名古屋発3ピースロックバンドMaki、待望の1stフルアルバム『RINNE』リリース!
Maki | 2020.09.01
<引っ張って 臆病な君の手を>と歌う「フタリ」で始まり、<引っ張るよ 君の手を>と歌うタイトルトラックで終わる、Maki初のフルアルバム『RINNE』。傑作である。このアルバムで明らかに彼らは変わった。自分自身の心情を丁寧に紐解いていくような山本響(Vo/Ba)の歌詞の繊細さは変わらないが、そこに「誰か」に向けた視線がくっきりと重ねられている。「俺はこうだけど、君はどう?」――すべての曲が、聴き手の側にそう問いかけてくるようだ。個人的にも、そしてバンドを取り巻く環境としても大変革期を迎えた彼らが踏み出した新たな一歩について、メンバー3人に語ってもらった。
- ーー初のフルアルバム、作ってみての手応えはどうですか?
- まっち(Dr):作ってから5ヵ月ぐらい、だいぶ時間が経っちゃったんですけど、自分でもよく聴くんですよ、自分たちのアルバムを。どれだけ聴いても飽きないなっていう。長いこと聴いてもらえるアルバムだなと思います。
- 佳大(Gt):そうですね。いいのができたなって感じですね。
- 山本:薄っ!(笑)
- 佳大:シンプルに(笑)、そうですね。
- ーーどういう作品にしようと思っていました?
- 山本:とりあえず、ライブでやれる曲をたくさん作ろうみたいな。最初の始まりはそんな感じで、それで作っていくうちにも本当に全部リード曲みたいになっちゃったな、みたいな(笑)。ライブ映えする曲っていうか、ライブのほうがかっこいい曲しか入れたくなかった。バラードとかちょっと落ち着いた曲でもライブのイメージができる、やってる姿が想像できる曲っていうのは意識しましたね。
- 佳大:ギターを作ってる最中は必死すぎて、あんまり考えてなかったですね(笑)。曲の全体はもう響とまっちで作ってくれるんで、それに乗って、あとはどんだけできるかみたいな感じで。
- ーーライブでいうと、去年くらいからMCとかで話すことも変わってきたんじゃないかという気がするんですが、自分ではどうですか?
- 山本:それは最近の方が実感あるかもしれないですね。お客さんを、ちゃんとソーシャルディスタンスを保ってライブハウスに入れる。そうなるといつもみたいにもみくちゃっていうのはなくなるわけじゃないですか。それを望んでライブをやっていたわけではないですけど、伝え方っていうか、やっぱりいちばんは曲を通して何かを伝えることだと思うんで。
- ーーまっちくんと佳大くんは響くんのフロントマンとしての変化みたいなものを後ろや横から見ていて感じることはありますか?
- まっち:なんだろう、昔は言いたいことがいっぱいあるけどうまいこと言葉が出てこない、みたいなのをすごく感じてて。楽屋とかでも終わった後に悩んでたりしたんですけど、最近はちゃんと言葉が出てくるようになったなって。今は後ろから見てても、安心して任せたぞって思える。昔はずっとヒヤヒヤしてましたからね、MCとか。
- 山本:はははは。
- 佳大:僕はライブ中に響の声ってあんまり聞こえていないんですけど、でもかっこいいなって思うようになりましたね。
- ーー今回のアルバムの曲も、自分で完結していないっていうか、受け取る人に向けて何かをちゃんと伝えようとしている感じがするんですよね。
- 山本:今回歌詞を考える時間がたくさんあって。それで今までの自分がメモしていたことを掘り起こしたり、あとは高校の卒業アルバムとか見たりして、その思い出を書こうと思ったりしたんです。そういうひとつひとつの自分の思い出とか、当時自分が思ったことに対して、今の自分がどう思うかっていうのと、それを聴いた人がどう行動するかっていうのはちょっと意識しましたね。だから伝われというよりは、伝わった上でどうするか、みたいな感じ。伝わった上でその反応がどうなるのかなっていう。うまい言葉遣いとかもできないので、とりあえず自分なりに自分の思っていることを書いて、その曲の中に自分だけじゃなくてあなたっていう人も出して、それを聴いた人がどう捉えるかっていう。「あなたは誰なのか?」みたいな感じの曲が多いかもしれないです。
- ーーなるほどね。最後の「RINNE」っていう曲はどのタイミングでできたんですか?
- まっち:最後のスタジオのときに全然曲ができなくて、スタジオで響がアコギを弾きながら鼻歌で歌ってたんですよ。俺も俺でどうしようかなと思って考えてた時に、その響が歌ってるのを聴いて「今のメロディ、めっちゃいいじゃん!」ってなって。忘れんうちに作ろうってぱっとできたのがあの曲ですね。
- 山本:そう。制作時間でいったら1時間ぐらいなんじゃないですか。
- ーーそうなんだ? これ、すごく重要な曲だなと思うんですけど。
- 山本:そうですね。今すぐ作ろうとなって作り始めてからアイデアがばーって出てきて、一瞬でできたみたいな感じでしたね。あの曲と最初の曲は繋がってるんですけど、それもメロディができてすぐ「これ、同じキーだから繋げられる」って。歌詞もサビの部分だけは大まかにあったんで。通して1枚聴けるっていうのがアルバムだと思うんで、それを締めくくるために、最後紐としてギューって結んだのが「RINNE」だったのかなって感じがします。
- ーーそんなふうに突然できた曲が、アルバムのタイトル曲になって。
- 山本:曲名もアルバムタイトルもほぼ同時くらいに決めたんですけど、せっかくの最初のフルアルバムだったんで、今自分が――今年23歳になるんですけど、それを締めくくる、自分の人生としてのアルバムがいいなと思ったんです。輪廻っていう、終わりが始まりっていったらそれで終わってしまうんですけど、そういう気持ちですよね。ぐるって1周回って元の位置に戻ってきたっていう感じ。もうフルアルバムを作るよって聴いた時点で「あ、1個の時代が終わる」みたいな感じでした。自分の中では。
- まっち:バンドとしてもいろいろ変わったことが多かった年で。マネージメントがついて、ビクターのGetting Better RecordsとTRUST RECORDSの共同(のレーベル「D.T.O.30.」)でやるようになったのも去年で。大きく変わったのかなって思ったところにフルアルバムの話が来たので。
- ーーそうだよね。だから、自分自身もそうだし、自分たちが音楽をやるということとか、バンドをやることに対しても意識が変わったというか。その変化を受け入れながら作られたアルバムという感じは非常にしますね。響くん、前は高校生に戻りたいって言ってたけど。
- 山本:それは今もめちゃめちゃありますけどね(笑)。でも、どうしようもないですから。年齢とか、歳を取っていくスピードを止める魔法があるんだったら話は変わってきますけど、ないし。止まるもんじゃないんで、受け入れなきゃっていうよりは、まあ普通のことなのかなって思います。そこで悩む人もいるとは思うし、例えば就職したくないとか言う人もいましたけど、それが正解なのかどうかっていうのは本人次第なんで。自分が頑張れればいいかなって感じですね。
- ーーしかも「RINNE」では「まだ見えない 時代へと/引っ張るよ 君の手を」って言ってるっていう。手を引っ張って前へ向かおうとしているんですよね。
- 山本:まあ、前か後ろか横か、わからないですけどね(笑)。まあ、引っ張ってやろうかなっていうより、「連れてっちゃうよ」みたいな。付いてきてくださいね、みたいな感じのニュアンスでその歌詞は書きましたね。
- ーー「付いてきてくださいね」にしても、結構力強いですよ。
- 山本:うん。昔は僕、自分のこと以外にあまり興味がなかったんで。曲も自分主体の曲だったんですけど、いつぐらいからですかね、たとえば政治とかに関してもそうですし、やっぱりよろしくない情報とかも飛んでくるじゃないですか。芸能人が捕まりましたとかも頻繁にあったんで。そこから自分のことプラス、変えられるものは変えていかなくちゃいけないのかなって思ったんですよね。いろんな人が言うけど、ビートルズって戦争を止めたわけじゃないですか。「そんな音楽はない」って言う人が結構多いんですよ、僕の周りのバンドの人でも。でも、どうせやるなら、何も変えられないより変わったほうがマシなんじゃないかって。ようやく、自分の目で見えている世界に対して自分がどうしていくかっていうのをちゃんと考えられるようになった。
- ーーそれ、すごく大きな変化ですよね。たとえば「日常」のミュージックビデオを、ファンから写真を集めて作ったじゃないですか。ああいうのもひとつの投げかけ、メッセージだと思うし。
- 山本:そうですね。あれは「作るしかないな」と思ったんです、自分の曲を聴いている時に。あの曲は別にコロナが起こってから作ったものではないけど、コロナが起きてからライブが自粛になって、なくなりつつあるなかで聴いた時に自分にいちばん響いたんで。
- ーーやってみてどう感じました?
- 佳大:普段何も考えてなかったですけど、ライブハウスに遊びに行けるっていう状態が当たり前だったのが、それが当たり前じゃなくなると普通にライブができるってことは幸せなんだなって思いましたね。
- まっち:あれ結構な枚数……何枚だっけ?
- 佳大:全部で来たのは400枚ぐらい。
- まっち:それぐらい来たんですよ。僕らのこと好いてくれている人たちが、僕らのライブの時の写真をいっぱい上げてくれてて。それを見て、Makiをやり始めてから歴史みたいなものを感じて。ここでバンドが死んだらダメだなって思ったんです。あの時って結構、ライブハウスもバンドもすぐ潰れそうな状況だったじゃないですか。またこの先も同じような写真が撮れるようにというか、同じようなライブができるようにって思いました。
- ーーそうそう。だから、曲自体はまったく無関係に生まれてきたのかもしれないけど、それがちゃんと今とこれからに向けたバンドの姿勢になっているっていう。
- 山本:はい。もう巡り合わせっていうか、作るべくして作ったなって感じはします。
- ーー本当にそう思います。あと、これもシングルでもいいような曲ですけど、「虎」っていう曲。
- 山本:これは『山月記』っていう教科書に載っている物語がモチーフですね。歌詞は明るくないんですけど……芸術関係で音楽だけが形がないものじゃないですか。目に見えないものってなった時に、本当に正解がなさ過ぎて。何がいいものなんだろうって考える時期がすごくあったんですよね、アルバムを作るなかで。ずっと何が正解かを探しているんだけど何も見つからなくて。それを考えることに時間を取られて、そのあいだに他の人たちは進んでるのに自分は止まってる感覚というか。そういう自分がいたっていうメモみたいな曲ですね。
- ーーその葛藤についてもう少し聞きたい。
- 山本:「Tao」の時もそうだったんですけど、やっぱりバンドとしてはかっこいい曲が作りたくて。でも僕らを売ってくれる側からしたら、それを売らなきゃいけないわけじゃないですか。そういう、まあ商業的な面に関しては何も考えてこなかったんですけど、小さなライブハウスだけじゃなくて大きいところでもやっていかなきゃいけないよとか言われたり、仲のいいバンドがいてずっと一緒にやっていきたいと思ってるけど、毎回同じメンツでやるのはあまり良くないんじゃないかっていう話をされたりして、自分自身のなかに迷いというか葛藤が生まれて。
- ーー自分のやりたいことと周りから言われることにズレがあったんだ。
- 山本:そうですね。今はもう全然迷いはないし、なんていうんですかね、深く考えることやめたって言ったらあれですけど、それって俺が考えることじゃないのかなと思ってますけど。大人から見たら「こういう曲がキャッチーだから売り出していきたい」っていう意見があって当たり前なんですよ。僕の中に思い入れのある曲があるのも当たり前で。なのでとりあえず自分のやりたいことはやらせてもらって、それで怒られたら怒られたでいいかって思うようになりました。自分の好きなことをする、やりたいと思ったことは絶対言う。それが普通の人間関係っていうか、音楽をやっていく上での関係性なんだなっていう。でもずっとそれに怯えてた時期があったから。前よりは強くなったのかなと思います。こんな好き勝手やってるバンドってあんまりないんじゃないかな?って思うくらい、好き勝手やらせてもらってますから。
【取材・文:小川智宏】
Maki【RINNE】全曲トレーラー
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リリース情報
RINNE
2020年09月02日
D.T.O.30.
02.銀河鉄道
03.ユース
04.秋、香る
05.日常
06.火垂る
07.虎
08.三角公園
09.五月雨
10.エバーグリーン
11.こころ
12.RINNE
お知らせ
■ライブ情報
Maki 1st Full Album RINNE Release Tour「大四喜」
[2020]
10/17(土) 渋谷TSUTAYA O-WEST
10/31(土) 名古屋CLUB QUATTRO
11/06(金) 大阪MUSE
11/07(土) 鈴鹿ANSWER
11/13(金) 府中FLIGHT
11/14(土) 横須賀かぼちゃ屋
11/15(日) 熊谷HEAVEN’S ROCK
11/21(土) 奈良NEVERLAND
11/22(日) 滋賀B-flat
11/23(月祝) 金沢GOLD CREEK
11/25(水) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
11/27(金) 上越EARTH
11/28(土) 松本ALECX
11/29(日) 山梨KAZOO HALL
12/04(金) 堺Tick-Tuck
12/05(土) 神戸太陽と虎
12/06(日) 京都MUSE
12/12(土) 出雲APOLLO
12/13(日) 高松DIME
12/15(火) 周南live rise
12/16(水) 福岡Queblick
12/18(金) 鹿児島SR HALL
12/20(日) 大分club SPOT
12/25(金) 岐阜Ants
[2021]
01/09(土) 水戸LIGHT HOUSE
01/10(日) 宇都宮HELLO DOLLY
01/11(月祝) 千葉LOOK
01/13(水) 八王子RIPS
01/15(金) F.A.D YOKOHAMA
01/16(土) 静岡UMBER
01/17(日) 浜松G-SIDE
01/22(金) 岡山CRAZYMAMA 2nd Room
01/23(土) 広島Cave-Be
01/24(日) 小倉FUSE
01/30(土) 四日市club CHAOS
02/05(金) 豊橋club KNOT
02/06(土) 磐田FM STAGE
02/13(土) 米子AZTiC laughs
02/14(日) 尾道BxB
02/18(木) 高崎club FLEEZ
02/20(土) 仙台RIPPLE
02/21(日) the five morioka
02/23(火祝) 八戸FOR ME
02/26(金) 苫小牧ELL CUBE
02/27(土) 札幌SPIRITUAL LOUNGE
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。