次世代型バーチャルシンガー・花譜が放つ音楽とは――2nd E.P.「花と解答」から紐解く

花譜 | 2020.08.07

 まるで時間が止まったような音楽の響きだった。圧倒的没入感を生み出すシンガー、花譜が生み出す音世界。7月22日にリリースされたばかりの2nd E.P.「花と解答」を耳にして思い知らされたのは、音楽とは“時間芸術”だってこと。

 “カテゴリって言葉がもはや呪いのようだ”。彼女は、そんな言葉をたゆたうように泣きそうな歌声で奏でていく。Netflixオリジナルアニメ『日本沈没2020』グランドエンディングテーマに起用された、花譜の「景色」に心のすべてを奪われたのだ。「アンサー」という、1曲目に収められたテレビアニメ『ブラッククローバー』第11クールエンディングテーマだってそうだ。花譜が解き放つポップアートにはどんなVRやAR、FRだって敵わない。圧倒的没入感を生み出す次世代型バーチャルシンガーが生み出す魔法めいた音世界。花譜の存在は日本の音楽シーンを大きく揺るがす存在となるだろう。

 キャッチコピーは“日本の何処かに棲む、何処にでもいる、何処にもいない16才。”。そんな、類い稀なるシンガーによる名刺代りの1枚、それが2nd E.P.「花と解答」だ。

――まだまだ続くコロナ禍な日常ですが、アーティスト活動において変化、またはこんな状況だからこそ新しい発見などあったりしましたか?
花譜:毎月レコーディングで東京に行っていたのですが、コロナで2、3ヶ月くらい行けなくて悲しかったです。世界中が大変な状況で、普段通りの生活が難しく気が滅入ってしまうことが多い中ですが、私にはそれら全部完璧にどうにかできるような力があるわけはなくて……。6月にYouTubeでカバーライブをしないかと運営さんから提案をもらって。めちゃくちゃ楽しそうだなと思ったんです。いざやってみたら、私が楽しかったのはもちろん、聴いてくださった方から「元気出た!」とか「楽しかった!頑張れる!」とか「幸せな気持ちになったよ!」とか沢山嬉しくなる言葉をいただけて。今コロナで色んなアーティストの方々が無観客ライブを行っているじゃないですか。私もよく観てるんですけど、中には、名前は知ってるけどどんな音楽を作っているのか知らないアーティストの方がYouTubeで配信を行っていて、ちょっと見てみようかな、と思ったら最後まで見てハマってしまったり、行きたかったライブの再放送をしてくれたりなど、画面越しではあるけどたくさんライブが見れて、どんどん好きな曲や人が増えたし、そんな好きな人たちが私たちファンのことを考えてくれることが嬉しかったし、それを糧としていろんなこと頑張れました。だから、私が好きなアーティストの方々に幸せにしてもらったみたいに、私もライブを通して観測者のみなさんに幸せな気持ちになってもらえたことが本当に嬉しかったです。私の歌が誰かの生活や人生と繋がっているということを改めて実感しました。でも、やっぱりその場にいるのと家にいて聴くのは全然違いますよね……。チケットがあればライブハウスに会いにいけるっていう当たり前が、めちゃくちゃ幸せなことだな、と思うきっかけともなりました。
――2nd E.P.「花と解答」がリリースされましたが、あらためて自分でも聴いてみて、花譜さんのこれまでの作品と比べてどんなところに進化を感じましたか?
花譜:すごい声が変わったなと思いました。前は声を張るとすぐバテちゃって声がヒョロヒョロになってたんですが、ボイトレに行き始めてから、少し太い、胸に響く感じの声の出し方がなんとなく掴めて、前より楽に声を張ることができるようになったと思います。
――タイトルを「花と解答」にした理由を教えてください。
花譜:今までのEPは、花譜の花をとって「花と」で統一してきていて。今回は「アンサー」という曲が入っていることもあり、色んな意味でのそれぞれの「解答」を曲で感じ取ってもらえたらなという思いも込めて、カンザキ(イオリ)さんや運営さんと相談して決めました。
――問いであり答えでもあるナンバー、テレビアニメ『ブラッククローバー』第11クールエンディングテーマ「アンサー」は、歌ってみていかがでしたか? <間違いを間違いで終わらせないで 涙を涙で拭わないで 確信があるその心が叫んでる ここならもう一人じゃない>のフレーズが刺さりました。
花譜:私も<涙を涙で拭わないで>って歌詞が大好きです! 周りも自分もいつのまにか変わっていくんだなというか、変わっていってるなって感じることが最近あって。それがいいことなのか悪いことなのか分からない中、私は正しい選択をしてるかなとか、これを選んで私は後悔しないかなとか、色んなことを考えています。でも時間は待ってくれなくて、結局中途半端になったり、立ち止まってしまったり、そういうのを私は「なんか嫌だな」としか形容ができなかったんですけど、カンザキさんはこうやって曲にできて、しかもそれを肯定して大丈夫だって言ってくれて、本当に大丈夫な気がしてくるような歌になっていて、本当にすごいなと思いながら歌いました。
――心が震えるほどの感動を得た、Netflixオリジナルアニメ『日本沈没2020』グランドエンディングテーマ「景色」は、歌ってみていかがでしたか? <僕らはどこだって行ける 僕らはどこにだって飛べる>のフレーズが心に残り続けました。
花譜:グランドエンディングテーマ……なんだかめちゃくちゃすごい響きですよね。<僕は自由だ>という最後の歌詞は、どこにだっていけるっていう未来や自分への期待と、少し不安も入り混じるような心情だったんじゃないかなと思って、それを表現したいという気持ちで歌いました。<震える肌を世界は待っている>って歌詞も大好きです!
――超没入エナジードリンク「ZONe」のIMMERSIVE SONG PROJECTとのコラボ楽曲であり、ライブで聴けるのが楽しみなアッパーなロックチューン「危ノーマル」は、歌ってみていかがでしたか?
花譜:めちゃくちゃノリノリで歌ったのですが、めちゃくちゃ難しかったです。私はパワフルな歌声への憧れがめちゃくちゃあって、だからそれに近づきたい!と思いながら歌いました。ZONeのテーマが「覚醒」「没入」ということで、聴いてくれた人にやる気元気本気になってもらえたらいいなと思っています!
――資料に“様々な偶然により発見された類い稀な歌声を持つ次世代型バーチャルシンガー。”と書かれていましたが、バーチャルシンガーになろうと思った経緯を教えてください。
花譜:もともと歌を歌うのが大好きで、カラオケアプリに歌を投稿していました。13歳の時、そのアプリでプロデューサーさんがたまたまわたしの投稿を見つけてくれて。それから何度かやりとりをさせてもらって、バーチャルの世界の存在を知って、よかったらやってみませんか?と言っていただき、私はデビューさせていただきました。本当に私は一生分ほどの運をそこで使ったのではないかなと思います。「禍福はあざなえる縄のごとし」信者なので老後を案じています……。
――シンガーとして自分にとって“歌”がとても大切な存在なんだと気がついた瞬間ってどんなときでしたか? 忘れられない楽曲への思い出などあったら教えてください。
花譜:歌がずっと当たり前に生活にあってそれが日課だったので、瞬間は全くわからないです。でも、歌が歌えなくなったら本当に生きる意味がないなと今は思っています。以前なんか喉に違和感があって、それが何日か続いたことがあったんです。結局杞憂だったんですけど、その違和感を抱えてる間ずっともやもやしてて、歌が歌えなくなったら……っていう考えが不意によぎることが何度もあって、そのたびに涙が堪えきれず出てきて、それがところ構わずだったので大変でした。その時に私って本当に歌がないと生きていけないんだなって思いました。結局勘違いだったので本当によかったです!
――これまで様々なカバー曲と、カンザキイオリさんによる詞曲のオリジナル曲を歌われてきましたが、歌唱する上でカバーやオリジナルだと思い入れなど変わってくるものでしょうか? カバー曲でも、自分の曲なのではないかと錯覚するぐらい没入できる曲はあったりしますか?
花譜:作っていただくオリジナル曲には、当たり前なのですがお手本がなくて歌い方に正解がないので、毎回何が一番良いのだろうかと試行錯誤しています。でも、私だけの歌、っていうのはやっぱり嬉しいです。オリジナルもカバーも特別な思い入れというか、根本的な「この歌が好きだ!」と思う気持ちはどちらも変わらないです。私がカバーさせていただいた曲は全て私が大好きな曲たちなんですが、もうそのアーティストの方たちの存在が大きすぎて!歌いながらその方達の顔やMVがよぎりまくります。
――「命に嫌われている」などを手がけた花譜さんのプロデューサー、カンザキイオリさんは、花譜さんにとってどんな存在ですか? カンザキイオリさんとのエピソードがあったら教えてください。
花譜:カンザキさんは本当にすごいです。一曲の中で揺さぶられる感情の多さ! そして、例えばですが思春期少年の葛藤、真っ黒な気持ちから、恋をする少女のような複雑な気持ちまでが繊細に確実に述べられる歌詞……。え?かつて少女でしたか?となるくらいです。最近ではさらに小説をお書きになったり、(自分の手と頭で誰かの人生を0から作り上げて完結させられるの本当にすごいですよね)絵をお描きになったり! 怒涛の創作意欲! そしてそれらをやってしまう行動力! すごすぎる……。そして、そんなにすごい人なのに、ものすごく優しいんです! 私は、天は二物を与えないのならば、天才は全員人格が破綻していてもいいと思っていますが、カンザキさんは天才な上に、めちゃくちゃ優しいです。あと本当に面白いです。この前会った時にSwitchのフレンドコードを交換する約束をしたので、今はそれを楽しみにしています。
――運営側である、プロデューサーのPIEDPIPERさんは、花譜さんにとってどんな存在ですか? PIEDPIPERさんとのエピソードがあったら教えてください。
花譜:こんな大人がいるのか!と思いました。自分と対等に話してくれて、話を聞いてくれる大人の人に会ったことがなかったので。あと、こんな大人がいるのか!には、こんなに楽しそうに仕事をする大人がいるのか!も入っています。会うたびにめちゃくちゃ忙しそうで、いろんな聞いたことない用語が飛び交ってることがたくさんあります。何かの時に誰かが「ちゃんと休んでるんですか?」って聞いたら、「楽しいから別に休みたいと思わないんだよね」みたいなことをおっしゃっていて、びっくりしたのを覚えています。そんなことをいう人を見たことがなかったので。誰も思いつかないようなアイデアを持っていて、それを形にしたり実現したりする、カンザキさんとかぶるのですが創作意欲と行動力がすごいです。あと包容力! 人を喜ばせるのがめちゃくちゃ上手です。プロデューサーさんに歌を褒められるととても嬉しくなります。とても尊敬しています。そして見つけていただいたこと、本当に心から感謝してもし尽くせません。花譜として活動していなかったら今頃何してたんだろうな……ってたまに思います。
――ライブでの、ストーリー展開やポエトリーリーディング、変身シーンなど様々なパフォーマンスに衝撃を受けました。表現を行う際、花譜さんが大事にしていることがあったら教えてください。
花譜:ありがとうございます。嬉しいです! 気をつけていることは、歌詞の言葉をよく考えることをやめないことと、歌ってる最中に迷わないことです。歌い方に迷って中途半端になるのをよくやってしまうのですが、自分を一切消して、自分が思う歌の中の人の気持ちをそのままスラスラ吐き出せるのが一番良いなと思っています。それが100発100中できる人になりたいです。
――花譜としての現在のアーティスト活動に通じる、影響を受けたアーティスト、好きなアーティストについて教えてください。
花譜:影響を受けたのは、小さい頃そばにあった嵐さんやAKB48さんの歌や、ボカロにハマるきっかけとなったHoneyWorksさん、歌い手に憧れるきっかけとなった鎖那ちゃん、邦ロックにハマるきっかけとなったRADWIMPSさん、そして大好きなメルさんです。好きな音楽が広がるターニングポイントとなったアーティストの方たちです。私は小さい頃から、ハマるとそれひとつしかやらない食べない聞かない人間で、小さい頃はラーメンは醤油ラーメンしか食べていませんでした。決めつけが激しく、これより良いものがあるはずがない!という感じの頑固な性格だったのですが、この方達の音楽を聴いたとき、そんな考えは忘れて、めちゃくちゃ心を持ってかれました。今は音楽も食べ物もなんでも聞くし食べるようになったんですけど、音楽に関してそれは紛れもなくこの素晴らしすぎるアーティストの皆様のおかげだと思います。出会わなかったらどれだけ狭い世界で生きていたことか!
――音楽以外で、影響を受けた作品などはありますか?
花譜:その作品のどこにどう影響を受けたの?と聞かれると全く思い浮かばないのですが、ふいに、あ、あの映画の人そういえばこんなときこんなことしてたな、言ってたなとか、そういうのを思い出すと、ちょっと嬉しくなります。最近観て好きになった映画は『鉄コン筋クリート』です。漫画は『僕等がいた』で、小説は『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んで好きになりました。
――2020年、まだまだカオスな世の中ではありますが、表現活動を続けるにおいて、目標や野望、夢などありましたらこっそり教えてください。
花譜:目標は、歌がうまくなること! ずっと歌い続けられるよう、好きでいてもらえるよう、頑張っていきたいです!野望は、自分で作った曲をいつか聴いてもらうこと! 夢は、応援してくれているみなさんと直接お話することです!

【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】





花譜 #58「アンサー」【オリジナルMV】


花譜 #60「景色」【オリジナルMV】


花譜 #57「危ノーマル」 【オリジナルMV】

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リリース情報

花と解答 -オリジナル Edition-

花と解答 -オリジナル Edition-

2020年07月22日

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※BOOTH限定発売
01.アンサー
02.景色
03.危ノーマル
04.アンサー(Instrumental)
05.景色(Instrumental)
06.危ノーマル(Instrumental)

お知らせ

■ライブ情報

Bilibili World 2020
08/07(金)-08/09(日)中国・上海

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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