どこか深みを持ったバンド・Ezoshika Gourmet Clubに迫る!

Ezoshika Gourmet Club | 2020.10.26

 昨年度、新人発掘・育成プロジェクト「GIANT LEAP」の最優秀アーティストに選ばれて注目を集めた4人組・Ezoshika Gourmet Club。彼らの初となる全国流通ミニアルバム『モミジノススメ』が届いた。90年代末~00年代のジャパニーズ・オルタナの匂いを感じさせながらも、それを明快なポップソングとして再提示するような、さりげないけど実はめちゃくちゃ気の利いたサウンドデザイン。そしてはっきりとは言わないものの、どこかしらに鬱屈したマインドが込められた、ちょっとひねくれてるけどリアルな歌詞。こなれているのかいなたいのか、絶妙なラインの4人の佇まいも含めて、なんだか無性に気になるバンドなのだ。ただ「いい曲!」とか「ポップ!」とかだけでは割り切れない深みを持っていそうな彼らに、バンド結成から今作までを語ってもらった。

――2018年に結成されたということですが、どういうきっかけでこの4人が集まったんですか?
池澤英(Vo/Gt/Key):結成の1年前に話は遡るんですが――僕が大学に3年次編入して上京して。前身バンドがいたんですけどそれを解散して、こっちで新しいバンドをやろうということで、インターネットのメンバー募集サイトでメン募したわけですね。それでたまたまベースの松下くんと、前任のドラマーがいたんですけど、その2人が声をかけてくれて。
松下和樹(Ba):記事を見て会ったら波長が合って、一緒にスタジオ入ろうっていうことになって。
池澤:それが2017年の4月くらいで。そこから1年ぐらい、スタジオ入りながら曲を作ったりしてたんです。で、それと同時にその編入した大学の軽音サークルがあって、僕そこに入ったんですけど、そこで2個下の彼(額田)と出会ったんですね。彼のギターセンスとかプレイに惹かれるものがありまして、夏過ぎくらいに「一緒にやらないか」って声をかけたんですけど、なかなか渋られまして(笑)。
――なんで渋ったんですか?
額田一佑(Gt):元々そのバンドにはすごい興味あったんですけど、バンドでギターを弾くっていうのが初めてだったんです。高校生の頃とかも先輩とかでオリジナルをやってる人がいたんですけど、ことごとくダサかったんですよ(笑)。だから誘ってもらったときにも、嬉しかったんですけど「どうせそんなもんやろ」って思ったんですよね。でも音源送られてきて聴いてみたら、それがすごく良かったんです。もう「プロやん」って思うぐらい。そしたら逆についていけるか不安になって。最初の方は「ちょっと……」みたいな感じで。
池澤:それだけじゃないでしょ?
額田:あとは、(池澤の)第一印象がすごく悪かった(笑)。僕、アンプの設定いじられるのめっちゃ嫌なんですけど、最初にフジファブリックのコピーバンドをやったときに、1回合わせたあとにおもむろに僕のアンプに近づき、何の許可もなしにアンプの設定をいじりよったんですよ。だからこの人とは一生バンド組めへんなっていう(笑)。っていうのもあり、「ちょっと考えます」みたいな感じで最初は渋ってました。
――よく心変わりしましたね。
額田:それは、それから半年ぐらいした後に――僕、実家が京都なんですけど、関西に「十代白書」っていうコンテストがあるじゃないですか。その予選に高校時代にいちばん仲良かったギターの友達が出てて。そのライブを観て「同い年であんなに頑張ってるのに、俺はどうしたんだ」と思って。俺も頑張ろうと思って、その日に英さんに「今からでもいいですか」ってLINEしました。
池澤:それでとりあえず4人と、あと1人、キーボーディストがいたんですけど、そうやって結成されたっていう。
――最初からEzoshika Gourmet Clubって名前だったんですか?
池澤:もう2017年に3人集まった時点で、1人1単語出してバンド名決めようぜっていう。それで僕が「エゾシカ」っていうワードを出して。
松下:僕が「グルメ」を出して、前任のドラムが「クラブ」を出して。がっちゃんこしたときにこの収まり、語呂の良さ、もうこれだろうっていう。
――なるほど。そのパターンはわりとあると思うんですが、それにしても「エゾシカ」はなかなか出てこないですよね(笑)。
池澤:バンドをやろうと思ったきっかけの1つとして、ナンバーガールがRISING SUN ROCK FESTIVALでやっている動画を観たんですよね。その流れでブッチャーズ(bloodthirsty butchers)とかも聴くようになって。僕の好きなバンドが出ていたフェスがRISING SUNで、あのステージの後ろに「in EZO」って書いてあるじゃないですか。あの字面がかっこいいなっていう。でも「EZO」だけだとインパクトがないんで、かわいらしく「エゾシカ」で。
――なるほど! 聞いてみるとなんでも理由があるもんですね。
池澤:それで1年やってみたんですけど、このままじゃいかんぞっていうことで、前のドラムを戦力外通告しまして。そこで新しいドラマーを探していたところ、Twitterで……。
守屋優樹(Dr):見つかってしまって。
池澤:彼は音大生だったんですけど、僕の妹が音大生なんで、その伝手もあって。
守屋:直接は知らないんですけど、知り合いの知り合いの知り合い、みたいなのでつながったみたいで、急にメールが来て「サポートしてください」って。
――じゃあ、ほぼ他人から急にメールが来たという(笑)。池澤さんが「このままじゃいけない」って思ったのはどういう意味で?
池澤:曲とか作っていてわくわく感が足りないっていうか。自分の想像を超えるものを出してくるメンバーじゃないとやってらんないなとは思ってたんで。
松下:その辞めたドラマーが俺の高校からの友達だったんで、クビになったのはすごく悲しくもあり、「がんばってよ」っていうのはありましたけどね。今や連絡も取れてないんで、切なさもありますけども(笑)。でも方向がそうなった以上は。
――だから、楽しいからいいじゃん、じゃない、上を目指していくんだみたいな意思統一はバンド内ではなされていたということですよね。
池澤:そうですね。東京に来て僕が好きだったバンドとか、好きだった場所とか、実際に見る機会があって。そのなかで自分も同じステージに立てるんじゃないかっていう。なんですかね、東京の魔力みたいな(笑)。それでいつの間にかプロになるっていう意識が高まってたっていう。
――自分たちの音楽に対する自信もあった?
池澤:確かに、前身バンドを栃木でやっていたときも評判がよかったから、ちょっと自信はありました。
松下:メンバー募集の記事にも「自分の曲には自信があります」って書かれてた(笑)。ちょっと「地雷なのかな……」って不安になりましたけど、デモ聴いたらすごかったんで。
――Ezoshika Gourmet Clubの音楽って、今の世の中においてはありそうでなかったところというか、微妙に隙間を突いてるなと思うんですけど、自分たちで自分たちの音楽を言葉で説明してくださいって言われたらどういうふうに言いますか?
池澤:難しいですね。単語としては「オルタナティブ・ポップ」ですかね。
松下:そうですね。ポップだけど、芯はオルタナっていう。楽器のかっこよさみたいなものも出していきたいっていう。
池澤:最近の流れとしてがっつりサウンドで勝負っていうのもあったと思うんですけど、そこにメロの良さ……日本人は好きじゃないですか、どの世代も。そこに響くような。
――オルタナと言われたらオルタナですけど、でもいわゆるオルタナと呼ばれる音楽のいびつな部分を、すごく丁寧に整えているというか、綺麗にして提示している感じがするんですよね。
池澤:今の作品の作り方として、全曲リード曲になってもいいぐらいの、すごくわかりやすくてストレートに響くものを目指してるので、その姿勢が出てるのかな。本当はちょっと変なこともしたいんですよね(笑)。でもそれはちょっとまだ早いかなって。
――曲を作る上で一番大事なというか、重要視しているところってどこですか?
池澤:アイディアですかね。1つのアイディア、これは最近聴かないぞっていうアイディアを持ってきて、そこを広げていくっていう。メロもそうですけど、楽器もそうですね。たとえば「スカート」とかって結構ループが後ろで鳴ってるんですけど。
守屋:あとは拍子をいじるのも多いよね。ポリ(リズム)まではいかないにしても、ポップな感じでやってる拍子をちょっと変えて。
池澤:みんな気づかないだろうけど、実は変わってるっていう。
――でもそういうひねくれを、そのままでは出さないじゃないですか。
池澤:まあ、気づく人が気づけばいいかなっていう。美学的なところですかね。そういう性格なんで、みんな。
――歌詞もそうですけど、「これ喰らえ!」っていう感じで来ないじゃないですか。ちょっと逃げながら刺すっていうか。
池澤:歌詞の書き方とかもそうかもしれない。
――「東京」を聴いていいなって思ったのは、「こいつ東京のことを全然歌ってねえ!」っていう(笑)。
全員:はははははは!
池澤:ひねくれてるのはあるかもしれないですね。
――これまでたくさん名曲があるから、「東京」っていう曲を聴くときは誰しも何かしら構える部分があると思うんだけど、そこで「こう来たか」っていう。
池澤:まあ、今までさんざんやってるじゃないですか。上京してなんだかんだみたいな。そこはもういいだろうっていう(笑)。
――3人から見て彼の作る曲のおもしろさ、特徴、彼の人間性も含めてどういうところにオリジナリティを感じます?
守屋:常にですよね。
額田:出で立ちとか(笑)。
守屋:マイペースなんですよ。人の話を聞かないし。でもついていこうって思うのは、やっぱり説得力があるんですよ。話が全然かみ合わないこともあるんですけど、結局英さんの言った通りやってみたらいい感じになるっていう、結果の説得力がすごくあるんですよね。
松下:引き出しもすごいいっぱいあるしね。ここにこれを使えばいいっていうのを的確に取り出せる。
守屋:そこを言語化しない感じがね? こうしてほしいとかっていうのを言わないので、こっち的には「どういうことだろう?」みたいなことも多いんですけど。
額田:「もうちょっと、ブワァーって出てくる感じ!」とか言われるんですけど、毎回「はあ?」って思う(笑)。それをうまいこと汲み取るのが面白かったりします。
守屋:それは曲にも出てる気がします。聴き手からしても事細かに説明されるとうざいかなっていうところをふわっとさせてくれる。
――でも、最終的なゴールというか「こうあるべき」っていうものは池澤さんのなかには明確にあるわけですよね。
池澤:そうですね、7割くらいは。あとはみんなのセンスでやってもらって、気に入らないことは全部言って、最終的に形にするっていう。
額田:僕は結構投げられている感が強い。リードギターとかはそうですね。「弾ける炭酸」は英さんがトラックメーカー的な作り方でデモを作ってきて。そのデモがパンッて送られてきたんですけど、その時は「リードギター、何も思いつかんかったわ、頑張ってね」って(笑)。「やりよったな」って思いました。
池澤:ちょうどコロナによる自粛期間で、集まって合わせられないしってところで、自分ひとりで全部作ってみちゃうかっていうのでやったのが「弾ける炭酸」だったんですよね。だいぶポップな曲になったと思います。
――歌詞はどういうふうに書くんですか? たとえば「青山通り」とか。
池澤:あれは3月ぐらいに書いたんですけど、僕大学院に行ってたんですね。それで今年就職就活もあるし、どうするかなって考えてたときに――バンドをやりたいっていうのがあって、研究室にも行ってなくて、イライラが溜まっている時期で。それで夜中にたまたま大学を通ったときに、研究室の棟の明かりがついていて「頑張ってるな、俺バンドちゃんとやれんのかなあ」って思って。そのままその日夜ふかしをして、朝5時ぐらいまで起きてたんですけど、その変なテンションのなか思い浮かんできたキーワードを書きました。だからこの曲だけちょっと異質な歌詞なんですよね。ハイな状態で思い浮かんできたワードを詰め込んでいるっていう。おぞましい何かがあるなって(笑)。
――<ラララ、荒野を行く>っていうのは結構ヤバいですよね。
池澤:そうそう(笑)。
――じゃあ結構実体験とか自分の気持ちから書くことが多いんですか?
池澤:そうですね。ただ、人と同じことは書きたくないんで、普通の人じゃ書かないような視点で。「六畳間のヒーロー。」とか、夏の歌だけど「海!」みたいな感じじゃなくて、部屋で漫画を読んで、クーラーがんがんつけてみたいな、ちょっと暗めな感じに歌うみたいな。
――「六畳間のヒーロー。」も「青山通り」もそうですけど、何か爆発したい!みたいな欲望があるけど、行動には移さないみたいな。そういう感じがありますよね。
池澤:結構日常生活でもそうなんです。僕、店員に質問するのがめっちゃ苦手なんですよ、絶対自分で探してやりたいっていう。爆発させちゃえばそれで済むけど、させないで、ちょっとじっくりっていう。そういう性格が表れてるかもしれないですね。なんか、生活に寄り添いたいっていうのがあるんですよね。特別な人を描くんじゃなくて。
――わかりました。今回この『モミジノススメ』、どんな作品になったと思いますか?
池澤:これはいつも言ってるんですけど、フルコースのような。短いアルバムではあると思うんですけど、聴き終わったら充実感があるっていう。最近聴いてて思ったんですけど、一周回ってまた「東京」に戻ってきたときに、食後の緑茶を飲んでいるような気分にさせてくれるっていう。
守屋:幅が広いアルバムだと思うんで、その中でいろんな顔を持ってる曲に対して、どういういろんな顔を見せていこうかっていうところを結構考えて作りました。ドラムも、曲ごとに違うドラマーが叩いているみたいな。そういう住み分けというか、曲によって色がすごい出ているなと思います。そこが充実感につながっていくんじゃないかなって。
額田:ただ幅が広いだけじゃなくて、ポップな芯がしっかりあるっていう。上モノも楽曲の表情づけとして、危ないほうに行かないように、ちゃんとポップになるようにアレンジをしましたし、その中で音色もこだわって。ギター持ち替えたり、シタール入れたり、面白いこともしたので、満足度は高いですね。
松下:タイトルが『モミジノススメ』っていうのもあって、Ezoshika Gourmet Clubってこういうものですよっていう説明書というか指南書みたいなものになったんじゃないかって思います。5年後とかに振り返って聴いたときに「ここから始まったんだな」って思えるような作品になりました。
池澤:でも、まだアルバムに収録されなかった曲もあって。それもみんなバラバラなんですよね。バラードとか、今回入ってないですからね。
――あるにはあるんだ?
池澤:ああ……(メンバーに)どうですか?(笑)。なんかバラード作れないんですよね。エイトビート刻みたくなっちゃう。もうちょっと丸くなろうと思います(笑)。

【取材・文:小川智宏】

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リリース情報

モミジノススメ

モミジノススメ

2020年10月21日

GIANT LEAP

01.東京
02.猫と占いと家具屋
03.弾ける炭酸
04.青山通り
05.スカート
06.昨日の月にさまよえば
07.六畳間のヒーロー。

お知らせ

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■ライブ情報

生活と音楽 vol.1
11/08(日)東京 下北沢BASEMENTBAR

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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