ハルカミライが魅せる新しいパンク――『THE BAND STAR』からわかること

ハルカミライ | 2020.07.20

 八王子発の4人組、ハルカミライの2ndフルアルバム『THE BAND STAR』がここに完成! 今やフェスの常連選手となり、対バンのオファーも多く、同業のバンドマンからも熱い信頼を得ている彼ら。昨年12月に開催された幕張メッセ・ワンマンライブ「A CRATER」(今作の通常盤にノーカットDVD収録)も大成功に収め、上昇気流に乗りまくっている状態だ。とにかく観る者の魂を解放させ、その場を巨大なシンガロングに巻き込んでいくバンド力は圧倒的である。前作『永遠の花』を経て、歌や演奏、アレンジ面でも飛躍的な“成長”を魅せ付けた傑作について、橋本学(Vo)に話を聞いた。

――これは質問ではないんですが、「SATANIC CARNIVAL’19」で橋本さんがノリノリで他のアーティストのライブを観ていたのが印象的で。
橋本学:どのジャンルでも歌が上手い人が好きなんです。ほかにシンガーソングライターの人も結構聴きます。
――なるほど。2000年前半に日本語パンク勢が大きなブームになった時期がありましたが……ハルカミライの登場は特にブームの後ろ盾もなく、突然変異で出てきたバンドという印象があるんです。橋本さんは日本語パンク系のバンドも通っているんですか?
橋本:当時は全然聴いてなかったですね。で、21歳でそういう人たちを聴いて、ちゃんと作品も聴くようになったんですよ。
――完全に後追いですよね。
橋本:はい、それから吸収した感じです。ライブを観ても、お客さんの熱量が凄くて、言葉に言い表せないヘンな熱量があるじゃないですか?
――はははは、確かに。
橋本:オゥオゥ!って、歌だけでカタがつくような空間がいいなと。ノリだけでライブが形成されているバンドもいるけど、俺は顔がぐしゃぐしゃになって、汗まみれになって、お客さんが本気で向かってくるライブが好きですね。
――それはハルカミライのライブにも通じます。
橋本:遊びの延長で始まったバンドなので、そこで方向性が見えたところはありますね。俺、他人のライブは客観的に観るんですよ。お客さんの反応を8割ぐらい観てます。お客さんを観ている方が楽しいし、ほんとに奇跡的な瞬間を目の当たりにしたときに、バンドは何をしているのだろう、どうしてこんなに惹き付けられるんだろう、と思って観てます。
――バンドとしては、去年フェスにもたくさん出演し、対バンの誘いも多かったと思いますが、どんな1年でした?
橋本:フェスやライブに呼んでもらうために仲良く、というより、先輩や仲間と一緒に飲んで楽しめる……そういうバンドで良かったなと。近い人たちを大事にしてたら、どんどん人と繋がったので。バンド主催のフェスに関しては特に気持ちが入りますね。先輩バンドが俺らみたいな若造を呼んでくれるんだって、それが嬉しくて。
――橋本さんはわりと謙虚なタイプですか?
橋本:オラオラな人にも憧れるけど、自分にはそれができないから。謙虚だけど、評価されることをやっていれば、その控えめな感じも美学になるのかなと。
――そして、去年12月には幕張メッセ公演も大成功に収めましたが、あの公演はいかがでした?
橋本:いままでライブハウスでやってきたことを、そのままでかいところでやれた感じですね。自信がなかったんですよ、あれだけ人を集められるとは思わなくて。しかも初めて観る人もたくさんいる中で、ワーッ!と大勢の人が歌ってくれたのは自信になりましたね。一昨年、去年とフェスに出る機会が増えて、知らない人が「何だ、こいつら?」という状況でどう切り込んでいくのかを考えてやっていたので……それが報われた瞬間でした。で、この間「DEAD POP FESTiVAL 2020」の特別番組がYouTubeでやってて、「今年のタイムテーブルを教えてください」という視聴者の質問に、トリ前にしたかったバンドだけ答えてくれて、そこに俺らの名前が挙がったんですよ。うわっ、マジですか!って。それも自信になりましたね。
――それはバンド冥利に尽きますよね。ここで今作の話に移りたいんですが、制作はいつ頃から始めたんですか?
橋本:前のツアーからやってて、常に曲は作っているんですよ。ツアーも曲作りも同時進行ですね。前作はまだ慣れてなくて、勢いのまま作った曲たちって感じでしたけど、今作はそれにも慣れてきて、ライブしながらでもしっかり詰めることができたなと。切り替えがうまくなったと思います。
――アルバムの具体的なビジョンはありました?
橋本:毎回ないんですよ。曲を作るうちにそれを並べて、こういう感じだねって。だから、コンセプト作は作ったことがないですね。今回たまたま友達の曲が多くなったり、ラブソングも少ない方が好きなので、自分の好みのバランスになったと思います。ラブソングを書きすぎると、もういいよって思う方だから。曲はベースと一緒に作っているんですけど、地元の友達やテレビで観た事柄とか、身の回りのことが題材になりますね。ただ、全部がリアルじゃなく、空想みたいな歌詞もあるので。
――今作も聴かせてもらい、本当に素晴らしい内容でした。前作を経て、各楽曲の個性がより際立ってきたなと。
橋本:俺は歌詞やメロディを考えるんですけど、何度もやり直す時間も増えたし、楽器隊のアレンジもそういう時間が増えたんですよ。だから、深く突き詰めることができたので、曲はより良くなったと思います。今回は自分のハードルを上げたんですよ。それをメンバーに聴かせて、意見もどんどんもらうんですけど。
――その上げたハードルって言葉にできたりします?
橋本:これまで合格ラインだった歌詞やメロディでもいいんだけど、それだといままでと変わらないから。もう少し難しくして、でもやり過ぎてもいけないから、ほんの少しだけ難しい歌に挑戦しました。カラオケでお客さんが歌えないようにしようとか……。
――なるほど(笑)。
橋本:歌が上手い人じゃないと、歌い切れないものにしたくて。「ピンクムーン」のAメロはめちゃくちゃ抑揚を付けて、これは歌えないだろうなあ、シメシメって(笑)。練習しないと俺も歌えないから、技術的にはレベルアップしたと思います。
――まずは冒頭曲「THE BAND STAR」~「夏のまほろ」と繋ぐ流れがめちゃくちゃかっこ良くて。
橋本:ライブだけでやっていた曲なので、これをアルバムのオープニングに入れちゃう?って。この曲はスタジオで5分ぐらいで考えて、歌詞もパッと出てきたものですね。
――「THE BAND STAR」は造語だと思いますが、これにはどんな意味を込めて?
橋本:特に意味付けもしてなくて、響きがいいし、バンドマンが「THE BAND STAR」という言葉を使う。そのダサかっこ良さというか、野暮なことを堂々と言うかっこ良さが好きなんですよ(笑)。俺らがスターと言ってるわけじゃなく、みんなの友達がそうなりえるし、その友達からすれば君もスターになりえるよって。それぐらいの感じです。
――「100億年先のずっと先まで」はボーカルにエフェクトをかけ、楽器の音やアレンジを含めて、新たなアプローチですよね?
橋本:楽器隊も目に見えて新しいことをやってるし、アレンジもすごくかっこいいですよね。レーベルの担当の方から「いろいろやった方がいいよ」って後押しされて、(音楽性を)広げる勇気が出ました。曲の原形はディレイも使ってなかったけど、アレンジもバンと変わったし、めっちゃいい曲になったなと。
――名曲だと思います。ギターもシューゲイザー風だったり、細かいところまでこだわったアレンジが秀逸でした。<いつか天使が舞い降りて迎えに来たって 写真の中まで輝くだろう>とか歌詞を含めてロマンチックですね。
橋本:ウチのメンバーはアニメも観るので、そういうテイストも好きなんですよ。
――幻想的な歌詞と曲調に惹き付けられました。あと、最後を飾る「友達」はアコギ弾き語りからバンド編成に切り替わり、静から動へ爆発する展開も最高で。<離れ離れになっても(中略)限り無い永遠の友達>のラスト・フレーズにもグッと来ました。
橋本:現実を歌うのもかっこいいけど、歌い過ぎると夢がなくなるというか。永遠はないと言い切ると夢がないし、今しかねえ!というのも少し違う気がして。今日生きようぜって、いや、明日は来るしなって思っちゃうから。俺が一番惹かれる言葉は何だろうと考えて、周りのバンドマンが歌っていることとは逆を行きたかったんですよ。「永遠の友達だよ」って、それも一見ダサいけど、それを堂々と言っちゃおうって。まあ、どっちを信じるかですよね。永遠でいいんじゃないですか?って、自分はそういうスタンスの方が好きですね。尖ってる感をわざわざ出したくないし、ウワベじゃないものを自分は表現したいんですよ。ケンカも好きじゃないんで、それは性格でしょうね。尖るパンクもかっこいいけど、もっと丸くて優しいパンクをやりたいから。

【取材・文:荒金良介 】








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リリース情報

THE BAND STAR

THE BAND STAR

2020年07月08日

ユニバーサルミュージック

01.THE BAND STAR
02.夏のまほろ
03.優しく飛んでゆけ
04.100億年先のずっと先まで
05.ろくでもねぇ
06.フュージョン
07.PEAK’D YELLOW
08.ピンクムーン
09.ブレーメン
10.友達
[DVD]
昨年12月に幕張メッセで開催されたワンマンライブ「A CRATER」をノーカット収録!

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どれがいいかなーって見ているだけで楽しいです。まあ結局肉のページを見ちゃうんですけどね。男は肉一択!です!



■ライブ情報

ツアーオブバンドスター
− 2020年 −
09/03(木)東京 新木場 STUDIO COAST
09/09(水)宮城 仙台Rensa
09/15(火)愛知 名古屋DIAMOND HALL
09/23(水)福岡 福岡BEAT STATION
09/29(火)大阪 なんばHatch
10/03(土)三重 松阪M’AXA
10/04(日)奈良 生駒RHEB GATE
10/10(土)栃木 宇都宮HELLO DOLLY
10/11(日)茨城 水戸LIGHT HOUSE
10/15(木)福岡 小倉FUSE
10/23(金)山形 酒田MUSIC FACTORY
10/25(日)青森 青森Quarter
10/31(土)福井 福井CHOP
11/02(月)広島 広島CLUB QUATTRO
11/03(火)島根 出雲APOLLO
11/07(土)鹿児島 鹿児島SR HALL
11/08(日)宮? 宮崎FLOOR
11/13(金)長野 松本ALECX
11/15(日)山梨 甲府KAZOO HALL
11/20(金)徳島 徳島club GRINDHOUSE
11/21(土)岡山 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
11/23(月)鳥取 米子AZTiC laughs
12/03(木)神奈川 横須賀かぼちゃ屋
12/06(日)石川 金沢vanvan V4
12/11(金)高知 高知X-pt.
12/12(土)愛媛 松山WstudioRED
12/17(木)京都 KYOTO MUSE
12/22(火)兵庫 神戸太陽と虎
− 2021年 −
01/05(火)東京 八王子Match Vox
01/09(土)新潟 新潟LOTS
01/11(月)神奈川 F.A.D YOKOHAMA
01/16(土)北海道 札幌PENNY LANE 24
01/17(日)北海道 札幌PENNY LANE 24
01/23(土)香川 高松DIME
01/24(日)香川 高松DIME
01/30(土)大分 大分T.O.P.S Bitts HALL
02/07(日)山口 周南RISING HALL
02/13(土)沖縄 桜坂セントラル

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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