Omoinotake、2020年の集大成――ミニアルバム『Long for』からわかる進化
Omoinotake | 2020.11.18
ピアノ・トリオバンド、Omoinotakeが4thミニアルバム『Long for』をリリース。テレビ東京ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のオープニングテーマとして書き下ろした「産声」を1曲目に、一発撮りのパフォーマンスを配信するYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」でも注目を集めた「One Day」や、彼らが島根から上京して10年の想いを綴った「東京」など、全6曲。2020年、自分たちの音楽を常に更新し続けた、藤井レオ(Key/Vo)、福島智朗(エモアキ・Ba/Cho)、冨田洋之進(ドラゲ・Dr/Cho)の3人に話を訊いた。
- ――4枚目のミニアルバム『Long for』がリリースされました。配信シングル曲も新曲も入っていますが、このタイミングで作品を出すことは結構前から決まっていたんですか。
- 藤井レオ:今作のリリースが決まったのは「産声」のタイアップが決まった8月とか9月だったかな。それまで配信でのリリースが続いていて、何かしらパッケージとしてまとめたいなと思っていたので、いいタイミングだなと。
- 福島智朗:ただ、制作はなかなか時間がなかったよね……。
- 藤井:そうだね。ドラマのオープニングテーマとしてどの曲にするかがなかなか決まらなかったこともあって、いくつか候補を出して決まったのが「産声」だったんですけど。そこまでで割と時間がかかっていたので。
- ――1曲目の「産声」は聴いただけで目の前の景色がバッと開けて行くような前向きな力を感じさせるアップナンバーですが、どんな曲作りでしたか。
- 藤井:タイアップのお話をいただかないとなかなかこういう曲調で書かないので、作品に寄り添う形で僕らの新たな一面を引き出してもらえたのかなと思います。デモをいくつか出した中で、もっとハッとさせるような曲調を探していて、どうしても切ない曲調で作ることが多いので、自分のエネルギーを「コンニャロー!」と振り絞りながら作りました(笑)。それがメロディに上手く乗った時は良い曲に仕上がるので、今回もそういう形で生まれたメロディでした。「展開が読めない曲が欲しい」というリクエストもありました。
- ――なるほど。確かに展開が読めない。
- 藤井:そこはかなり意識しました。具体的に言うと「産声」は結構、転調しているんです。サビ前でもDメロでも転調していて、耳心地が良い転調とはまた違う、「そっちに行くか!」という意外性を意識しました。1分間でワンコーラスという制限や、メロディに沿ってビート感も変わる感じも相まって、聴きごたえのある仕上がりになったんじゃないかなと思います。
- ――曲が先に決まって、そこから歌詞を書いたということですが。エモアキさん、難産だったそうですね。
- 福島:はい(笑)、1ヵ月くらいかかりました。さっきレオも言ってたんですけどワンコーラスで1分間ということで、サビに行くまでの部分がこれまでよりすごく短かかったので、歌詞を書く上でも難しくて。自分たちとの共通項を探しながら書いていきました。
- ――「産声」の歌詞にどんな想いを込めましたか。
- 福島:最初の一歩が踏み出せない臆病な主人公と、自分たちが混ざり合うポイントを探していたんですけど。そこで僕たちが初めて路上ライブをした日のことを思い出しながら、怖いけど前に進んで行こうとする瞬間を書きました。
- ――エモアキさんは歌詞がなかなか書けなくてお酒とタバコの量が増える日々だったそうですが、他のお二人はその姿をどう見ていましたか。
- 冨田洋之進:俺は電話をかけたりしてましたね。「大丈夫か~?」から入って、でも制作の話とかは一切せずに、くだらない話をして励まして。自分が歌詞のことを何か言っても、答えは見つからないだろうと思ったのもあって(笑)。
- 藤井:俺は静かに見守ってましたね(笑)。もちろん、完成するまでに送られてくる歌詞に対しては意見したりはするんですけど、最終的にはエモアキ自身が「これだ!」って思えるものができるまで待つしかないし。メロディを作るのは自分で、歌詞を書くのはエモアキっていう分業でやっているので、逆の立場でどうしてもらうのがいいかなって考えると、やっぱり待ってもらうしかないのかなって。
- ――生みの苦しみをわかってるからこそ、あえてそっとしておく(笑)。
- 藤井:そうですね(笑)。信頼して、静かに待ってます。
- ――では「産声」の歌詞が完成して、レオさんが歌ってみて感じたことは?
- 藤井:やっぱり、もともと何の意味もなかったメロディに言葉とメッセージが乗ることで、曲の雰囲気も変わるし、完成したなって感じがしました。自分が曲を作った段階でのデモはデタラメ英語みたいなもので歌っていて、そのグルーヴを生かしてもいいし、殺してもいいし、という感じで完全にエモアキに任せているので。完全に分業で作っているからこその面白さがあります。
- ――なるほど。曲の展開やビート感などもこれまでとは違うということでしたが、アレンジやレコーディングは大変でしたか?
- 冨田:Aメロとかサビは全体的にタテノリだったので苦戦しました。1コーラス目のサビが終わった後のフィルや、2コーラス目ではラテンっぽいフレーズを入れたり、結構ひねりのあるリズムを考えて、自分のやりたいことを散りばめました。
- 福島:ベースも弾いてて楽しかったな。でも「産声」のレコーディングの時は歌詞が完成するラストスパートの時期だったのでメンタルがやばかったですけど(笑)。
- 藤井:あははは!
- ――無事に完成して良かったですね! ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のオープニングテーマとしてオンエアされているのを見た感想は?
- 藤井:本当に苦労して作った曲なので、テレビで流れた時はホッとしましたね。
- 冨田:俺もそうですね、安心しました。
- 福島:自分は泣きました(笑)。また話が進むにつれて、「産声」の内容とも、よりリンクしてくると思うのでドラマの方も楽しみに見てもらいたいです。
- ――そして今作には新曲がもう1曲、「東京」が収録されています。
- 福島:「産声」ができて、あと1曲、新曲を入れたいねということで。もともと「東京」という歌詞があったので、そこから作っていきました。
- 藤井:歌詞がすごく好きだったし、「東京」というタイトルなので、当然名曲じゃないといけないわけじゃないですか(笑)。
- ――「東京」というタイトルの名曲は色んなアーティストが生み出していますもんね。
- 藤井:そのプレッシャーを感じながら(笑)、絶対に良いメロディにするぞと思って作っていきました。
- ――<10年前の君>に歌いかけるような内容です。どんなことを思い出しますか?
- 福島:ちょうど僕らは今、全員28歳なんですけど。18歳で僕とドラゲが上京した時のことを思い出すと、田舎とは全然違う都会の生活に慣れなくて腐っちゃってたなと。自分は何をやりたいのかな、何で東京に来たのかなって、わからなくなっていた18歳だったので。当時のことを思い出しながらも、今の自分の想いを乗せて書けた歌詞だなと思います。
- ――上京したばかりの頃の忘れられないエピソードはありますか?
- 藤井:僕は大学が東京とはいえ郊外だったので、あんまり都心部に行かなかったんですけど。エモアキは学生の頃にずっと渋谷でバイトしてて、「すげえな、よくあんなところに毎日行くな」と思っていました。後になって渋谷で路上ライブをすることになって、不思議な感覚でしたね。
- 冨田:僕は上京した当時はひたすらドラムを叩いていました。東京では上手い人が周りにいっぱいいたので、焦って。今の活動でもその頃に練習していたフレーズが生かされることも多いので、あの時にがむしゃらにやってて良かったなと思います。上京したての頃はエモアキと、東京でメンバー募集してスタジオに入ったりしたことも3~4回あったよね。
- 福島:そうそう。僕らだけ先に上京していたので。でも何人か会ってみて「やっぱ、レオを待とう」ってことになった(笑)。
- ――いい話です(笑)。前回のインタビューではレオさんがコロナ禍で「曲作りに専念できるこの時期に出す曲が全てだと思った」と語ってくれていましたが(https://music.fanplus.co.jp/special/20200615493840011)。今回のミニアルバムはまさに、そんな2020年のOmoinotakeの集大成と呼べる作品になりましたね。
- 藤井:間違いないですね。今年は配信ライブが主流になったこともあり、そのぶんすごく制作には力を注げたし、1曲1曲を丁寧に時間をかけて仕上げてきました。配信でリリースしてきた曲を含め、その全部が詰まっているミニアルバムです。『Long for』というタイトルには「待ち焦がれる」という意味だけじゃなくて、色んなトライをしてきたこの1年の色んな意味を込めました。
- ――3人で真摯に楽曲に向き合って行く中でお互いの絆が深まった1年でもあったんでしょうか。
- 藤井:そうですね、信頼感は増したなと思います。さっきもエモアキが歌詞をかけない時間にどうしてた?って話がありましたけど、信頼して待つことができましたし。
- ――それもまたひとつの『Long for』ですね。11月22日には無観客配信でのワンマンライブを行うということですが。意気込みとしてはいかがですか。
- 藤井:今年は結構たくさん配信ライブをやってきたんですが、今回はずっと目標にしてきた恵比寿リキッドルームからのワンマンライブ。なので演出にもこだわって配信ライブだからできるセットリストで、楽しんでもらえたらなと思ってます!
【取材・文:上野三樹】
リリース情報
Long for
2020年11月18日
NEON RECORDS
01.産声
02.One Day
03.欠伸
04.夏の幻
05.東京
06.One Day (JQ from Nulbarich Remix)
02.One Day
03.欠伸
04.夏の幻
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最近、フュージョンというバイクを買ったんですが、それを専門に取り扱っているお店で。高円寺のバイク屋さんなんですが、気づいたら検索して、このお店のブログがおもしろくてずっと読んでます。フュージョンに興味のある人は読んでみてください。
藤井レオ(Key/Vo)
カニンヘンダックス
この間、公園を散歩していたら、素敵なマダムが犬を散歩していて、めちゃくちゃかわいいなと思って、犬種を聞いたら「カニンヘンダックス」という犬種で、知らなかったので調べました。犬をずっと飼いたいんですが、今住んでいる所は飼えないので、いつか引っ越したら何犬を飼おうか悩んでるので、候補に入りました(笑)。
■ライブ情報
Omoinotake 「Long for」 Release
One Man Live 2020
※生配信ライブ
11/22(日)
OPEN/START 19:00/19:30
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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■ライブ情報
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※生配信ライブ
11/22(日)
OPEN/START 19:00/19:30
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