クレナズム、自由に広い世界へ羽ばたく意欲作『eyes on you』

クレナズム | 2020.11.18

 美しき轟音ノイズに包まれたシューゲイザーバンドの超新星、という表現はもう書き換えなければいけないかもしれない。福岡から日本全国へ浸透中、クレナズムの3rd ミニアルバム『eyes on you』で聴けるサウンドは、それほどに自由にのびやかに、ジャンルにとらわれずに広い世界を目指す意欲に溢れている。先行配信曲「エピローグまで」「ひとり残らず睨みつけて」「365」「キミのいない世界」のミュージックビデオはそれぞれ大きな注目を集め、特にポップなアニメ映像を駆使した「ひとり残らず睨みつけて」はケタ違いの再生数を記録して、多くの新たなファンを獲得することに成功している。今彼らにどんな変化が訪れているのか? 久しぶりに東京へやってきた4人をキャッチして、その心境を探ってみた。

――お久しぶりです。今年は本当に大変な年になってしまいましたけど、やはりステイホーム期間は、今回の制作に影響していますか。
しゅうた(Dr):今回のアルバムは、リモートで録ったんですよ。Zoomでみんなで見守りながら。萌映ちゃんは自宅で歌を歌って。
萌映(Vo/Gt):歌いました。お父さんの部屋で(笑)。
しゅうた:前までは、スタジオで一回合わせてからレコーディングだったんですけど、今回からそれがなくなったので。ずっと「バンド形態で作らなきゃ」という意識が僕の中にあったんですけど、シンセやピアノも入れちゃっていいかな?とか、バンドとしての固定概念がなくなった感じはあります。けんじろうの書いた「ラテラルアーク」とか、ドラムも打ち込みですし。
けんじろう(Gt):「打ち込みのほうが合うね」って。新鮮でした。
――じゃあステイホーム期間も、逆に言えばいいこともあったというか。
しゅうた:そうですね。広がりました。
萌映:遠隔で操作してもらって、歌って、「家でもできるんだ」という発見はありましたね。家で歌ったほうが……と言うとアレですけど、心から安心した状態で歌えました。「ラテラルアーク」とか、1時間かかったかな?ぐらいの感じで、めちゃくちゃ早かったんですよ。
しゅうた:僕がちょっと遅れてZoomに入ったら、もう終わってました(笑)。
まこと(Ba):ベースはもともと、ラインで録るように音作りをしているので。アンプで鳴らすよりはズシっとした感じが出て、そっちのほうが好みなので、問題はなかったですね。
――けんじろうさん。作品全体として、どんな手ごたえがありますか。
けんじろう:ファースト、セカンド、そして今回のサード(ミニアルバム)と、だんだんと歌が際立っていってるというか、ポップさが際立ってきているなと思いました。意識した曲もあるんですけど、半分以上は無意識のうちにそういうふうになったんじゃないか、と思いましたね。
――それは、自己分析をすると、何なんでしょうね?
けんじろう:個人的には、萌映ちゃんの歌を聴いてもらいたいということをずっと思ってきたので、より歌が映える曲を作ろうとは思っていました。
しゅうた:今回は、ネットミュージックというジャンルを意識したんですよ。「ひとり残らず睨みつけて」のミュージックビデオもそうなんですけど。
けんじろう:そうそう。そこ、キーワードですね。
しゅうた:最近流行りの、ヨルシカだったり、YOASOBIだったり、ボカロからの派生のようなアニメを使ったミュージックビデオで、声が抜けてくる音楽というか、キャッチーなものを意識しました。「ひとり残らず睨みつけて」は、けんじろうが作ったデモ段階ではそういう意識はなかったと思うんですけど、作っていく途中で、みなさんといろいろ話し合っていく中で、ネットミュージックを意識したアレンジになっていったので。「キミのいない世界」も、それを意識して作った曲ですね。

――ちなみに、ネットミュージックというジャンルは、もともと好きだった?
しゅうた:そうですね。みんなボカロが好きなので。アニメも好きだし、セカンドミニアルバムに入っていた「ヘルシンキの夢」も、アニメのミュージックビデオにしようよ、という話もあって、ずっとやりたいことではあったので。今回「ひとり残らず睨みつけて」という、ぴったりの曲ができたからアニメで行こうよ、という感じです。

――つまり時代のトレンドと、バンドの志向と、全部がうまいこと噛みあったと。
しゅうた:そうですね。アルバムタイトルの『eyes on you』は「一目惚れ」という意味なんですけど、僕たちの新しいジャンルに一目惚れしてもらいたいなという意味合いで、僕らの新しい一面を知って好きになってよという、そういうアルバムかなと思っています。個人的には、自分の好きなことができたアルバムだと思っていて、「ラテラルアーク」とか、僕の好きな四つ打ちのドラムですし。僕はもともとピアニストなので、シンセサイザーを使ったり、ピアノの音を入れたり、自分の好きなことが一番できたアルバムになっています。
まこと:それぞれの個性は失わずに、また変わった感じを出せたと思います。ファーストの時はシューゲイザーのギターが印象的ですけど、きれいなアルペジオの曲も僕は好きで、それが今回は出たんじゃないかなと思います。「ラテラルアーク」は特にそうですね。僕は僕で、セカンドよりも低いところを出す感じが多くなって、そこのバランスが取れるようになったかなと思います。
萌映:入口はシューゲイザーだったけど、いろんなジャンルに挑戦したい気持ちは、セカンドぐらいからみんな意識し始めたんじゃないかなと思っていて、それがはっきり出せたアルバムじゃないかなと思っています。新しく出せたポップさもありながら、今までやってきていたシューゲイザー要素を出せた楽曲もありますし、いいとこ取りできているアルバムじゃないかなと思います。
――いいとこ取りアルバム。確かに。
萌映:ボーカルとしては、一番表情が出せたなと思っています。「キミのいない世界」は特に、すごく表情を出して歌いました。リアルな恋愛観を歌っている歌詞で、今までのクレナズムの歌詞にはリアルなワードはあまりなかったと思うので、そこでリスナーの人と近づけているんじゃないかなと思いますね。
――「キミのいない世界」の歌詞は誰が?
けんじろう:僕とまことの二人で書きました。
萌映:めちゃくちゃ可愛い歌詞だけど、男性陣が書いているというところも注目です(笑)。私が書いたのは「エピローグまで」「365」「眩しくて」ですね。「エピローグまで」はまだ女の子っぽい歌詞ですけど、私のほうが勇ましい歌詞を書いているかもしれない(笑)。いい意味でばらつきがあると思います。それぞれの曲の、歌い方にも注目してほしいなと思いますね。

――萌映さん、お気に入り歌詞は?
萌映:「エピローグまで」のサビですかね。<あなたが幸せの理由>というワードがすごいお気に入りです。みんなそれぞれに幸せの理由があると思うので、「あなた」というのは人に限らず、いろんなものに当てはめて聴いてもらいたいと思います。
――「エピローグまで」という言葉自体は、終わりを感じさせるものだけど、決してネガティブなものではなくて。
萌映:バッドエンドではなくて、今後に続くよというつもりで書いているので、個人的には暗い気持ちで書いてはいないです。「この先も頑張ろう」という感じですね。リリースのタイミングが、ちょうどコロナの真っただ中だったので、それに当てはめて聴いてくださっている方が多いのかなとは思うんですけど、これを作ったのは去年の12月で、コロナ騒動がなかった時なので。すごいタイミングだなと思いました。

――時代に合わせて、より深い意味を持つようになった歌詞だと思います。まことさんのお気に入り歌詞は?
まこと:「キミのいない世界」のサビが、一番は<もう誰もいない>で、二番は<もう君はいない>とか、変わっていく感じが好きですね。本当に落ち込んだ時は、たぶん誰も信用できなくて、「誰もいない」と思っちゃう人はいるだろうな、と思って書きました。歌詞と声がすごく合っていると思います。
萌映:この歌、歌うのがめちゃめちゃ楽しかった。
けんじろう:僕は「ひとり残らず睨みつけて」の、Cメロのところが好きですね。<君が飲み干す透明>のところ、もともとそれがタイトルのつもりだったんですけど、もうちょっとインパクトがあるほうがいいねという話になって、Bメロの冒頭の「ひとり残らず睨みつけて」になったんですけど。そのぐらいお気に入りではありました。
萌映:ミュージックビデオの主人公になっている女の子がいるんですけど、曲の始まりの表情と、最後の表情が、けっこう違うんですよ。最初は思い悩んでいる表情で、最後の<さよならを言う/さよならを>のところ、スッキリした表情をしているんです。そこは、アニメを作ってくださった方には何も言っていないんですよ。なのにリンクしていて、すごいなと思いました。この曲も、バッドエンドではないと思いますね。今後に続く、明るい曲だと思います。
――このサード・ミニアルバムは、以前よりも明るくポップに開かれていて、新しい人がどんどん入ってこられる作品だと思います。ロック好きもJ-POP好きも、誰でもウェルカムですか。
萌映:もちろん。クレナズムはシューゲイザーという印象が強いと思うんですけど、でも「もっと可能性はあるぜ」と言いたいです。「もっといろんなことできるよ」ってアピールしたいですね。
――これを聴いた人の反応が楽しみ。そしてこのあとの予定は?
しゅうた:アルバムのリリースツアーはしないので、配信ライブがその代わりになります。
まこと:11月22日の日曜日から、3週に分けて配信していく予定です。
しゅうた:「クレナズムのにちようび」というタイトルで、毎週日曜日に配信ライブをしていくので、ぜひ見てほしいです。

【取材・文:宮本英夫】

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リリース情報

eyes on you

eyes on you

2020年11月18日

MMM RECORDS/RED

01.ひとり残らず睨みつけて
02.ラテラルアーク
03.眩しくて
04.キミのいない世界
05.エピローグまで
06.365

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

3rd mini album release live
【クレナズムのにちようび~明太子の香りを添えて~@scope 】配信ライブ

11/22(日)17:00~
https://under-over.jp/ticket/culenasmsunday1
11/29(日)17:00~
https://under-over.jp/ticket/culenasmsunday2
12/06(日)17:00~
https://under-over.jp/ticket/culenasmsunday3

配信視聴可能期間:12/31(木)13:00まで

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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