Sou、理想を追い求める表現者の姿――1st EP「Utopia」からわかること

Sou | 2020.08.19

 ネットシーンでの活動を原点に、「ミスターフィクサー」がアニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』のオープニングテーマ曲に起用されるなど、注目を集めているボーカリスト・Sou。彼が、1年ぶりの音源作品となる1st EP「Utopia」を、自身の誕生日である8月19日にリリースした。A_Ⅱ、煮ル果実、R Sound Design、あめのむらくもP、ピコンといった気鋭のクリエイターからの提供曲のほか、神谷志龍とRUCCAとタッグを組んで自ら作詞・作曲した「ミスターフィクサー」「ユートピア」も収録の、初めてオリジナル楽曲のみで構成された意欲作だ。世の中がどれだけ閉塞感に満ちていようと、理想を追い求め歩み続ける表現者の姿が、そこにある。

――1st EP「Utopia」は全体的にダークな雰囲気で、コロナ禍という状況下だからこそ生まれた嘘のない表現であるのかな、という勝手な想像もしつつ……色彩豊かな前作『深層から』とのギャップに、少々驚いております。
Sou:確かに、今回は暗いですよね(笑)。実際は、暗い曲でいこうっていう意識をしたわけではないんですけど、やっぱり世の中の雰囲気に影響されている部分は少なからずあると思います。
――『深層から』が生まれた1年前とは、世の中がガラっと変わってしまいましたものね。
Sou:本当に。不穏で不安定な世界になってしまって。
――だからこそ、“Utopia=理想郷”を求めたい、描きたい、という……。
Sou:そういう面もあったのかもしれません。コロナの影響が深刻になる前から制作は始まったんですけど、途中からどんどん余波が広がっていって。ただ、現実は大変でも、自分が思い描く世界は自由だし、自分だけの理想郷を作り上げることだってできるわけじゃないですか。自分自身が音楽に救われてきたし、自分が音楽を生み出す側になった今、いつも通りでいよう、ちゃんとこのCDを完成させて発表しよう、という気持ちも大きな原動力になっていたと思います。
――無理に背中を押すのではなく、そっと寄り添ってくれるようなSouさんの歌は、混沌とした時代に多くの人を救い、支えてくれるものだな、とあらためて感じます。
Sou:ありがとうございます。元気な曲はないんですけど(笑)、リアルな作品にはなったんじゃないかなって。
――1曲目は、Souさんが作詞・作曲をした「ミスターフィクサー」。歌始まり、スリリングなピアノ、心をかき乱す歌詞が印象的で、アニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』のオープニングテーマとしても評価の高いナンバーですね。
Sou:うれしい反応がたくさんあって、ホっとしています。
――初のタイアップということで、プレッシャーはあったのではないかな、と思ったりもしつつ。
Sou:プレッシャーはやっぱりあったし……『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』は、難しいテーマのアニメ作品でもあって。どういう歌詞にしようかだいぶ悩んだりもしたんですけど、台本を読んでヒントを得ながら書き上げました。
――普段の作詞、作曲とは異なる、新たな挑戦ですよね。
Sou:そうですね、全然違いました。オープニングテーマって、作品に完全に寄せている曲もあれば、寄せていない曲もありますけど、そのバランスをどうとるかっていう自分の中での戦いもあって。
――結果、「ミスターフィクサー」は『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』の世界にも相応しく、でもSouさんらしさもあるという、絶妙なバランスを保った曲になっているなと。
Sou:そう感じてもらえたらうれしいし、大変だったぶん、それを乗り越えたことでレベルアップできたと思います。
――「悪者」は、クラップを思わせる楽しげなリズムでいて、メロディもサウンドメイクも歌詞も不穏という、鮮烈なコントラストで。
Sou:そうなんですよね。今回のEPの中でも、だいぶ攻めた曲、尖った曲になりました。
――呪文のようなパート、場面ごとの歌い方の違い、曲の終わり方もだいぶ強烈な印象です。
Sou:2コーラス目の呪文みたいなパートなんかは、中毒性がありますよね(笑)。前半と後半で雰囲気がガラっと変わる曲でもあるので、一人二役をイメージしながら歌ったりもしました。
――だからでしょうか、“君”はもうひとりの自分なんじゃないかとも思えますが、Souさんの“君”の解釈は?
Sou:僕も、自分の中の悪と善、その葛藤なのかなととらえて歌いました。「Utopia」の中でも異質ですごくパンチ効いているし、僕的にはお気に入りの曲です。
――また、「クイニーアマンダ」も、R&Bテイストで始まったかと思うと途中でカオティックに豹変し、葛藤が渦巻くナンバー。
Sou:まさに、「クイニーアマンダ」も奇抜な曲で。作曲者である煮ル果実さんから最初にデモをもらったときには、前半のR&B調の部分だけだったんですけど、フル尺をもらってみたら、途中から違う曲が始まった!?って、驚きました(笑)。「悪者」同様、1曲の中に全然違う2曲があるんですよね。意表を突くそのインパクトがめちゃめちゃいいし、今回のEPはすごいことになるぞ!というワクワク感をもらえた曲でもあります。
――ただ、1曲の中でガラっと異なる表現をする難しさはないのでしょうか。
Sou:めちゃめちゃ難しかったんですけど、自分の中で1曲だけど2曲としてとらえて、前半と後半のテンション感を変えたほうが映えるんじゃないかな、と思って。
――曲に自然と呼ばれる、という感覚もあったりして?
Sou:あ、そうですね。自分はこれまで、いろいろなジャンルの曲を歌ってきたので。直感のまま、自分のセンスを信じて歌えた、というところはあります。
――「インペリアルボーイ」は、オシャレでポップなムードのナンバー。
Sou:そうですね、R Sound Designさんの書く曲は、本当にオシャレで。
――しかし、歌詞は物憂げなんですよね。<人類最後><終焉><終わる世界>と……。
Sou:終末観がすごく漂うっていう……(笑)。
――その中で響く<歌を歌うだけ>というフレーズは、Souさんの在り方ともかぶる気がするな、と思ったりもします。
Sou:この曲の主人公は、いろいろな人が怖がったり、涙したりする人類最後のときにも、これまでと変わらずに同じ日常を過ごしていくのかな、と思って。あまり重くならないように、淡々と歌ったんですけど……世界の終わりに直面したとしたら、僕もいつも通りに歌を歌い続けていたいな、と思いました。
――一転、「善人じゃない」は、イントロからしてドラマティックなナンバーだなと。
Sou:あめのむらくもPさんはもともとオーケストラチックな楽曲を作る人ですけど、この曲はまさにドラマティックで壮大なナンバーになりました。
――歌詞は、善とは、悪とは、生きるとは、を考えさせられるもので。
Sou:この「善人じゃない」にしても、最初からそう意図したわけではなく、あくまで結果論ではあるんですけど、現状に重ねて聴ける曲になったな、と思います。
――さらに、「もう会えないと思う」は、タイトルからして衝撃的です。
Sou:そう、このタイトル、めちゃめちゃインパクトありますよね。僕も最初、ドキっとしましたもん。
――しかも、消えてしまいそうで寂しげな歌い出しにしろ、感情があふれ出すサビにしろ、あまりにも刺さってしまいます。
Sou:「もう会えないと思う」は、春くらいにデモをもらったので、最初は卒業シーズンの別れをイメージして歌おうと思っていたんですね。でも、世の中がどんどんそんなムードではなくなってしまって、本当の別れを想像するようになって。歌うというよりは、演じるに近い感覚でレコーディングをしたんですけど……途中、泣きそうになってしまいました。
――聴く側としても、まるで遺書のようにも思えてきますから。
Sou:僕自身は100歳くらいまで生きたい!と思っているので、みなさん心配しないでください、という感じではあるんですけど(笑)。でも、そう思わせられるくらい感情を込めて、魂を込めたつもりなので、それを汲み取っていただけてすごくうれしいです。
――そして、Souさんが作詞・作曲をした、表題曲の「ユートピア」。軽やかな中にどこか幻想感漂う、心地よくて不思議な曲です。
Sou:自作する場合、これまではテンポの速い曲を作ってきたんですけど、おっしゃっていただいた幻想感もありつつ、ミドルテンポでゆっくりと歩いていくような曲になったと思います。歌詞に関しては、想像しながら編んだ物語の中に、自分自身にも重なるような言葉をちりばめてみました。
――中でも、<焦がれた夢の全部が 正夢だと願って進んでいく>というフレーズに、Souさんの信念がにじむ気がします。
Sou:“理想の自分”って、常に変化していくものでもあるな、って思うんですよね。たとえば、曲を作れるようになりたいな、と昔の自分は思っていたけど、それができるようになってみたら、今度はもっとこうしたい、こうなりたい、っていう欲が出てきて。“理想の自分”を追い求める中で思い悩むこと、ままならないことも多いけど、それでいいんじゃないかな、それでも諦めずに追い求めていこう、っていうのが、今の僕が辿り着いた答えです。
――いちリスナーとして、そこに希望を見出すこともできます。「ミスターフィクサー」「ユートピア」の制作を経て、自ら曲を作り歌詞を書くことの楽しさをあらためて感じたり、さらに表現欲に火がついていたりもするのでしょうか。
Sou:思うようにいかないこともあるんですけど、自分で曲や歌詞を生み出すのは、やっぱり楽しいんですよね。次は明るい曲を作ってみたいな、もっとストレートな歌詞をつけてみたいな、とかいろいろやってみたいことも出てきて。どんどん挑戦をしていきたいです。
――なにしろ、ボーカリストとしてもコンポーザーとしても、Souさんにはまだまだいろいろな引き出したあるのだろうな、という期待感を高めてくれる作品です、「Utopia」は。
Sou:まだまだ隠し持っているものはあるので、楽しみにしておいていただければなと。
――その上で、この先に向け、表現者として思うのはどんなことなのでしょうか。
Sou:ネガティブになりがちな世の中ですけど、気持ちを保ってみんなで乗り越えていきたいし、僕の音楽を求めてくれる人たちの支えや救いになれるようになりたいな、ということはあらためて強く思っていて。生まれ変わり続けていく自分の理想を、これからも追い求め続けていきます。

【取材・文:杉江優花】





【2020.8.19 Release】Sou 1st EP「Utopia」-XFD-


Sou「ユートピア」MV "Utopia"


Sou「ミスターフィクサー」MV "Mr.Fixer"

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リリース情報

Utopia

Utopia

2020年08月19日

ユニバーサルミュージック

01.ミスターフィクサー
02.悪者
03.クイニーアマンダ
04.インペリアルボーイ
05.善人じゃない
06.もう会えないと思う
07.ユートピア

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最近、動画編集を自分でやり始めたんですが、自分で作った動画を書き出してみたときに、画質がめちゃくちゃ粗くて。それを解決させる方法みたいなので、「ターゲットビットレートを変更するといい」みたいなのが書いてあったので、それで調べました。

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