今」というのは、その「常に後ろ盾があって、安心して好きなものとか叶えたい夢に打ち込める環境」のことですね。
ジョー:大人になると絶対にのしかかるものがあると思っていて、この歌詞は、そののしかかってくるものから目を逸らしたくなる、いつまでも守られた自分でいたいという自分の中の弱く保身的な心を感じる歌詞なのかな?と思います。僕も、大人にならないで守られたままが1番幸せなのかなって考えることがありますし。そういった部分で共感してもらえると、曲の理解がより深いものになるんじゃないかな。
――「はやぶさ」は、これまでのひかりのなかにの楽曲の中でも、特に激しさと鋭さを持った曲だと思います。異色とも言えるこの曲は、どういった感情の下で生まれたんですか?
ヤマシタ:この曲ができたのは2年前の夏で、学校を転校した後でもあったから色々な意味で不安な時期だったんです。「このままバンドなくなったらどうしよう」とも考えていましたし、メンバーが実際どう考えてるかも分からなかったんです。だから、私以外の2人にも歌詞を書いてもらって、新しい曲を作ろうと思ったんです。そしたら、返ってきた歌詞がどちらとも同じ不安を持っていて同じことを考えていて! だからその気持ちを歌にすれば絶対良くなるに決まってる!と思って作った曲です。
ジョー:この頃は、すごくくすぶっていましたね。軽音部に所属していないので同世代の仲間もおらず、たいした実績もないまま好きな音楽をやっている、将来が不安な3人という感じでした。この曲を作るにあたっては、その時の「ひかりのなかに」を全力投球のガチガチに詰め込みました。その結果、ライブ映えするアタック感のある曲が出来上がりましたし、この曲は絶対に評価してもらえる!という確信を持っていました。
――リード曲のひとつである「ロンググッドバイ」は、卒業時の心境をまざまざと描かれた楽曲ですね。「別れを想って感傷的に」ではなく、未来を見据えて前向きにその心境を描かれていますが、どちらの描き方もできた中で、明るく描こうと思ったのは何故ですか?
ヤマシタ:卒業ってすごく寂しいものだけど、いつまでもずるずると感傷に浸って思い出話している訳にもいかないし、どこかでは区切りをつけなきゃいけないものだと思うんです。だからこの曲は、前を向くための一歩として聴いて欲しいという思いで明るく書きました。
――さらにこの曲は、短編ドラマとして既にYouTubeで公開されていますね! 実際に自分たちが作った音楽がドラマとして映像化されるというのはなかなかないと思いますが、作品を観てどう思いました?(私はあんな学生時代を送りたかった……と妬んで歯ぎしりしたくなりました(笑))

ヤマシタ:素直に嬉しい!の一言でした。本当に出て頂いたキャストの方や脚本を書いて頂いた方、携わって頂いた方にお礼をして回りたいくらいです! 青春感の強い内容には、私も羨ましい!と思いました。曲書いたのは私なのに、こんな生活送ってない!みたいな(笑)。
たけうち:私もこんな青春したかった!って純粋に思いましたね(笑)。それこそ小学生や中学生の時は、高校に入ったらこういう生活が出来ると思ってましたが、現実は全く違いました……(笑)。でも、自分たちの曲がMVとはまた違った形で映像化されたことが、すごく新鮮で面白かったです!
――同じくリード曲である「ナイトライダー」は、疾走感のあるサウンドに突き抜けた想いが乗った楽曲ですね。セルフライナーノーツの中で「ある意味3年間ひかりのなかにを続けてきた中で出たひとつの答えでもあります」と語られていましたが、この楽曲が生まれた時のことを教えてください。

ヤマシタ:この曲を描いた頃は、とにかく息詰まってました。年の近い他のバンドが着々と結果を出していく中で、いい曲が書きたい!とか、もっと新しい風を「ひかりのなかに」に吹かせたい!とか、もっとみんなに認められるような「らしさ」を出したいとか、とにかく焦る気持ちばかりが先行して思うようにいかない最悪な時期でした。でも、その焦りを抱えたまま進むのはバンド的にも自分的にも良くないと思ったので、一旦落ち着いて、一歩先へ進むための曲として書きました。
――みなさんの「夢」って何ですか? また、目標はありますか?
ヤマシタ:街中で流れてて、特別好きってわけではないんだけど歌えちゃうんだよね、って曲あるじゃないですか? 最近の夢というか目標は、あれになる事です。自分にとって夢は、常に更新していくものだと思っているんです。夢を見るなら絶対に叶えなくちゃいけないと思うので、勝算がある道筋がきちんと見えてから夢を見ます(笑)。その上で「もうすぐ叶いそう!」という時にまた新しい夢を見るから、ある意味自分の「夢」の捉え方は「目標」に近いのかな?と思います。
たけうち:嬉しい時も悲しい時も、ひかりのなかにを聴こうと思ってもらえるような、聴く人の心にいつでも寄り添える存在になりたいです。また私たちを見て、見た人が何か夢を持ってくれたらすごく嬉しいなと思います!
ジョー:昔からしたら今は夢のような世界に足を踏み入れていますが、ここでは止まれないですね。目標地点のようなものを聞かれたときに毎回考えるのですが、「オレンジ」の歌詞にある通り、<どこまでもゆこう>と思います!
――コロナウイルスの世界的流行で、今はライブ活動ができない状況かと思います。こういう状況だからこそ、音楽、バンド、ライブについて考えることはありますか?
ヤマシタ:改めて、音楽とは多くの人が携わって成り立つものであり、それがなくなると本当に悲しいんだなと思いました。でも、一概に悪いことしかないわけではなくて、今まで「常に次のことを考えてないと遅れてしまう」といった無意識の焦りの中でバンドをやってきた部分もあるので、こうやって強制的にバンドから離れたことで、今までの振り返り、それを踏まえた上でのこれからのことを考える期間になっています。ただ、やっぱり私もお客さんも楽しみにしていたイベントやライブが続々と中止になっていて、その度に「この日のために頑張ろうって思ってたのに」というような声を聞く場面も増えていて、そういうところは居た堪れない気持ちでいます。とにかく早く収束して欲しいです。
ジョー:家から動けないデメリットはあると思いますが、今はSNSが注目されるタイミングでもあると思うので、多くのアーティストや一個人が、音楽に関した有益でユーモアのある、豊かな発信ができればなと強く思います。
――最後に、これから今作を聴く皆さんへメッセージをお願いします!
ヤマシタ:『トーキョー最前線』という作品は、とにかく自信のある楽曲だけを収録しました。新しいことにもたくさん挑戦をしましたし、言いたいこと、思ってることは全て曲に落とし込みました。でも、やっぱり作品として楽しんでもらうのが一番と言いますか、こういうインタビュー内で「これはこういう曲です!」と言ってはいますけど、その時の聴いているあなたの気持ち次第で自由に捉えて欲しいなと思います。そしてこの作品が誰かの毎日を少しでも明るく照らせたのなら、私はこの作品を作って良かったと思いますし、大成功です!! きっと気に入っていただけるアルバムだと思うので、ぜひ一度聴いていただけましたら幸いです!
たけうち:気が滅入るような毎日ですが、必ず明るい日々が戻ってくると信じて、今はおうちで好きな音楽を聴いて持ち堪えてほしいです。そして、「ひかりのなかに」がその音楽のひとつになれたらいいなと思います。『トーキョー最前線』もたくさん聴いてほしいし、全て落ち着いたら、死ぬほどたくさんライブやります! だからみんなライブハウスで会いましょう!
ジョー:『トーキョー最前線』のなかにギュッと詰め込みました。何が、とは言いませんがとにかく中身ぎっしりです。聴きながら、いいなって思った時に存分にニヤニヤしてください!!

【取材・文:峯岸利恵】

tag一覧 ミニアルバム インタビュー 女性ボーカル ひかりのなかに

リリース情報

トーキョー最前線

トーキョー最前線

2020年04月22日

A-Sketch

01.ナイトライダー
02.かくめい
03.はやぶさ
04.椿のうた
05.オレンジ
06.ロンググッドバイ

お知らせ

■ライブ情報

ひかりのなかに「トーキョー最前線」
リリース記念初ワンマン!

08/19(水)東京 Shibuya WWW
08/26(水)大阪 ROCKTOWN

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る